東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百六十二話

「え?兎さんが居なくなった?」

 

お昼頃、葵がいつも通りにやって来て、境内を履いていると、霊夢からそう聞かされた。

 

「そうなのよ。今朝は起き上がって私と雪華の前に姿を現したんだけど、私がちょっと寝た間にね」

 

霊夢はそう言いながら縁側に座り、煎餅を齧った。

 

「何処に行ったのでしょうね?心配です……」

 

「妖怪を心配したって意味ないでしょうに。彼奴ら治癒能力高いんだから」

 

葵の言葉に霊夢はそう言うと、煎餅の近くに置いていたお茶を一口飲んだ。

 

「怪我してたのだから、心配するのは当たり前だよ、霊夢」

 

葵はそう言うも、霊夢は「葵はね」と言うだけだった。

 

「……さて、それじゃあ」

 

「『神降ろし』の練習、ですね」

 

「ええ、するわよ、葵」

 

「はい‼︎」

 

そして、二人は少し距離を離すと、神を降ろす練習に入った。

 

***

 

二人が練習をしている途中、ルカ達がやって来た。

 

そして、二人の練習風景を見ていると、次に魔理沙と夢幸がやって来た。

 

「お〜、今日もやってるのか」

 

「……ほう?俺のような『天才』とは無縁の努力をしているな」

 

二人は葵と霊夢の練習を見ると、そんな事を言った。

 

「……?お前は誰だ?」

 

「?」

 

と、此処で夢幸は縁側に居た見慣れぬ女(雪華)を見て、そう聞いた。

 

対して雪華もまた、誰か分かっていないような顔をしていた。

 

「あ〜、そっか。夢幸と雪華は初対面だったな」

 

「あれ?そうだったっけ?」

 

魔理沙のその言葉に歩はそう聞き返した。

 

それを聞いた夢幸は、

 

「別にどうでもいいがな」

 

そう言った。

 

対して雪華は面倒そうな顔をして頭を掻いた。

 

「あ〜、自己紹介とか面倒いな……まあ、いいや。アルカに『自己紹介ぐらい面倒臭がるな』って前に言われたしな。私は雪華。此処の居候。以上」

 

「……短いよ⁉︎」

 

雪華の自己紹介に対してツッコむ想起。

 

「そうか。俺は夢幸だ」

 

「ああ、よろしく」

 

二人はそう言うと、顔を『神降ろし』練習中の葵達に向けた。

 

それ以上、話すことが無いからだろう。

 

そして少しすると、雪華が立ち上がり、外に出た。

 

「ん?どうしたんだ?雪華」

 

魔理沙がそう聞くと、雪華は振り向き、答えた。

 

「前に住んでた幻想郷でも同じ光景を見たから飽きた。アルカからかってくる」

 

「お、おう」

 

魔理沙の反応を見ると、そのまま紅魔館の方へと移動して行った。

 

「……ここ最近、彼奴と接して分かったけど、あのレミリア達の兄をからかう時だけはやる気出すよな〜」

 

「いや、アルカだけじゃなく、誰かをからかう時には彼奴、やる気を出すぞ」

 

魔理沙の言葉に、鬼灯はそう付け加えると、溜息を吐いた。

 

***

 

紅魔館では、ペスが玄関ホールを掃除していた。

 

すると、玄関扉が急に開いた。

 

「……あら?貴女」

 

「ねえ?アルカ何処にいるか知らない?」

 

雪華の要件を聞いたペスは教えるかどうか悩んだ。

 

理由は一つ。全く見たことが無い怪しい人物だからだ。

 

初対面なのだから怪しむのは当然である。

 

と、そこに左から誰かの気配を感じたペスと雪華。

 

その気配の方向を見ると、丁度良くアルカがやって来た。

 

「ペス、掃除は順調か?」

 

「アルカ様?どうして此処に……」

 

「いや、手伝いに……ん?」

 

と、此処でアルカは雪華の存在に気付くと、苦笑いを浮かべた。

 

「せ、雪華。どうして此処にいるんだ?」

 

