東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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今回の日常、くおんさん達の過去話が主なので、日常らしい日常はないかもしれません

というか、ないと思ってください

それでは!どうぞ!


第百七十七話

咲夜はいつも通り、紅魔館でのメイド仕事をしていると、目の前からアルカが全力疾走をしながらこちらに向かって来ていた。

 

それに首を傾げつつ観察していると、その後ろからは雪華が追い掛けている姿が見えた。

 

それだけで如何してアルカが全力疾走をしているのかが分かる。

 

(……アルカ様、ご愁傷様です)

 

心の底からアルカに同情の気持ちを向けてから、仕事を再開させた。

 

既にこれが日常の一部となっている以上、おかしな事はないと考えてしまっている咲夜であった。

 

そんな咲夜にいつも通りクスクスと笑いながらレティシアは近付いて来た。

 

「クスクス、アルカも大変ね。雪華との毎日の鬼ごっこわ♪」

 

「鬼ごっこで良いんでしょうか?アレは」

 

「クスクス、実際に鬼ごっこよ♪捕まれば弄られるんだから♪」

 

それを聞いて確かに、と納得する咲夜。

 

そして掃除をしようとした時、ふと思った。

 

(そういえば、私はレティシア様の『過去』を知らないわね……)

 

そう思ってすぐに、それは駄目だと首を振る。

 

(あまり踏み込むのも……それに、過去を聞かれて嫌な人だって……)

 

「クスクス、私は別に構わないわよ♪」

 

咲夜はそう考えていたが、しかしレティシアにはその全てが筒抜けであったようで、面白そうにクスクスと笑っていた。

 

それに少し恥ずかしくなったようで少し顔を赤くすると、その顔を隠すために頭を下げた。

 

そんな考えも全て筒抜けなのだが、今の咲夜は少しパニック状態にあるので、其処までは考えがいかなかった。

 

***

 

レティシアの部屋に咲夜は入ると、レティシアは椅子に座り、咲夜にも座るように促す。

 

しかし、そこはメイドだからと言って座ろうとしない咲夜に、レティシアは少し溜息を吐いた。

 

「クスクス、別に構わないのよ?」

 

「いえ、失礼に当たりますので……」

 

「クスクス、私が言ってる事を拒否してる方が失礼な気がするのだけど♪」

 

そう言われて反論出来なくなり、咲夜はレティシアとは対になる方に座ると、レティシアが紅茶を差し出した。

 

「クスクス、それで、私の『過去』だったわね♪」

 

「はい」

 

「クスクス、そうね。面白味は何処にもないけれど……そう言えば、紅魔館の住民には誰にも話した事は無かったわね」

 

まあ、聞かれなかったからなのだけど……と、小声で呟くと、話し始めた。

 

***

 

昔の、それこそ月人が行く前、地上が外の様に栄えていた頃、レティシアは西洋で子供の姿で存在した。

 

『産まれた』というよりは、『存在した』。

 

レティシアはどうして自分が存在しているのかの理由が分からず、しかし自身が吸血鬼である事、人の血を吸って生きる者であること。

 

そして、自身の能力をハッキリと理解していたため、そこまで困った事は起きていなかった。

 

しかし、レティシア自身も分かっていることだが、本人の能力は危険過ぎる能力だ。

 

何でも『出来る』という事は、世界の破滅など最も容易い。

 

そんな事をすることが無いよう、レティシアは修行した。

 

自身の能力をコントロール出来るように。

 

しかし、強力故に、コントロールも難しかった。

 

最初は手に林檎を創ることから始めたが、しかし其処から既に失敗してしまった。

 

林檎を創ろうとしたら、どうしてか林檎の一欠片しか出来なかった。

 

しかも、たったそれだけであるはずなのだが、レティシアは精神疲労が相当あった。

 

それはもう、レティシアがその場に座り込むほどに。

 

(これは……長い道程になるわね)

 

そう考えて、日頃から練習をしていたレティシア。

 

お陰で、コピーの能力はコントロール出来るようになっていた。

 

