レティシアの過去を聞いた数日後。
その数日間の間、ずっと光冥が隠し事をしている事に気付いていた咲夜はその日、光冥に聞いてみると、答えてくれた。
「……実は、咲夜がレティシア様の過去を聞いていたのと同じ時、自分もドアの前で聞いてたんです……」
「……そう。でも、それは別に隠さなくても……」
「咲夜は許されて聞いてましたが、自分は違いますから……」
「レティシア様はそんな事を気にされる方ではないから大丈夫よ」
「……有難う、咲夜」
敬語から急に元の口調に戻り、咲夜はそれで光冥がもう大丈夫なのだと判断すると、掃除に戻ろうとした。
……が、戻れなかった。
咲夜に身に覚えのある寒気がしたからだ。
「……」
「……?咲夜?どうしました?」
「……そう、今日だったのね」
「……まさか」
その呟きで、近くに誰がいるかを知ると、確認のために後ろを振り向いた。
そこには、いつもの雰囲気とは真逆の雰囲気を醸し出し、その上、不機嫌そうな顔を隠さず歩いているマリアがいた。
「……あら、咲夜達じゃない」
そのマリアは咲夜と光冥を見付けると、立ち止まった。
しかし、不機嫌そうな顔はまだ隠れていないが。
「……マリア、担当となった場所は?」
「狼に頼んでるわ。私はちょっと出掛ける用事があるから出るわ」
光冥の問いにそう答えると、また歩き出そうとした。
しかし、それを次は咲夜が止めた。
「用事って何かしら?」
「……この前の三馬鹿妖精に引き続いて別の妖精が蛇を虐めてるらしくてね。そのお仕置きにに行くのよ。……蛇の怖さを思い知らせにね」
そう言うと、今度こそ歩き出した。
すると、咲夜と光冥の後ろから、複数の声が話し始めた。
「あ~あ、また一人の妖精がマリアの犠牲になったね~」
「妖精が蛇を虐めたりしなければこんな事はないのよ」
「無理だろ。彼奴等は馬鹿だから」
「お、お兄さん……」
咲夜と光冥はまた後ろを振り返ると、ランガー姉妹とディザスター兄弟がいた。
「……貴方達まで離れたのね……」
「そりゃ、マリアが不機嫌そうな顔で歩いていくのを見たらね~」
咲夜が溜息を吐く横で、ユニが苦笑いをしながら言った。
と、そこで何かを思い出したかのようにハッとすると、ユニは咲夜に質問した。
「そういえば、咲夜は私達の『過去』を知りたいの?」
「!?なんでそれを……」
「レティシア様が言ってたよ?咲夜が知りたがってるって」
「ちなみに、私達だけじゃなくて、朱鳥達も知ってるわよ?」
ユニとぺスの言葉に内心で叫ぶと、項垂れた。
「……ええ、そうよ。だから、出来れば教えてくれるかしら?」
「ええ、良いわよ。ギル達も聞くかしら」
ペスは振り返りながらそう聞くと、ギル達は頷いたのだった。
***
南ヨーロッパにあるギリシャ共和国。その国の領土であるケファロニア島で二人は産まれた。
産まれた時は森におり、そこから進めば綺麗な地底湖があった。
今は観光地となっている『メリッサーニ洞窟』である。
二人のその時の姿は『人間』ではなく、伝承通りの姿である。
産まれてから数年経つと、ユニがその島から出たいと言いだし、ペスはそのユニに着いていく形で島から出た。
そこから、問題が起きた。
島から出て暫く経った。
ヨーロッパ州の国々を重点的に巡っている時、ユニの能力が人に暴露てしまった。
そこから先は表立って旅が出来なくなり、人から隠れて過ごす日々。
しかし、人の間ではすぐに噂が経つ。
その噂がユニ達の耳に入れば、逃げた。
国を渡り、ペスの背に乗って海も渡ったったりもした。
その繰り返しの日々の中、ある森に辿り着き、その森にひっそりと建つ家を見付けた。
その家を見付けた時には二人の精神は既にすり減っており、人がいる可能性を考えずにその家に入り、倒れてしまった。
「だ、だ、だ、大丈夫!?」
その声が聞こえたのを最後に、二人の意識は遠のいた。
***
そこまで話し終えると、辺りはしーんっと静まりかえっていた。
「……それっで、そのあとは?」
咲夜がその先を促すと、ユニは笑顔で答えた。
「そのあと、目覚めたのはベッドの上。で、近くにはマリアがいたの」
「マリアが?」
ギルが首を傾げながら聞くと、ペスは頷いた。
「ええ。マリアはそこで私達が起きた事に気付くと直ぐに部屋から出ていったの。その後に来たのが狼よ」
「いや~、あの怯えっぷりはちょっと面白かったよ」
「……そう」
過去を聞き、咲夜はその事で礼を言おうとすると、足音が此方に近づいている事に気付いた。
「……侵入者かしら?」
その一言でその場の全員が警戒を高めると、来ていたのはマリアだった。
「なんだ、マリアか~。お帰り~」
「ええ、ただいま」
「よ、妖精達はどうなりました?」
シファがマリアにそう聞くと、マリアはニコッと綺麗に笑って答えた。
「石像にした後、粉々に砕いたわ。妖精に死の概念は無いから大丈夫でしょ」
マリアの笑顔ながら零した言葉に、その場にいた者は全員、ゾッとしたのだった。