ぬえが飛倉の破片を正体不明から分かるようにした後は飛倉の破片は楽に見つけられるようになった。
そうして全員が順調に集め、暫くすると船へと戻ってきた。
「……これで、全部ですか?星さん」
「少し待ってください。数えてみます」
葵からの質問に星はそう答えて早速数えると、確かに全てが集まっていた。
「はい、全部集まってます」
「良かった……これで封印されているという人を解放できるのですね‼︎」
葵が嬉しそうな笑顔を浮かべるが、逆にルカは目を細めて村紗を見る。
それに気付くと、村紗は首を傾げて聞く。
「貴女、どうしてそんな顔をしてるわけ?」
「……いや、気にしなくていい」
「すっごい気になるんだけど」
「しょぼい事しか出来ない舟幽霊には話す事は無いってことだろ〜?」
「はあ?」
そんな村紗の後ろで大洋はそう言うと、村紗は勢いよく後ろを振り返った。
「……何だろ?今、頭の中でゴングが鳴った気がする」
「ゴングですか?」
想起の言葉に早苗は訳が分からないと言った表情をするが、想起の言ったことは間違っていない。
現に、痴話喧嘩の幕は切って落とされたのだから。
「何がしょぼいですって⁉︎私は船を沈める事が出来るんだから‼︎貴方なんて『船を守る精霊』とか何?安全祈願でもするわけ?うっわ、男なのに女々しい奴!」
「テメェなんて船沈ませるって言っても、小さな船しか沈ませれないんだろ?お前、柄杓使って水いれてくんだろ?そんなので大きな船沈ませれるわけないだろ!」
「何よ‼︎私の凄さを貴方が知らないだけで、昔はちゃんと沈めてました〜」
「『昔』だろ?『今』じゃ出来ねえんだろ?うわダッセ」
「はあ⁉︎もう良いわ‼︎絶対許さない‼︎もう怒ったんだから‼︎」
「今ならケンカを安く買ってやる!持ってけ荒波女‼︎」
「後悔しないことね‼︎」
そんな二人は遂にスペカまで構えるが、喧嘩してる二人に静かに近寄る雲山。
葵はその雲山を見ると、止めに出ようとした動きを止め、終わりを見ることにした。
そしてその雲山はと言うと、まずは大洋に拳骨を入れた。
「痛ってぇ‼︎」
「ははは!私を馬鹿にした罰が下ったわね‼︎」
村紗はそんな風に大洋の事を笑ったが、しかし雲山が今度は自分に近づいて来てるのを見て、こうちょくする。
「え、ちょっと。もしかして私も⁉︎」
「二人とも喧嘩するのが悪いのです。反省しなさい」
「いやぁ‼︎」
そんな村紗の叫びも虚しく、雲山に拳骨を入れられ、その場に頭を抑えて座り込んだ。
「すみません、お見苦しい所をお見せして」
「い、いえ……気にしないで下さい」
「本当だ。くだらない時間を食わせるな」
星からの謝罪に葵は苦笑いで対応するが、その後ろから夢幸がそう付け加える。
そんな夢幸の言葉にはすでに慣れてしまった葵はただただ苦笑するだけである。
そんな後ろでは、先程の事でルカは鬼灯から問いただされていた。
「で、結局、お前はどうして警戒しているんだ?」
「……此奴らが本心で言ってるのは分かる。嘘なら分かるしな。ただ、此奴らの親玉が本当に『敵』じゃないとは言えないだろ?」
「……なるほど」
ルカのその言葉に、鬼灯は納得しながらも呆れた顔をするのだった。
***
あの後、村紗と大洋の頭に出来たたんこぶは葵が治し、船は村紗の運転で移動し始めた。
そうして船はスムーズに目的の場所である『魔界』の一角、『法界』へとやって来た。
「……えっと、今更ながらですが、私達が此処にいて良いんでしょうか?此処、法界ですよね?」
「法界ですが大丈夫ですよ。立ち入っても」
「そ、そうですか?なら、良いのですが……」
葵は星からその言葉をもらいながらも、緊張してるようで、動きが何処と無くぎこちない。
そんな葵を見て霊夢は溜息を吐く。
「葵、あんた緊張し過ぎよ。もっとリラックスしなさい」
「そういう霊夢は少しは緊張した方が良い気もするのですが……」
「何でよ」
「いえ、だって此処は法界ですよ?」
「だから何よ」
「……もう、良いです」
葵は霊夢との其処で切ると、少しだけだが緊張が解れた。
しかし、その後は会話も無く歩いていると、星達の歩みが止まった。
「着きました」
「此処にいるのか?お前達が慕ってるその封印された奴が」
「はい」
魔理沙からの問いに星は答えると、魔理沙を始め、霊夢達を見渡した。
「皆さんが集めてくれた飛倉の破片を私に渡してください。封印を解きます」
それに全員が頷いて飛倉の破片を渡すと、星が封印を解き始める。
「この封印を解く作業は少しばかり時間が掛かるから、なんなら話すかい?」
「そうですね……でしたら、質問をして良いですか?」
ナズーリンからお喋りタイムの時間を貰うと、葵はそのナズーリンに質問をする。
「ん?良いよ、何でも聞いて」
「でしたら、星さんが宝塔を持って、そしてあんな風に扱えるという事は、星さんは『毘沙門天』様なのですか?」
「まあ、半分当たりで半分間違いだな」
その質問にそう答えたのは凱火。
「確かに星は『毘沙門天』だが、本物の『毘沙門天』様の弟子だ」
「弟子、ですか」
「そうです。そして、私は本物の『毘沙門天』様の使いです‼︎」
対してナズーリンはそう言うと、少しだけ胸を張るような仕草をする。
しかし、それに反応を示したのは葵だけで、後の全員は興味がなかったのかスルーした。
反応を示した葵はというと、目を輝かせている。
そしてまた少しだけ会話をすると、星の声が掛かった。
「皆さん‼︎聖の封印が解けましたよ‼︎」
それが聞こえた為、全員で封印されていた人物を見ようと立ち上がり、星の下まで向かう。
そして近付けば、確かに星以外に見たことない人物が一人。
金髪のロングウェーブに紫のグラデーションが入っている髪。金色の瞳と黒のゴスロリ風のドレスを着て、表が黒で裏が赤色のマントを羽織った女性。
この女性こそ、数千年前に封印された尼、『聖 白蓮』なのだった。