霊夢が破れたのち、レミリア達は地球へと帰っていった。
そして、月から帰ってきてから早数日、未だに博麗神社には雪華しか住んでいない。
「こんにちは〜!雪華さん‼︎清く正しい射命丸です‼︎」
「ん?あ、文か‼︎いつも通りのゴシップ記事探しか?此処にはゴシップ記事になる様なネタは転がってないぞ?」
「何でゴシップネタって決め付けるんですか‼︎私は事実しか書いてません‼︎」
雪華はそれを聞くと肩を竦め、トウヤとコガネを奥から呼ぶと、餌をやり始めた。
「巫女二人と歩さんが消えてから早二十五日。雪華さん、あの吸血鬼達から何か聞いてません?」
「あ〜、聞いたけど面白みなかったから途中から聞き流してた。その所為で内容忘れた」
雪華は耳に髪を掛けながらそう答えた。
「覚えてて下さいよ〜!」
「メンゴメンゴ」
「心から謝る気0ですよね⁉︎」
「何で分かった⁉︎」
「誰でも分かりますよ……」
雪華の反応に疲れたのか、文は肩を落とした。
「……でも、此処まで留守にするとなると、もうそろそろ新しい巫女を探さないといけませんかね?でも、神無月の巫女の代わりは……」
「いや、あの二人は歩と一緒に帰ってくるよ」
文の言葉に、雪華はトウヤ達の食べてる姿を見ながらそう言った。
「……何故、そう断定出来るのですか?根拠か何かがおありで?」
「ああ、あるよ。私の故郷の方の幻想郷でも月に行ったが、帰って来たからね、彼奴は」
「そうですか」
文はそう言ってメモを取ると、何処かへと飛び立っていったのだった。
***
その日からまた数日が経ち、漸く霊夢達が帰って来た。
「少し留守にしただけで、随分と寂れた感じになるもんだな」
「やっぱりこの日に帰って来たか、霊夢。葵達もおかえり」
「おう、ただいま!」
「はい、ただいま帰りました」
「帰ったか、葵」
「うん‼︎ただいま!ルカ!想起さん!霖之助さん!」
「おかえり、葵」
博麗神社には、何時もよりも大勢の人が其処で葵達を出迎えていた。
「というか、ボーッとしてるなら掃除してくれたら良いのに」
「掃除なら雪華がしてたんだ。なあ?夢幸」
「ああ、そうだ。大体、俺が此処を掃除など、する訳がないだろ」
「あー、ハイハイ。というか、雪華。してくれてたのね」
「私以外いないのに『しない』という選択肢はないだろ。だから、仕方なく。本当に仕方なくやってたんだ。面倒だと思いながら」
「あー、ハイハイ。分かった分かった。本当にアリガトウゴザイマシタ」
「うわぁ、誠心誠意が全く感じ取れないわ〜」
「それで?月では何をしてたんだ?」
「この時を待ってました‼︎」
と、其処で上から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
その声が聞こえた方に顔を向けてみれば、神社の屋根に文と小唄がいた。
「お、文じゃないか。懲りずにきたのか」
「あそこで懲りてては新聞記者にはなれません‼︎ということで‼︎月での出来事を聞かせてください‼︎」
「そうね……まあ、良いわ」
「そうですね……では、残った後からの事を話しましょうか」
そして、葵達は話し出した。
***
月に残された葵達はまず綿月姉妹の屋敷へと連れて行かれた。
そして、何故か接待を受けていた。
「……え、えっと」
「あら、食べないのかしら?」
「あ、いえ!食べます!」
「そう、良かったわ」
依姫の嬉しそうな顔を見た葵は、自分の前に出されている桃を見た。
(……食べるとは言いましたけど、図々しくないでしょうか?)
