東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第二百五話

青い女性とキョンシーのコンビに牽制として霊夢が弾幕を放っている間、葵は動かず状況を冷静に観察している。

 

そうしなければ、相手の隙を狙って捕縛したりなど出来ない。焦れば失敗する。

 

だからこそ、焦らず冷静に霊夢の行動も見て行動するのが葵の何時ものやり方である。

 

しかし、だからこそ相手に不信感を抱かせるのだ。

 

「あら?貴女からは攻撃しないのかしら〜?私達、舐められてるわけ〜?」

 

「いえ、舐めているわけではありません。私は霊夢の補助を担っていますから」

 

「あら〜、そうなの」

 

青い女性はそれを聞くと、ニヤリと笑う。

 

「つまり、貴女は其処の巫女の『足手纏い』ね」

 

「ッ!」

 

「あんた!」

 

青い女性から放たれたその言葉に葵は反応し、霊夢は激怒し弾幕を増やして青い女性に集中攻撃する。

 

この青い女性は、葵の一番気にしていることを的確に突いてきたのだ。

 

「あら〜、そこの貴女はどうしてそんなに怒ってるの?事実じゃな〜い?」

 

「誰が事実よ!私はそんな事、一度だって思った事ないわよ!」

 

「霊夢……」

 

しかし、その霊夢の言葉に感動し、涙を浮かべる葵だが、しかし青い女性は未だに笑ったままでいる。

 

「あら〜?それなら、今回、初めて『そう思う日』になるわね〜」

 

「どういうことよ?」

 

「教えな〜い。それよりも、私ばっかりに集中してて良いの〜?」

 

「結界『四重結界』!」

 

葵はそう宣言しながら自分と霊夢に四枚の結界を張る。

 

その行動に驚いた霊夢が葵を見ようとするが、その行動の意味を直ぐに知ることになる。

 

「毒爪『ポイズンレイズ』!」

 

後ろからその宣言とともに弾幕が襲いかかってきたのだ。

 

葵は宣言しようとしていたそのキョンシーに気付き、先に結界を張ることに成功した。

 

そして、そのスペルがブレイクされた後、もう一度青い女性を見ると、やはり笑っていた。

 

しかし、その笑みは先程の嫌な笑みではなく、余裕そうな笑みだった。

 

「何よ、その笑みは」

 

霊夢が顔を顰めながらその女性に聞くが、相手は答えない。

 

それにムッときたのか、霊夢は一つのスペルを宣言した。

 

「境界『二重弾幕結界』!」

 

そのまま青い女性を結界の中に捕らえ、弾幕を女性に向かって撃ち始める。

 

これなら余裕の笑みを湛えてられないと考えた霊夢だが、しかし直ぐに何かを感じ取った。

 

「……葵」

 

「分かってます。今、結界を一部壊されました」

 

葵と霊夢がそれを感じ取り、警戒度を上げると、前方から声が聞こえてきた。

 

「邪符『ヤンシャオグイ』」

 

その声の後に青い光弾が複数、霊夢と葵の前に表れた。

 

「これぐらい簡単よ!」

 

霊夢は余裕そうに避け、葵は油断せずに避けると、その光弾は二人の後を追ってきた。

 

「嘘!?追尾!?」

 

「結界『二重結界』!」

 

霊夢が驚いている間に葵が結界を張ると、その弾幕は消えずに何度も攻撃してきた。

 

それを見ていた青い女性は次にレーザーを飛ばしてきたが、それは結界に罅を入れることなく霧散した。

 

「あら〜、貴女の結界は強固なのね〜」

 

「褒めていただくのは有り難いのですが、私はまだまだ褒めていただけるレベルにはいってませんので」

 

「本当にね〜」

 

青い女性はそんな風に言うと、その結界に近付き、髪の蓑を外して結界に当てる。

 

「?何を……」

 

葵はその行動に首を傾げていると、その結界の一部がまるでくり抜かれたかのように穴が開いた。

 

「!さっきのはそれで!」

 

「あら〜、暴露てたのね〜。でも、残念」

 

青い女性は笑顔を浮かべながら最後の一枚の結界に穴を開けると、光弾を出した。

 

「貴女達じゃ、避けれないわ♪」

 

「!!」

 

葵は直ぐに自分の作った結界に手で触ると、その結界を壊し、霊夢を突き飛ばした。

 

その結果として霊夢に光弾は当たらなかったが、葵はレーザーと光弾に直撃してしまった。

 

「っ!葵!」

 

「うっ!」

 

葵はそのまま飛ばされ、飛ばされたところにあった墓石に強く背中をぶつけてしまい、肺から空気を全て出してしまった。

 

「うっ!ゲホッ!」

 

「葵!大丈夫!?」

 

霊夢は直ぐに葵に近寄り、葵の状態を見る。

 

その葵は霊夢の様子を見ると、安心した様に笑顔を浮かべた。

 

「良かった……霊夢に怪我は無さそうですね……」

 

「馬鹿!あんたにあるじゃない!」

 

「私の怪我は直ぐに治りますから……」

 

そんな説明をしている間にも葵の怪我は確かに治っていっている。

 

それを見ても青い女性から笑顔は消えずに、その様子をずっと見ていた。

 

「……霊夢、一つ、良いですか?」

 

「な、何?葵」

 

「……いつも通りに行きましょう」

 

葵のその言葉に霊夢は最初は理解出来なかったが、何かを察して頷いた。

 

「作戦会議は終わった〜?なら、次行くわよ〜?入魔『ゾウフォルゥモォ』」

 

そのスペル宣言の後、キョンシーから速さが遅いクナイ型弾幕が撃たれ、青い女性からはそれよりも速いクナイ型弾幕が撃たれ始めた。

 

