弾幕ごっこが始まってすぐ、歩は様子を見るためにスペルを宣言した。
「旅符『流れ三つ叉別れ道』!」
そして釣竿を相手に向け、そこから槍型の弾幕を相手に撃つと、相手はライフルとなっている右手を向けてそれを撃ち落とす。
「やっぱり実弾かよ……」
弾幕とは違い実弾となると、どこを撃たれようと致命傷になり兼ねない。
足に当たれば足は使えなくなり、手に当たれば何も持てなくなる。心臓や頭に当たれば即死だ。
ならば、死ぬ気で避けるしかない。
「なら、洞窟『ゲートリングトンネル』!」
そうして釣竿を真正面に構えた状態で相手に向かって突進して行く。
が、今度は足先を溶断ブレードに変えた。
それを見てやろうとしている事を察した歩は急停止し、後ろに後退する。
その相手は、歩が後退した為に溶断ブレードで宙を斬っていた。
しかし、直ぐにその溶断ブレードを戻してその場に立つ。
(……彼奴、まさか……)
「……お前、体全体がサイボーグと化してるのか⁉︎」
「答える、義理は、ない」
そう言うと今度は肩にあるバズーカを展開し、そのまま歩に向けて撃った。
歩は直ぐさまその場から移動し、なんとか避ける。
が、ロケット弾が着弾した場所はその場で爆発し、後に残ったのは大穴だった。
その爆風も強く。足で踏ん張ってその場に留まろうとする歩に男は素早く接近し、船から突き落とした。
「うわぁ⁉︎」
「!歩ぅぅぅ‼︎」
***
歩はそのまま船から地面に落下する直前で上手く受け身を取り、痛みを最小限に抑えると、また船に向かおうとする。
しかし、其処で聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あれ?歩さんじゃないっすか」
「‼︎角‼︎」
歩は角がいる事にまず驚いた表情を浮かばせた。
それに対して少し笑みを浮かべる角は自分がいる理由を簡単に答えた。
「ただの散歩っすよ。その散歩してる所に歩さんが空から落ちてきて……何があったんすか?」
角が今度は真剣な表情でそう聞くと、その角の肩を掴んだ歩。
「頼む‼︎力を貸してくれ‼︎角‼︎」
その肩を掴んでいる手に力を入れて頼む歩。
それに対して角は少しだけ驚く表情を浮かべると了承した。
するとその体が光だし、その光が収まると、その場には一匹の鹿がいた。
その鹿は身を屈めて歩が乗りやすいようにすると、歩はその背に乗って、釣竿を二本とも構えた。
そうして船に向かって駆け上ると、見えたのは全員にライフル銃を向けている男。
その男に突撃すると、相手はそこで歩達二人に気づくが、遅い。
男はそのまま当たり、数メートル飛ばされた。
葵は安心した表情を浮かべるが、角の雷を見ると、霊夢の後ろに隠れる。
それを視界の隅に納めてから再度突撃しようとするが、起き上がった相手が一枚の紙を持った事を見てすぐには突撃せず、攻撃を凌いでからと決める歩と角。
しかし、相手の容赦の無さはそんな二人の考えを一掃する。
「掃滅『全砲一斉射撃』」
すると、相手のすべての武装がその場で展開された。
右手はライフル、左手は拳銃、左腕はビームブレード、肩からはバズーカ砲、腹部からキャノン砲、背中からジェットウィング、足先に溶断ブレード、腰にレーザー砲。
それら全てを同時に展開し、拳銃、ライフルでまずは歩達に狙いを定めて撃つ。
それを歩達が避けたのを見ると、それに加えてバズーカ砲を使ってきた。
それもなんとか避けると、最後にキャノン砲とレーザー砲も加えて攻撃してくる。
角がその二つの砲撃を避けようとすると、近くに撃たれていた実弾に歩が当たってしまった。
「!歩‼︎」
「歩さん‼︎」
霊夢と葵が叫ぶと、歩は何とか体の体制を戻す。
しかし、その横腹からは出血している。
「歩さん‼︎」
「大丈夫だ‼︎」
そう角に言うと、また全力で避けてもらい始めた。
その度に頬に傷が付き、足も怪我をするが、横腹以上の重度の怪我は出なかった。
それをスコープとなっている目で見た相手は次のスペルを宣言する。
「殲滅『滞空近接攻撃』