葵がそんな風に悩んでいる横では、霊夢が躊躇なく桃を食べていた。
「え⁉︎れ、霊夢⁉︎」
「?何よ。食べていいって言うから食べてるんじゃない」
「そ、そうですが……」
葵は霊夢にまた言おうとするが、霊夢の様子を見て、言うのを諦めた。
「……歩さん、少しお話があります」
「うん、知ってた。じゃないと、俺をここに留まらせる理由が分からないしね」
「御理解ありがとうございます。一度、廊下に出て話しましょう」
歩は依姫に続いて出て行くと、霊夢達のいる部屋から少し離れた場所で、依姫が振り向き、訪ねてきた。
「……貴方はここに戻って来るつもりは有りませんか?」
「あ〜、やっぱり気付いてた?」
「勿論です。貴方の先祖を、私もお姉様も知ってますから。貴方の先祖が、月の民であったことを」
歩はそう言うと、返事を返した。
「悪いけど断るよ。俺は、地上の方が楽しいし、何より地上の事を見下すお前達の所に戻りたいとは思えない」
「……そうですか」
「でも、依姫。俺はお前と友達になりたいと思ってるんだ」
「‼︎私と?」
「ああ!」
歩が笑顔を依姫に向けると、依姫はそれに驚き、落ち着くために目を瞑ると、答えた。
「……考えておきます」
「分かった」
「さあ、戻りましょう。あの二人にも残した理由を話さないといけませんからね」
「そう言えば、霊夢達を残した理由ってなんなんだ?」
その歩のもっともな質問に、依姫は少し顔を顰めていった。
「貴方達が月に攻めてくる前、月の都で争いが起きるという噂が起こりました。その時、神達が勝手に呼び出されるという問題が発生し、私がその反逆のリーダーという疑いが掛かったのです」
「……つまり、自分の疑いを晴らすためっていうことか」
「そういう事です。この事を、あの二人にも話さなければいけませんね」
依姫はそれだけを説明すると、歩を連れて霊夢達がいる部屋へと戻っていった。
***
その頃、紫、藍、茜、鬼灯、レティシアは白玉楼を訪れていた。
「はぁ、彼処でレティシアが助けてくれなかったらどうなってたか……」
「クスクス、何もなかったと思うわよ?私が出なくても」
「いや、あっただろ。彼方に失うものがあったかなかったかの話になるだろ」
「クスクス、あんな脅しをしてきたもの。だから、一つ失わせてあげただけよ♪」
そんな会話を部屋でしているが、しかし藍は何処か困惑している顔をしていた。
それに気付いた茜は藍に話し掛けた。
「どうした?藍姉」
「いや、今回の月面戦争は私達の負けのはずなのに、何故、紫様は笑っているのかと思ってな……」
「それは、今回の月面戦争。我等の勝ちだからだ」
「?どういう事だ?」
「つまり、吸血鬼達が『おとり』だったように、我等もまた『おとり』だったのだ」
その茜の説明に、紫は笑顔を浮かべた。
「そう、茜の言う通り、私達もまた『おとり』。月の使者のリーダーは二人」
「……実力派と援護要因。その二人を騙すには二種類のおとりが必要だった、という事ですか?」
「そういう事よ。地上には月の頭脳と呼ばれていたあの薬剤師がいる。スパイであるその薬剤師を騙すにはまず、私が罠にはまる必要があったのよ」
「クスクス、そして、私達の中では一番何も考えてなさそうな幽々子に、紫が協力要請を出したのよ。と言っても、直接的な指示は無かったけれど♪」
「藍が気になったスキマがあったでしょう?幽々子にはそのスキマの中に入ってもらって、ガラ空きになった賢者の屋敷に侵入してもらってたの」
紫その説明に、お茶を用意していた妖夢は疑問などが晴れた事によって、少し安心した顔をしていた。
「そういう事だったのですか。私と永久も同行しましたが、幽々子様は何にも説明してくれないので本当に困りましたよ。
侵入してから一ヶ月間も月の都に忍び込んでいたのですから」
「幽々子を選んだ理由はそれもあるわ。
私が再び月と地上を結ぶことが出来る次の満月まで、月の都に忍び込んでも目立たないから」
その言葉に、妖夢は首を傾げる。
「どういう事ですか?幽々子様は結構目立ってましたが……」
妖夢がその時に思い浮かべたのは、月の都にやってきた時に、月の兎達に話し掛け、その月の兎達に囲まれて談笑している幽々子だった。
「月の都は穢れを嫌うけど、貴方達は既に浄土の住人だからね」
その説明の後に幽々子が入ってきて、賢者の屋敷で盗んだお酒を見せると、レティシアと紫は大いに笑い始めたのだった。
***
一方の月の都では、綿月姉妹がツクヨミの前にいた。
「さて……君達は負けちゃったね。地上人に」
「申し訳ありませんでした」
「特に豊姫ちゃんは月の技術で作った扇子まで壊された」
「……すみませんでした」
***
紫が豊姫に捕まった時のこと。
「さて、この者たちは一度このまま放置を……」
