東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百四十六話

紅魔館・第図書館内。

 

レティシアは其処で紅茶を飲みながらいつも通り読書をしていた。

 

そのレティシアから離れた場所では、夢幸がシュロムと魔法の研究をしている。

 

霊夢達が異変解決に出ていることに気付いていない訳ではない。葵なら異変の予知を見て、それを霊夢に伝える事ぐらい既に見通していた。

 

だから、今の所は全て予想通りなのである。

 

(それでも、予知と少しでも違う事をすれば、もしかしたら異変の流れは変わってしまうかもしれない……)

 

レティシアはそんな事を考えながらその場を立ち上がり、本を直してから図書館を出て行った。

 

(未来はとても不安定。いつ何処で先が変わるかは誰にも分からない。私はしようと思えば幾らでも出来るけれど、この姿ではそんな事も出来ない)

 

そう考えながらレティシアは歩き、一度自室まで赴いた。

 

(だから……)

 

「もしかしたら、博麗神社の倒壊も、免れる事なく起こるかもしれないわね。ヴラド」

 

レティシアは写真の中にいるヴラドを見ながらそう呟いた。

 

***

 

霊夢達が一番最初に向かっているのは紅魔館である。

 

「それにしても、何故紅魔館なのですか?」

 

「ほら、パチュリーなら簡単でしょ?倒壊ぐらい」

 

「まあ、魔法次第だとは思いますけど……」

 

「それは早計すぎる気が……」

 

葵と歩がそんな事を言っていると、何故か急に雨が降り出した。

 

「あら?さっきまで雨が降るような天気じゃなかった気が……」

 

「……どうやら、此処だけの様だな。見ろ」

 

「え?」

 

鬼灯の言葉を受け、後ろを振り向いて見ると、

 

「え……」

 

「キチンと綺麗に天気が分かれてるね」

 

先程までいた場所は未だに晴れており、今現在の霊夢達の場所には雨が降っている。

 

一歩でも戻れば直ぐに晴れた場所に戻れるぐらいにキチンと分かれていた。

 

「……これは、どんな魔法使いでも出来ないような気が……」

 

「パチュリーでもこれは無理だと思うぜ?」

 

魔理沙からの言葉により、霊夢は考え始めた。

 

「あと紅魔館で有力なのは、何でも願いが叶えられる『ユニ』と、何でも出来てしまう『レティシア』ぐらいかしら?」

 

「シュロムさんもやろうと思えば出来るとは思いますが、それだと代償が必要なので候補外ですからね……」

 

「それから、今のレティシアにもこれは無理だ。これが出来る時はせめて始祖の姿の時だけだ。だが、強大な妖力は感じないだろ?」

 

「そうね。となると、残った『ユニ』ね」

 

「決定事項なのですか?」

 

「まあ、ちょっと話を聞きに行く程度だけどね」

 

葵が苦笑しながら聞くと、霊夢は肩を竦めながら返した。

 

そして、一行が進もうとした時、霧の湖からあのチルノがやって来た。

 

「やいお前ら‼︎サイキョーのアタイと勝負しろ‼︎」

 

「さあ、こんな奴無視して行くわよ」

 

霊夢の言葉に全員チルノを素通りすることに決めた。

 

葵一人は罪悪感を持ち、済まなそうな顔をしながらだが。

 

しかし、それで終わるチルノではない。

 

「お前ら‼︎サイキョーのアタイが怖いんだね?だから逃げるんだろ‼︎」

 

「違うっての。一々妖精に構ってやるほど、私達は暇じゃないのよ。分かった?」

 

「全く、怖いなら怖いって言えば良いんだよ‼︎」

 

「って、話なんか聞いてないし」

 

霊夢が少し溜息を吐くとお札を取り出し、それを針に変え、投げ付けた。

 

「封魔針」

 

すると、チルノはそれに気付かず、当たってしまった。

 

どうやら、自分が最強だと証明されたと勘違いしたままだった様で、無い胸を張った状態で当たっていた。

 

「あの、流石にアレは不意打ちでは……」

 

「不意打ち上等。だってアレは弾幕ごっこじゃなかったもの。それに、今は異変解決が先決なんだから」

 

霊夢はそれだけ言うと、紅魔館の方に向かって行った。

 

「れ、霊夢さん、性格変わりました?」

 

「いんや?単に進む道を邪魔されてイラっときたんだろ」

 

「俺もそう思うよ」

 

魔理沙と龍からの言葉を受け、早苗は納得したようだった。

 

***

 

紅魔館の門まで来てみると、其処には傘を挿している状態の美鈴が居た。

 

「美鈴さん、こんにちは。入らせていただいても宜しいでしょうか?」

 

「あ、葵さんこんにちは‼︎ええ、どうぞどうぞ‼︎」

 