すると、すべての武装が一度全て収納されたかと思えば、腕と脚からドリルとビームブレードが展開され、滑空する様に歩に向かってくる。
それを角が見ると、左に全力で避ける。
その後に直ぐ体勢を立て直すと、歩が一枚のスペルを宣言する。
「十字『クロスワードロード』‼︎」
そう宣言すると、二本の釣竿を構え、角に相手に突撃する様に頼む。
それに了承すると、男に向かって突撃していく角と歩。
それに対して相手もジェットウィングを使って滑空しながら歩に近付く。
そして、すれ違う瞬間、歩は二本の釣竿で相手を切り裂いた。
「⁉︎」
その攻撃の威力が予想以上に強く、相手はそれだけで倒れ伏した。
***
弾幕ごっこが終わると、直ぐに歩と角、そして男の治療をし始めた葵。
しかし、歩と角はともかく、サイボーグと化しているその体に自身の治癒の力が効くのか不安になる葵。
しかし、直ぐに能力を使い、治し始める。
と、其処に一人の尼の格好をした女性と白い塊がやって来た。
「貴方達‼︎『鉄幹』に何をしたの‼︎」
「あ、えっと……」
「ご、ごめん、その、攻撃されたからこっちも……」
「何を謝ってるんだ。正当防衛だろ」
「ルカ、正当防衛ではなく、侵入しようとした私達が明から様に悪いです」
想起、歩、ルカ、葵が順にそう言葉にする。
と、其処でその女性は鉄幹に手を当てている葵を見ると、顔を険しくさせる。
「貴方、鉄幹に何をしてるの……?」
「治療です。先程まで歩さんと角さんと激戦していたので……」
「そういえば、その角は何処に行ったんだ?」
「先に帰って行ったよ」
葵の説明する後ろで魔理沙と歩がそんな会話をする。
しかし、女性はその葵の言葉を聞いて少し驚いた後、申し訳なさそうな顔をする。
「そう、ごめんなさい。善意の行動に対して先程の対応をして……」
「いえ、大丈夫ですよ」
「私は『雲居 一輪』。そして、この白い塊が私の相棒の『雲山』。雲の妖怪よ」
「……妖怪を使役する尼か」
「そして、今貴女が治療してくれているのが『鎧 鉄幹』。私達の仲間なの」
「そうでしたか……すみません、侵入してきた私達が悪いのに……」
「良いのよ!」
一輪と葵がそんな会話をしているが、そこに霊夢が割って入る。
「は〜い、話はお終い。ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、良いかしら?」
「良いけど、それは中に入ってからにしましょう。雲山、鉄幹をお願い」
一輪は雲山に顔を向けてそう頼むと、雲山は無言で鉄幹を持ち上げたのだった。
***
一方、霊夢達とは別ルートで侵入をした朱鳥と絶月はというと、船の中を彷徨っていた。
「……上の方からの爆発音が消えたな」
「……そうだな」
その後には会話が続かず、静寂が辺りを包み込む。
しかし、其処に一つの足音が近付いて来るのが聞こえてきた。
その音に二人して警戒すると、直ぐそこの角からその音の正体が見えた。
その角から現れたのは、大剣を背に背負った男であった。
「お前ら、侵入者か?」
「……まあ、確かに侵入してきたが……」
「……」
朱鳥は警戒心を解かずにそう答えると、相手はその背にある大剣に手を掛ける。
それを見ると、朱鳥と絶月は警戒心を最大限まであげ、いつでも戦える様に構えを取る。
「今は侵入者は排除するって俺達の中で決まってる事なんだ。だから……排除だ」
「……せめて追い返すとかはないのか」
「ああ、勿論追い返す為に俺は今からお前達と戦うんだよ」
そう言うと、大剣を抜き、それを構えて戦う体勢を取る男。
「此処のルールはちゃんと知ってるから安心しろ」
「なら、一つだけ聞かせてくれ」
「?何だ?」
男は顔を顰めて朱鳥を見ると、朱鳥は体勢を解いて質問する。
「名前だ。お前の名前。戦う前にお互いの名前も知らないのはな……」
「それぐらいなら良いだろう。俺は『獅子宮 凱火』だ」
「枢木 朱鳥だ」
「……我樹牙 絶月だ」
「そうか。さて、これで何も気にしないで戦えるぜ‼︎」
朱鳥達の相手となる男、凱火はそう言うと、剣を構え直した。