〜レティシアside〜
「クスクス、さて、この姿になるのも久し振りだから、準備運動はさせてくれるわよね?」
私は裏人格さんにそう言うけれど……
「はあ?誰がそんな事に付き合うかよ‼︎ソロモン‼︎」
断られた挙句に攻撃された。 まあ、避けたけれど。
「クスクス、酷いわね〜。ちょっとぐらい良いじゃ無い」
「てめ、巫山戯てんのか?戦いはもう始まってるんだ。本気で相手を叩き潰す。それだけだ」
「『本気』……ね」
私は一体、何時から『本気』を封じたのだったかしら?えっと……そう。幻想郷が出来る少し前からね。
まあ、封じたとしても別になんの障害にもならなかったし、今だとそれは逆にデメリットになる。だから、今の今まで封じてきたのだけれど、今回はどうなるかしらね?
「クスクス、そう言えば、貴方は弾幕ごっこのルールに則って戦ってるのね♪関心だわ♪」
「本当にそう思ってるのか、怪しいな‼︎激符『黒龍牙』‼︎」
裏人格さんがスペル宣言をすると、その周りに牙の形をした弾幕が形成され、私に向かってきた。
私はというと……
「……はあ」
その弾幕を手を一振りするだけで消し飛ばした。
「はあ⁉︎」
……やっぱり、力加減が難しいわね。暫くなってなかった所為ね。確実に。
となると、『あれ』に戻るとどうなるのかしら?
まあ、今はキツく無いからまだ無理だけれど。
「クスクス、さて、私からもやりましょうか♪」
そして、私は一枚のカードを取り出す。
流石に幽々子の時に使ったスペルカードは使えないわね。鬼灯達も巻き込まれるし。
「クスクス、それじゃあ、魔獣『フェンリル』」
すると、私の手前で緑色の瘴気が集まり、形を作っていった。
その姿を説明するにも形容し難い形をしているとしか言いようがなく、その体からは瘴気を放っている『犬』。
……『ペット』にする動物、間違えたかしら?
「うっ……何よ、この臭い……」
あらら、後ろにも被害が、まあ、知らないけど。
「クスクス、さて、フェンリル」
私は自分の『ペット』のフェンリルの体に手を乗せた。
……どういう感触かは、それぞれで考えて頂戴。
「クスクス、食べちゃいなさい♪」
『GAYYYYYY!』
フェンリルは吠えると、直ぐに黒龍に近付き、黒龍を殺そうとした。
けれど、黒龍は尻尾を使ってフェンリルを飛ばした。
……まあ、その行動は意味が無いのだけれどね。
実際、フェンリルは直ぐに此方に戻ってきたのだから。
「なら!燃やしてやれ‼︎ソロモン!」
黒龍は口から炎をフェンリルに向けて吹いた。
それをフェンリルは交わして、また黒龍に攻撃を仕掛けた。
……アレは時間が掛かりそうね。
「クスクス、裏人格さん。黒龍達は時間が掛かりそうだから私達も殺らないかしら?」
「……ああ、別にいいぜ」
そう言うと、裏人格さんは黒龍の背中から降りて、私の方に近付いて来た。
そして、直ぐに私に向けて弾幕を放ってきた。
私はそれらを全て避けながらも弾幕を放った。
この前の霊夢達みたいに弾幕を放たない、何てことはしない。私は幻想郷を壊そうとしたこいつを『消す』。それだけだ。
「おいおい、どうした?手も足も出ないのかよ?」
「クスクス、あら?弾幕は出してるじゃないの♪」
相手は余裕淡々とした笑みを浮かべている。
私が頭の中を見透かしてみると、どうやら私の『本気』がコレだと思っているみたい。
……馬鹿じゃないの?この男。私の『本気』がこれなら最強だなんて呼ばれたりしないわよ。
……もう一層の事、この男の為に『本気』を見せた方がいいんじゃないかしら?
