アレから想起と晴夜は同じ外来人同士だからなのか話が合い、想起の趣味から晴夜のいる幻想郷の話に発展していった。
「へ〜、晴夜は今は早苗と同じ所に住んでるんだ‼︎」
「ああ。ただ、宴会の時には色々ヤバい事に……」
「……聞かないでおくことにするよ、其処は」
「で?その想起は何で此処に住んでるんだ?」
「僕は葵の友達だからね。それに、人里に家を建ててないし、ここの暮らしが幸せだからね」
想起は本当に幸せそうな顔でそう言ったからなのか、晴夜も満面の笑顔を浮かばせた。
「そうか‼︎」
二人して笑っていると、そこに猫がやって来た。
「にゃ〜」
「あ、ノア。ルカなら此処にはいないよ?」
「?この黒猫は?」
「この子はノアって名前で、ルカのペットなんだ」
「へ〜」
晴夜は それで納得した様子を見せていると、ノアが晴夜に近寄り、ゴロゴロと喉を鳴らしながら撫でるのを急かして来た。
「ノアが撫でろって言ってるね」
「確かに仕草でそう言ってるな」
晴夜はノアの毛黒い毛を優しく撫でると、気持ち良さそうに目を瞑ってゴロゴロと喉を鳴らした。
「ノア?何処にいる?」
と、そのノアを探しているルカの声が近くから聞こえてきた。
「ルカ〜!此処にノアがいるよ〜‼︎」
「……」
想起がルカを呼ぶ声を出して少しすると、障子戸が開き、ルカがやって来た。
そして、ノアを撫でている晴夜を少し見ると、静かにその場に座った。
「信じてみる気になった?」
「動物に優しいだけなら誰でも同じだろ」
「外の世界だと、虐待する人も居るけどね」
想起のその言葉に不機嫌さを露わにするルカ。
ノアはそんなご主人様を見つけると、晴夜から離れてルカに近寄り、その膝の上に乗った。
「……」
「……あ〜、え〜っと」
しかし、ルカから言葉もなく、話してみたい晴夜としては話しかけずらく、如何したものかと思い、気まずくなっていると、其処に今度は鬼灯と葵も入って来た。
そして、雰囲気を敏感に感じ取った鬼灯は顰めっ面でルカを見やった。
葵もこの空気に苦笑を漏らすと、晴夜の前に座った。
「自己紹介から先にしますね。私は此処、『神無月神社』の巫女をしております、神無月葵と申します。先程は過去を見てしまって。そして、急に泣いて困らせてしまってすみませんでした。
「気にしなくて大丈夫大丈夫。俺は晴夜だ。それにしても、過去を見るって、それはお前の能力?」
「……はい。本当にすみません」
「だーかーら、気にしてないって」
葵が顔を俯かせて謝ると、晴夜は気にしてないと言った。
しかし、空気は重いまま。
その空気が耐えられなくなった想起は、話題を晴夜に振った。
「そういえば気になってたんだけど……晴夜の能力ってなんなの?」
その言葉を聞いて、ビクッと震えた葵。
それに気付いたのは葵と長年一緒に住んでいるルカと鬼灯のみで、想起と晴夜は気付いておらず、話は続けられた。
「俺の能力は『雷電を操る程度の能力』だ。俺の感覚を麻痺させたり、相手の能力も麻痺したり出来る。他にも用途はあるけどな」
晴夜はそう説明すると、ルカ、鬼灯、想起が葵に同情の視線を向けた。
「?何で三人とも葵に同情の視線を向けてるんだ?」
「……あ〜、その、だな」
「えっと、ね……」
「……雷を外に出せば理由がすぐに分かる」
「鬼灯⁉︎」
「……えっと、お前は?」
晴夜は鬼灯を見ると、鬼灯は「そうだったな。まだしてなかったな」と言うと、顔を晴夜に向けた。
「自己紹介が遅れたな。私は孤天鬼灯だ。此処の神様をしている」
「へ〜、神奈子様や諏訪子様と同じ……」
「ああ。まあ、彼方は戦神と祟り神に対して、私は豊穣神だがな。……話が逸れたな。兎も角、雷を外に放出すれば、私達の視線の理由がすぐに分かるさ」
「ほ、鬼灯‼︎それを言わなくても……」
「?理由が分かるなら……」
「や、やめて下さい‼︎」
「……って、葵は言ってるけど?」
「気にせずやってみろ。その方が手っ取り早い」
鬼灯の言葉に背中を押され、微量の雷電を放出すると、
「ヒイッ⁉︎」
葵はそんな叫びを上げると、部屋の隅っこに素早く移動し、耳を塞いで縮こまった。
「……え?これ、もしかして」
「ああ、葵は『雷』が怖いんだ。晴夜とは相性が悪いな」
「そんな〜……」
晴夜はガックリと項垂れると、想起がその肩に手を置いた。
「大丈夫だよ晴夜‼︎雷さえ外に出さなかったら良いんだから‼︎」
「そういう問題か?」
「そういう問題なんだよ‼︎」
想起の言葉を信じて雷電の放出を止めると、葵は顔をゆっくりと向けた。
その目には涙が溜まっている。
「……えっと、ごめん」
「い、いえ、大丈夫……です」
すると、その部屋の後ろにスキマがタイミングよく現れ、中から紫が出てきた。
「晴夜〜、迎えに来たわよ〜」
「……紫、なんでこんな事をした?」
「面白そうだったから♪」
その言葉に晴夜は頭を抱えた仕草をすると、その晴夜の足元にスキマが開いた。
「……兎も角、お別れみたいだな」
「ですね……晴夜さん。いつでも遊びに来てくださいね。幻想郷は、そして私達は、待ってますから」
「‼︎ああ‼︎」
最後に晴夜は満面の笑顔を向けると、そのままスキマの中へと入っていった。
「……待ってるとは言ったが、雷、大丈夫か?」
「……だ、大丈夫。きっと、うん」
ルカの心配する問いに、葵は笑顔を引きつらせて答えたのだった。