葵、霖之助と話をしていた武楽はその後、葵がお昼ご飯を出すという事で、霖之助と一緒に手伝おうとしたが、しかしそれは二人に『お客様だから』という理由で出来なくなってしまった。
そして、暇となり、霖之助達に一言言って、外に立って、目を瞑っていた。
魔法の森の風を浴び、空気を吸う。
そんな中、武楽は懐かしの気配を感じた。
「……出てきたらどうだ?レティシア」
「クスクス、葵同様、私とも知り合いなのね」
そう笑いながらスキマから現れたレティシア。
そんなレティシアに「やっぱりか」的な顔で溜息を吐く武楽。
「お前もパラレルなんだな」
「クスクス、貴方が知ってる『私』は、私からしたらパラレルだけどね♪」
そんなクスクス笑っているレティシアに対して、武楽は気になっていた事を聞いた。
「お前が葵に『偽の過去』を見せたのか?」
それに笑顔を称えた状態で頷くレティシア。
「クスクス、ええ、そうよ。あの子に『偽の過去』を見せたのは私よ」
「……俺の『秘密』を知っているのか?」
「クスクス、いいえ、知らないわ♪」
「本当か?」
「クスクス、本当のことしか言っていないのにね♪」
レティシアは未だに表情を崩さずにそう言葉にする。
それが一層、胡散臭さを強調している。
「……なら、知らないのに、どうして葵に『偽の過去』を見せた?」
武楽は顔を顰めて問うと、レティシアも軽く答えた。
「クスクス、貴方が心の底から願ったから、私は行動しただけよ♪」
「それだけか?」
「クスクス、それだけ。まあ、願いを叶えるのは私のメイドの能力だけどね♪」
「お前のメイドにそんな能力を持ってる奴がいるのか」
「クスクス、ええ♪」
レティシアはそれだけを言うと、『香霖堂』を少し見てから、スキマを開けた。
「クスクス、もうそろそろ葵が呼びに来るから、私は此処でね♪」
「ああ、じゃあな」
「クスクス、それじゃあね♪」
それだけを言うと、レティシアはスキマに入って消えていった。
それと同時に『香霖堂』の扉が開き、葵は周りを見て武楽を見つけると、笑顔を浮かべた。
「武楽さん、お昼ご飯が出来ましたよ‼︎」
「ん?ああ、有難うな‼︎葵‼︎」
そのお礼に対して、嬉しそうな顔を浮かべる葵であった。
***
お昼ご飯として出された白米、味噌汁、焼き鮭、ほうれん草の胡麻和えを全部食べ終えると、話を再開させた葵達。
と、そんな時に来客が来た。
「霖之助〜‼︎桃を持ってきてやったぞ〜‼︎」
「霖之助さ〜ん!遊びに来たよ〜……痛い〜。サリア、何で殴るの〜」
「私達は遊びに来たんじゃなくて商売しに来たの忘れたのか獏‼︎」
「あ、忘れてた〜!ごめんね〜、サリア〜」
「ごめんねじゃないからな⁉︎」
サリアは獏ののんびりさに溜息を吐いて、持っていた籠を近くに置いてから顔を上げると、見掛けぬ人間を見て驚いた顔をする。
「誰だお前?幻想入りしてきた奴か?」
「いや、別の幻想郷から紫に連れてこられたんだ」
「ふ〜ん、あのスキマ妖怪にね〜」
サリアはそう言いながら、武楽を興味深そうにジロジロと見る。
それに対して嫌な気分となったのか、武楽は顔を顰め、注意しようとする。
しかし、それを遮るようにして武楽に声を掛けた獏。
「ねえ〜、お兄さんは誰〜?僕は夢川獏だよ〜!よろしくね〜!」
獏はそう言いながら嬉しそうな顔で武楽に挨拶をする。
その言葉の中には悪意も疑心も一切ない。
知らない相手に対しての警戒心すらない獏に対して、武楽は少し焦った。
「獏〜‼︎」
そんな獏の襟を後ろから思いっきり引っ張り、武楽から引き離して持ち上げたサリア。
「うわわ⁉︎どうしたの〜?サリア〜」
「『どうしたの〜?』じゃない‼︎何で知らない相手に警戒心を持たずに近寄るんだお前は⁉︎」
「だって〜、良い人だから〜」
