東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

201 / 245
第百八十話

空の色が茜色になり始めると、咲夜はフィールと光冥を連れて紅魔館へと帰ろうとしたが、アリスからフィールにだけ「泊まっていかないか?」という提案を受けた。

 

しかし、フィールはそれを断った。

 

「今回、紅魔館に泊まらせてと言ってるから……」

 

そう理由を言って。

 

その帰り道。

 

「……あの時は会えなかったらじゃなかったかしら?」

 

「……そうだけど、向こうのお姉ちゃんには『泊まり込み』って言って来ちゃったから……」

 

「成る程。それで、泊まるところが無いと。分かりました。帰ったら準備をしましょう」

 

「ありがとう、黒漆光冥」

 

そんな会話をしながら魔法の森から出るところで、サリアが誰かと会話をしているのが見えた。

 

「?誰かしら?」

 

「さあ?見かけない人だけど……」

 

「……外来人?」

 

三人は首を傾げながらそう言うと、サリアが其処で三人に気付いた。

 

「あれ?お前ら、珍しいな。魔法の森付近まで来る……違うか、そっち方向なら出てきたのか。魔法の森に用があったなんて珍しいな」

 

「貴方も、こんな外で人と会話をしてるなんて珍しいわね」

 

「まあ、知り合いだしな」

 

「?知り合い?」

 

咲夜は其処でもう一度その相手を見る。

 

その相手もまた咲夜を見ると、少し嬉しそうな顔をする。

 

「へ〜、こっちの咲夜か……でも、そこの二人は知らないな……誰だ?」

 

その男・武楽に自己紹介を済ませると、武楽は嬉しそうな顔をする。

 

「咲夜に彼氏がいるのか‼︎いや〜、良かったな‼︎」

 

「……彼氏?」

 

フィールは光冥に顔を向けて問うと、光冥は笑顔で頷いた。

 

「それで?今から紅魔館に帰るのか?お前達二人は」

 

「ええ、そうよ。あと、『二人』じゃなくて『三人』よ。この子も泊まる事になってるの」

 

「あ、フィールもなのか」

 

武楽はそう言ってからフィールに顔を向けると、フィールは頷いた。

 

「……あ、なら一つ聞いていいか?」

 

「?何かしら?」

 

咲夜は武楽に問い返すと、武楽は口を開いて聞いてきた。

 

「レティシアはいるか?ちょっと話したいんだが……」

 

それに咲夜と光冥は二人同時に首を横に振った。

 

「……いないのか?」

 

「ええ、いないわ。今は外に出かけてらっしゃるの」

 

「時々、外に遊びに行く方だから不思議ではない無いけどね」

 

そう言って互いの顔を見ながら苦笑を漏らす。

 

「そうか……残念だ」

 

「ま、いないんならしょうがないな」

 

武楽の近くにいたサリアはそんな武楽を少し慰めるのだった。

 

「それで?貴方達はどんな会話をしてたの?」

 

咲夜がそう聞くと、サリアは少し嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 

「いや、この前、幸せな夢が見れると桃の試作品を渡したんだが、どうにも最悪だったらしくてね〜。その改良版をまた試してもらおうと……」

 

「……それ大丈夫なの?」

 

「大丈夫‼︎武楽の前にも葵と霖之助に頼んだら、今度は大丈夫だったって言ってくれたしな‼︎」

 

その言葉に、疑わしそうな顔を浮かべていた武楽は安堵の溜息を漏らしたのだった。

 

***

 

サリア達との会話を終えて紅魔館に戻ると、咲夜と光冥は通常業務に戻り、フィールは図書館に向かって行った。

 

「向こうになくて、こっちにはある本があるかもしれないから」

 

咲夜はフィールに理由を聞いた時、そう返されたので、止める理由は何処にもない。

 

そうして夕食も食べ終えると、咲夜は紅魔館内の様子を見ていた。

 

時々、サボる者がいるのでこうするしかないのだ。

 

その歩いている最中、一つの部屋の扉が半開きなのに気付いた。

 

雇われメイド達が休む為の部屋である。

 

「……誰が休んでるのかしら?」

 

少しだけ気になり部屋を覗くと、本を読んでいる朱鳥が見えた。

 

その朱鳥はというと、咲夜の視線に気付いたようで、扉の方に顔を向けると、首を傾げた。

 

「?咲夜、休まないのか?」

 

「いえ、扉が半開きだったから気になっただけよ」

 

「そうか」

 

そうして朱鳥はまた本に顔を戻すが、咲夜が部屋の中に入って来たのに気付くと、また顔を咲夜に戻した。

 

「?どうした?」

 

「いえ、ちょっと、朱鳥の過去を教えてもらいたいなと思って……嫌なら良いのだけど」

 

「私の過去?……別段面白くもないぞ?他の奴らよりも酷くないしな」

 

朱鳥は苦笑を漏らしながらそう言うと、本を閉じた。

 

***

 

朱鳥の種族は『不死鳥』ではあるが、朱鳥は後天的にそうなったのだ。

 

元はただの一匹の小鳥として、朱鳥は産まれてきた。

 

しかし、その時は餌を取るのが下手で、余り食べれていなかった。

 

その為、直ぐに身体は痩せ細り、飛ぶのがやっとの状態となっていた。

 

そしてある時、朱鳥は遂に疲れて落ちてしまった。

 

それは火山の火口ギリギリで、あとちょっと飛んでいたなら落ちていただろう。

 

しかし、それは死ぬのが早いか遅いかの違いのみ。

 

朱鳥は既に餓死で死ぬ直前であった。

 

(……このまま、無様に死ぬのは……嫌だ……)

 

朱鳥は目が閉じる前にそう願い、火口から誰かが出てきたのを見て、目を瞑った。

 

***

 

「その後、何故か体が熱いのに気付き、目を開けてみればマグマの中。普通なら死ぬ筈、というか死んだ私が何故そんな場所にいるのか、そもそもどうして平気なのか、それを考えて頭がパニック状態に陥ったな」

 

「……」

 

しかし咲夜はというと、それを聞き、目を見開いて固まっていた。

 

(朱鳥が一度死んでる?ならどうしてこうして生きてるの?その火口から出て来た人が原因?)

 

朱鳥はそんな咲夜の考えが分かったのか、「まあ、そうなるよな」とだけ言うと、話を進めた。

 

「今まで何故私は不死鳥になれたのか。出て来た奴は誰なのかを知る事は出来なかったが、此処に来てようやく知る事が出来た。

 

私が死にそうになった場所はな、『八ヶ岳』なんだ」

 

「『八ヶ岳』……?」

 

朱鳥の口から出たその名前に咲夜は頭にハテナマークを浮かばせる。

 

「小鳥の時に人間の話を聞いたりしてたんだが、死ぬ直前で聞いた会話に出ていた単語はそれだ。そして、『八ヶ岳』には『石長姫命』という神様がいるらしい」

 

「その神様と貴女が生きてる理由にどんな理由が……」

 

「『石長姫命』という神様は『不死・不変』の神様だ。多分、私が余りにも惨めな死に方だったから同情したんだろ。本当の理由は知らないが」

 

「……そう」

 

咲夜はそれを聞くと、お礼を言ってその場を立ち上がる。

 

「……咲夜」

 

「?何かしら?」

 

「私からのアドバイスだ。……不死にだけはなるな」

 

「……分かってるわよ」

 

朱鳥のその言葉を聞くと、その部屋を出て行ったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。