〜葵side〜
「お、お母さん・・・どうしてここに・・・」
私は私の中から必死に声を出して、そう言葉にしました。
だって、全くといって良いほどに姿が変わっていませんから・・・。
私と同じ空色の髪のショート、空色の目、同じ巫女服。
どれも生前と変わっていません。まあ、死んだら姿が変わらないのは当たり前なのですが・・・
「どうしてって、死んだからよ?それ意外にあるかしら?『葵』」
・・・あれ?
私が少し頭の中で考えている時に、ルカと鬼灯が私を護るようにして前に出ました。
「おや?久し振りだね『人殺し』」
「・・・久し振りだな。言っとくが、その言葉を口にしたとしても、私は怒らない。事実だからな」
ルカはそう言うと、母は歪な笑顔を浮かべました。
・・・あの頃にも浮かべていた歪な笑顔を。
「ああ、そうだったね。あんたは事実を否定したりはしない。だって、実際に有ったことだからね。だったら、どうして『真実』を隠したんだい?」
・・・え?ど、どうしてその事を母が知って・・・
「おいルカ。『真実』ってなんだ?何か隠してんのか?」
私が母の言葉に驚いていると、魔理沙がそう言いました。
「ん?ああ、あんたは知らなかったね」
母はそう言うと、また歪に笑いながら言いました。
「あんたらは、私の死に方はどう聞いたんだい?」
「・・・病死よ」
「だろうね。死んだ人里の奴らも話してたよ。『あんた、病死で死んだって、子供に殺されたのかい?可哀想に・・・』ってね」
「・・・可哀想?どっちがだ‼︎どう考えても葵だろ‼︎お前は葵を虐待したんじゃないか‼︎」
「え、虐待⁉︎」
ルカが珍しく激怒して、そう口にしました。
勿論、そんな事を知らない人達はとても驚いていましたが。
「ーーー」
「?」
母が何か呟いた気がしますが・・・気の所為でしょうか?
「・・・ふん。だが、人里の連中はそう言ってたよ?でも、可笑しいね〜。だって、私が死んだ理由は・・・」
母はそこで一度区切り、ルカを見ながら・・・
「あんたが私を殺したからなのにさ〜」
〜回想〜
数年前。ルカが神社に住み始めてから数日後の事。
「・・・葵、大丈夫か?」
ルカは母親からの虐待にその日もあっていた。
今回はお腹を蹴られていた。
この当時、葵は八歳である。
「大丈夫だよ、ルカ。私は大丈夫」
ルカが何度も何度も矯正したお陰で、今ではタメ口である。
「・・・」
「・・・ねえ、ルカ」
「?なんだ?」
葵は夢で見た内容を起こさせないために、ある事を言った。
「・・・お母さんに、何もしないでね?」
「・・・」
ルカは何も言わずに、葵を部屋まで送った。
***
その日の夜。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
葵は神社の廊下を走っていた。
普段なら走ってはいけない廊下だが、そんな事を気にしてはいられない。
「葵!早く行くぞ‼︎」
「待って!鬼灯‼︎」
葵が予知夢で見た内容は、『ルカが葵の母を殺す夢』。
それを止めるために、昼間にあの言葉を掛けたのだが、全く意味をなしていなかった。
「!葵‼︎」
「ど、どうしたの・・・!どうしよう⁉︎これじゃあ開かないよ‼︎」
蒼華の部屋は凍らされ、開けられなくなっていた。
「私が溶かす‼︎神社を燃やさないために小さな炎になるが、その分時間が掛かる。だが、神社が燃えないだけマシだ‼︎」
鬼灯は能力を使い、氷を溶かす。そして・・・
「これで良い!開けろ‼︎」
葵は障子を開けた。
その先の光景は・・・
「・・・あ・・・あぁ」
「・・・ッ!・・・葵、どうやって入って・・・。ああ、鬼灯か」
白の服は血で赤く染まり、手に持たれていた氷で出来た剣もまた、赤く染まっている。
・・・そして、蒼華もまた、赤く染められ、死んでいた。
「う、うぅ・・・うわぁぁぁぁぁあん!」
葵はそこで、遂に泣いてしまったのだった。
