東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第二百八話

富彦と想起は互いに獲物を出して構えていた。

 

想起は模造刀を、富彦は剣から鏡に変えている。

 

「……ねえ?なんで鏡?」

 

想起が素朴な疑問を聞くと、富彦は律儀に答えてくれた。

 

「これが儂の依り代だからぜよ」

 

「よ、依り代?え?尸解仙って依り代がいるの?」

 

「そこからか……」

 

想起の言葉に鬼灯は痛む頭を抑えるように手を置くと、想起に聞こえるように説明する。

 

「尸解仙というのは、元々人間だったものが仙人になる為に死後、その死体を尸解し、肉体を消滅させ、仙人になったものを指す言葉だ。その際に何か別のものを依り代としなければ、尸解仙にはなれはしない。その男が鏡を使うなら、その男が依り代にしたのは『鏡』ということになる」

 

「そこの狐の説明通り、儂の依り代は鏡。だからこそ、武器も鏡ということぜよ」

 

「へ〜……じゃあ、屠自古さん達は?」

 

想起がつい気になって屠自古に聞くと、屠自古は目をつぶって答える。

 

「私は壺にしたわ……だけど、このアホの所為で私の壺が割れて、こんな風に亡霊になってしまったわけよ……」

 

「……御愁傷様、だな」

 

「まあ、別に良いのよ。人間の体よりもこっちの方が自由が利くしね。あと、このアホは皿よ」

 

「そ、そうなんだ……(布都さん気絶してるから言いたい放題なのかな?)」

 

想起は言葉の裏でそんな事を考えていると、相手が弾幕を撃ってきたことに気付き、転がるようにして避けると、立ち上がって膝の砂を払い落とし始めた。

 

「酷いな〜。不意打ちとか……」

 

「酷いも何もない。戦は常に不意打ち上等。真正面からくる馬鹿はおらんぜよ」

 

「あの、これ殺し合いじゃないからね?そこ分かってるよね!?」

 

「分かっておるから安心するぜよ。儂が殺したいのはそこの物部家の生き残りだけきに、他の犠牲は出したくないぜよ」

 

「……そっか。だけど、布都さんだって殺らせない。だから、僕は負けない!」

 

そうして互いに剣と鏡の打ち合い発展し始めると、富彦が一枚目を宣言した。

 

「呪法『レグリスピア』!」

 

その宣言後、鏡を想起に向けると、そこから光線が放たれる。

 

それを難なく回避するが、二度目が直ぐに向かってきた。

 

「!黒竜符『衝撃』!」

 

それを見て、想起はソロモンを近くに呼ぶと、その口からレーザーを放たせた。

 

鏡と竜のレーザーの押し合いは意外にも拮抗し、遂には爆発した。

 

「ッ!ソロモン!」

 

ソロモンに指示し、その爆風を退かしてもらおうとした瞬間、またレーザーが飛んできた。

 

それには反応出来ずに当たりそうになるが、それはソロモンが庇って難を逃れる。

 

しかし、ソロモンはそれを背中から食らったこともあり、倒れてしまった。

 

異変を起こした時のような大きさならまだしも、今の小さなサイズのソロモンでは衝撃が大き過ぎたようだ。

 

「ッ!癒符『想祈』」

 

想祈はそのスペルを宣言すると、まるで祈るように手を組むと、ソロモンの体が優しげな若葉色に包まれた。

 

すると、ソロモンの体から傷がなくなっていく。

 

葵と同じ、治癒のスペルである。

 

「……彼奴も、葵と同じような事が出来たのか」

 

「まあ、あの一枚だけらしいがな」

 

鬼灯は想起の戦いを見ながらルカの言葉に返すと、ルカは「……そうか」とだけ言って顔を戻す。

 

ソロモン復活後、想起と富彦は弾幕の撃ち合いに発展していた。

 

それを鬼灯は少しの間見ていたが、途中からルカに問い掛けた。

 

「……お前は、あの富彦という男を見て、どう思う?」

 

「……どうしてそれを聞く?」

 

「お前と同じ、復讐が全てとなった夜叉だからだ」

 

「……」

 

ルカはそれを聞くと、少しの間、目を瞑る。

 

そして振り返る。

 

今までの憎き相手を。

 

この前、幻想郷まで追いかけてきたヴァンパイアハンターの復讐シスターを。

 

そこでルカは、強く歯を噛み締めた。

 

