第九十一話
〜葵side〜
私は、神社の境内を掃いています。
今日はこの後に、寺子屋で子供達に授業を教えることになっています……が、少し考えていることがあります。
「……やっぱり、やってもらいましょう」
私はそう決断し、掃き終えると、神社の中へと戻りました。
今は文月ですからとても暑いです。……倒れてなければ良いのですが。
***
「ルカ、想起さん知らな……あれ?」
私が想起さんを探している時にルカを見つけた為、居場所を聞こうと思って話しかけると、ルカが黒い毛並みの子猫を抱いていました。
「……ん?葵、どうした?」
「いや、その子猫、どうしたの?」
「ああ、この猫か。いや、さっきこの神社に迷い込んで来たみたいでな、首輪も無いから誰かが飼ってるというわけでもなさそうだ。多分、野良猫だろう。妖力も感じられないからな」
ルカがそう言いながら猫を掲げると、その子猫は「ニャー」と一声鳴きました。
「ふふ、可愛いね、その子猫」
「ああ、そうだな」
ルカはそう言いながら、その子猫を撫でていました。
「何だったら飼う?此処で」
「……え?」
私がルカにそう提案すると、ルカは驚いたような声をあげました。
「良いのか?」
「別に良いよ。私も飼いたいと思ってるからね!」
「……有難う」
私がルカにそう言うと、お礼の声が返ってきました。
「お礼は良いよ!言ったでしょ?私も飼いたいからって!……それで、その子猫の名前はどうするの?」
私がルカにそう聞くと、少し悩んだ後……
「……『ノア』にしよう。この猫は雌だからな」
「良い名前だね!……て、あ!」
私は、話が逸れていたことに今気付き、ルカに最初の時に聞こうとした質問をしました。
「想起?……いや、知らないな」
ルカは少し考えてから、そう返してくれました。
「そっか。有難う!」
「いや……はあ、仕方ない。私も探そう」
「え?いや、でも……」
「迷惑なんて思ってないからな?ただ、何時もの礼をするだけだ」
ルカはそう言うと、探しに行きました。
……お礼は寧ろ、私がしたいのですが。何時も、迷惑を掛けてしまってますからね。
「……って、考えてる暇はない!私も探そう!」
私は、自分一人しかいないその場所でそんな事を言ってから離れました。
***
その後、想起さんはちゃんと見つかりました。
……ただ、発見したルカから話を聞くと、畑の近くで倒れていたそうです。症状は確実に熱中症ですね。
そのため、今回は私一人で行こうとしましたが、どうしてもと言われ、結局は私がその熱中症を治して、今は寺子屋へと向かっています。
「お?葵ちゃん、こんにちは」
「あ!こんにちは!」
この前の異変から一ヶ月、私は人里に何度も降りて、まだ全員とは言えませんが、それでも、少し前進出来ました!
本当に、とても嬉しいです!
「本当に、良かったね、葵」
「はい!コレも想起さんが居てくれたからこそ、今はこうやって降りれる様になりましたからね!」
私は笑顔で想起さんにお礼を言いました。
その後、想起さんは謙遜してかこのお礼を素直に受け取ってはくれませんでしたが、何とか、受け取ってもらうことに成功しました。
そして、話をしながら歩いていると、幸多君に会いました。
「あ!葵お姉ちゃん!」
「幸多君!こんにちは!」
「こんにちはー!……あれ?お兄ちゃんは誰?」
幸多君が、私の隣にいる想起さんに気付き、そう聞いてきました。
「こんにちは、幸多君。僕は想起って言うんだ。よろしくね」
「うん!よろしくね!」
想起さんが幸多君に挨拶をすると、幸多君も挨拶をしました。
その後は幸多君と手を繋いで、寺子屋へと向かい、その日は想起さんに外の世界の話をしてもらいました。
そして、寺子屋での授業が終わり、神社へと帰ると、ルカぎノアと一緒に寝ていました。
私としては、その光景を見て、とても癒されました。