東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第百九十八話

魔理沙と桔梗は、今初めてマリアの鈍感さを体験し、精神的に疲れきっていた。

 

その証拠に、二人して机に突っ伏している。

 

「え、えっと……ご、ごめんなさい?」

 

「いや、謝らなくて良いから……寧ろ、謝ってほしいのは別のやつだから」

 

この事を教えてくれなかったレティシアに少しだけ怒りたくなったが、きっと怒ってもどこ吹く風で聞き流すだろうと予測し、溜息を吐いただけに終わらせた魔理沙。

 

そして、体を起こしてから、説得を始めた。

 

「なあ?マリアがどれだけ狼の事が好きなのかは分かったけど……狼の事、『LOVE』の意味で好きなのか?」

 

「?ラブ……『LOVE』?えっと……好き、だよ?大好き……違うの?」

 

マリアが困惑の表情で聞き返してきたのを、今度は桔梗が返す。

 

「えっとね、違うよ。『LIKE』は友人や家族としての『好き』だけど、『LOVE』は恋人、恋愛としての好きなんだよ。ねえ?マリア。貴女はどっち?」

 

そうマリアに聞くと、マリアは悩み始めた。

 

「…………どっちの……」

 

そうして約十分間、たっぷり悩んだ結果、いきなり泣き始めたマリア。

 

それに驚いた魔理沙と桔梗に、マリアは泣きながら言う。

 

「うぇ〜ん!分かんないよ〜!魔理沙〜!桔梗〜!」

 

「お、落ち着けって……ゆっくり、ゆっくり考えれば良いから……な?」

 

マリアを落ち着かせるために魔理沙はそう言うが、マリアはなかなか泣き止まない。

 

「うぅ……だってぇ……!」

 

「マリア……ねえ?貴女の本当の気持ちはどう?」

 

桔梗が落ち着いた声でそう問い掛けると、そのお陰か、マリアも少し落ち着きを取り戻した状態で返した。

 

「えっと……好き、大好き……狼のこと……」

 

「そう……ねえ?マリア。私達はね、マリアと狼に、恋人同士になってほしいなって、思ってるの」

 

「……恋人同士?」

 

「そうだぜ!そうすれば、一緒にいられるしな!」

 

「そう。ずっとね」

 

桔梗と魔理沙が笑顔で言うと、マリアは涙目でありながらもその目を真っ直ぐに見返して言う。

 

「……でも、狼はずっと一緒にいてくれるって、言ってくれたよ?ずっと側にいるって……」

 

それに魔理沙は苦笑を浮かべた。

 

「あのな〜、それは『従者』としてだろ?私達から見たら、それは普通に見えて少し違うんだ。お前達の関係って」

 

「そうね。似てる関係で言えば、永久と妖夢ね」

 

「永久と妖夢が、私と狼の関係?」

 

それを言われてまた悩み始めたマリア。

 

「そう。それにね、マリア。恋人同士になるとね、相手から離れなくなるの。だから、マリア。狼の事が大好きなら、私達は付き合ってほしいって、思ってるの」

 

「……うん」

 

マリアはそれに頷く。

 

それを見て、魔理沙と桔梗はお互いに笑顔を向ける。

 

……が

 

「……でも、恋人同士って、何をすれば良いの?」

 

まだまだ、問題は山積みだった。

 

***

 

あの後から時間が経ち、既に時刻は夕方となっていた。

 

マリアに説得をしていた魔理沙と桔梗は清々しい笑顔を浮かべていたが、どこか疲れている様に感じられた。

 

その反対に、夢幸と必は全く疲れた様子が無く、マリアの説得よりも楽に終わったのだと分かる。

 

「はぁ、本当に疲れたぜ……まさか、キスすらしてたとはな……」

 

「まあ、そのキスも『挨拶』の意味らしいから、キスには含まれないでしょ……多分」

 

魔理沙と桔梗は互いに一度顔を見合わせ、お互いに深い溜息を吐いた。

 