私は鬼灯の方をチラッと見てみると、体力が回復したであろう葵から治療を受けているのが見えた。
それでも、私が見たのは分かった様で、考え込んでいる。
……仕方ない。
「(クスクス、紫、そこにいるんでしょう?)」
私が頭の中でそう呟くと……
「(レティシア?どうしたのかしら?)」
ちゃんと返事が返って来た。
「(クスクス、トボけなくても良いんじゃないかしら?本当はそこで全て見ているのでしょう?)」
私が『そこ』というのは、私達が戦っているすぐ近く。スキマの中で観戦中よ。
「(あら、やっぱり暴露ていたのね。それで?何の用かしら?)」
「(クスクス、もうね。まどろっこしいのよ。この戦い。だから、『本気』を出してもいいかしら?正直、まどろっこし過ぎてイライラしてくるのよ)」
私がそう問うと、暫くの沈黙が続いた後、
「(貴方の力で生じた被害をちゃんと直してくれるならね)」
と答えた。
「(クスクス、ありがとうね♪あ、博麗神社は直さないわよ?私がやったわけでもないんだから)」
「(ええ、分かっているわ。それじゃあ、お願いね)」
さて、紫からの許可も出た今、もう私が躊躇する理由も無いわね。
「クスクス、ねえ、貴方」
「あ?なんだよ」
裏人格さんは中々当たらない所為か、苛立っていた様で、とても柄悪く私に問い掛けてきた。
「クスクス、いえね、もしかして……『今の私』の状態が『本気』と思ってないわよね?」
「……は?」
相手は疑問の声を上げるも、その顔はとても驚いていた。
「クスクス、やっぱり、勘違いしていたのね♪なら……その勘違いを正してあげる」
そして、私は自分で掛けた封印を解いた。
私の中の妖力が今の姿では収まりきれないぐらいに膨れ上がり、その妖力をちゃんと収める為に、私の体も変化……いえ、『元に戻った』。
今の私はレミィ達と同じ様な背ではなく、紫と同じぐらいの背になった。
……この姿も久し振りね。
「……」
相手の顔はポカーンとしている。
周りをよく見れば、鬼灯と黒龍とフェンリル以外の全員が惚けていた。
「あら?戦闘中にボーッとするなんて、駄目よ?」
私は口調も元に戻して、相手に話し掛けた。
「……ハッ!……てめ、その仕掛けは何だ?」
その言葉に、私はどうしてか可笑しく思えてしまって、笑ってしまった。
「クスクス、仕掛けね〜。私の姿を元に戻しただけよ?」
「……元に、戻した」
後ろで葵がそう呟いたのが聞こえた。
「クスクス、その通りよ♪コレが私の本来の姿。あっちは封印してたからなった姿よ」
ちなみに、この事実を知っているのはレミィ、フラン、パチュリー、私が連れて来た六人、紫、幽香、幽々子、鬼灯、阿求だけね。
「……さて、やっぱり、元の姿になるのも久し振りだから……」
私はそこで、一区切り付けて……
「死んでしまったらごめんなさいね♪」
笑顔でそう言い、膨大な量の妖力を放った。……私の所為で、博麗大結界が危なく壊れそうになっているけれど、紫がどうにかしてくれているみたいね。本当に有難いわ。
相手の様子はというと、その量の所為か、さっき迄いた場所から結構後ろに居る。あと一歩下がれば石段から落ちてしまうぐらい後ろに。その体も強張って、しかも震えている。
「あら?どうしたのかしら?戦う気、あるのかしら?」
私は放出していた妖力を押さえ込んで、聞いて見た。
そのお陰か、相手の震えが止まっていた。
「さて、挨拶のし直しをしましょう。私はレティシア・スカーレット。『スカーレット家』の始祖であり、ブラド・ツェペシュ公と関わりがある吸血鬼。妖怪賢者であり最強の吸血鬼よ。よろしくね♪」
私は、そう挨拶をし直した。