東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百五十一話

弾幕ごっこが始まったのは良いが、しかしずっと霊夢が撃ち続けているだけで天子は余裕そうな顔でずっと避け続けている。

 

「あんたも攻撃してきなさいよ‼︎」

 

「嫌よ‼︎まだまだ楽しみたいもの‼︎」

 

「つまりあんたは私を簡単に倒せる自信があるってことね……?」

 

「私は天人よ?そう簡単に負けないわ‼︎」

 

天子は余裕たっぷりな笑みを浮かべると、次の言葉を発した。

 

「それに、私なら貴女を簡単に倒してしまえるのだから余裕なのは仕方ないでしょう?」

 

これは天子なりの挑発で、普通はそんな挑発に乗ったりする事はないだろう。

 

しかし、霊夢は裏表がない性格。つまり、若干挑発に乗り易いタイプである。

 

まあ、言いたいことは……。

 

「何ですって?……私を怒らせた事、後悔しないでよ‼︎」

 

怒ったのである。額に怒りのマークを浮かばせ怒ったのである。

 

「れ、霊夢?アレは天子さんの挑発……」

 

葵が霊夢を少しでも落ち着かそうとそういうが、それは逆効果であった。

 

「挑発出来る程に余裕なら、その余裕を無くしてやるわ‼︎」

 

霊夢の怒りに油を注いだ結果に終わってしまった。

 

霊夢は弾幕を撃つのを止めると、スペルを宣言した。

 

「神霊『夢想封印』‼︎」

 

「えぇ⁉︎」

 

霊夢はイキナリ自分の得意技を使い、葵もそれには流石に驚いた。

 

そして、七色に光る弾幕を、天子は苦渋の色は浮かべず、楽しそうな笑みを浮かべながら避けていた。

 

「そうよ‼︎これよこれ‼︎私はこれをしたかったのよ‼︎」

 

「なら、彼処のメイドと半霊が倒した衣玖とかいう奴とやんなさいよ‼︎」

 

「あれ?衣玖に会ったの?」

 

天子は霊夢の口から出た意外な人物の名前に少し驚いていた。

 

「というか、彼処の人間と半霊が、あの衣玖を……ね」

 

天子はそう言いながらチラッと何かを見定めるような目で咲夜と妖夢の方を見た。

 

しかし、直ぐに視線は前に戻された。

 

「嫌よ。衣玖とやろうとしても彼方が乗ってくれないんだもの」

 

「なら、あんたが異変主だって教えてくれた不知火とかいうあんたと同じ天人にでも……」

 

「彼奴はもっとダメ。だって、絶対断るもの。眼に見えてるわ。だーかーら、起こしたんじゃない、異変」

 

「だからってうちの神社を倒壊させるな‼︎」

 

霊夢がそう叫んだ後、今までよりも多くの弾幕が天子を襲ったが、しかし天子はとても簡単そうに隙間が空いてる場所にスルスル入り込み、華麗に避けるばかり。

 

その後、スペルの制限時間が来たため、弾幕は消滅した。

 

それを見ると、天子は次のスペルを見たいからなのか、また挑発してきた。

 

それも、今度は冗談にしてはタチの悪い冗談を。

 

「なら、其処の空色の髪の子の神社も壊してあげましょうか?」

 

「境界『二重弾幕結界』‼︎」

 

霊夢は直ぐに二枚目のスペルを宣言した。

 

すると、結界が天子を覆い、その結界内で赤と白の弾幕が天子を襲う。

 

しかし天子はそれに焦らず、楽しそうな笑みをやはり浮かべたままで時間まで避け続けた。

 

そして弾幕が消えた後、天子は少しニヤニヤした顔で霊夢に問い掛けた。

 

「あら?さっきの怒った時みたいに弾幕の量が多かったけど、そんなにその子が大切なのかしら?」

 

それに対して霊夢は少し深呼吸したあと、口に出した。

 

「……大切よ」

 

「霊夢?」

 

「私にとって、葵は大切な存在なのよ」

 

「……それは、補助要員だから?」

 

天子が真面目な顔でそう聞くと、霊夢は首を振った。

 

「違う。幼い頃、お母さんから紹介された時はなんとも思ってなかったけど、会った時からずっと接し続けて、葵の優しさに触れて、気持ちが変わったの」

 

