東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百五十八話

雨が降りしきるお昼の事、博麗神社では珍しく霊夢が一人でお茶を居間で飲んでいた。

 

「……たった一人の日って、本当に久し振りね。何時もなら葵がいたり、時々帰ってくる歩がいたり、魔理沙とかがいたり……幼い頃以来かしらね」

 

霊夢はボーッと天井を見ている。

 

昔を懐かしんでいるのだ。

 

初めて葵と会った日から始めて今までを振り返る霊夢。

 

と、そんな時にすぐ近くから水の音が聞こえ始めた。

 

霊夢は部屋の中を見渡してみると、天井から水が滴り落ちていた。

 

どうやら、雨漏りの様だ。

 

「……はぁ、仕方ない」

 

霊夢はそう呟くと、その場から立ち上がり、修理道具を取りに行った。

 

***

 

翌日、霊夢は帰って来た歩に看病されていた。

 

霊夢と歩の側には鈴仙と雷羅もいる。

 

「うぅ……頭痛い」

 

「霊夢、大丈夫か?」

 

「あ〜、これは夏風邪だな」

 

「貴女、昨日何したのよ」

 

鈴仙が薬鞄から薬を出しながら聞くと、霊夢は答えた。

 

「昨日……居間の屋根が雨漏りして……修理してた」

 

「あの雨の中、修理してたのか……それは夏風邪も引くな」

 

「俺が早めに帰って来れば良かった……」

 

雷羅はそれを聞くと溜息を吐いた。

 

「歩の所為じゃないわよ……」

 

霊夢はそう言うと、咳をした。

 

歩は額に載せてる布を濡らしなおした。

 

鈴仙は薬鞄から風邪薬を出しながら、一つの質問をした。

 

「あの〜、別に私達呼ばなくても葵さんに治して貰えば良かったんじゃ……」

 

「葵は今日、人里で慧音の手伝いをしてる」

 

歩が答えると同時に部屋の障子戸が開き、雪華が片手にお粥と林檎が乗ったお盆、もう片手に水桶を持って来た。

 

雪華は置いてあった水桶のすぐ隣に持ってきた水桶を置き、歩にはお盆を渡した。

 

「ほら、お粥を作ってきたから食べさせてあげて。あと、林檎も持って来たからコレをすり潰して食べさせてあげる事……って、言わなくても良いか」

 

雪華はそう言うと水桶を見て、その上に掌を向けた。

 

すると、水は氷となった。

 

「あ、そっか。雪華さんは雪女だったわね」

 

「『さん』付けなくて良いよ。言いにくいなら渾名で呼んで」

 

「ううん、じゃあ雪華。でも、雪華はルカさんの様には出来ないんですね」

 

「ん?別に出来るよ?けど、面倒うだから嫌だ」

 

「え……」

 

「ルカがどうかは知らないけど、私の場合、アレするならまず場所の計算をしないといけないからね。少しズレたって別段問題ないけど、その計算が面倒だからしたくない」

 

「……雪華、あんたもしかして面倒臭がり屋?」

 

「今さら?」

 

霊夢からの言葉をさらりと流し、イキナリ立ち上がった。

 

「?何処に行くんだ?雪華」

 

「人里。葵を連れてくるわけじゃないけど、食材とかは取ってこないとね……あ、そうそう」

 

雪華は何かを思い出した様にして歩に近付き、風邪薬を取った。

 

「⁉︎返せ‼︎」

 

「返せって……これはある意味必要は無いんだけど……気付いてないか」

 

雪華は最後の一言だけ本当に小さく、それこそ鈴仙達以外に聞こえないぐらいに小さくそう呟くと、風邪薬を歩に返した。

 

「‼︎」

 

「んじゃ、私は食材買ってくるよ。あ、鈴仙達はもう帰る?それなら途中まで送るけど?」

 

「そうだな。鈴仙、そうするか」

 

「そうね……それじゃあ、お大事に」

 

鈴仙達はそう言うと、雪華の後に続いて出て行った。

 

「……雪華は一体、何がしたかったんだ?」

 

「さあ?……ケホッ」

 

「霊夢、大丈夫か?」

 

歩は一度布を濡らし、氷を砕くと袋に詰め、霊夢の頭の下に置いた。

 

「うん……ありがとう」

 

「御礼は治ってから貰うよ。さて……じゃあ、雪華が作ってくれたお粥を食べさせるぞ?」

 

「ええ……ん?『食べさせる』?」

 

霊夢は歩の言葉に一瞬首を傾げるが、しかし歩が持っているレンゲを見て何をしようとしているのかを知った霊夢は朴を紅く染めた。

 

