東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百五十六話

夏といえば人は何と答えるのだろうか?

 

色々と解答はあるが、これだけは夏の風物詩と言えるものはあるだろう。

 

そう、浴衣である。

 

そして現在、霊夢達はその浴衣を着て、夜の神無月神社へとやって来ていた。

 

「まあ、夏だから祭りは分かるけどね。うちと違って人が多すぎない?」

 

霊夢は赤と白のブロックチェック柄の浴衣を着て、髪を上げ、うなじが見えるその姿の状態で、ちょっと不満そうな顔をしながら綿菓子を食べていた。

 

その隣にいる歩は藍色の吉原つなぎ柄の浴衣を着ていた。

 

「まあ、あんな妖怪神社に来る人里の連中の方が珍しいけどな」

 

夢幸の近くにいた魔理沙が、唐かう様な笑顔でそう言った。

 

因みに魔理沙もまた、黒色の生地に星が描かれている浴衣を着て、りんご飴を舐めている。

 

何時もの帽子は流石に被ってはいなかった。

 

その隣の夢幸は暗い緑のかすれ縞柄の浴衣を着て、魔理沙を見ながら立っていた。

 

「それに、神様のいない神社に来る奴はいないだろ」

 

「うっ」

 

魔理沙の言葉に、霊夢は言葉を詰まらせる。

 

「でも、霊夢さんの為に神社の宣伝をしてる歩さんは人里では人気のようですよ?」

 

と、そんな四人の後ろから早苗がそんな風な声を掛けた。

 

四人が振り向いてみると、早苗もまた若葉色の生地に流水と紅葉が描かれた浴衣を着て、団扇で扇いで立っていた。

 

「あ、早苗も来たんだね」

 

歩がそう声を掛けると、頬を紅く染めて答えた。

 

「はい、歩さんに声を掛けてもらった時はちょっと躊躇いましたが、その後に想起さんが来て……」

 

「即答したわけか」

 

夢幸がそう言うと、思いっきり頭を縦に振った。

 

「早苗は想起が好きだからな〜」

 

歩がそう言葉にすると……。

 

「僕が何?歩さん」

 

そんな声が後ろから聞こえてきた。

 

直ぐに神社側の方に振り向くと、想起がいつも通りの私服で立っていた。

 

「いや、何でも……って、想起は浴衣を着ないの?」

 

実際、歩も夢幸も浴衣を着ているが、想起はいつも通りの私服を着ている。

 

周りのお祭りにやって来た人里の人達も浴衣を着ているため、この場合は浴衣を着ていない想起が逆に目立っていた。

 

「外の世界だと、男はあんまり浴衣を着ないんだ。僕も着てなかったからね」

 

想起はそう言って苦笑いを浮かべている。

 

が、歩はそんな想起を肩を強く掴んだ。

 

「え、歩さん?」

 

「想起……俺が手伝うから浴衣を着るんだ。今すぐに」

 

「え?え?」

 

想起は歩のこと行動に若干混乱していた。

 

歩がこう言うのは、早苗の為である。

 

好きな人の浴衣姿、普通は喜ぶものである。

 

実際、歩も霊夢の浴衣姿を最初に見たとき、頬を紅くして直視出来ていなかったのだ。

 

だからこそ、歩は想起に浴衣を着せ、早苗を喜ばせたいのだ。

 

そのまま強引に想起を神社内に連れて行き、少ししてから一緒に戻ってきた。

 

着替えさせられた想起の浴衣は、黒と白の格子柄のものだった。

 

「おかえり、歩」

 

「ただいま、霊夢。で、早苗。どう?」

 

歩は早苗の方に視線を向けると、想起を見ながらボーッとしている状態の早苗がいた。

 

それには流石に気付いた想起は頭を傾げ、早苗の肩を持ち、優しく揺らした。

 

「早苗?」

 

「⁉︎」

 

すぐ近くで聞こえてきた想起の声に益々顔を紅くしてしまった早苗。

 

