東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第二百二話

葵が神社へと帰ってきた後、異変解決は夜だと聞かされたルカ達は勿論、葵を心配した。

 

それに葵は作り笑いで返したあと、人里へと降りていった。

 

それから時間が経ち、妖怪の時間となった。

 

神無月神社の住人全員準備をし終えたが、その中にミコトが何の違和感もなく入っていた。

 

「……本当に、すみません。ついて来ていただいて」

 

「いや、構わない。葵がどんな風に解決しているのか気になってたしな」

 

「……そう、ですか」

 

葵はそれに作り笑いで返すと、先に飛んだ。

 

それをミコトは見つめると、鬼灯に顔を向けた。

 

「……一つ聞いていいか」

 

「……なんだ?」

 

「どうして、葵は怯えている?」

 

そのミコトからの質問は当然くるだろうと予想していた鬼灯は、考えることなく答える。

 

「彼奴の『トラウマ』だ。真っ暗闇が苦手なんだ。だから、彼奴の部屋は月の光が当たりやすい部屋になってるだろ?」

 

「……確かに」

 

「というか、それは命から感じられるんじゃないのか?」

 

「そうだが、ちょっと気になったのさ」

 

「そうか」

 

二人がそんな会話をしている間に既にルカと想起も飛んでおり、あとはミコトと鬼灯のみとなっていた。

 

「……私達もいくぞ」

 

「……ああ」

 

「……ミコト」

 

そうして飛ぼうとしたミコトを、しかしそう言って鬼灯が止める。

 

止められたミコトは鬼灯の方に顔を向けてみると、とても真剣な顔をした鬼灯がそこにいた。

 

「……葵の事を、頼む。一番信頼できる者が隣にいた方が安心出来るだろう」

 

「……それはこっちの霊夢やルカ、それに鬼灯や想起の方が……」

 

「頼む」

 

鬼灯が頭を下げてミコトに頼むと、ミコトは慌てた。

 

まさか、神様から、いや鬼灯から頭を下げられるとは思っていなかったのだ。

 

「あ、頭を上げてくれ。分かった。異変の間は側にいるから……」

 

「……ありがとう」

 

鬼灯がお礼を言ったあと、二人は今度こそ飛び立ち、集合場所である博麗神社へと向かって行った。

 

***

 

博麗神社に全員が集まると、そのまま異変解決組御一行は飛び去っていく。

 

「それにしても……歩〜、昼頃には聞けなかったけど、お前、帰ってくる前までは何処に行ってたんだ?」

 

その飛んでいる最中、魔理沙が歩にそう質問すると、歩は笑顔で答えた。

 

「地霊殿と命蓮寺だ!地霊殿で角と戦って、命蓮寺では凱火と戦ったんだ!……だけど」

 

「?だけど?何かあったのか?」

 

魔理沙が歩の困ったような表情を見て聞くと、栞から貰ったカードの一枚を魔理沙に見せた。

 

そのカードは未だ空白で、それが意味するところはつまり、まだ『完全』には習得出来ていないということ。

 

「おい……それで大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

「歩さん、それ外の世界だと『フラグ』って言うんだよ」

 

「それも、『死亡フラグ』です……」

 

「大丈夫だ!そんなフラグは折ってやる!」

 

想起と早苗が歩に外の世界での事を伝えると、歩は自信満々に『折る』と言った。

 

それを見て、二人は思う。

 

((確かに……歩さんは普通じゃないからね))

 

二人のそんな思いは、歩には暴露ていなかった。

 

その後ろでは、霊夢が心配そうに葵を見ていた。

 

「……葵、大丈夫?」

 

「……うん、大丈夫だよ。霊夢」

 

霊夢が葵にそう声を掛けるが、しかし葵はやはり作り笑いで返すだけ。

 

ミコトはそんな葵を見ると、葵の横に並び、その手を握る。

 

「!?」

 

葵はまるで予想出来なかったように驚いた顔をミコトに向けるが、ミコトはそれは気にしていなかった。

 

気にしていたのは別のところである。

 

握ったその手が、密かに震えているのだ。

 

「……怖いか?葵」

 

「……大丈夫です。確かに、怖いですけど……一人じゃないですから……」

 