(おおおお落ち着きなさい霊夢‼︎そう、これはたたただの看病なのよ‼︎看病‼︎あっちもそんな心は……あれ、そう思ったら何だか悲しく……)

 

頭の中でそう考え、そして自分にダメージを与える霊夢である。

 

歩は歩で、何故か落ち込んでいる霊夢に首を傾げるばかりである。

 

「霊夢?」

 

「……」

 

「おーい?霊夢ー?」

 

「……え、何?歩」

 

「いや、お粥を食べさせようと……」

 

「あ、うん……ありがとう」

 

霊夢は歩からレンゲを受け取ろうとしたが……しかし、歩は渡さなかった。

 

「?歩?」

 

「あ、いや……お、俺が食べさせてあげるよ」

 

「……」

 

それを聞いた霊夢はまたまた頬を紅く染めた。

 

(やっぱりーーー‼︎)

 

霊夢の予想は的中し、歩は霊夢の口の近くまでレンゲを寄せた。

 

「ほ、ほら……あ、あ〜ん……」

 

歩は顔を紅くしながらそう言った。

 

対して霊夢ももう何も考えられず、言う事を従い、口を開けた。

 

「あ、あ〜ん……」

 

歩は霊夢にお粥を食べさせると、また食べさせる為にお粥を掬った。

 

その作業の間、終始二人は顔を紅く染めていた。

 

***

 

お粥を食べ、林檎も食べ、薬も飲んだ霊夢は横になっていた。

 

「霊夢、体調はどうだ?」

 

「全く良くなった感じがしない……」

 

「まあ、そう簡単には治らないか……」

 

歩はそう言いながらまた布を濡らし直し、額に載せた。

 

「今日は絶対安静だからな?」

 

「分かって……」

 

霊夢は歩の言葉に同意しようとしたが、しかし、何者かの気配を感じ、口を閉ざした。

 

歩もどうやら感じたようで、障子戸の方を険しい顔で見ていた。

 

霊夢はそれを見ると、静かに立ち上がろうとしたが、しかし、歩がそれを止めた。

 

「⁉︎」

 

「……今安静にしとく様に言ったばかりだろ」

 

歩は溜息を吐きながらそう言うと、無理矢理寝かせ、静かに障子戸に近付いた。

 

そして、取っ手を掴むと、勢い良く扉を開けた。

 

「誰だ‼︎……って、魔理沙?」

 

開けて直ぐに見えたのは、魔理沙だった。

 

しかし、少し姿は違った。

 

服装は何時もの容姿だが、しかし何処かの鼠小僧のようにも見えた。

 

「……魔理沙、お前、変な宗教にでも入ったのか?」

 

「違う‼︎」

 

「もしかしてそのほっかむりも……」

 

「だから違うって言ってるだろ‼︎」

 

と、其処にフラフラとやって来た霊夢は魔理沙のその姿を見て……引いた。

 

「ちょっと、魔理沙……変な宗教に入ったの?」

 

「何でお前も同じこと言うんだよ‼︎って、違う‼︎」

 

魔理沙は霊夢に対して指を指した。

 

「私はな‼︎お前のその風邪を治しに来たんだ‼︎」

 

「「え、治しに?」」

 

魔理沙のその言葉に二人して訝しむ。

 

何故なら、治すための道具もない。かと言って、病気そのもの(重病は一時的に)治せる葵もいない。

 

これで訝しまない者はいないだろう。

 

「なあ?魔理沙。一応聞くけど、どうやって治すんだ?」

 

「霊夢……お前のそれは治らない」

 

「今治すって言った奴からまさかの『治らない』発言されたわ」

 

霊夢のその言葉に対して、しかし魔理沙はチッチッと指を振った。

 

「そういう意味じゃなくてな。放っておいたら治らない。寧ろ悪化する一方だって意味だ」

 

「「はあ?」」

 

霊夢と歩は魔理沙の言っている意味が分からなかった。

 

普通、風邪というのは安静にしていれば治るものである。

 

それを魔理沙は治らないと言ったのだから仕方がないだろう。

 

しかも、姿が泥棒の様だ。益々信じ難くもなるだろう。

 

と、此処で歩が一つ質問をした。

 

「なあ?魔理沙はどうやって霊夢が風邪を引いてる事を知ったんだ?鈴仙と雷羅から聞いたのか?」

 

その言葉に首を横に振って否定する魔理沙。

 

「いや、私が霊夢の病気を知ったのは、そして言い当てたのは……」

 