そこから『ギリッ』と音が出る程に強く。

 

その所為で周りが冷気に包まれ、ルカの足元は凍り、今日は三日月で血の力的には人間の方が強い筈なのに、どうしてか口から吸血鬼の牙まで出る始末。

 

思い返しただけでこの状態、夜叉と呼ばれても仕方ない。

 

「……正直、私としては彼奴の復讐がどうなろうが関係ない。こういう事は安易に私が言うべき事でもない」

 

「……そうか」

 

鬼灯はそれに納得する様に頷いているのを見ると、後ろに下がった。

 

その間、ミコトはルカを見続ける。

 

なぜなら、命からも感じ取ることが出来たからだ。

 

その、ルカの中にある強い『憎しみ』を……。

 

(……ルカの過去を、俺は知らない。……だが、どうにか、してやりたい。どうにか、助けてやりたい。じゃないとルカは……)

 

ー本当に、独りになってしまうー

 

ミコトはそう考えるが、ミコトに出来ることはあまりにも少なすぎる。

 

そして、ルカも葵程には信用していない。何が出来ると言うのだろうか?

 

ミコトもそれが分かるからこそ、悲しそうな目でルカを見ると、視線を弾幕ごっこに戻した。

 

鬼灯達が話している間に状況は変わっており、何やら一面、蟲だらけとなっていた。

 

これは富彦のスペルの一つである「術式『蟲の毒災』」。

 

持っている鏡から蟲を出し、その蟲達に攻撃させる術である。

 

それを回避するために想起は空を飛ぶが、富彦もまた飛び、また剣と鏡の打ち合いとなった。

 

……が、それは直ぐに決着が付いた。

 

想起の剣に遂に罅が入ってしまったのだ。

 

「しまっ!?」

 

「これで獲物は……0ぜよ!」

 

富彦はそう言った瞬間、剣がついに折れてしまい、もう一度、鏡を振り上げ、攻撃する。

 

それは誰もが当たると思ったーーー鬼灯以外は。

 

その鏡が想起の頭まできた瞬間、別のものに阻まれてしまった。

 

「!?そ、それは何処から出した!?」

 

「これ?これは僕の腰にずっとあったよ……まあ、服で隠してたけど……さ!」

 

想起はその武器で鏡を力を入れて押し返し、左手を握り、富彦の腹に拳を一発入れた。

 

「ぐふっ!?」

 

富彦はそれを浴びせられ、そのまま後ずさる。

 

想起はそれを見て、また構え直す。

 

しかし、今持っているのは剣ではない為、その武器を使い易いように腰を低くし、逆手に握る。

 

その、『ダガーナイフ』を。

 

「さて、どっかのアニメキャラのを模範とした感じだから、構え毛方がこれで合ってるのかは知らないし、鬼灯に聞いてもちゃんとは知らないようだったから、僕は僕のやり方で、これで行かせてもらうよ!」

 

想起はそう言って一度近付くと、今度は蹴りを入れる。

 

それを富彦は腕を交差し、防御するが、想起は続けてスペルを宣言する。

 

「パチュリーから学んだ魔法の一つ、使わせてもらうよ!水符『波紋』!」

 

そこから想起は水の弾幕を撃ち、下に水が溜まるとそこから波を生み出し、富彦を攻撃する。

 

それを富彦は避け続けるが、どんどんとその服がびしょ濡れになっていく。

 

それを見ると、想起は申し訳なさそうな顔をしながら、最後のスペルを宣言する。

 

「……これで終わらせるよ。雷符『雷鳴』」

 

すると、頭上から雷の音がし始め、富彦が顔を上にあげた瞬間、蒼い雷が富彦の真上から落ちた。

 

「ギャァァア!」

 

勿論、水浸しの所為で雷の通りは良くなっており、例え尸解仙となり体が丈夫になったといえど、これは大ダメージだったようで、富彦はそのまま地面へと落ちてしまった。

 

想起は富彦の姿を見た後、外野の方に申し訳なさそうな視線を向ける。

 

その視線の先には、先程の雷の所為で耳を抑え、目を瞑り、涙目となってガタガタと震えて座り込んでいる葵の姿があった。

 

その隣では、ミコトが葵を慰めている。

 

「……だから、あんまり使いたくなかったんだけどな〜」

 

想起はそう一人呟くと、小さく溜息を吐くのだった。

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