「あの作戦は、これを乗り切った後よ!」

 

「はい!補助『疾風鳥』!」

 

葵はその宣言後に鳥型の弾幕を二つ出すと、自分と霊夢に撃った。

 

それはそのまま二人に溶け込む様に消えたが、それを受けた霊夢は少しニヤリと笑う。

 

「これで、あんた達の弾幕には当たらないわ!」

 

「あら〜?なら、やってみたらどうかしら〜?」

 

青い女性は少し訝しげに眉を寄せながらも霊夢に向かってそう言うと、弾幕を再度撃ち始める。

 

それを霊夢と葵は避けるために動くが、その速さが先程と違った。

 

その速さを例えるなら、名前通りの『疾風』。

 

つまり、姿が一瞬で見えなくなった。

 

「ッ!何処に……」

 

青い女性は直ぐに霊夢達の姿を探したが、その居場所は相手から教えられることとなる。

 

「此処よ!」

 

「なっ!?」

 

青い女性が振り向くと、其処には霊夢が一枚のカードを掲げていた。

 

「神技『天覇風神脚』!」

 

その宣言後に霊夢は青い女性に容赦なくサマーソルトを浴びせると、青い女性はそのまま飛ばされ、直ぐにキョンシーにも蹴りを浴びせ、飛ばした。

 

その青い女性はそのまま起き上がろうとしたが、

 

「呪術『鬼呪封印』!」

 

葵のスペルで縛られてしまった。

 

「くっ!」

 

「これで貴女は動けません」

 

「さあ!覚悟しなさい!神霊『夢想封印』!」

 

青い女性はそのまま霊夢の弾幕を浴びてしまい、スペルが終わった頃には気絶してしまっていたのだった。

 

***

 

葵は弾幕ごっこの後、ミコトと共に青い女性を治し始めた。

 

その近くには青い女性と一緒に来た男もいる。

 

「あんた達ね〜。其奴は放っといてさっさと行きましょうよ〜」

 

「ですが、怪我をされている方を放って行けませんよ……」

 

「そうだな。流石に放って置くことは出来ない」

 

「はぁ〜。この、お人好し……」

 

霊夢が頭を抑えながら深い溜息を吐きながらその様子を見ていると、その青い女性は目を覚ました。

 

「あ!気が付きましたか?」

 

「……貴女、さっきの……貴方も、向こうで見てた人ね……」

 

「ああ」

 

葵とミコトは二人して安心した笑みを浮かべていると、青い女性は起き上がった。

 

「……一応、お礼を言うわ。……ありがとう」

 

「いえ、お礼を言うほどの事は……」

 

「してないな……葵はしていたが」

 

「いえ、ミコトさんの方が……」

 

いきなりお互い謙遜し始めた二人を見て、驚いた様子の青い女性は、直ぐに笑い始めた。

 

「あっはっは!あ、貴方達、お礼を素直に受け取れないなんて!おかしいんじゃな〜い?」

 

「え、そ、そうですか?ですが、事実ですから……」

 

「そうだな……そんなに凄いことはしてないんだが」

 

葵とミコトがお互い困った顔で見合っている様子を見ると、その女性はまた笑い始め、その笑いが収まると、目元に浮かんだ涙を拭いながら話し始める。

 

「あ〜、おかしかった。自己紹介が遅れたわね。私は『霍 青娥』、『仙人』よさっき結界を通り抜けたのは私のこの蓑の能力で、『壁をすり抜ける程度の能力』。それと、彼処でまだ伸びているのが『宮古 芳香』。知っての通りの『キョンシー』なの。可愛いでしょ?」

 

「は、はぁ……」

 

最後のキョンシー可愛い発言には流石に同意しかねた葵が曖昧に返事をすると、今度は直ぐ近くにいた男の紹介を始める青娥。

 

「そして、この人が『よっちゃん』こと『黒世 条』。私と同じ『仙人』よ」

 

「紹介に預かった黒世条だ。よろしくね」

 

「あ!よろしくお願いします!」

 

葵は条と青娥からの挨拶に頭を下げて挨拶を返すと、その腕を後ろから強引に引っ張る者がいた。

 

ルカである。

 

「……治し終わったんだろ?早く行くぞ」

 

「わ、分かったよ……ミコトさん。行きましょう」

 

「ああ」

 

葵は再度、頭を下げて歩き始めると、その隣にミコトが来て、先ほどの事を話し始めた。

 

「……葵、結界を壊した後に霊夢の身代わりの様に攻撃を受けていたが……」

 

「……言いたいことはわかります。ですが、それはミコトさんもするのでは?」

 

「……」

 

「……すみません。でも、多分、これは私の性分ですから……変わりません」

 

「……あまり、しないでくれ。頼むから」

 

「……善処します」

 

「……だが、それ以外は良く頑張ったな」

 

ミコトは最後にそう褒めると、葵の頭を撫で始めた。

 

葵はそれに少し驚いた表情を浮かべるが、直ぐに気持ち良さそうな表情になった。

 

そんな二人の後ろ姿を見ていた青娥は、条にだけ聞こえるような声量で話した。

 

「あの二人、やっぱり歪ね〜」

 

「……そうだな。とても簡単に自分を犠牲にしていたからな。あのミコトという者は分からないが、葵という子と似たような雰囲気を感じる」

 

「そうね〜。あの二人は今後も自己犠牲に走ると思う?よっちゃん」

 

「……走るだろうね、青ちゃん。自分を犠牲にする事で、周りが悲しむ事を本当の意味で知らない限りは」

 

その話は、やはり葵達には届く事はなく、空へと消えていったのだった。

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