時間は進み、今の月は長月のお月見の日である。
そんな日の夜。神無月神社では、葵手作りの団子を月が見える縁側で鬼灯以外の全員が食べていた。
……しかし、月が見えるといっても、生憎と雨が降っているが。
「……それにしても、雨だね。去年も雨が降ってなかったっけ?それとも僕の記憶違い?」
想起が団子を食べながらそう言った。
対してルカはトマトジュースを飲みながら答えた。
「いや、去年も雨が降ってたから記憶違いじゃない。というか、この時期は殆ど、雨が降ってる気がするな」
「……そっか」
想起はその答えを聞いてそう返すと、微妙な顔をしてルカを見た。
「……僕も此処に来て、住むようになってそれなりに経つけど、こういう日にも飲んでると違和感が……」
「仕方ないだろ?満月の日は妖怪の力が一番強くなる。私も半分妖怪。今の私は吸血鬼の方に近いんだ。違和感があるのは私自身もそうなんだ。仕方ないと思ってそっとしとけ」
「それなら、霖之助さんもそうなの?葵」
想起がそう聞くと、葵は頷いた。
「はい、そうですね。霖之助さんもですよ」
それを聞くと、想起はなら仕方がないと思い、未だ雨が降っている空を見上げた。
***
一方の白玉楼では、やはり雨が降っている中での月見を縁側で行っていた。
その縁側には、妖夢、幽々子、永久、鬼灯の他に、新たに雇われた二人の半人半霊『天津 桔梗』と『輪廻 必』がいた。
そして、全員がお月見をしている途中で、鬼灯がある事を聞いてきた。
「……なあ?さっき台所での話が聞こえてきたが、『どうしてこの時期に月見をするのか?』という質問。なら、妖夢達はどう考える?」
それに対して妖夢達四人は一度考えると、桔梗が答えた。
「それはやっぱり、お団子を食べるためじゃないのですか?豊穣神様」
「……それは幽々子みたいに食い意地が張った奴だけだろうな」
「ふふっ♪」
鬼灯の言葉を、幽々子は笑って受け流した。
「まあ、そうだよな〜。他に理由なんてあるのかよ?孤天殿?」
「……やはりその呼び方にはなれないな」
鬼灯は必からの呼び名に溜息を一つ吐くと、答えを教えた。
「……『雨月』と言ってな、特に雨が長引きやすい中秋の名月の名月は、雨が降って隠れても、あの雨雲の上にある名月を想像して月見を楽しんでたんだ」
「苦し紛れの楽しみ方ですね」
妖夢のその一言に、幽々子と鬼灯が同時に否定した。
「あのね?妖夢。その方が風流なのよ」
「風流なのか?」
幽々子のその言葉に、永久は首を傾げた。
「ええ。昔からね、名月そのものを見るより、この団子のように丸い物を見て名月を想像する事が風流とされたの」
そう言いながら、幽々子は団子を一つ、摘んだ。
「昔の人は実物より想像の方が何倍も大きく何倍も美しい事を経験から知ってたいたのね。料理にお団子一つついてるだけで名月を想像できたんだから、簡単で良いでしょう?」
そう言うと、今度は団子を天に掲げた。
「そして、その究極の形が、そこにある筈の名月を想像する『雨月』というわけ」
幽々子はその説明をした後、その摘んでいた団子を食べた。
妖夢達はその説明を聞き、そして理解すると、『なるほど』と言い、首を縦に振っていた。
そして、一度中に入ると、桔梗が何かを思い出し、幽々子の方に顔を向けた。
「満月と言えば、二月前のスキマ妖怪様の話は何だったのでしょうね〜?」
「ん?話?」
「ああ、忘れていたわ。何やら良からぬ話を持ちかけてきていたわね」
幽々子のその言葉に、妖夢は首を傾げた。
「?何を話されたんだ?」
鬼灯は近くにいた永久にそう聞くと、永久は説明を始めた。
その話を簡単に言えば、『吸血鬼の監視』。それを伝えに来た藍と茜が言っていたらしい。
しかし、幽々子はその内容を聞くと何かを理解し、請け負わないと言ったらしい。
「……成る程な」
そして、永久からのその説明に、鬼灯もまた何かを理解した。
「……まあ、それは私には関係ないみたいだな。というか、私はどうやら自由に行動していいようだしな」
鬼灯はそう言うと、机の上に置かれていたお茶を一口飲み、そして立ち上がると、障子戸を開けた。
外は既に雨が降っておらず、綺麗な『名月』が雲から現れていた。
「……幽々子、折角の『雨月』が『名月』になってしまったようだぞ」
「あら、そう。……そろそろ、私達も動いたほうがいいのかもしれないわね」
「私は自由行動だけどな」
「ふふっ、私も自由に行動したいわね〜」
鬼灯と幽々子は互いに笑いあうと、また空を見上げた。
……その後、妖夢と永久からの報告を受けると、妖夢と永久に何かを耳打ちしていた幽々子。それを見て、鬼灯は密かに溜息を吐いたのだった。