そう言いながら持っていた帽子の中を探り、一匹の白蛇を手掴みで出した。

 

「この白蛇のお陰なんだ」

 

霊夢はその白蛇を受け取り、見てから、やはり引いた。

 

「……やっぱり変な宗教……」

 

魔理沙はその言葉を聞くと、額に怒りマークを浮かばせるが、しかし耐えて言い始めた。

 

「……昨日、お前、雨漏りで屋根の修理してただろ?」

 

「!なんでその事を?」

 

霊夢は驚き、魔理沙に対してそう聞くと、魔理沙は少し嬉しそうに言った。

 

「『その時に屋根裏に棲んでいた蛇を閉じ込めてしまったんだ。その蛇の無念が溢れ出て、霊夢が病になった』……そう、白蛇が言ってる。信じれないなら、ちょっくら紅魔館に言ってマリア連れてくるぜ?」

 

「すごい自信だな……」

 

歩は驚いた顔でそう言うと、ますます嬉しそうな顔をする魔理沙。

 

「まあ、信じるも信じないも、本当は私は構わないが……なあ?梯子は何処だ?」

 

「霊夢、梯子は?」

 

「納屋に……」

 

すると、魔理沙は霊夢に指を指し、片目を瞑って言った。

 

「待ってろよ‼︎すぐ治してやるからな‼︎」

 

そう言うと、魔理沙は納屋の方へと走って行った。

 

「あ、魔理沙‼︎俺がやるから‼︎ごめん、霊夢。ちょっと行ってくる‼︎」

 

「ええ、分かってるわ。いってらっしゃい」

 

歩は霊夢のその言葉に後押しされ、魔理沙の後を追って行った。

 

それを見届けた霊夢は、部屋の中で待機するのだった。

 

***

 

魔理沙と歩が戻って来た頃には、霊夢は何時もの服に着替えており、今は居間で魔理沙の話を聞いていた。

 

魔理沙の話では、昨日、里をフラフラ一人で歩いていた時、小さな祠の前で白蛇を見かけ、縁起が良いからとお稲荷さんの近くに落ちていた布で白蛇を包み、持ち帰った。

 

しかし、家に着いたら蛇の様子がおかしくて、蛇の言う通りに布を耳に当ててみると蛇の話が聞けた、という訳らしい。

 

因みに、魔理沙曰く、屋根に閉じ込められていたのはその蛇の仲間らしい。

 

「へ〜。っていうか魔理沙、普通に罰当たりよ、それ」

 

「ん?何でだ?」

 

「だって、神の使いかもしれないじゃないの」

 

「あのな〜。チャンスを確実にするのが私のモットーだ」

 

「だからってそんな事したら、それこそマリアが起こるんじゃ……」

 

「間違ったらまた石像ね。その後はマリアが夢幸にボコられるんだろうけど」

 

そんな想像をする霊夢。しかし、その後はレティシアが出てくることも予想が出来る三人であった。

 

「……まっ、兎に角、このマジックアイテムはあげないが、代わりに私がお金を稼ぐ役をやってやる」

 

「え?」

 

「どういうことだ?魔理沙」

 

二人が首を傾げてそう聞くと、魔理沙はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「此奴が『良い金になる話がある』って言ってるんだぜ」

 

魔理沙はその言葉を言うと、「鈴奈庵に行ってくるぜ」と行って、神社ないから出て行き、しかしその夜にはまたやって来て成果を話した。

 

その蛇は鈴奈庵の中にある『百鬼夜行絵巻』の中に封じられている自分の魔力を取り戻すために、魔理沙を利用していただけだったのだ。

 

しかし、自分を信用してくれたからと言う事で後で褒美を送ると言ったらしい。

 

その時、百鬼夜行絵巻を使用したからその使用代として何かくれと、その場に立ち会った『本居 小鈴』が言ったことにより、小鈴にもまた褒美が送られるらしい。

 

「結局、あんたの言った通り、風邪じゃ無かったわけね?雪華」

 

「だから言ったじゃん。でも、良い思いは出来たし、霊夢にとっては良かったでしょ?」

 

霊夢は雪華が買って来てた具材からすき焼きにする事に決め、今現在、お肉を食べながらそんな会話を二人はしていた。

 

葵はそれを聞いて、苦笑しながら野菜を取っていた。

 

「まあ、でも、本当の風邪になったらまた俺が看病するよ、霊夢」

 

「‼︎その時はお願いね?歩」

 

歩と霊夢はそう言うと、互いに笑顔を交わしたのだった。

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