〜回想終了〜
「・・・」
「・・・お、おい。嘘だよな?ルカ」
霊夢は少しルカを睨み付け、魔理沙は動揺した状態でルカにそう聞いたけど、ルカは何も言わなかった。
「ま、マジかよ・・・」
「それで?どうして私の死因が変わってたんだい?可笑しいよね、これ」
お母さんはルカにそう聞いていますが、ルカは答えようとしてません。
・・・答えないと、いけませんね。
「・・・それは、私がしたことです」
「!葵⁉︎」
「何時までも隠してたら駄目だと思ってたから・・・。良いんだよ、これで」
私はルカ達より前にでて、お母さんの質問に答えました。
「私が、紫さんに頼みました」
「・・・」
「私が、自分の為だけに・・・紫さんに頼んだんです・・・」
〜回想〜
お母さんが死んだ翌朝。紫さんが来た。
「・・・貴女が殺したのね。ルカ」
「ああ、私が殺した。幻想郷追放でもなんでもすれば良い。ただ、葵達にだけは迷惑を・・・」
「待って下さい。紫さん」
私はそこで口を挟みました。
「何かしら?現神無月の巫女さん」
紫さんは私を睨み付けていますが、ここで引くわけにはいきません。
・・・自分の満足するこの行動が、どれだけ駄目な行動だとしても。
「・・・ルカには何も罰を与えないで下さい」
「・・・」
「ここに、置かせて下さい」
「葵、お前何を・・・」
「少し黙っておけ、ルカ」
「だがな‼︎」
「黙っておけ」
「・・・」
ルカが何か言おうとしましたが、鬼灯が威圧してくれたお陰で静かにしてくれました。
「・・・駄目よ。彼女は巫女を殺した。それは放っておけないわ」
「・・・紫さん。私は貴女の命令には絶対に従います」
「・・・何が言いたいのかしら?」
私はそこで紫さんの目をキチンと見ながら言った。
「私が貴方の言うことに従う代わりに、ルカを此処に置かせてください」
「・・・」
〜回想終了〜
「・・・そして、色々話して、なんとか納得してもらって、今があります」
「・・・道理で、紫の言葉に逆らったことが無い訳ね」
私が話すと、その場の全員が黙り込みました。
・・・これで良いんです。これで。
「・・・そうかい。ならもうさっさと行くことにする」
「・・・え?」
私が全て話し終えると、お母さんが急にそう言いました。
「待て。いくなら葵に謝っていくべきだろ?」
鬼灯がそう言うと、お母さんは嫌そうな顔をして此方を見ました。
「何でだい?私は何も悪いことなんて「嘘付くな」・・・ああ、あんたにはそんな能力があったね。本当に嫌な能力だね」
・・・やっぱり、違和感の正体は・・・
「お母さん・・・」
「はあ、分かってたんだよ。本当は。ただ、あの人が死んだ事を認められず、ストレスもあって、吐き出せなくて・・・。そして、あんたに当たっただけって事は・・・」
お母さんは、顔を俯かせながらそう言いました。
「お母さん・・・」
私は、一歩一歩近寄っていきましたが・・・
「来るんじゃないよ!」
「‼︎」
母にそう言われてしまいました。
「あんたはもう私を愛さないでくれ。私はもう死んでるんだ。これ以上、本当に何も出来やしない。あんたに・・・謝ることだけしか出来ないんだ」
「お母さん・・・」
「それでも、未練を残したくないから・・・嫌われようと・・・敵として認知してもらおうとしたのに・・・」
母はその言葉の後「なんで何時も思い通りにいかないんだろうね?」っと言っていました。
「・・・さて、死神。あんたにお客様だよ」
「え?・・・きゃん!」
「全く、何時までも来ないと思ったら・・・何をしているのですか?小町」
私達は声がした方を向くと、緑髪のショートで、小町さんよりも小さな身長の女の子が居ました。
「え、映姫様・・・」
「全く。どうして真面目に仕事が出来ないのですか。もうちょっと真面目にしなさい。だいたい貴方は何時も何時も・・・」
そこから長々と始まった説教に、私達は着いていけれませんでした。