東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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儚月抄
第百六十話


博麗神社の境内には、霊夢と葵が紫の前に立っている光景があった。

 

葵はとても真剣な顔で、霊夢はとても面倒臭そうな顔で立っていた。

 

その境内が見える縁側では、ルカ、鬼灯、想起、雪華が座っていた。

 

ルカと想起の膝の上にはそれぞれ、ノアとソロモンが気持ち良さそうに寝ている。

 

「さて、貴女達があの時からちゃんと怠けず、怠らず、ちゃんと『神降ろし』の練習をしていたか見るわよ。二人とも、大丈夫?緊張してないかしら?」

 

「はい、大丈夫です‼︎」

 

「緊張なんてしてないから大丈夫よ」

 

二人とも自然体で立っている事を目で見て確信すると、紫は葵達から少し離れ、殺気をぶつけた。

 

「「⁉︎」」

 

「二人とも……私を殺す覚悟でやりなさい。今の貴女達は其れぐらいじゃないと私には勝てないわよ?」

 

「で、ですが……」

 

葵がそれは無理だと一言断りを入れようとすると、葵の左頬スレスレに弾幕が通った。

 

それはとても素早く、葵の左頬が少し焦げた。

 

「無理という言葉は受け付けない。もしまた言えば、今度は分かるわね?」

 

紫は怒った顔でそう言うと、葵はへたり込んでしまった。

 

と、それと同時に葵達の後ろから爆発音と誰かの悲鳴が上がった。

 

「「「⁇」」」

 

その近くにいた三人が石段の方を見ると……其処には歩が倒れていた。

 

「あ……」

 

「歩ーーーーー‼︎」

 

「や、やっちゃった……」

 

霊夢と葵は直様、歩に近付き、容態の確認をした。

 

一応は怪我は無いようだった。

 

対して、紫は冷や汗を流して硬直している。

 

ただ葵を脅かす為の弾幕。それももう誰も来ないと思った時にこれなのだ。

 

紫の心中は罪悪感で一杯である。

 

と、其処にもう一人のお客さんが見えた。

 

「こんにちは〜‼︎霊夢はいる……え、何で歩が倒れてるの⁉︎」

 

ユニは石段上がってすぐに倒れてる歩を発見し、驚いた。

 

「ん?珍しいな。咲夜が来るなら兎も角、ユニが来るなんて……」

 

ルカがそう聞くが、ユニは驚きのあまりに硬直している。

 

「あ〜あ、硬直してるよ、これ」

 

雪華がそう言いながらユニの目の前で手を振る。

 

しかし、やはり反応は無い。

 

「……歩を運ぶついでに其奴も連れてくわよ」

 

霊夢のその言葉にその場の全員が賛同した。

 

***

 

その頃の紅魔館では、ユニ以外の全員が図書館の中にある本を移動させていた。

 

「あ〜、その本はもっとそっちに寄せて頂戴」

 

「コレぐらいでしょうか?」

 

「そうそう」

 

レミリアがペスにそう指示し、ペスはそれに従う。

 

「うんしょ、うんしょ……わ、わわ⁉︎わわわ⁉︎」

 

「っと、危ない危ない。大丈夫か?マリア」

 

「う、うん。大丈夫だよ、狼」

 

別の所ではマリアが沢山の本を運んで、転けそうになった所を狼が素早く助ける光景が見れた。

 

今は全員でロケットを置く場所の確保を行っている。

 

この紅魔館で一番広いのは実の所、図書館であり、だからこそ、ロケットを置く所も此処に決定したのだ。

 

「ふぅ……それにしても、お姉様は本当に行かないのですか?」

 

レミリアは自分が運んだ本をその場に置くと、同じく本を運んでいるレティシアにそう聞いた。

 

すると、レティシアは何時もの通りに笑いながら答えた。

 

「クスクス、ええ。行きたいけれど、今回はパスしておくわ。貴女の考え通りなら、鬼灯達も付いて行くでしょうしね。でも、私が行けない分、レミィ達が楽しんできて頂戴♪私はフラン達と此処に残って貴女達の帰りを待って置くわ」

 

レティシアはレミリアと少し離れた場所にいるアルカを見てそう言うと、また本を運ぶ為に、本の山の方へと向かっていった。

 

「……」

 

レミリアが残念そうな顔をしていると、アルカがポンッと頭に手を乗せてきた。

 

そして、そのままレミリアの頭を撫で始める。

 

「……お兄様」

 

「レミィ、姉上達が楽しめない分、俺達が楽しんでこよう。そして、帰ってきたら思い出を話そう。姉上達もそれを楽しみにしてくれる筈だ。な?」

 

アルカがレミリアを安心させるために笑顔を向けると、レミリアもそれに安心した様で、アルカに抱き着いた。

 

「……そうですね、お兄様」

 

それを遠目で見ていたレティシアは、とても嬉しそうな目でレミリア達を見ていたのだった。

 

***

 

歩が倒れてから数分後、歩は目を覚ました。

 

「歩、起きた?大丈夫?何所か怪我とかしてない?」

 

その歩の隣には霊夢がとても心配そうな顔で歩の顔を覗き込んでいる。

 

「あ、うん。大丈夫だ。……それよりも、何で俺、倒れたんだっけ?」

 

「紫の弾幕に当たって気絶したのよ」

 

霊夢はそう言いうと、「水飲む?」と聞いた。

 

それに対して頷いて返すと、霊夢は歩に水を渡した。

 

「……そっか、紫が」

 

歩は一口飲むと、そう呟いた。

 

「そう、紫がね。あ、安心して頂戴。紫にはちゃんと制裁を加えておいたから」

 

霊夢は笑顔でそう言った。

 

しかし、その笑顔は黒かった。

 

「あ、そうなのか。俺も制裁を入れたかったのにな」

 

対して、歩はそれを気にせず、むしろ仕返しする気満々でそう言葉にした。

 

と、其処で障子戸が開き、葵とユニが入ってきた。

 

「あ、歩さん、起きたのですか?もう大丈夫ですか?」

 

葵がそう心配すると、歩は大丈夫だと笑顔で答えた。

 

そして、そのまま歩と霊夢は視線を葵からユニに移した。

 

「で、紅魔館でメイドをしてる筈のあんたが何をしに来たわけ?」

 

「いや、実は……」

 

と、其処で本題に入ろうとすると、今度は雪華が入ってきた。

 

「あ、起きたのか。無事そうで何より。で、霊夢」

 

「何よ、雪華」

 

霊夢が少し不満気な顔をするが、雪華はそれを気にせずに言った。

 

「境内にお客さんが来てた。参拝客ではないけど、倒れてたから他の客間に寝かせてる。別に良いよな?」

 

「そう、分かったわ。……歩、悪いけど」

 

霊夢は申し訳なさそうな顔をすると、歩はそれ頷いて返した。

 

「ありがとう」

 

霊夢はそう言うと、その場を立ち上がり、雪華に付いて部屋から出た。

 

そして、雪華が別の客間の部屋を開けると、そこには兎耳が付いた女性が布団で寝かされていた。

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