東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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第二百十話

戦い始めて早々に、神子がスペルカードを構えた。

 

「先ずは小手調べと行きましょう。名誉『十二階の冠位』!」

 

その宣言後、自身の頭上に白い大型弾幕を設置すると、それを分裂させ、魔理沙と霊夢の外側に四つずつ、白い丸型弾幕を飛ばし、地面に付けた。

 

「これで何するつもり?」

 

「見ていれば分かりますよ」

 

神子が『ニコッ』と笑うとほぼ同時に、その白弾幕から真上に向けて白いレーザーが撃たれると、それが次の瞬間には赤、青、黄、紫、黒、白の六色の鱗弾がばら撒かれた。

 

それも、『弾幕の壁』と言えるほどには大量に。

 

「……はぁ、面倒くさい」

 

「お前、本当に雪華に似てきたな〜。面倒くさがり度が増してるぞ〜」

 

「……今度、葵か鬼灯、もしくは歩とかレティシアとか紫に稽古を付けてもらおうかしら。面倒だけど」

 

「葵は無理だろうけどな〜。結界の強度を上げるとかの修行ぐらいだろ」

 

そんな風に何気ない会話をし終えると、同時に回避行動に移る両者。

 

魔理沙は楽しそうに。霊夢は面倒そうに。

 

両者の表情は違えど、神子のスペルカードを楽々避けているのには変わらない。

 

(これぐらいは簡単に避けれるようですね……)

 

神子はそう思考すると、弾幕を消した。

 

「あら?もう終わりでいいの?」

 

「良いのです。どうせ唯の小手調べですから」

 

「つまり、本気じゃないんだな?なら、本気で来いよ!」

 

「そうですね……流石に本気で行くのは大人気ないので、本気ではいきませんが、宣言させていただきましょう」

 

神子はそう言うと、次のスペルカードを構えた。

 

「光符『グセフラッシュ』!」

 

すると、神子は青、黄、緑、紫の四色の弾幕を放射状にばら撒かれた。

 

その量は一枚目と同じ様に弾幕の壁が厚く、その上でスピードも速く、避けにくい様になっていた。

 

が、そんなの二人には関係ない様で、霊夢はヒョイヒョイと無駄な力を抜いて避け、魔理沙はスペルカードを宣言する。

 

「彗星『ブレイジングスター』!」

 

そのスピードを使って、身軽にどんどんと避けていく二人に、神子は楽しそうな笑顔を浮かべ始める。

 

(ああ……この弾幕ごっこというのは、此処まで楽しい『遊び』だったのね……)

 

神子がそう思っていると、それを見て不思議そうな顔を浮かべる外野にいる屠自古。

 

「……太子様は、どうしてあんなに楽しそうなのでしょうか?」

 

その言葉を聞いたミコト、葵、歩は互いに顔を見合わせると、少し笑みを浮かべる。

 

「……霊夢や魔理沙といると、自然とそうなるんだ」

 

「そうですね。霊夢や魔理沙だけでなく、弾幕ごっこをしていると、自然とそうなるものです」

 

「まあ、それでもあの二人としてる方が、楽しさは倍になるがな」

 

「二人とも、弾幕ごっこをしている時などに生き生きとしていますからね」

 

その三人の言葉に屠自古は少し目を瞬かせていたが、直ぐに柔らかな表情を浮かべて神子達の弾幕ごっこを見る。

 

その会話の間に神子のスペルカードはブレイクされており、魔理沙がスペルカードを宣言しようとしていた。

 

「恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」

 

すると、魔理沙を中心として、赤、青、黄、緑、紫の五色のレーザーが時計回りに回り始め、それと同時に色鮮やかな星型弾幕が放射状にばら撒かれ始めた。

 

それを神子は勿論、避け始めるが、そのレーザーが二つずつに分かれたと思えば今度は反時計回りに回り始める。

 

それに驚きつつもその回っている通りに移動していると、ふと気付く。

 

霊夢がいない事に。

 

しかし、気付くのがほんの数秒遅かった。

 

既に霊夢は神子の真後ろにいた。

 

「これで終わりね」

 

「……もう少し、続けたかったわ」

 

「そんなの、この幻想郷にいればいつでも出来るのよ。霊符『夢想封印 集』!」

 

その虹色の光は瞬く間に神子を飲み込み、終わる頃には神子は膝を着いていたのだった。

 

***

 

弾幕ごっこが終わると直ぐに、屠自古と布都は直ぐに神子の元へと行き、容体の確認を始める。

 

「太子様!ご無事ですか!?」

 

「お怪我をなされております!速く治さなければ……」

 