そうして一度月へと帰ろうとした時、紫の後ろに影を見つけた。
その影は手を上に振り上げ、そのまま下に下ろすと、紫達を縛っていた縄が切れてしまった。
「え⁉︎」
「な⁉︎須臾の組紐が⁉︎」
「クスクス、組紐の一本一本が須臾であるなら、その僅かな時間を認識できるようにして仕舞えばいい。須臾で無くして仕舞えばいい」
「ッ⁉︎何者⁉︎」
紫達の後ろに立っていた者が紫達の前に立つと、その姿がよく見れるようになった。
黒のゴスロリを着て、綺麗な金髪紅眼の吸血鬼。
レティシアである。
「……」
豊姫はレティシアの行動で只者では無いと分かると、扇子を構えた。
しかし、その次の瞬間にはその扇子はレティシアの手の中にあった。
「えっ⁉︎」
「ッ‼︎返しなさい‼︎」
「クスクス、返す?こんな森を一瞬で素粒子化出来る危険物、貴女に持たせる方が危険じゃない。コレは……」
そう言うと、レティシアは手に力を入れ、扇子を粉々にしてしまった。
「ーーー破壊よ」
「ああ‼︎扇子が‼︎」
「くっ‼︎」
豊姫が悔しそうな顔をすると、またいつの間にか居なくなっていた。
「⁉︎何処に……」
「クスクス、貴方達、これ以上この幻想郷を脅かすようなら」
その言葉の後に、豊姫の肩に重みが掛かると同時に耳に当たる息と言葉。
しかしーーー、
「月の住人全ての命を賭けることね」
その言葉に背筋にゾッと寒気が走った。
そして、足に力が入らなくなり、地べたに座り込んでしまったのだった。
***
その報告を受けると、ツクヨミは溜息を吐いた。
「……はぁ、君達さ〜、地上の生命達を舐めすぎだよ?だから今回、嵌められたんだから」
「……はい」
ツクヨミの言葉に未だにショゲてる豊姫はそんな反応しか返せない。
それを見たツクヨミは少し真面目な顔で話し出した。
「……月の住人達は確かに地上人よりも優れてるよ。技術でも、力でも、寿命でもね。
ーーーでも、全てが優れてるわけじゃない」
「……何処か、優れてない部分があるということですか?」
「うん。僕から見たら、月の住人は地上人に心の強さで負けてる」
「心の、強さ?」
「そう。君達は技術とかで優れてるからって地上の人達を見下していた。同じ人間で、少し違うだけなのにもかかわらずに、ね」
「「……」」
「だからこそ、見下していたからこそ、今回は嵌められた。次は嵌められないように、見下すことを止めることだよ」
「分かっています。それで、失礼します」
依姫はツクヨミの言葉を聞くと、豊姫と共に出て行った。
「……はぁ、疲れた」
「お疲れ様、ツクヨミ」
「あ、姉さん‼︎」
ツクヨミは後ろから聞こえてきた自分の姉『天照大御神』の声を聞くと、そちらの方に嬉しそうな顔で向けた。
「緑茶入ったわ♪」
「ありがとう‼︎それと、今回は依姫を手伝ってくれてありがとうね」
「どういたしまして」
アマテラスは優しい笑顔をツクヨミに見せると、一口緑茶を飲んで、話し出した。
「そういえば、ツクヨミは鬼灯と話したのよね?」
「そうだよ‼︎ほーちゃんに一緒に住もうって提案したのに、断られたんだよ‼︎分かってたとはいえ断られたんだよ⁉︎僕、悲しいよぉぉぉ‼︎」
ツクヨミはそんな風に叫びながら、机に突っ伏して泣き始めてしまった。
それに驚いたアマテラスはツクヨミを宥め始めると、ツクヨミをは少しずつ落ち着いてきたようで、なんとか言葉を続けた。
「ぐすっ、それに、ほーちゃんは僕の事が苦手だって……僕の『能力』が苦手だって……」
「まあ、ツクヨミの能力は仕方ないわよ。だって、貴女の能力である『真実を曝け出す程度の能力』は、私も貴女も『嘘』が吐けないもの」
ツクヨミの『真実を曝け出す程度の能力』は、ツクヨミと、そのツクヨミの周りにいる者全ての『真実』が表に出てくるのだ。
それは言葉・感情・表情・行動全て関係なく表に出て来るために、ツクヨミは信仰されると同時に苦手視されているのだ。
「僕だって……好きでこの能力持ったわけじゃないよ。言っちゃダメだと思って別の事を言おうとしても、本心が強制的に出て来る。僕だって〜‼︎」
「ツクヨミ、私はツクヨミの能力関係なく、ツクヨミの事が大好きよ♪」
「姉さん〜‼︎」
ツクヨミは嬉しさから、アマテラスに勢い良く抱き着いたのだった。
その状態でアマテラスはツクヨミを宥めながらも視線をそのツクヨミの後ろにやった。
そのツクヨミの後ろには、ツクヨミが良く使う鏡があり、その鏡には丁度、葵達が真冬にも関わらず水着姿でおり、幽々子が持ってきた依姫達のお酒を飲んでいる所が映っていたのだった。
長くなってしまって申し訳ありません
そして!次回からまた日常ですが……その前にコラボです‼︎
お楽しみに‼︎
それでは!さようなら〜!