美鈴は快く入らせてくれて、そのまま紅魔館に入ると、イキナリタオルを投げ付けられた。

 

「そんなずぶ濡れの状態で入るな。せっかく掃除した床が汚れるだろう」

 

「これは仕方ないでしょ?」

 

「仕方ないからタオルを投げたんだろ」

 

「一応、お客様なんだけど?」

 

「レミリア様は招待してない」

 

狼は全員にタオルを渡すと、そのまま大きな(狼にも見える)犬になり、何処かへと行ってしまった。

 

「彼奴、アレで何で執事なんて出来てるのかしらね?」

 

「レティシアから以前聞いたが、普通に執事としての仕事は熟しているらしいぞ?ただ、お客じゃない相手で、それが顔見知りならあの対応の様だな」

 

「いや、変えた方が良い気がするがな」

 

ルカのその言葉に、頷く者が多数居た。

 

と、そこにユニがやって来た。

 

「ん?アレ?どうしたの?こんな雨の中、しかもずぶ濡れの状態で」

 

「あんたに用があって来たのよ」

 

「私に?」

 

霊夢が理由を話すと、ユニは驚いた顔をした。

 

「え?マジで?レティシア様が居るから食料調達しに人里まで行かなくて済んでるから知らなかったよ……雨がこれだけ降ってるの、此処だけなんだ……」

 

ユニはそう言うと、感心した様に「へ〜」と言った。

 

「それで?これはあんたがやったわけ?まあ、やってないんでしょうけど」

 

「うん、やってないよ」

 

「え?あの、何でやってないと断言出来るんですか?」

 

早苗からの質問に心底面倒臭そうな顔をして返す霊夢。

 

「あのね、彼奴は今、『雨がこれだけ降ってるの、此処だけなんだ……』って言ったのよ?それって知らなかったって事じゃないの」

 

「それは嘘を吐いている可能性も……」

 

「それなら、何でルカは氷柱を彼奴に投げ付けなかったわけ?」

 

「え?」

 

早苗は霊夢からのその言葉に驚いた様子を見せ、ルカの顔を見た。

 

その様子にルカも気付き、頭を傾げた。

 

「早苗には私の能力の事を話してなかったか?」

 

「今初めて聞きましたよ‼︎」

 

「そうか、遅れたがそう言うことだ」

 

早苗はそれを聞くと、頭を抱えた。

 

そんな早苗を励ますかの様に背中を摩る想起であった。

 

「まあ、つまりはそういう事よ。ルカが一番嫌っているのは『嘘』だからね。まあ、嫌っている筈なのに本人も時々吐くけど」

 

「私は確かに嘘を嫌っているが、誰かを傷付ける様な嘘じゃない限り攻撃したりしないさ」

 

ルカはそう言うと、ユニの方に顔を戻した。

 

そして、霊夢は溜息を吐いた。

 

「はぁ、此処に犯人は居ないってことね。じゃあ、次に行きましょうか」

 

霊夢のその声で紅魔館から出ようとする一向の背中から声が掛けられた。

 

「クスクス、それなら、私達も連れて行ってもらえないかしら?」

 

「⁉︎」

 

「……レティシア」

 

早苗以外の全員は驚きの表情も見せずにレティシアの方に顔を向けた。

 

どうやら、もう慣れた様だ。

 

「クスクス、まあ、私だけじゃないけれどね」

 

「自分も付いて行きます」

 

レティシアの直ぐ側には光冥も居た。

 

「……あれ?あのメイドは?」

 

霊夢はその場に咲夜がいない事言うと、レティシアは笑いながら答えた。

 

「クスクス、咲夜は別の事を調査中よ。光冥にもそっちの方の手伝いで良いって言ったのだけれど……」

 

「レティシア様一人で行かせるわけにはいきません」

 

「こうだからね」

 

レティシアは肩を竦める様子を見せながらそう言った。

 

と、何かの視線を感じた様でその視線の方に顔を向けてみれば、龍が居た。

 

「クスクス、あら?どうしたのかしら?龍」

 

「……いや、何でもないよ、レティシアさん」

 

「クスクス、そう♪」

 

レティシアのその何時も通りな様子を見て、少し安心した様な様子を見せる龍。

 

しかし、直ぐに鬼灯が小声で、龍にだけ聞こえるぐらいの声で言った。

 

「龍、忘れてるわけではないだろうが、彼奴は『演技』が得意だ。惑わされるなよ」

 

それを聞くと、先程の安心を消した龍。

 

レティシアはその様子に気付いたのか、はまたま気付いてないのか分からないが、全く動揺した様子を見せずに霊夢達の元に近付いた。

 

「クスクス、さあ、行きましょうか♪」

 

レティシアはそう言いながら全員分の傘を創り、それを渡した。

 

それを素直に受け取ってから霊夢達は頷き、紅魔館から出て行ったのだった。

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