それを見た想起は心配そうな顔をした。

 

「えっと、早苗?大丈夫?」

 

「な、何がですか?」

 

「いや、顔が赤いから熱でもあるのかな?って思って……」

 

「ねね、熱はないですよ⁉︎」

 

「そ、そう?なら良いけど……あ、そうだ。歩さんが選んでくれたこの浴衣、どう思う?」

 

想起はそう言いながら自分を指差して聞くと、早苗は素早く何度も何度も頭を縦に振った。

 

「似合います‼︎似合います‼︎」

 

その言葉を何度も言いながら。

 

これを聞いた想起は、そんな状態の早苗に苦笑を浮かばせるしかなかった。

 

「有難う。だけど、早苗は落ち着いて」

 

そう言って肩に触れると、ビクッと顔を紅くし震えた早苗。

 

「で、どうする?此処からは別行動と行くか?」

 

魔理沙は霊夢にそう提案すると、霊夢はチラッと早苗達を見てから合意した。

 

そして、其々のペアで祭りを楽しむ事にした。

 

***

 

「それにしても、本当に想起の奴は鈍感ね。何でアレだけ分かりやすく出てるのに気付かないのかしら」

 

「本当にね。早苗が可哀想に思えるよ」

 

霊夢と歩はお互い苦笑を浮かべながらそう言いながら前を向くと、見知った人達を見付けた。

 

「あれ?彼奴ら……吸血鬼達と幽霊達じゃない」

 

「そうだね」

 

霊夢達はその軍団に近付くと、光冥と永久が妖夢と咲夜の近くに居ないのが目に止まった。

 

「あんた達、何してんのよ?」

 

「あ、霊夢さんじゃないですか」

 

霊夢が声を掛けると、白に鈴蘭が描かれた浴衣を着ている妖夢がそれに対応した。

 

しかし、その表情は苦笑を浮かべていた。

 

「?何であんた苦笑いを浮かべてるのよ」

 

霊夢がそう質問すると、妖夢は「アレですよ」と言いながら指を指す。

 

その指差された先には、黒の亀甲柄の浴衣を着た光冥と、肌色に笹柄の浴衣を着た永久が的当てをしているのが見えた。

 

しかし、霊夢も歩もそれを見て悟った。

 

「楽しく的当て……してないわね」

 

「そうだな。公冥は笑みを浮かべてるけどなんか黒いし、永久に至っては無表情だ。どう考えても楽しそうに見えない」

 

二人がそう感想を言うと、白に撫子柄の浴衣を着た咲夜が近付いて言った。

 

「あの二人……犬猿の仲なのよ。春雪異変の時の事を話したらあんな風にね……」

 

「なるほどね」

 

霊夢が納得している側で、一度撃つのを止めた二人が会話をし始めた。

 

「なかなかやるじゃないですか。唯の剣術馬鹿ではないようですね」

 

「お前こそな。あまりに神経を使っているからまるで女子だ」

 

「は、は、は、今すぐ貴方の目玉を撃ち抜きますよ?」

 

「喧嘩なら買うぞ?今なら銃と剣の二重舞を見せてやる」

 

「「やめなさい‼︎」」

 

二人が本当に喧嘩を起こしそうなその雰囲気を素早く察知し、二人の間に入り止める咲夜と妖夢。

 

霊夢は的当て自体を止めさせようと動こうとしたが、近くから聞き覚えのあるクスクス笑いが聞こえてきた為、そちらを見ると、レティシアとその近くにレミリア達、そして幽々子がいた。

 

其々の柄はレティシアが黒に牡丹と鯉、アルカが同じく黒に波と龍が描かれた浴衣、レミリアが淡い水色に丸く収められた鳳凰、フランは紅色に桔梗格子柄。幽々子はいつも通りの服装である。

 

「クスクス、これを止め様だなんて言わないでね、霊夢、歩。面白い光景なんだから♪」

 

「そうね♪だから、止めたら駄目よ?」

 

そんな二人の言葉にレミリアとアルカは隠れて溜息を吐いた。

 