人の考えをずっと知る事も無くなった。

 

しかし、出来る能力だけは、どうしてか出来なかった。

 

その能力自身を使い、コントロール出来るようにしようとすれば、その場に倒れて気絶し、能力も効いていないようで、直ぐにコントロール出来るようになるのは不可能。

 

だからこそ、練習を続けた。

 

暫く続けていると、林檎や木といった無生物を創れるようにはなったが、しかしそれ以外はまだ不可能。

 

しかも、時々ではあるが能力の暴走もあり、非常に出るのが危険になってしまった。

 

(まあ、人の血ぐらいなら能力で創れるけれど……暴走してる時は……)

 

そう思って、自身がいる部屋の中で溜息を吐く。

 

そんな日からまた何年も過ぎた。

 

姿は子供から大人になるも、能力の暴走はまだ健在していた。

 

そんなレティシアが住んでいる館に一人の男がやって来た。

 

その者はレティシアと同じように背中から蝙蝠の翼を背中に持ち、金髪紅眼の男であった。

 

「此処に……噂に聞いた我よりも早く存在した吸血鬼の住む館……さて、何処にいるのだ‼︎我が同族よ‼︎」

 

その大声は館中に響き渡る。

 

勿論、それはレティシアにも聞こえた。

 

レティシアはそのお客人の声を聞くと、追い返す為に腰を上げた。

 

***

 

「その男吸血鬼というのが……」

 

「クスクス、想像通り、ヴラドよ」

 

レティシアは嬉しそうに顔を綻ばせる。

 

咲夜はそれに驚いた様子も無く、やっぱりかと思うと、言った。

 

「そして、ヴラド公はその時、レティシア様に負けたのですね」

 

「クスクス、いえ、私が負けたわ」

 

「……え」

 

咲夜はレティシアの口から有り得ない単語が聞こえてきたことに驚いた。

 

「え、レティシア様が、負けたのですか?」

 

「クスクス、ええ。そもそも、その頃の私は能力がコントロール出来ずに暴走気味。挙句、力まで強力過ぎて真面に戦えず、その場で負かされたわ」

 

レティシアは咲夜の顔が面白かったようで、何時ものクスクス笑いが何時もより二割り増しだった。

 

しかし、咲夜は未だ、あり得ない単語を聞いたことにより呆然気味。

 

それに気付くと、咲夜の顔の前に両手を持って行き、顔の前でその両手を叩いた。

 

その音で漸く正気に戻ると、紅茶を一口飲んで自身を落ち着かせた。

 

「……その後は?」

 

「クスクス、その後、ヴラドから負けたのだから言う事を聞けと言われて、悔しいながらも私はそれに承諾。そして、彼の能力で私のコントロールの補助をしてもらい、其処で漸く能力、力のコントロールが出来るようになった」

 

「……龍と何処が似てるのでしょうか?」

 

「クスクス、ヴラドは傲慢不遜な性格をしていると思っていたけれど、それは自身にカリスマを持たせるため。本来はとても心根が優しい人だったの」

 

「なるほど……」

 

「……けれど、ヴラドはその後、串刺しにされて死んだわ」

 

「……はい」

 

そのヴラドが亡くなる理由の裏には、あのゲスい悪魔が関係しているのだが、それをレティシアは言わなかった。

 

咲夜はその悪魔を知らず、そしてその悪魔も現在は手出しを出す事をしなくなった。

 

そういう理由で、レティシアは咲夜にはその事を話さなかったのだ。

 

「クスクス、そして、私はその後、私の家である『紅魔館』に紫から誘われるまでの間、引きこもっていたの。 ヴラドとの間に出来た子供の世話とかがあったからね♪」

 

其処からは想像が出来たようで、咲夜はお礼を言ってからその場を立ち上がり、部屋を出て行った。

 

それを見ると、レティシアは頬杖をついた状態で、窓の外を見た。

 

「……きっと、あの時ヴラドと会わなかったら、今の私は無かったのかもしれないわね……」

 

そう言いながら、笑みを浮かべた状態で。

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