東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百八十四話

雪華が紅魔館にやって来きた後、アルカと雪華は場所をテラスへと変えて話をする事にした。

 

勿論、吸血鬼であるアルカに太陽の陽は毒なので、パラソル付きのテーブルに座っている。

 

そしてそこに座って数分後。

 

アルカは黙々と何かを書き、雪華に至っては机に突っ伏して溜息をついている。

 

それに対してアルカは溜息を吐くと、一度書くのをやめて聞き出すことにした。

 

「おまえがそんな状態なんて珍しいな。何があった?」

 

「……今異変が起こってるの、知ってるよな?空飛ぶ船の」

 

「ああ、『聖 白蓮』の仲間達の……知っている。実際、絶月達を新人研修として向かわせた」

 

「……まあ、それは良いんだよ。問題は、私の心境」

 

「……お前の?」

 

其処で頷くと少し起き上がり、頭をくしゃくしゃと掻き始めた。

 

「あっちの幻想郷でも同じ異変が起こった時、霊夢は直ぐさま出て行って私は居残り。それが余りにも暇だったからお前で少し弄ろうとしてた時に霊夢が帰って来て、私を無理矢理異変に巻き込んだんだよ」

 

「巻き込んだって、お前を巻き込んで何の得になるんだ?」

 

「私の能力を知ってるでしょ?」

 

「……成る程な。確かに、お前は適任だな」

 

「次いでに言うなら人員補充。早めに終わらせたかったからって後から言ってた」

 

「……で、それでお前の心境とどう関係するんだ?」

 

「……正直、複雑なのよ」

 

雪華はそう言うと、空を見上げるようにして顔を上に向けた。実際はパラソルしか見えないのだが。

 

「あの時は正直、面倒毎に巻き込まれたと思ってたけど、白蓮の性格を知って、ちょっとは手伝えて良かったって思えた……でも、今回の異変が始まって、また探し物に付き合わされるかも?って考えたら……最初に出たのが面倒。手伝いたい。やりたくない。助けたい……矛盾ばかりの考え」

 

「……」

 

「それを悶々と考えて、自分らしくなるなら面倒事から逃げる手を今回取ったの。だから、此処に来た」

 

「だが、後悔してる部分があると」

 

「そういう事。多分、何方にしても後悔する」

 

「……だから、アレだけ元気がなかったわけか」

 

雪華の元気のなさは、自身の矛盾した考えに疲れたためだろう。

 

「……正直、こんな事を考えるようになったなんて自分でも吃驚だよ」

 

「安心しろ。俺も驚いた」

 

「わぁ、アルカが成長した。悪い方向で」

 

「お前の所為だな」

 

「私、何も、してませーん」

 

雪華が少し調子を取り戻したのを見るとアルカは少しだけ安心した。

 

(弄られるのは嫌だが、何時もの調子がないと俺の調子も狂うな……)

 

アルカは内心でそう考える。勿論、表ではそんな表情を出していない。

 

「……で、結局此処まで来たお前だが、どうするつもりだ?」

 

「……霊夢が仮に此処に来たなら、その時は手伝う。まあ、こっちには捜索隊の人数は多いし、何より此処の執事とメイドが駆り出されたんだから、私は必要ないでしょ」

 

「そうか」

 

それを聞くとアルカはまた何かを書き始めた。

 

それを少しだけ見ると、雪華は漸く気付いた。

 

アルカが『手紙』を書いてる事に。

 

「それ、返信の手紙?」

 

「ああ。月一の手紙だが、レミィ達からの手紙だ。親しき仲にも礼儀あり。手紙をくれたならその返しをしないとな」

 

「……それもそうね」

 

「……お前、まさか返してないわけじゃないよな?」

 

「勿論、ちゃんと返してるよ。私が返さないタイプに見えてる?」

 

「いや、そんな事はない。だが、反応がおかしかったならその考えに至るのも仕方ないと思うが?」

 

「……まあ、それもそうか」

 

それを言うと、雪華は一度溜息を吐いた。

 

「……私もアルカみたいにちゃんと返信してるよ?でもさ……書く内容、思いつかなくなっちゃった……」

 

「……」

 

