東方〜もう一人の巫女〜   作:ルミナス

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今回はシリアス一直線です。そういうのが苦手な方は……いえ、此処から読み始めた方の中に苦手な方がいらっしゃったなら、覚悟してお読み下さい。

それでは!どうぞ!


第二百十九話

夏のとある日、レティシアは一人、日焼け傘もささず、パラソルの下にも入らず、紅茶を優雅に飲んでいた。

 

「クスクス、少し、雲の層が厚くなってきたわね……雨が降るのかしらね」

 

空を見上げ、雨が降るかもと予想するも、自身でパラソルを創れるレティシアは、何の準備もなしにまた紅茶を飲み出す。そこから少し時間が経ち、太陽の光が少しずつ減りだした頃、猫の鳴き声がレティシアのすぐ側から聞こえた。

 

「クスクス、猫?珍しいわね。普段ならこんなところに猫は来ないのだけれど……扉が開いた隙にでも入ってきたのかしら?」

 

少し嬉しそうに笑いながら、そのくらい毛並みの猫に手を伸ばし、触ろうとする……が、あと少し触れるというところで、その手は止まった。猫が不思議そうな顔で小首を傾げ見上げれば、そこには心底不愉快そうな表情を浮かべているレティシアがいた。

 

そのレティシアは、憎憎しげな顔で、猫に向かって声を掛けた。

 

「……その姿、不愉快だからやめてくれないかしら?……サタン」

 

『ククク、バレちまったか』

 

二人の上の雲は、遂に日が差さなくなるほどに雲行きが怪しくなりだした。

 

***

 

神無月神社では、丁度、洗濯物を干そうとしていた頃だった。

 

「……あ、天気が」

 

「これは、一雨来るな」

 

ルカと葵は空の天候を予測すると、干そうとしていた洗濯物を直し、干していた洗濯物も直しだした。

 

「夏はすぐに天候が崩れちゃうね〜」

 

「毎年のことだ。特に、今は梅雨に入り始める頃だしな」

 

「確か、外では空梅雨になる年もあるって、聞いたんだけどな……」

 

「それ、誰情報だ?」

 

「想起さんと早苗さんだよ?」

 

「なら、嘘はないだろうな」

 

二人はそう話しながらも、着々と洗濯物をたたみ、中に入れていくのだった。

 

***

 

「……それで?手を出さないと言っていたのに手を出すという契約違反をした、悪魔界最低の悪魔が、何をしにきたのかしら?」

 

『ケケケ!何言ってやがんだか。アレは契約でも、約束でもないだろ?俺様は一言も、約束するとも、契約するとも言ってないゼ?ただの予定だ、予定。予定が狂うことなんて、普通にあることだ』

 

レティシアは紅茶を飲みながらサタンに問いかければ、サタンはそれを嘲笑しながら答えた。その反応はもちろんレティシアにとっては不愉快極まりないものであり、今すぐにでも槍を突き立て、その身を刻み、チリ一つ残さない姿にしてやりたいという衝動を抑え込んでいる状態である。

 

(こいつには一つ、確認しないといけない事項がある……何より、こいつに私が何したって、意味がない)

 

レティシアはそう思うことで一度冷静を取り戻し、一口だけ、すでに味がわからない紅茶を飲み、サタンに話しかけた。

 

「……葵をあの犬の死骸で襲ったのは、貴方かしら?」

 

『ククク、正解だ。ただ、俺自身があの死骸に入って襲ったような言い回しはやめてもらいたいな〜。それを取りやめて、俺の力のほんの一部を入れてやったことに、もうちょっと感謝すべきだぜ?俺が入っていたら終わった物語が、もう少し続くことになったんだからなーーーそう、お前の大事な大事な旦那様、みたいにナァ!』

 

レティシアは、それを感情のない顔で聞いていた。

 

いつもの楽しげな笑顔など、どこにもない。

 

 

 

 

 

ーーー雨がポツリ、ポツリと、降り出した。




はい、実はまだ続きます。

いや、本当はこの話で『葵襲撃事件』の真相を暴いて終わり、というつもりだったのですが、サタンさん出したなら、もう一つ語らなければいけない話があるので。

レティシアさんの過去と、サタンさんの接点。一度、レティシアさんの過去は話されましたが、まだまだ謎があるのです。

ここではヴラド卿は串刺しにされ亡くなりましたが、レティシアさんの過去話ではヴラド卿はとても優しい吸血鬼だったと語られています。どうしてそんな彼が串刺しにされ亡くなったのか……まあ、話の流れとここでの話で察しがつきますよね?

それではまた次回!さようなら〜!
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