東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百九十一話

ぬえの最初の弾幕を絶月は容易くかわし、朱鳥もまたそれに当たらぬように後ろに下がり、絶月とぬえの弾幕ごっこを傍観する事にした。

 

そして互いに弾幕をぶつけ合っていたが、最初に弾幕を消したのはぬえだった。

 

「それじゃあまずは小手調べ。妖雲『平安のダーククラウド』」

 

そう宣言すると黒い雲を放出し、その雲から光源が現れた。

 

その光源からレーザーと雫弾が撃たれるが、絶月はレーザーに気を付けながら雫弾を避ける。

 

「……なんだ、こんなもんか。大妖怪様も大したことないな」

 

「あら、それは挑発のつもり?悪いけど、その挑発に乗るつもりはないわよ?」

 

ぬえは余裕そうな笑顔を浮かべ、手でその口元を隠し、優雅に笑う。

 

その姿は、レティシアがクスクス笑ってる時にする仕草である。

 

「……」

 

「あら?どうしたの?」

 

「……テメェに関係ねえよ」

 

「なら下僕になった時に教えてもらうわ!」

 

すると、今度は赤い弾幕を絶月に向かい撃つが、それを絶月は掻い潜り、ぬえとの距離を縮める。

 

「一ノ罪『憤怒の怒号』」

 

そして殆ど距離が無いような所でスペルを宣言し、赤い色をした砲撃を放つが、ぬえはそれを体を逸らして躱す。

 

「ふふっ、残念当たらない」

 

そう言ってから左足を軸として右回転し、右脚で絶月の腹に蹴りをお見舞いする。

 

その蹴りの威力が予想以上にあり、絶月はそのまま受身も取れずに地面に背中を打つける。

 

「ぐっ……」

 

「絶月!」

 

これには流石に心配そうな声を上げる朱鳥だが、絶月が立ち上がったのを見て胸をなでおろす。

 

「あら?まだやられないの?人間にしては頑丈ね……というか、本当に人間?まあ良いわ。さっさと決めて私の下僕にさせてあげる」

 

ぬえは余裕そうな笑みを浮かべてそう言うと、終わらせるためのスペルを宣言する。

 

「恨弓『源三位頼政の弓』」

 

その後に大量のレーザーをまず上に放つと、そのレーザー達は下に落ちる。

 

その落ちる所を予測して絶月は移動するが、その落ちる途中でレーザー達は米粒弾へと変化する。

 

「チッ」

 

絶月は舌打ちしてその米粒弾を避けるが、しかしレーザーを未だに上に撃っているぬえの姿から、まだスペルは終わらないと分かる。

 

いつ終わるかも分からないがまず避けるに専念し、避けれなさそうなのは自身が持ってる十文字槍で叩き落とすを繰り返していると、その放たれた弾幕の幾つかが朱鳥の方に行ってるのも目にする。

 

「朱鳥‼︎」

 

「分かっている‼︎」

 

朱鳥もそれに気付いていたようで避けるが、その最中、自分の足を絡ませてしまい転けてしまう。

 

「ッ!」

 

流石にもう避けれないと悟ると、くるであろう痛みに耐えるために目を強く瞑る。

 

しかし、その瞬間に誰かに抱き締められる感触と、その人物の呻き声が耳に入った。

 

その人物が誰なのか、流石に分かった朱鳥は直ぐに目を開ける。

 

「!絶月‼︎」

 

その朱鳥の盾となった絶月はというと、足や腕といった軽傷な所もあれば、肩や腹といった重傷な所もあり、大量出血で死んでもおかしくない状態である。

 

そもそも、未だに朱鳥に当たる弾幕を自分の体を盾にして守っているのだから、軽傷だけで済むわけがない。

 

そうしてスペルが終わると、絶月は倒れた。

 

「あ〜、間違って殺しちゃったわね……残念」

 

ぬえは本当に残念そうな顔をするが、その顔は直ぐに驚愕へと変わる。

 

突如として絶月の体がイキナリ割れたのだ。

 

物で例えるならステンドグラス。それが割れた瞬間と同じである。

 

そしてその割れた欠片達が集まりだし、絶月の体がその場で創られた。

 

「えっ⁉︎ど、どういうこと⁉︎」

 

