東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百六十四話

お月見の時から時間は進み、寒さが目立ち始めた幻想郷。

 

そんな幻想郷でも目立つ館、『紅魔館』に、悪魔とその従者達以外の余所者が浸入していた。

 

永遠亭の医者である永琳、そしてその永遠亭に住む月の玉兎である鈴仙、その彼氏の地球の玉兎である雷羅だ。

 

三人は図書館に浸入し、そこにある窓が何故か付いている三段ロケットを観察していた。

 

永琳はジッと観察し、鈴仙はピョンビョン跳ねながらの観察、雷羅はロケットの外周を一周しながらの観察と、三者三様である。

 

そして、観察を終えた全員が集まると、鈴仙は堪えていたのか爆笑し始めた。

 

「あはは‼︎こんなロケットで月に辿り着く筈がないわ‼︎ねえ?雷羅」

 

「まあ、コレで辿り着けるとは思えねぇが……」

 

そう言いながら永琳の顔を見ると、永琳は、

 

「……ほぼ完璧ね」

 

と、感心したように呟いた。

 

「え⁉︎こ、コレでほとんど完璧なんですか?」

 

「ええ。一体、誰の入れ知恵かしら?あの吸血鬼賢者かしら?」

 

「クスクス、私はなんの入れ知恵もしてないわよ♪」

 

と、永琳達の後ろから声が急に聞こえ、鈴仙と雷羅は驚いた。

 

それもそうだろう。何故なら、気配がなかったのだから。

 

対して、永琳は驚いた様子を見せず、クルリと振り向き、その声の主ーーーレティシアを見た。

 

「クスクス、あら、貴女は驚いてくれないのね。其処の月兎さんと玉兎さんは欲しい反応をしてくれたのに♪」

 

「いつも貴女の思い通りになるわけではありません」

 

「クスクス、知ってるわ♪」

 

レティシアはそう言うと、永琳の横に歩いて移動した。

 

「クスクス、それで何か聞きたそうだけど、何かしら?」

 

「……『住吉三神』のご加護があるなら余程のことがない限り月に辿り着けるでしょう……だからこそ、貴女に問います。本当に貴女の入れ知恵ではないのですか?」

 

永琳が目を細め、レティシアを少し睨みながら聞くと、レティシアはいつも通りのニコニコ笑顔で答えた。

 

「クスクス、ええ。『私』は入れ知恵してないわ♪」

 

「……そうですか」

 

その言葉を聞いた永琳は、不信感を捨てた。

 

直感的に嘘は言っていないと思ったのだ。

 

(……まさか、直感なんて物に頼る時が来るなんてね)

 

永琳はそう頭の中で思うとクスリと笑う。

 

そして、ロケットに体を向け直した。

 

「……なら、誰の入れ知恵なのかしら?」

 

「……今の内に壊しておきます?」

 

鈴仙の問い掛けに、永琳は首を横に振った。

 

「いえ、直しておきましょう」

 

そう言うと、掌に布を乗せ、それを操り、ロケットの天辺に貼り付けた。

 

「……『月の羽衣』、ですか」

 

「ええ。これで、このロケットは余程のことがあっても月に辿り着けます。あの布が月まで導いてくれるでしょう」

 

その言葉を聞いた鈴仙と雷羅は、永琳の考えてる事が分からず、頭にハテナを浮かばせた。

 

「クスクス、用事は終わったのかしら?なら、パチェとシュロムが此処に帰ってくる前に退散するのをお勧めするわ。今回の事は誰にも言うつもりもないからね」

 

「ええ、そうさせてもらいます」

 

レティシアとそんな会話をした永琳は、鈴仙達を連れて紅魔館を後にした。

 

「……クスクス、さてさて、『第二次月面戦争』。中々に面白い事になりそうね♪」

 

残ったレティシアはそう口にすると、闇に掻き消えたのだった。

 

***

 

其処からまた数日経つと、遂には雪が降り始めた。

 

「雪も降ってきて……寒くなってきたな」

 

博麗神社では、魔理沙が暖かそうな服を着て空を見上げていた。

 