その質問に、雪華はニコニコ笑顔で答えた。

 

「どうしてって、決まってるでしょ?私がここにいる理由なんて」

 

「いや、分かりたくないんだが……」

 

「じゃあ、強制的に分からせてあげよう‼︎アルカで遊びに来た‼︎」

 

その言葉を聞いたアルカは、来た廊下を全速力で駆け抜けた。

 

「あ!こら‼︎私の遊び相手になってよ‼︎暇だから‼︎」

 

雪華はそう言うと、アルカの後を追って行った。

 

「……何だったのかしら?」

 

残されたペスはというと、そう言葉にして、ボー然としていた。

 

***

 

其処から少し時間が経った頃には、紅魔館のテラステーブルに、グッタリした様子のアルカと、満面の笑顔の雪華。そして、レミリアが居た。

 

「いや〜、やっぱりアルカ弄りは面白いね♪」

 

「止めてくれ。俺が疲れる。主に精神の方で」

 

「妖怪の弱点である精神を攻撃されたの⁉︎アルカ⁉︎そんな事した奴は絶対に許さない‼︎私が仇を討ってくるから特徴を教えて‼︎」

 

「青毛だが毛先に連れて黒になってる髪、それをポニテにした着物の雪女だ」

 

「分かった‼︎そいつ見つけて懲らしめてくる‼︎」

 

「どう考えてもお前なのにどうして自分の所為じゃない様な反応をするんだ‼︎」

 

「え?私?そんな事した覚えがありませ〜ん」

 

「雪華ーーー‼︎」

 

そう叫ぶと再びグッタリとなるアルカ。

 

対して、またニコニコ笑顔になる雪華。

 

「……アルカお兄様、大変な友達をお持ちで」

 

「……はぁ」

 

遂にはレミリアから慰められてしまったアルカであった。

 

「……で?アルカはさ、また月に行くつもりなわけ?」

 

雪華が紅茶を飲みながらそう質問すると、アルカは姿勢を正して真面目な顔をして、答えた。

 

「ああ。レミリア達が心配だからな」

 

「アルカお兄様……」

 

「ふ〜ん……」

 

アルカの答えに、雪華はそんな反応を返した。

 

「二度も行って何が楽しいのかね〜」

 

「楽しい楽しくないはこの件に関係してない」

 

「分かってる分かってる。アルカ君はシスコンでおチビなヴァンパイアだからね〜」

 

「チビは余計だ‼︎」

 

「私に身長で負けてるのに〜?」

 

「身長の事をそれ以上言うな‼︎」

 

ニヤリとした顔でそう言う雪華に対して、アルカは顔を真っ赤にして怒った。

 

「……あ、そうだ。アルカ、私今度、一度も戻ろうと思ってるんだけど」

 

「ん?そうなのか?」

 

「?何処にかしら?」

 

アルカは雪華の言葉が何を意味してるのか分かったが、レミリアは何の事な分かっていない。

 

「レミィ、俺が此処に再び戻ってくる前は雪華と同じ幻想郷に居ただろ?雪華はその幻想郷の事を指してるんだ」

 

「成る程、そうですか……ん?なら、もしかして」

 

「そうだ。雪華は久し振りに会いに行かないか?と言いたいんだろう。そうだろう?雪華」

 

「殆ど正解」

 

雪華はそう言うと、紅茶を一口飲んだ。

 

「まあ、其れもあるけど、彼方にいるあんたの従者、こっちに連れて来なくていいの?」

 

「アルカお兄様の……」

 

「……そうだな。あの二人も連れて来るか。それで?雪華。それはいつ行くんだ?」

 

「一週間後ぐらいだよ」

 

「早いな」

 

「急に決めたからね〜、当然だよ」

 

雪華はそう言いうと、空を見上げた。

 

「……お、逆流星」

 

「あら?本当ね」

 

雪華のその言葉に吊られるようにして空を見上げたレミリアとアルカ。

 

その目には、確かに宙へと登っていく光が写っていた。

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