誰のとはあまり決めてませんが、多分、レティシアさんです。
といっても、今回の話にレティシアさんは名前しか出てきませんが……。
それでは!どうぞ!
第二百十三話
幻想郷の夜。それは、妖怪達が活発に動き出す時間でもある。
それは、妖怪だらけの紅魔館でも例外ではない。
いや、此処ほど妖怪が多い所で、妖怪達が活発に動かないわけもない。
そう、満月でもあるこの日に。
「というわけで!私達がまだ眠たくないから話をしようよ!」
「いや、唐突過ぎるだろ。ユニ」
従者達の休憩室では、ユニのイキナリの発言にペスの左隣にいるギルがツッコミを入れていた。
「まあ、確かに私や朱鳥、くおんとかは眠くはないけれど……」
「……一人、寝そうだがな」
ユニの左隣にいるペスと、紅葉の右隣にいるくおんがそう言いながらその右隣に目を向けると、こっくりこっくりと寝そうになっているマリアがいた。
その右隣にいる狼はその様子をしっかり知っていた為に少し厳しい視線をユニに向けると、ユニは申し訳なさそうに椅子に座った。
「え〜……折角紅魔館での主要な従者達が集まったのに、何も話さないとかないよ〜……眠くもないし」
ユニが少し頬を膨らませて言うが、それでマリアの眼が覚めるわけでもなく、ドンドンと眠りの淵へと落ちていく一方である。
「……仕方ない。なら、マリアを寝かせるか、もしくは……」
「封印を解くか?」
狼の言葉に続けて光冥の右隣にいる紅葉がいつも通りの笑顔で言うと、狼は頷く。
それにユニが心配そうな目で真向かいにいる光冥とその左隣にいる咲夜を見ると、二人とも頷いた。
「私達は大丈夫よ。以前の様に油断しないし、今のマリアなら何もしてこないでしょう」
「自分もそう思うよ」
「ありがとう!二人とも!」
ユニがお礼を言って狼に視線を向けると、狼はそれに頷いた。
そして封印を解き、本当のマリアが出てくると、今度は狼の向かい側にいる筈の絶月の方に目を向けると、既にいなかった。
「ちょっ!?何処に行ったの!?」
「彼処だ」
朱鳥が顔を向けた所には、既に出て行こうとしている絶月がいた。
「待って待って待って待って!」
「……ちっ」
ユニが必死に止めると、それに舌打ちが返ってきた。
絶月は不機嫌そうな表情を隠さずに顔を向けると、ユニが必死な顔で懇願を始める。
「お願い!付き合って!従者同士の話に!」
「断る。誰がそんな面倒くせえ事に……」
「バニラアイス出してあげるから!」
「テメェら何ボサッとしてやがる。さっさと話を始めるぞ」
ユニが絶月の大好物を取引の条件として出すと、絶月は直ぐに席に座りなおした。
「……お前、本当にちょろいな」
「うっせぇ。何か悪いか?」
「いや、別に。お前らしいなと思っただけだ」
朱鳥と絶月が会話している間にユニはバニラアイスと自分用の饅頭を能力で出し、食べ始めた。
其処で会話が始まる。
「それにしても、会話と言っても何をするの?ユニ」
ユニの右隣にいるシファがユニに問いかけると、ユニは少し考えて思いついた様に顔を輝かせた。
「それじゃあ!互いに聞いてみたい事とか!」
『ない』
「え〜!」
ユニの案は、シファ以外の全員が同時に否定した事で却下となった。
「当たり前だと思うわよ?全員が此処にずっと住んでるのだから」
ペスの発言は確かに正論で、それに意見を返す事が出来ないユニはそのまましょんぼり状態で座ると、ギルが狼とマリアに顔を向けた。
「そういえば、以前に告白して付き合い始めた二人だが、アレ以来、なんか進展してんのか?」
それに互いに見合うマリアと狼。
「進展……」
「……あったかしら?」
「……いや、今まで通りだな」
「そうよね。それ以上もそれ以下もないわね」
「だな」
「いやいや!キスとかぐらいはしろよ!」
ギルが二人にツッコミを入れるが、狼もマリアも訝しげにするだけである。
「いや、必要か?」
「別に、今まで通りがそもそもそういう関係みたいだったのに?」
「いや、そうだけど……って、自覚あったのかよマリア!?」
ギルが今度はマリアに驚きの顔を向けると、マリアは鬱陶しそうな顔を向けた。
「当たり前よ。表の方の私は気付いてなかったようだけどね。……気持ちの悪いぐらい純粋だから。ああ、自分の事ながら吐き気がするわ……」
マリアがこめかみを指で抑えている姿を、狼は済まなそうな顔で見つめていた。
「……すまない。だが……」
「別に、謝らなくていいわよ。貴方の方がきっと正しいから。……まあ、私は許しはしないけどね。彼奴らの事も……人間の事も」
マリアはそう言って咲夜と光冥、絶月を睨み付けるが、咲夜と光冥は動じず、絶月は逆に睨み返した。
「……殺れるものならやってみろ。俺は何度でも復活するがな」
「本当に厄介よね、その能力。……まあ良いけど。だからあの朱鳥と結ばれたんだろうし……」