その隣には同じく暖かそうな服装の夢幸がいる。

 

「もう秋も終わりね。落ち葉を掃除しなくてすむわ。葵が」

 

「そうだな。しなくてすむな、葵が」

 

「あ、あはは……」

 

霊夢の言葉に嫌味を混ぜて言うルカに葵は苦笑いである。

 

この三人もまた、魔理沙と夢幸程ではないが防寒の服装をしていた。

 

葵と霊夢は脇出しの巫女服のままだが、葵は黄色いちゃんちゃんことマフラーを、霊夢は緑のマフラーを巻いて、帽子もかぶった状態でいた。

 

ルカは黒のコートを羽織り、黒の中折れ帽子を被っている。

 

「まあ、兎も角……もうそろそろ時間だし、行こうか?」

 

霊夢の近くにいた防寒バッチリの姿である歩が言うが、しかし霊夢が周りを見て、待ったをかけた。

 

「ちょっと待って。雪華がまだ……」

 

「お待たせ〜」

 

と、其処に丁度良くやってきた雪華。

 

その姿は何時もの雪の結晶の着物の上に、魔理沙と同じようなモフモフカーディガンを着ていた。

 

「……あんまり変わってないわね。上着着ただけじゃない」

 

「まあね。それでも悩んだけどね〜。冬だからやっぱり雪の結晶だけどね」

 

と、その近くに二匹の動物がやって来た。

 

一匹は真っ白の狼。もう一匹は真っ白の狐である。

 

「……あら、雪華のペット。連れてくの?」

 

「ええ、勿論。冬はこの子達の季節でもあるからね〜」

 

「?えっと、妖怪ですか?」

 

葵が首を傾げて聞くと、雪華は微妙な顔をした。

 

「まあ、冬の間は殆どずっと一緒にいるから否定しずらいけど、この子達はまだ妖怪じゃないよ。コッチの狼はホッキョクオオカミの『トウヤ』。で、こっちがホッキョクギツネの『コガネ』。はい、二匹とも挨拶」

 

雪華の言葉を理解したようで、二匹は吠えて挨拶をした。

 

「この子達も許されたならパーティ会場に入れるつもりだよ」

 

「ふ〜ん。それじゃあ行きましょうか」

 

そうして、一同は歩みを始めた。

 

「それにしても、普通に紅魔館にお呼ばれされるのは珍しいわね」

 

「よっぽど嬉しかったんだと思うよ?ロケットの完成が」

 

霊夢のその言葉に歩はそう言った。

 

「……彼処は普段から何かと騒がしい気がするのは私の気のせいか?」

 

「まあ、無駄に長く生きてるもんだから、新しい楽しみがなくなってるんじゃない?」

 

「え?う〜ん、そうかな?」

 

葵が霊夢のその言葉にレミリア達は本当に退屈してるのかと考えた。

 

「走尸行肉」

 

と、そんな事を考えていると、そんな言葉が聞こえてきた。

 

直ぐに右側を見ると、其処には幽々子と妖夢、永久、桔梗、必がいた。

 

「……えっと、どういう意味でしょうか?」

 

葵がそう聞くと、幽々子は柔か笑顔でその意味を教えた。

 

「毎日はしゃいでいるのも結構だけど……どうでもいいことばっかりしてるのなら、走る屍、動く肉と何の違いもないの」

 

「動く屍のお前がいうな」

 

魔理沙はもっもとなツッコミを入れると、霊夢は少し珍しそうな顔で幽々子達に言った。

 

「珍しいじゃないの。五人お揃いで」

 

「そろそろロケット完成パーティの時間なので……」

 

「迎えに来たっていうの?珍しいじゃない」

 

その言葉に首を振ると、幽々子は言う。

 

「今から神社で宴会をしようかなぁと」

 

『……』

 

その言葉にその場が一度シーンっと静まり返る。

 

「……そんな時間はない」

 

と、夢幸の言葉でその場は元の雰囲気に戻ると、幽々子達と共に紅魔館へと向かうのだった。

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