「お疲れさん。相当手古摺ったみたいだな」

 

必が桔梗に労いの言葉を投げ掛けて直ぐ、マリアが部屋から出て来た。

 

それを見て、魔理沙達は直ぐに壁に隠れて、マリアの後を追った。

 

「……なあ?尾行する意味、あるのか?」

 

「あるぜ!成功するかどうか、気になるじゃないか!」

 

「ふん、成功は必ずする」

 

「それでも気になるのよ」

 

そんな風にひそひそ声で話していると、マリアが狼を見つけ、走って近寄る。

 

狼もそれに気付き、マリアに注意した。

 

「マリア、走ると転ぶ……」

そんな注意をした直後、マリアは本当に転けてしまい、倒れそうになる。

 

それを狼は素早く受け止め、マリアを心配そうに見つめた。

 

「マリア、大丈夫か?」

 

その狼の声に、マリアは耳まで赤くさせる。

 

それだけで、緊張している事、狼を意識している事が伺えた。

 

「だ、大丈夫!」

 

「そうか。走ると転ぶから、あまり走ったらダメだぞ?」

 

「わ、わかった!」

 

マリアがそう言うと、狼は抱き締めている今の態勢を解こうとするが、マリアはその腕を掴んで止めさせた。

 

それを見て、魔理沙と桔梗は自分達の努力が報われていると実感出来、嬉しそうに笑顔を浮かべて様子を見続けた。

 

「……マリア、どうした?何か用があるのか?」

 

対して、狼は未だ抱き締めている態勢にも関わらず、何処も焦った様子がなく、マリアに落ち着いた声でそう問い掛ける。

 

それにマリアは少しの寂しさを感じながらも、口を開いた。

 

「あ、あのね!狼!その……えっと……」

 

そして、一番の要件を言おうとしたマリアだが、緊張のし過ぎで言葉が出てこない。

 

それを察した狼は、マリアにある提案をする。

 

「……マリア、何処かに一緒に出掛けるか」

 

「!デート?」

 

「そうだ。デートだ」

 

その言葉を聞き、魔理沙は頭を抱えながら小さな声で呟いた。

 

「デートって……絶対意味違うだろ……」

 

ただ、小さな声だったために、それはマリアには届かず、二人は何処かへと移動し始めた。

 

その際、狼はマリアの後ろで二人を覗き見していた魔理沙達をちらりと一瞥すると、そのまま歩いて行った。

 

「……あ〜、やっぱり暴露てたか」

 

「当たり前だ。犬は嗅覚、聴覚共に人よりも鋭い。俺達の話など、全部筒抜だったはずだ」

 

「あ〜……となると、これは尾行はやめた方が良いかもな。近くにいたら暴露るだろうし」

 

「だね。結果はまた今度、マリアにでも聞こっか」

 

桔梗の提案にその場の全員が賛成し、その日は元の場所へと帰って行った。

 

***

 

魔理沙は夢幸と帰ってる道中、狼との説得の様子を夢幸に聞き始めた。

 

「なあ?そっちはどんな風な説得をしたんだ?」

 

「簡単なことだ。あの執事は自分の気持ち、あのメイドの気持ちに気付いていた。だから、その気持ちに応えてやれと言ったんだ……あの半霊が」

 

「必が言ったのか……というか、狼の奴、全部気付いてたのかよ……」

 

「ああ。ただ最後に、『応えはするが、それはマリアの様子を見てから決める』と言っていたからな」

 

「あ、だからあの時、『成功は必ずする』って言ったのか……」

 

「そう言うことだ」

 

それで魔理沙は納得し、マリアと狼の結果も知れて、一安心してその夜は眠りについた。

 

その翌日、一応マリアに結果を聞き、やはり付き合うこととなった事を知り、レティシアから報酬の魔導書を貰えて、とても嬉しそうにしている魔理沙が紅魔館で見られたのだった。

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