博麗神社はものの見事に倒壊していた。
屋根が落ちており、住居としての機能は無くなっていた。
その変わり果てた姿の神社を見た霊夢は呆然としていた。
「……」
「あ~あ、こりゃ住めないな」
「やっぱり、私の予想は当たったわね」
「あの……何でそんなに呑気なんですか?」
葵は魔理沙とアリスの様子を見て苦笑した。
「…そういえば、アリスは『地震が起こる』と言ってたよな?」
「ええ、そうね。そう言ったわ」
「…うちとノアは大丈夫なのか?」
「「「!?」」」
ルカの不安を煽るその言葉に葵、鬼灯、想起の顔はみるみる青くなっていく。
「れ、霊夢……その、あの……」
葵は一度家の様子を見に行くために霊夢に承諾してもらおうとしたが、しかし霊夢の様子を見ると、言いにくいようだ。
しかし、葵が何を言いたいのかを直ぐに理解した霊夢は、頷いた。
それを見た葵はルカ達と共に一度戻って行った。
そして、その場では、
「霊夢……」
「……」
「俺も建て直すの手伝うから。それに、こんな事した元凶にも立て直させたら良いよ」
「……それもそうね」
と、そんな会話が霊夢と歩の間にあったのは、その場にいた者にしか分からない。
***
結果から言うと、神無月神社は倒壊していなかった。
何処にも可笑しな点もなかった。
そう、『なかった』のだ。
博麗神社が倒壊するほどの地震でありながら、何一つ倒れてもおらず、壊れてもいなかった。
神社から出た時のままである。
「……これは、どういう事なのでしょう?」
「地震があったのなら、此処も倒壊しているか、または箪笥などが倒れている筈なのだが……」
「何時も通り……だね」
安心よりも訝しむ葵達。
しかし、一人何かを探すルカ。
「ルカ、ノアはいた?」
「いや、それが何処にも……」
と、言葉にした時、何処かから猫の鳴き声が聞こえてきた。
「!ノア!?何処だ!?」
「ルカ!!台所からだよ!!」
「分かった!!」
直ぐに台所に向かってみると、其処には魚を銜えたノアが居た。
そのノアはルカ達の様子を見て首を傾げた。
まるで、『何でそんなに慌ててるの?』と言っているように。
「……よ、良かった。居た……」
ルカは安心した様子を見せると、ノアに近付き、その頭を優しく撫でた。
ノアはそれが気持ち良かった様で喉を鳴らしている。
「……お前が無事で良かったよ」
ルカは葵にも良く向ける笑顔をノアにも向けたのだった。
***
葵達が博麗神社に戻って来てみると、その場に二人ほど増えていた。
一人は、紫の式である茜。
もう一人は、体全体に鎖を巻きつけている男だった。
しかし、その男は何故か地面に頭をつけて霊夢に土下座をしていたが。
「ん?あら、お帰り、葵」
「あの……これは一体、どんな状況なんですか?」
葵が若干混乱していると、その鎖を巻きつけた男は葵の方に顔を向けた。
そして、その男は葵にも土下座した。
「頼む!!あの馬鹿を止めてくれ!!」
「え?」
更に混乱する事となった葵だった。
***
混乱が収まったのを確認した茜はその鎖の男を先に紹介した。
「此奴は『東雲 不知火』。天人であり我の友だ」
「よろしく頼む」
「初めまして。神無月葵と申します」
不知火の挨拶を聞くと頭を下げて自分の紹介をした葵。
「それで?あんたがうちの神社を倒壊させたわけ?」
「いや、違う。此処を倒壊させたのは俺の知り合いの馬鹿だ」
「『比那名居 天子』という天人。其奴がこの地震を起こした張本人だ」
「へ~。で?其奴は何処に居るわけ?」
「あの、霊夢?その……怖いです」
葵は霊夢の怒気を含んだ笑みに怯えるが、其れに対して配慮出来るほどに今の霊夢の心中は穏やかではない。
そんな霊夢の様子など気にせずに、茜は上空を指差した。
「あの緋色の雲を突き進めば元凶の元に辿りつく筈だ」
「分かったわ」
霊夢はそれを聞きさっそく行こうとしたが、龍が「そういえば……」と言い、葵に顔を向け、質問した。
「なあ?葵の神社は平気だったのか?」
「倒壊してませんでした。それに、箪笥とかも倒れてませんでしたから、地震があったのは此処だけの様です」
「え?そうなの?」
それを聞いた霊夢もまた驚きの顔を見せた。
「はい。だって、私たちが話していた時でさえ、揺れを感じなかったんですよ?なのに、博麗神社だけ倒壊している。つまりは此処だけ揺れたって事ですよね?」
それに対して頷いたのは不知火だった。
「ああ、恐らくは試し打ちだろう。そして、次に来るのは大地震だ」
「試し打ちで倒壊させられたのは腹立つけど、幻想郷の平和を崩そうとするのも許す訳にはいかないわ。急ぎましょう!!」
霊夢のその合図と共に上空の雲へと向かい始めた霊夢達。
……対して、其処に残った一人もいた。
「……一つ、聞くわよ」
「……何だ?」
「もしその娘が危なくなったら、貴方は間に入ってでも強制的に止めようとするのかしら?」
レティシアからの質問に、不知火は否定した。
「いや、彼奴は一度痛い目を見た方がいい。だが、俺の弟は違うがな」
「……そう、分かったわ」
レティシアはそれを聞くと、霊夢達の後を追って行った。
その少し後に不知火も行き、その場には茜一人が残されたのだった。