ガールズ&パンツァー+ボーイズ&タイタン   作:ユウキ003

1 / 8
大人気FPSゲーム、『タイタンフォール』シリーズとガールズ&パンツァーのクロスオーバーものです。登場するパイロットはオリジナルですが、所々に原作のパイロットが登場します。あと、設定上各校は共学校になっていたり、同じ学園艦の上に姉妹校の男子校がある、と言った感じになります。


第1話 初めての出会い

現在、この世界では『戦車道』と呼ばれる

武芸が行われている。

 

戦車道とは、その名の通り戦車を用いた武芸

である。かつては戦争における陸の王者と

呼ばれた戦車を使い、礼節のある、お淑やか

で慎ましく、凜々しい婦女子を育成しよう

と言う物であった。

この戦車道は世界中で広く知られており、

現在はマイナーなイメージがあるが、それ

でも全盛期には世界的な伝統文化として知られていた。

 

そんな戦車道の誕生と世界情勢の変化から、

戦車=戦争、ではなく、戦車=戦車道という

図式が広く浸透していくようになった。

 

また、それにともない戦車=軍人(男)という

イメージも、何時しか戦車=女性という

変化に見舞われていた。

 

次第に男から女性へとイメージが移っていった戦車。

 

しかし、そんな戦車に変わって、新しい

男達の、戦争の乗り物が発明された。

 

それが次世代人型戦闘兵器、『タイタン』である。

 

世界的な大手企業、『IMC』の子会社、

『ハモンド・ロボティクス』が開発した

全長7メートルほどのロボットである

タイタン。

これらタイタンは人型という事からその手

に主武装を持ち、更にミサイルなどで

武装。多種多様な能力で、戦車に変わる

陸の王者として、対テロ戦争などで

活躍する事になった。

 

加えて、このタイタンに乗る搭乗者、

『パイロット』となる事はとても難しい。

パイロット候補生の内、全体の98%が死ぬと

さえ言われた過酷な訓練を生き延びた

僅か2%だけが、パイロットとして戦場

に立つ事が出来るからだ。

 

パイロットは、腰元に装備した『ジャンプ

キット』と呼ばれる特殊なユニットと

パイロットだからこそ使いこなせる独自の

装備でもって、戦場を駆け回り、

タイタンと共に戦う。

 

パイロットとは、戦場における強者である。

素早く動き、華麗で、圧倒的。

常に冷静であり、臨機応変。

そして何よりも、冷酷である。

 

パイロットに敵うのは、パイロットだけ。

タイタンに敵うのは、タイタンだけ。

 

彼等は君臨していた。

 

戦場という舞台の上で、彼等は戦い

続けていた。

 

そんな現代の死神になろうとする少年達と。

かつての陸の王者を駆る少女達。

 

今、彼等が出会い、そして、物語は

動き出すのだった。

 

 

今、大海原を巨大な船が航行していた。

その名は『学園艦』。

 

巨大な空母のような船の上には町が作られて

おり、人々はそこで生活もしている。

そんな学園艦の上にある『大洗学園』に通う

一人の女子生徒。『西住みほ』。

 

彼女は訳あってこの大洗学園に転校してきた

2年生だ。そんなある日の事。

 

今日も今日とて一人で通学しているみほ。

そんな彼女の周囲では、白い制服を着ている

彼女と同じ学園の女生徒たちが友達と

談笑しながら歩いている。

 

しかし、そこに男子の姿は無い。

大洗学園は女子校ではない。立派な共学だ。

 

だが、その実態は『実質女子校』と呼ばれる

ようなものだ。

その理由は……。

 

『バシュッ』

「あ」

その時聞こえた、スラスター音にみほは足を

止めて周囲を見回す。そして、見えた。

 

近くの家屋の屋根の上を飛び回る数人の人影を。

「あれが、パイロット育成科の……」

みほは人影を見送る。

 

『パイロット育成科』。

それは、タイタンの操縦士であり一流の

兵士であるパイロットを育成する学科だ。

 

戦車に変わる陸の王者、タイタンの軍事的

重要性の、近年の高まりはめざましい物

がある。

それもあり各国はパイロットの育成に力を

注いでおり、その一環として高等学校

以上の教育機関、即ち高校や大学などに

パイロット育成科を設置。

 