葵はもう何度目かもわからない作り笑いで答えるが、ミコトはそれに悲しそうな目で見つめた。

 

「……俺は、そんなに信用ならないか?」

 

「!?ち、違います!信用してます!」

 

「なら、なんで……そんな作り笑いを浮かべてる?」

 

「それは……」

 

葵はそれに答えられずにいた。

 

理由など、葵も、そして葵によく似たミコトも分かっている。

 

ただ、相手に心配を掛けたくないだけなのだ。

 

葵はそれを口に出さず、顔を俯かせた。

 

ミコトは覗き込むように葵の顔を見ると、口を開いた。

 

「……葵。本当に信用してくれてるなら……ちゃんと気持ちを言ってくれ。俺は命から感じ取れるけど、霊夢は違うだろ?」

 

それを聞いた葵は一度ミコトの目を見る。

 

それは同時にミコトも葵の目を見る事ができる事になるのだが、その目には涙が溜まっていた。

 

「……葵、大丈夫だ。安心していい」

 

「葵、本当に大丈夫?」

 

「……」

 

左にいる霊夢が声を掛けてきたため其方に顔を向けてみれば、其処には霊夢と同じく心配そうな顔をしているルカがいた。

 

葵はその二人を見た後、一度周りを見渡し、深呼吸をする。

 

その一連を見ていたミコトは直ぐに感じ取ることができた。

 

命からはまだ恐怖は残っていたが、しかし手はすでに震えていない。

 

それなりに安心できた証拠でもある。

 

「ごめんね、二人とも。心配させて。ミコトさんにも……心配させてすみません」

 

「大丈夫だ。気にしなくていい」

 

「ミコトと同じだ。気にしなくても大丈夫だ」

 

「ええ!そうね!大丈夫!……もう、こういう事はちゃんと言う。誤魔化さないの。じゃないと、余計に心配になるんだから……」

 

「うん……ありがとう、霊夢」

 

葵が笑顔で霊夢を見れば、霊夢もまた笑顔で返す。

 

それを見てミコトはもう大丈夫だと判断したのか離れようとするが、しかし葵が離さなかった。

 

「?葵?」

 

「……その、もうちょっと、お願いしても良いですか?……まだ、その……」

 

葵が不安そうな目でミコトを見つめると、それで理解したのかミコトは離れるのを止めた。

 

それに安心した葵はホッと吐息を吐く。

 

(……兄妹がいたら……こんな感じだったのかな?)

 

そんな事を考えながら。

 

***

 

霊夢の勘を頼りに、まず最初に来たのは冥界。

 

「いや、なんで冥界なんですか?また肝試しでもするのですか?」

 

「いや、しないから。というか、未だに冥界は苦手なわけ?」

 

「霊夢さんとは違いますから!そんなしょっちゅう来ませんし、まして此処は死者の園のような場所ですよ?呪われたりしたら……」

 

「ふ〜ん……で?」

 

「……もう、良いです」

 

早苗はいつも通りの霊夢の反応に少し項垂れる。

 

何時迄も早苗はこの中の『常識』である。

 

その会話を終えると、直ぐに階段を登り、白玉楼に黙って侵入する霊夢。

 

すると、その霊夢の頭を狙った弾幕が来たが、それを葵が結界で防ぐ。

 

霊夢は霊夢で狙ってきた張本人である妖夢を睨むと、妖夢は剣を構え、霊夢達に対して敵意剥き出しのまま話しかける。

 

「侵入者!此処は白玉楼!冥界だ!一体なんの用があって……」

 

「妖夢、落ち着いて周りを見ろ」

 

どうやら周りがちゃんと見えていないらしい妖夢に鬼灯が呆れ混じりに話かけると、その声で鬼灯がいる事を察し、言われた通りに周りを見た。

 

「……!ご、ごめんなさい!まさか、貴方達だったとは……」

 

「夢想封印一回で許してあげる」

 

「ええ!?」

 

「霊夢!」

 

「冗談よ、冗談」

 

葵が霊夢を叱るような声を上げるが、霊夢はまるで風のように受け流す。

 

言葉は『冗談』といっているが、しかし霊夢の事を知っている者なら分かる。

 

さっきのは葵が間に入らなければ本当に撃っていたことを。

 