「なんでそう決めつけれるんだよ……」
サリアは頭が痛そうな顔で溜息を吐くと、そんなサリアを心配そうな顔で見る獏。
「大丈夫〜?サリア〜」
「ああ。ただ、頭が痛いだけだから心配するな」
「それは大丈夫じゃないよ〜?」
「いや、大丈夫だから。頭が痛い原因を作ってるお前にはそれを言われたくない」
「何だ此奴ら、現れた瞬間にコント始めたぞ⁉︎」
「いや、これがいつもの彼らのやり取りだから」
のんびり屋でマイペースな獏に、せっかちで比較的常識人なサリア。
そんな二人の会話を初めてみたら、コントのように思うのは仕方がないのかもしれない。
「それでサリア、さっき商売しに来たって言ってたけど……」
その言葉が聞こえたサリアは「そうそう」と言いながら獏を下に降ろして、置いた籠の中から桃を取り出した。
「ほら、お前以前、悪夢を見たからと店にやって来た時に言ってただろ?『幸せな夢を限定的に見れるような物はないか?』って」
「ああ、言ったね、確かに」
「それを聞いて作ってみたんだ。幸せな夢のみが見れる『桃』。食べればその日の夜に見る夢は必ず幸せな夢になる……予定」
「ちょっと待って。予定ってなにさ予定って」
霖之助は疑いの目をサリアに向けると、サリアはその目から顔を逸らした。
「いやホラ、試す相手がいないしさ〜」
「獏君には試してないのかい?」
「獏の奴は見た夢自体を食べちゃうから意味ないし、そもそも見た夢を此奴忘れるんだよ」
そう言いながらサリアは獏をジト目でみると、獏は何故か照れた。
「なに照れてんだ?褒めてないからな」
「そうなの〜?」
「そーなのー‼︎で、その後に人里の賢者がいるじゃん?」
「ああ」
「その人に試してもらったんだよ。そしたら、見事に見れたって言ってて……でも、たった一人だからまだ『予定』段階。で、霖之助にも試してもらおうと……勿論、報酬は弾むし」
「商売に来たのに報酬を弾むっておかしくねそれ?」
武楽の言葉に「成功したら商売になるから良いんだよ」と言うサリア。
「……はぁ、分かったよ。試してみるから」
「お、有難う‼︎」
そう言って『桃』を渡すサリア。
それを武楽は興味深そうにみると、手を挙げた。
「なあ?俺にもそれを一つくれ。試験者になってやる」
「お?マジ?」
「おお、マジだ」
そういう武楽に嬉しそうに桃を渡すサリア。
その桃を貰った武楽に向かって一つ疑問を持った様で、獏は言葉にしてだした。
「でも、お兄さんは別の幻想郷から来たんだよね〜?どうやって感想をくれるの〜?」
「それは紫にでも頼むさ。あと、『お兄さん』じゃなくて武楽だ‼︎よろしくな‼︎獏‼︎」
「うん〜!よろしくね〜!武楽さん!」
そんな二人の会話の間に、葵もその桃を貰っていた。
「夢を見た後にどんな夢だったかとかの感想を言ってくれ。あと、改善点とか」
「はい、分かりました」
そんな会話をした後、武楽は外を見た。
すると、既に外は暗くなり始めていた。
「おっと、もうそろそろ帰らないとな」
「それでしたら武楽さん。これを」
「ん?」
武楽は葵の方を見ると、葵の手にはお萩が五つ皿の上に乗っていた。
「帰ってから皆さんで食べて下さいね」
「ああ、有難うな!」
「どう致しまして」
そして、武楽はそのお萩を貰うと『香霖堂』から出て、スキマが開いたのを見ると、そこへと入って帰っていった。
それを見てからサリア達はその場で解散して、葵は一度家に戻ってから、その後は『香霖堂』で泊まったのだった。
先に言っておきます
最後の後には何にもないですよ?
ただお泊まりしたってだけですよ?
それ以外は桃を食べて寝たぐらいですからね?
さて、次回から本当の日常編スタート‼︎
誰の日常なのか、お楽しみに〜‼︎
それでは!さようなら〜!