ぬえもこれには流石に吃驚だという顔をする。

 

それもそうだろう。

 

ぬえは絶月のことを『普通』の人間だと思っていたのだから。

 

その『普通』の人間がこうして復活すれば、驚きもするだろう。

 

「……絶月」

 

「……なんだ」

 

その絶月に助けられた朱鳥はというと、絶月の行動の意味が分からないというような顔で絶月に問い質す。

 

「……さっきの行動はなんだ?何故私を助けた?……私が不死身なのはお前も知ってる事だろ」

 

絶月はそんな朱鳥に背を向けた状態で話す。

 

「関係ねえよ。俺はな……背中に守るもんがいる限りは誰も傷つけさせねえって誓ってんだよ」

 

絶月はそう言うと、未だに持っている十文字槍を強く握りしめる。

 

「……結局、俺が守れた人間なんて一人もいない。どうあがいても全員死んじまってんだからな」

 

「……絶月」

 

朱鳥はそんな絶月を見つめると、絶月は振り返り、片膝をついて朱鳥と視線を合わせる。

 

「だが枢木。……いや、朱鳥。お前は俺と同じ、俺と決して別れたりすることがない初めての存在だ。俺はお前と生きることを決めた。だから俺はお前を守る。……お前に傷は決して負わせねえ」

 

「ッ‼︎」

 

その言葉を聞いて朱鳥は頬を紅くして絶月を見つめるが、その後ろからそんな二人をずっと見ていたぬえは叫ぶ。

 

「私を無視して良い雰囲気を出すなんて……良い度胸ね‼︎正体不明『忿怒のレッドUFO襲来』‼︎」

 

すると赤色のUFOが八つ現れ、ぬえを中心として螺旋軌道を描きながら、その描いた所に赤い弾幕を置いていく。

 

その弾幕は少しの間その場で止まっていると、絶月に向かって飛んでいく。

 

「二ノ罪『傲慢の処罰』」

 

しかし、絶月が金と銀と帯状の弾幕を操り、その弾幕達を撃ち落とし、UFO全て破壊すると別のスペルを宣言する。

 

「六ノ罪『暴食の贅沢』」

 

絶月はその後に黄色の弾幕を大量に撃ち出すと、ぬえはその弾幕をぬらりくらりとかわし始める。

 

「これぐらい……」

 

そんな余裕で躱しながらも絶月との距離を詰めていると、一つだけ当たってしまった。

 

その瞬間、打ち出された全ての弾幕がぬえへと向かう。

 

「なっ⁉︎」

 

ぬえはその場から離れるために一度後退するが、その弾幕達もそのぬえの後を追っていく。

 

「追尾弾幕ね……厄介ね‼︎」

 

ぬえはそう叫んで弾幕と三つ又の槍で弾幕を撃ち落としていると、絶月は朱鳥の近くから跳躍し、ぬえの背後へと降り立つ。

 

「‼︎しまっ……」

 

「……あの時の蹴りのお返しだ」

 

絶月のその言葉通り、左足を軸にして右回転、からの右蹴りを腹に入れると、ぬえは膝をつき、その首に十文字槍の刃先を向けた。

 

「……終わりだ」

 

「……はぁ、そうみたいね」

 

ぬえは溜息を吐いてから負けを認めると、絶月の弾幕は全て消え去った。

 

「貴方の勝ち。約束通り、種を取り除いてあげる」

 

ぬえはそう言って指を鳴らすと、UFOは何かの木片へと姿を変えた。

 

「これが……」

 

「そう。それが貴方達が探してた『飛倉の破片』。他に散らばったのもちゃんと元に戻ってる筈よ」

 

「……そうかよ」

 

絶月はそう言うと十文字槍をぬえの首から離す。

 

そんなぬえに朱鳥は近付くと、手を差し出した。

 

「……何?」

 

「立たせるためだ。お前も十分傷付いてるだろ?」

 

朱鳥はそう言いながらぬえの姿を見る。

 

その服は所々汚れていたり、破れていたりしている。

 

ぬえはその手を暫く見てからその手を取り、立ち上がる。

 

「……有難う」

 

「どう致しまして。さ、飛倉探しを再開するぞ、絶月」

 

「……ああ」

 

朱鳥は絶月とそう離すと、ぬえから離れるのだった。

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