フランはフランで光冥を応援している。

 

「おー、まだやってるんだ」

 

と、近くから白の生地に青い雪花絞りの浴衣を着た雪華が沢山の焼きそばを持ってやって来た。

 

「ほれ、頼まれた焼きそばな」

 

「クスクス、有難う♪」

 

そう言いながら霊夢と歩を退けた人数分の焼きそばを其々に渡していく雪華。

 

光冥と永久の分はそれぞれ咲夜と妖夢に渡した。

 

「あんた、いつも着物着てるのに浴衣も着るのね」

 

霊夢がそう聞くと、嬉しそうな笑顔を浮かべる雪華。

 

「ああ、私、浴衣とか着物が好きなんだ。それに、この浴衣を作ってくれたのは元の世界の幻想郷に住んでる友達が作ってくれたもの。こういう時に着なきゃ、その友達に会わせる顔が無いよ」

 

そう言いながら「どう?いい浴衣だと思わない?」と言いながら見せびらかす雪華。

 

霊夢と歩はそう言われ改めて見ると、直ぐに分かるほどに出来が良い浴衣だった。

 

「へ〜。あんたの友達は服とか作ってる奴なの?」

 

「仕立て屋をしてるよ。何時も出来上がりを最初に見せてくれる奴なんだ」

 

雪華は其処からその友達の自慢話を始めたい様子だが、霊夢と歩は話すように言わない。

 

というより、アルカが雪華のそれを見て溜息を吐いた様子を見て、面倒臭くなるのが分かった為に話を促さないのだ。

 

「それじゃ、私達はもうそろそろ別の所に行くから」

 

霊夢がそう言うと、歩も挨拶をしてからその場を去っていった。

 

***

 

そこからまた歩き続けると、くじ引きの近くに葵と霖之助、ルカと鬼灯、そして何故かアリスとカロードがいるのが見えた。

 

「葵‼︎」

 

「‼︎霊夢、それに歩さん‼︎来てくださったんですね‼︎」

 

葵はそう言って近付いてきた。

 

その姿はいつも通り姿……ではなく、袴が水色以外は現代の巫女服そのままの姿だった。

 

「あれ?髪型変えたのね」

 

霊夢がそう聞くと、葵は苦笑した。

 

「はい。実は紫さんが『試しに外の世界と同じ感じにしてみましょうよ♪』と言いながらこんな感じに……」

 

「彼奴のせいか……」

 

霊夢はそう言いながらもチラッと霖之助を見た。

 

霖之助の姿は何時もの姿ではなく、紺色に刺子縞の浴衣を着ていた。

 

そして、その霖之助は苦笑いを浮かべている。

 

それに疑問を抱き首を傾げていると、ルカが近くにやってきて、小さな声でこう伝えられた。

 

「最初、葵のあの姿を見たときは驚いて、その後に顔を紅くしてたんだ。で、そこから時間も経ってるし……」

 

「なるほど、慣れたって訳ね」

 

そう言うと、ルカは小さく頷いた。

 

そのルカの姿もまた、いつも通りであった。

 

「で、何でアリスとカロードがいるんだ?」

 

歩は首を傾げてそう聞くと、アリスが答えた。

 

「葵に誘われたのよ。『今度夏祭りがあるから遊びに来て‼︎』って」

 

「だから、言葉に甘えて遊びに来たんだ」

 

カロードはそう言いながら、いつも通り絵を描いていた。

 

「へ〜」

 

歩が納得したその声を出したその直ぐ後、二人の後ろから大きな音が聞こえてきた。

 

それに驚き、直ぐに後ろを向くと、花火が上がっているのが見えた。

 

「綺麗な花火が上がってるね、霊夢」

 

「ええ、そうね。歩」

 

二人がそう言うと、何処かから『玉屋〜‼︎』という声が聞こえてきた。

 

それを誰が言ったのか分からないが、しかし二人は今は花火に見惚れており、聞こえていなかったのだった。

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