富彦を想起が打倒したあと、葵が雷から復活し、ミコトと共に二人の治療をし終えた後、布都と屠自古に連れられて、二人が言う『太子様』という人の元へと連れられていく。
富彦に関しては歩がおんぶの様な状態で一緒に連れて行く事になった。
「う〜ん……」
「?どうしました?想起さん」
一行の後ろで何かを考えるように唸っている想起に、早苗が様子が気になり聞いてみると、教えてくれた。
「いや、さっきからどうにも頭の中で引っかかるものがあるんだよね……主に『太子』って言葉に」
「確かに……ですが、考えてもよく分かりませんね……ヒントが無さ過ぎますから」
そう言って唸る二人を不思議そうに見る葵と魔理沙。
「何か、気になることでもあるのでしょうか?」
「さあな?私らには分からん事だと思うぞ?あの二人が話すって事は、大抵は外の事関係だろうし」
魔理沙のその言葉は確かな事で、二人が話す時の内容は大抵は外の事。なので、今回もそうなのだろうという事で葵も納得すると、前を向いた。
その間も想起と早苗は唸りながらも考えていると、全員の歩みが止まったのに気付き、考えるのを一旦止めて、前を見た。
「さあ!ここに我らが太子様がおられる筈じゃ!付いてくるのじゃ!」
布都はそう言ってまた歩こうとしたが、それは別の声が止めた。
「布都に屠自古。探さなくとも私はここに居ますよ」
その声の主を見るために全員が布都から視線を外して前を見ると、其処にはヘッドフォンを付けた女性がいた。
「太子様!」
「……へ?太子って言うから男かと思ってたけど……」
想起のその言葉が聞こえたのかは分からないが、いきなり布都が振り返り、全員に威圧的な言葉を発する。
「ええい!皆の者!頭を下げよ!この方を誰と心得るか!」
「いや知んないわよ。誰とも分かんないし、頭下げる意味が分かんないわ」
「俺が頭を下げるのは魅魔さんや白蓮さんぐらいだ。その他に下げる頭などない」
布都の言葉に霊夢はジト目で、夢幸は睨みで返すが、布都には何のダメージもない。
「この方はかの時代において民の幸せを考え、行動した方!『聖徳太子様』であられるぞ!頭が高い!控えおろう!」
「あの、それは某時代劇の言葉で……って、え?」
「し、聖徳太子ーー!?」
「……あの有名な聖徳太子までもが、此処では女性なのか……」
布都の言葉に外出身の三人は其々、そんな風に言った。
しかし、外出身の者ではない者達はそんな事は知らないので、首をかしげるばかり。
「いや、だから誰よ。そんなに有名なやつな訳?」
「有名だよ!聖徳太子っていえば、有名な事を言えば、『十人の声を同時に聞ける』とか……」
「へ〜、相当耳が良い方なのですね」
妖夢が感心した様に声を上げると、その聖徳太子は苦笑した。
「正確には『耳が良すぎる』のです。ですから、私は普段からこの様に耳を塞ぎ、外界の音をあまり拾わない様にしているのですが、それでも聞こえてしまうぐらいには」
「……相当な耳の良さの様だ」
永久のその言葉に聖徳太子が頷くと、其処で何かを思い出しかの様な顔をした。
「申し訳ありません。まだ己の紹介もしておりませんでしたね。私は『豊聡耳 神子』と申します。よろしくお願いします」
神子がそう言って頭を下げると、それに慌てて頭を下げる葵と想起、早苗、ミコト。
「初めまして。神無月葵と申します」
「幻現想起です!」
「東風谷早苗です!」
「一夢ミコトと言います」
「ええ、よろしくお願いします」
四人が挨拶をし終えると同時に霊夢が神子に近づき、お祓い棒を向けた。
「さ、ということで、早くこの神霊達をなんとかして頂戴」
「貴女は彼女達と同じ巫女ね?名前は?」
「博麗霊夢。素敵な楽園の巫女とは私の事よ」
「そう、覚えておくわ。それと、ちょっと訂正」
神子はそう言うと、霊夢に笑顔を向けた。
「これは『神霊』ではなく『欲霊』と言います。この霊達に関してはちゃんと私が解決しますから、貴女に仕事はありませんよ?帰って怠けていたらどうですか?今後は私がこの世界を平和にするように頑張りますから」
神子は少し霊夢を煽る為にそう言った。
理由として、今後、自身の商売敵になるであろう相手の実力を知りたかったからだ。
そして、その目論見は楽に達成される。
「……良いわ。その言い方、なんかものすごくむかつくから、相手してあげる。此処で生き残りたかったら私を怒らせるべきじゃないって事を徹底的に教えてあげるわ!」
霊夢はそう言って全員より一歩前に出ると、その隣にもう一人、立つ者が見えた。
魔理沙である。
「……ちょっと魔理沙。あんたは下がってなさい」
「嫌だぜ!此処最近、暴れれなかったんだ!此処で暴れれなかったらいつ出来るか分かんない!だから強引に参加させてもらうからな!」
その魔理沙の強引さに、霊夢は溜息を吐くと前を向く。
「……ちゃんと合わせなさいよ?魔理沙」
「こっちの台詞だぜ?霊夢」
霊夢がお祓い棒を、魔理沙が箒を向けると、神子は優しげな笑顔を見せる。
「……貴女達は仲が良いみたいね。良いでしょう。本当は巫女一人と戦いたかったのですが、それはまたの機会としましょう。今回は……純粋に私も楽しませてもらいます!」
神子はそう言うと、自身の腰に差していた剣を抜いたのだった。