「……」

 

「お母さんが巫女を引退して、私が引き継いで、時間的には一人の方が長かったのかもしれないけど、それでも葵は殆ど毎日私の所に来てくれた。そのお陰で、寂しい想いを持つことは殆ど無かった。色々な世話もしてくれて、感謝の気持ちが強いけど、それよりも私にとっては葵は私の親友。私の気持ちをお母さんと同じ位察してくれる大切な親友なの‼︎」

 

「霊夢……」

 

「だから……」

 

霊夢はそう言うと、お祓い棒を天子に向けた。

 

「冗談だろうとその発言を、私は許す訳にはいかない‼︎」

 

霊夢の言葉に天子は少し間を空けてから、笑みを浮かべた。

 

「ふ〜ん、分かったわ。でも今は弾幕ごっこ中。私もちょっと心境が変わったし、良いわ。私のスペルを一つ見せてあげる」

 

天子はそう言うと、スペルを宣言した。

 

「乾坤『荒々しくも母なる大地よ』」

 

すると天子の近くの地面から注連縄がされた石が飛び出てきた。

 

「アレって……」

 

「要石ですね」

 

霊夢と葵がそんな言葉を交わしたのを見ると、天子は少しニヤッとした。

 

それから要石を宙に投げ、自分も跳躍した後にその要石に乗った。

 

「「⁇」」

 

二人の頭には疑問符が付いたが、しかし天子が説明などする訳もなく、要石と共に加速を付けて落ちて来た。

 

そして、二人とは違う場所に要石を打ち込むと、天子がいる場所以外の地面が持ち上がった。

 

当然、二人がいる場所もそうで、当たってしまった。

 

「うっ」

 

「っ……」

 

「ほら?そんな風に地面に横にならないの。次行くんだか、ら‼︎」

 

その声と共にまた要石に乗って飛び上がった天子。

 

それを見ると、葵は霊夢と視線を交わした。

 

そして、葵はスペルを宣言した。

 

「未来『分読み』‼︎」

 

これは本人が良い思いを持っていなかった能力、『未来と過去を見る程度の能力』を使用する為のスペルである。

 

未来を見る能力を持つ葵は、もし制限など無しで弾幕ごっこに参加すると、殆どの確率で勝ってしまう。

 

何故なら、当たらなくなってしまうからだ。

 

だからこそ、それをせずに、しかし能力を使う為に作られたスペルである。

 

このスペルの他にも未来を見るスペルは少なからずあるが、葵はこのスペルを選択した。

 

理由としては……二人はこのスペルの攻略法が分かったからとだけ言っておこう。

 

そして葵は能力が予知した『一分先』の未来を見た。

 

それから霊夢と視線だけ合わせると、霊夢と葵は別々に動いた。

 

葵は飛び上がり、霊夢は天子が落ちようとした場所に移動した。

 

それには流石に驚いた様子を浮かべる天子。

 

「え⁉︎」

 

そしてそのまま要石を打ち込むと、地面が持ち上げられた。

 

しかし、今度は霊夢にも葵にも当たっていない。

 

霊夢は天子のすぐ近くに居た為に、当たらなかったのだ。

 

そうしてそのまま蹴りを入れた。

 

「ぐえっ⁉︎」

 

天子はまるで蛙が潰れたような声を上げるが、しかし直ぐに要石に乗り、また宙に浮かんだ。

 

そして、思考する。

 

(彼奴、今私の着地地点が分かったの?いや、あの巫女はそんな能力は持ってないしそんなスペルも持ってない筈。なら……あの空色の巫女が宣言したスペルの所為か)

 

天子はチラッと葵を見ると、葵は天子を見ていた。

 

お互い、相手の腹の探り合い状態だが、しかし天子はスペル発動中。直ぐに視線を外し、要石を落とした。

 

しかし、やはりと言うべきか霊夢には当たらず蹴られ、また打ち込むが当たらず攻撃されをスペルがブレイクされるまでの間続けられ、スペルが終わった瞬間、強い蹴りを腹に一発お見舞いされ、そのまま少し離れたところに飛ばされた。

 

「くっ‼︎」

 