それをミコトと葵は治そうと近付き始める。

 

……が、それは突然の地震により、阻まれる事になった。

 

「!?」

 

「じ、地震!?」

 

「あのクソ天人!また地震を起こしたの!?面倒事を増やさないでよ全く!」

 

「……いえ、霊夢。これは、天子さんの仕業ではありません」

 

「……葵がそう言う、てことは……」

 

「……別の原因」

 

そんな風に全員が話している中、鬼灯と永久、ミコト、そして葵だけが険しい顔をしていた。

 

それは、これから訪れる事を、現れる者を感じているからだ。

 

そして、地割れが起きた瞬間、そこから斬撃が飛ばされる。

 

その斬撃が飛ばされた方向は……妖夢。

 

「……え?」

 

妖夢があまりに突然な出来事に身動きが取れずにいると、遂にそれは妖夢にの目前まで来た。

 

ーーーしかし、それは鬼灯と永久が互いの剣で消し飛ばした。

 

「……どうやら、厄介な奴が復活したようだ」

 

鬼灯がそう呟きながら見据える先には、一人の男がいた。

 

苛烈な装飾が付けられた麻の服、カラフルな勾玉を幾つも付けたネックレス、それらを付けた男は不機嫌そうな顔を隠さずに言葉を放つ。

 

「人が気持ちよく寝ているその上で、ギャアギャア騒いでた奴は何処のどいつだ?」

 

その獣にも似た鋭い眼光に睨まれ、想起と早苗の普通に近いコンビは怯むが、他は怯まずにその男を見据えている。

 

そして、騒いでいた霊夢は全員よりも一歩前に出て、言う。

 

「それは私よ。それが何?あんたがいるなんて知らないし、そんなとこに寝てるあんたが悪いわ」

 

霊夢のその返答を何処まで真剣に聞いたかは分からないが、男は不気味な笑みを浮かべ、ケタケタ笑い始めた。

 

「ああ、そうかい。なら……消えな!」

 

その一言が全員の耳に届いた瞬間には斬撃が飛ばされており、既に霊夢との距離は約30㎝。

 

霊夢も驚きすぎて身動き取れずに立ったままでいたが、その霊夢の前には葵が立ち、結界を張る。

 

が、その結界はまるで紙の様にいとも容易く斬られ、霊夢と葵は後ろの壁まで吹っ飛ばされてしまった。

 

「葵!」

 

「霊夢!」

 

「……お前!」

 

ミコトと歩が直ぐに二人に駆け寄り、ルカはまるで親の仇を見る様な憎悪の目で男を睨みつける。

 

そして、氷柱を創り、投げ飛ばそうとすると、それを鬼灯が制しした。

 

「……久しいな、『日本武尊(ヤマトタケルノミコト)』」

 

「あぁ?…………あ〜、なんか見た事あんな〜、お前」

 

「一応は会っている。私とお前は。まあ、お前は忘れていても、私としてはなかなか忘れられなかっただけだ……その、あまりにも強大で暴力的な力をな」

 

そんな二人の会話を聞いた外の世界出身の三人は驚いた様な表情をしていた。

 

「え!?」

 

「……あの、『日本武尊』!?」

 

「……」

 

その三人など気にしていない様子で欠伸をしていると、男の前に額に青筋を浮かべた歩が立った。

 

「……お前、霊夢にあんな理由だけで……」

 

その後ろでは、既に怪我が治っている葵が怒りから体を小刻みに震わせているが、それは男には見えていない。

 

男はまたケタケタ笑いながら喋り始める。

 

「人の寝ている所を邪魔した彼奴が悪い。というより、彼奴はもう既に気絶してんのかよ。全く。人を起こしておきながら喧嘩にも付き合えねえのかよ。弱い奴だな〜」

 

その一言は、歩の怒り度合いを更に上げるものとなった。

 

「……俺は、お前を許さない!俺が相手をしてやる!」

 

その後ろから、葵もやって来ると少し後ろに立つ。

 

「……歩さん。何処までサポート出来るか分かりませんが、私も参加します。良いですね?」

 

その物言いは葵を知ってるものからすれば中々に珍しいのだが、それはつまり、葵の怒りもまた強いということを表している。

 

そして、それに歩は頷くと、『日本武尊』を見据えた。

 

そんな二人を見ながら『日本武尊』はケタケタ笑い、言い放つ。

 

「良いだろ。この『日本武尊』こと『天叢雲 白斗』を知った上でのその行動。何処まで俺に通用するか、見てやるよ!」

 

白斗はその場の全員にプレッシャーを掛けながら、そう言ったのだった。

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