「……いや、書きたい内容が『無い』から書けないんじゃなくて、書きたい内容が『あり過ぎる』から書けないでいるの」

 

「なんだ。それなら簡単じゃないか」

 

「……?」

 

雪華は首を傾げると、アルカは少しだけ手を止めて雪華の顔を見ながら言う。

 

「書きたい内容があり過ぎるなら、書きたいだけ書けばいい。織姫達はそれを望んでるはずだろ?」

 

「……そう?」

 

「書いた内容が多いければ多いほど、『それほど楽しんでるんだ』『それほど嬉しいんだ』って分かるだろ?」

 

「……」

 

雪華は少し目を瞑って、自分がそうならどう思うかを考える。

 

そして、その後に少し笑みを浮かべて頷く。

 

「なら、書けばいい。お前が満足するだけ。というか、寧ろその手のことはお前の方がよく分かってるはずだろ?得に織姫の事は」

 

「……それもそうだね‼︎」

 

その言葉に漸く雪華は元気を取り戻し、笑顔を浮かべた。

 

「あ、そうだ‼︎此処で手紙を書こう‼︎アルカ‼︎紙をもらって良い?」

 

「ああ、良いぞ。紙は机の上だ」

 

「有難う、アルカ‼︎」

 

雪華は嬉しそうにそう言うと、早速向かっていった。

 

それを見て少しだけ笑みを浮かべると、続きを書き始めるアルカだった。

 

***

 

船の下まで飛んできた霊夢達は、早速侵入する手を考える。

 

「此処はやっぱり、突撃?」

 

「人がいる可能性があるのに、それは……」

 

「そもそも、船が動いてる時点でいるだろ」

 

「兎も角、船のデッキに行きません?」

 

「夢幸、デッキって何処だ?」

 

「船の前方にある所だ」

 

早苗の単語を聞いて、魔理沙は夢幸にそう質問し、夢幸はそれに普通に答えた。

 

これが魔理沙以外なら言葉の前方に『バカが』と付いたかもしれない。

 

そうして船の前方デッキに降り立つと、周りが雲に囲まれていた。

 

「やっぱり、空を飛んでるだけに雲にが近くにあるな……」

 

「そうね。さて、兎に角中に入りましょう」

 

そうして中へと入ろうと前へと向く霊夢。しかし、

 

「侵入者、発見。排除する」

 

そんな言葉とともに銃弾が霊夢に迫る。

 

が、それをギリギリで顔を少しだけ傾けて回避する霊夢。

 

「……死ぬかと思ったわ」

 

「失敗。しかし、任務続行。侵入者排除。最優先」

 

そうして全員に迫る銃弾の嵐。

 

それをそれぞれで避け、時々は協力して回避すると、銃弾の嵐が止まった。

 

「……もしかして、玉切れ?」

 

「……からのリロード中か?」

 

歩と鬼灯が自分の考察を口に出していると、相手の準備がまた終わったようで、銃弾を浴びせてきた。

 

それを見てまた全員回避をすると、また銃弾が止んだ。

 

「もしかして、ずっと続くとか無いわよね?」

 

「それはマズイですね……どうしましょう?」

 

霊夢と葵がそう話すと、歩が全員の一歩前に出る。

 

「?歩?」

 

「此処は俺に任せて」

 

そう言って顔を前に向けて相手の姿をちゃんと見る。

 

相手は青年だが、しかしその右腕や左足は機械と化している。

 

(ロボット……?いや、体は生身だから、自分の体を改造したのか⁉︎)

 

歩はその考えに至り、驚きの表情を表に出すが、しかし首を横に振って集中する。

 

「……なあ?お前」

 

「侵入者。排除。これ、最優先」

 

「……話を聞こうよ。此処は幻想郷だ。なら、そのルールに則って勝負をしよう。お前が勝ったなら俺達は大人しく退散する。勝ったら通してもらう。いいな?」

 

しかし、相手は聞く耳を持たなかったのか、銃弾をまた浴びせてきた。

 

ただし、先程までとは違い、狙いが『全員』から『歩のみ』となっている。

 

「……俺との弾幕ごっこに乗ってくれたと考えさせてもらう‼︎」

 

歩はそう言うと、二本の釣竿を構え、ながらも相手の銃弾を避けるのだった。

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