もう天子に余裕の笑みは無かったが、しかし、楽しそうな笑みは相変わらず浮かんでいた。

 

そして、天子は起き上がり、もう一枚スペルを使おうとするが……。

 

「呪術『鬼呪封印』‼︎」

 

葵のスペルにより縛られてしまう。

 

「⁉︎しまった⁉︎」

 

天子は直ぐに脱出しようとするが、中々脱出出来ない。

 

そんな状態の天子にも容赦せず、霊夢はスペルを宣言した。

 

「宝具『陰陽鬼神玉』‼︎」

 

その宣言後、大きな陰陽玉が天子に向かって行き、当たった。

 

「痛っ⁉︎とてつもなく痛いんだけど⁉︎」

 

天子は少し涙目で訴えるが、しかし霊夢はそれを無視し、また陰陽玉を投げた。

 

それを数回繰り返すと投げるのを止めた。

 

そして、霊夢は天子に対して背中を向けた。

 

その天子はと言うと、もう既に気を失って倒れていた。

 

***

 

葵が天子の治療を始めて直ぐに、誰かが走って近づいて来た。

 

それは歩達ではなく、見知らぬ人物。

 

不知火と顔立ちが似ており、しかし服はサンバイザーに袖を切り落とした上着を着ている男だった。

 

「天子‼︎」

 

その男は葵を押し退け、天子の容態を確認した後、一度葵に頭を下げてから、後ろにいた霊夢達に顔を向けた。

 

「……天子にこんな事をしたのは、誰?」

 

その言葉からは覇気の様なものが感じられたが、霊夢は前に出て手を上げた。

 

「其奴をそんな風にしたのは私よ」

 

「……そっかー」

 

と、イキナリ口調がノンビリした感じの口調に変わったが、雰囲気は変わっておらず、ピリピリとした雰囲気だった。

 

「なら、君には僕とも闘ってもらおうかなー?天子をこんな風にした事に対してのお返しをしないとねー」

 

それを聞いた霊夢は了承の返事をしようとしたが、しかし、霊夢の前に歩が出てきたことにより、それは遮られた。

 

「歩?」

 

「悪いけど、お前の相手は霊夢の代わりに俺がやる」

 

「君が?」

 

「ああ、そうだ」

 

すると、アリスの隣にいたカロードもまた前に出てきた。

 

「?カロード?」

 

「俺も参加しよう。全然動いてなかったからな」

 

「え、アリスは良いのか?」

 

歩はアリスの方に顔を向けると、アリスは頷いた。

 

「ええ、だって、カロードは負けないもの」

 

「……有難うな、アリス」

 

カロードはそう言うと、一度アリスの近くに行き、優しく撫でた。

 

それに対してアリスは顔を紅くするも、しかし嬉しそうな顔で満喫していた。

 

そして、カロードが撫で終わり、また前に出てきたのを見てからその男は口を開いた。

 

「分かったよー、なら、君達が僕の相手だねー。それじゃあ、始めよっかー」

 

歩とカロードはそれを聞くと、霊夢達に被害が降り掛からないように離れようとした。

 

しかし、歩の袖を霊夢が引っ張ったことにより、歩だけは歩みを止めざるおえなくなった。

 

「?霊夢?どうしたんだ?」

 

歩は当然の疑問を霊夢に投げ掛けると、霊夢は目に心配そうな、しかし強い輝きを持った目で歩を見ながら言った。

 

「……絶対に、怪我しないこと。それから負けない事。良いわね?」

 

霊夢からのその言葉は、霊夢なりの応援。

 

それを分かっている歩は笑みを浮かべて、霊夢の抱き締めた。

 

「⁉︎」

 

「……大丈夫、俺は怪我もしないし、勝つよ。霊夢からの応援を貰ったんだからな」

 

「……約束よ」

 

「ああ」

 

歩は霊夢とのそんな会話を終わらせると、霊夢の頭を優しく撫でてからカロードの元へと向かって行った。

 

そして、カロードと共に男と対峙する。

 

「あ、そうだー。自己紹介はしとかないとねー。僕は『東雲 蜃気楼』だよー、よろしくねー!」

 

そして、歩とカロードも自己紹介を終えると、弾幕ごっこが始まった。

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