マリアが今度は朱鳥に向けると、朱鳥は一人茶を静かに飲んでいた。
「死なない者同士だから良かったわね。ずっと好きな人と一緒に居られるわよ?……まあ、貴方は厳密的には死なないわけでもないようだけど」
「だが、俺は朱鳥を一人残して逝く事は一生ねえよ」
「……ふ〜ん」
マリアは髪をいじりながら納得したように言うと、そのまま続ける。
「だけど、人の心も気持ちも、時間が過ぎれば薄れていくものだけど?妖怪は結構執着する所があるから朱鳥は問題無いとして、それが貴方に可能かしらね?見ものだわ」
マリアが試すような笑みを向けると、絶月はマリアを睨み付けながら返す。
「……俺が朱鳥を嫌う事なんて一生ねえよ。この魂に賭けても良い。こんな良い女、何処にでもいる訳でもないのに俺から捨てる訳もないだろ」
「お、おい絶月!流石に恥ずかしいからそこで止めろ!マリアもだ!」
朱鳥は顔を赤くして二人の間に入るが、絶月の睨みとマリアの笑みは消えない。
「……予想した通りの事が起こったな」
「あはは、そうだね、くおんちゃん」
そのやり取りを近くで、紅葉とくおんはそう話している。
その間にペスは咲夜にある一つの質問をした。
「そういえば、私達は咲夜や光冥の現在より前は知らないわね。どんな感じだったの?」
「自分は……復讐鬼でしたね……」
「……あのルカみたいに?」
「いえ、それ以上ですよ。そこからレティシア様に拾われ、勝負に負け、今に至ります」
「……レティシア様と戦ったんだ」
「ええまあ。あっさり負けましたけど……今でも不思議なんですよね。自分が攻撃したと思った筈なのに、既に組み敷かれてましたから……」
「……本当にチートだよねぇ、レティシア様」
ユニが乾いた笑いを浮かべて、光冥もそれには苦笑するしかなかった。
「それで?咲夜は?」
ペスが聞くと、咲夜は肩を竦めた。
「別に面白いものでもないし、面白くもないわよ?だって、孤児院出身で、そこから出て、それでレミリアお嬢様に拾われ今に至ってるだけだもの」
「へ〜!」
「まあ、あの孤児院も此処みたいな所で、離れると決めた時には少し寂しいものもあったわね……」
咲夜のその発言で過去が少し気になったのか聞く事にしたユニ。
「ねえねえ?その孤児院ってどんな名前?」
「言ってもわからないから名前は言わないけれど、そうね……私みたいに少し異常な子達が多かったわ……特に異常だったのもいたし……」
「特に異常な奴?」
「ええ。人殴っただけで壁三個分以上壊すし、石投げただけで普通に地面が陥没するし……同じ名前を持った奴だったけど、私以上に異常ね……」
「なにそれ本当に人間?」
ユニが冷や汗を垂らしている隣では、シファもまた冷や汗をかいていた。
「いや、寧ろ……」
「人外、もしくは怪物じゃないの……」
ギルとペスも冷や汗をかいていると、ようやくマリアと絶月のにらみ合いが終わったのか、聞いてなかった組が首を傾げていた。
ユニはそれで一度話を区切るために両手を打ち合わせると、話題を振った。
「そういえばさ、レティシア様がまたなんか計画立ててるみたいだけど、みんな知ってる?」
「内容の事なら俺もペスも知らねえ……他は?」
ギルの問いに全員が知らないと返ってきた。
「まあ、そうだよね〜。前の『幻想郷式持久走』だって、当日の一週間前に伝えられたし……」
「それ以前のイベントの紅魔館勢だけでの『札取り合戦』だと、本番一日前に伝えられたものね……今度は何時に伝えられる事になるのかしらね……」
「いや、札取り合戦ってなんだよ。俺達、その時にいなかったからやってねえんだが?」
そのイベントに狼を除いた男勢が興味津々に聞くが、他は何処か遠い目をしていた。
「……聞かない方がいいし、やらない方が良いよ……アレは」
「そうね……ただの『遊び』で済む話じゃなかったわ」
「妖精達が何人犠牲になったか……」
「ギブアップも認められないから疲れても休めなかったな……」
「負傷者も出たしな……レティシア様がその後すぐに治してくれたが」
「貴方達は負傷しただけで良いじゃない。表の私なんて転けて、その先にあった壺を頭突きで壊した挙句に気絶したのよ?私、お笑い芸人じゃないんだけど?」
「本当に……血で血を洗うイベントだったわ……」
上からユニ、ペス、くおん、朱鳥、狼、マリア、咲夜が言うと、話を聞いていた何人かは同情の視線を向けた。
「……本当に『遊び』じゃねえな、それ……」
「もはや『修行』ですよ……」
「レティシア様の考えるイベントは、実は全部『修行』なんだろうね……次はどんなイベントなのか、色んな意味で楽しみだよ……はぁ」
ギル、シファ、光冥が三人して溜息を吐いた頃には、既に全員に眠気がやって来ており、そこで漸くお開きになったのだった。