「それで、此処になんの御用でしょう?」

 

「ああ。実は幽々子に聞きたいことがあるんだ……入ってもいいか?」

 

鬼灯が妖夢にそう問いかけると、妖夢はそれに頷いて返し、全員を中へと入れた。

 

***

 

「……此処にこんな風に集まったのはいつでしたっけ?」

 

葵がふと、前にもこんな感じで異変解決のために白玉楼に来た覚えがあると言い、全員にそう問いかけた。

 

しかし、その時のことをまずミコトは知らないし、その時に会ってすらいなかった歩も夢幸も、想起も早苗も知るはずがない。

 

その時のことに覚えがある一人の魔理沙が答えた。

 

「あ〜……!あの時の異変だ!ほら、いろんな季節の花が咲き乱れた異変!」

 

「……ああ。そんなのも有ったわね……」

 

「あの時か……」

 

「……確かに、あの時以来ですね。異変解決のために来たのは」

 

その時の事を思い出すと同時に、葵は死んだ母との事も思い出す。

 

暫く思い耽っていると、永久が部屋の中に入ってきた。

 

その後ろから入って来たのは、妖夢と、一番に用事がある幽々子。

 

「こんばんは、こ〜んな綺麗な三日月が浮かんでいるのに月見もさせてくれないなんて、悲しいわね〜」

 

「お前は365日中、月見をしてるだろ」

 

「あら?月見酒もしてるわよ?」

 

「殆どは団子を食べてるだろ」

 

「幽霊はお腹が常人より空きやすいのよ〜。困るわよね〜」

 

「この屋敷の食費と妖夢達がな」

 

幽々子と鬼灯のそんな掛け合いを、葵は楽しそうに笑って見ていた。

 

その掛け合いが一通り終わると、幽々子は背を正して座り、扇を開いて口元を隠しながら言った。

 

「それで?私に何の用?」

 

「この神霊大量発生について、お前の意見を聞きに来た」

 

「幽霊だから?」

 

「冥界の管理人であり亡霊だからだ」

 

幽々子は鬼灯の答えを聞いて少しだけ考える素振りを見せると、口を開く。

 

「そうね〜。ちゃんとした理由までは私も分からないけど、最近、新入りが出来たでしょ?其処が怪しいと思うわよ〜」

 

「新入り?」

 

「命蓮寺の皆さんの事ですかね?」

 

「いや……命蓮寺の連中は関係ないだろう」

 

「……」

 

其処で全員が一度思考するが、それを断ち切ったのはやはりと言うべきか霊夢だった。

 

「あ〜もう!ウジウジ考えるのは性に合わないわ!さっさと行動する!ほら、行くわよ!」

 

霊夢はいきなり立ち上がると、全員を立たせるように腕を掴んだりした。

 

「ほら!全員立つ!早く!素早く!」

 

「ちょっ!?霊夢!?」

 

「分かった!分かったから!」

 

「俺に指示を出すな」

 

「なら立つ!早く!私はさっさと終わらせて寝たいのよ!」

 

「え、なら何で夜に……」

 

「お茶飲むのに忙しかった」

 

「ダメだこの巫女……」

 

そんな会話をする後ろで、ミコトは何処か暖かい目を向けていた。

 

「?どうしました?ミコトさん」

 

「いや……こっちの皆んなも賑やかだなと思ってな」

 

「……いつもこうですよ。だから、とても楽しいです!」

 

葵は笑顔を浮かべてミコトに言うと、ミコトも笑顔を向ける。

 

それを見ていた妖夢と永久は、お互いに顔を見合わせ、幽々子に向かい合う。

 

「あの、幽々子様……」

 

「良いわよ?一緒に行動しても」

 

「「……え」」

 

妖夢と永久は幽々子からの言葉に少し目を見開いた。

 

まだ何も言っていなかったのに、幽々子は了承した。

 

既に何を言うか、予想がついていたという事である。

 

「ふふっ、何年貴方達と一緒にいると思ってるのよ。二人とも、私にとっては掛け替えのない家族で、大切な従者よ。二人の願いは極力聞くわ」

 

「幽々子様……」

 

「……ありがとうございます」

 

妖夢と永久は幽々子に頭を下げると、葵達の輪の中に入ったのだった。

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