現在、パイロットは主に分けて2種類に大別される。

 

非武装化が施され工事現場などで活躍する

タイタンを操縦するパイロットと。

戦場で武装したタイタンを駆って戦う

パイロット。

 

そんな中でも後者は、ある認証を得る事。

『フルコンバット認証』を必要としている。

この認証を得るための訓練で、大勢の男

達が命を落とすのだ。

 

そんな訓練を生きて卒業するためにも、各校

に設置されたパイロット育成科の生徒達は

訓練に励む。もっとも、この訓練も一歩

間違えば命を落としかねない危険な物だ。

 

なので、世界中のパイロット育成科では

入学時に遺書を書き学校側に提出する事と、

死亡時、学校側に一切の責任追及をしない

旨を記載した誓約書への署名を義務づけ

られている。

 

それほどまでに狭き門のパイロット育成科。

また、彼等が街中で訓練しているのは、

パイロットの持つジャンプキットの特性

から、彼等は開けた場所よりも、市街地

などの交戦距離の短い密集地帯で力を

発揮するのだ。

そしてだからこそ、学園艦の上にある

町自体が、彼等にとっての訓練場

なのだ。

 

話を戻すと、大洗学園が実質的な女子校と

されるのは、パイロット育成科に理由がある。

大洗学園に男子が入学する場合、『パイロット

育成科しか』無いのだ。

つまり、男子が籍を置く普通科などは

一切無い。またパイロット科自身入ってくる

生徒の数が少ない。

 

現に大洗学園のパイロットは、各学年に

1人ずつ。つまり3人だけであり、同時に

この3人が大洗学園の男子生徒の総数

である。

だからこそ、大洗は実質的な女子校なのだ。

 

 

パイロットが腰のジャンプキットから噴射炎

を吐き出しつつ、彼女達の頭上を飛び越していく。

みほはそれを見上げながらゆっくりと歩いていた。

 

そして、十字路にさしかかった時。

彼女は横から近づいてくる自転車に

気づかなかった。

更に言えば、自転車に乗っていた男も、

スマホに手にながら運転をしていた。

 

双方の不注意。

「あっ!?」

まず最初に自転車の男が気づき。

「え?」

次いでその声にみほが気づく。

 

『ぶつかる!?』

そう考えたみほは瞬間的に目を

閉じた。

 

が、その時。

『バッ!!』

どこからともなく現れた人影がみほの

体を抱えて跳躍した。

 

みほは一瞬の浮遊感を感じ、直後に

誰かに抱っこされている事。

痛みが襲ってこない事に気づいて

ゆっくりと震える瞼を開いた。

 

すると……。

「大丈夫か?」

青い光を放つフルフェイスヘルメットが

眼前にあった。

「あ、え?」

突然の事に戸惑うみほ。

 

彼女が、そのヘルメットがパイロット

の物だと理解するのに、少し時間を

要した。

「……。あ、貴方は、もしかして

 パイロット育成科の」

「あぁ」

パイロットは頷くと、飛び乗っていた

家屋の屋根から道ばたに飛び降り、

お姫様抱っこしていたみほを下ろした。

 

「怪我は無いか?」

「あ、はい。あの、ありがとうございました」

「気にするな。訓練の最中に目に入ったから

 助けただけだ。じゃあな」

それだけ言うと、パイロットはみほから

離れ、軽やかな動きとジャンプキットの

推進力だけで家屋に飛び乗り、陸上選手

ばりの動きで走り出した。

 

それを見送るみほ。

 

「すごいよね~。あれがパイロット候補生

 なんでしょ?」

その時、一部始終を見ていた周囲の

女生徒達の声が聞こえた。

「うん。世界最強の兵士、ってテレビ

 で言って居たけど、見えた?今の動き」

「全然。あれって人間業?」

「前テレビで言ってたけど、パイロット

 になるのって人間止めるような物

 なんだって~」

「え~?嘘~」

「でもやっぱり憧れちゃうな~。

 パイロットの彼ってかっこ良くない?」

「え~?どうかな~?」

「う~ん、パイロットって高給取りみたい

 だし、私的には有りかな~」

 

そんな話をしながら、女子達はみほから

離れて行く。

それを見ていたみほも歩き出そうとした。

が……。

≪キラッ≫

「あれ?」

足下で何かが輝いた気がして屈み込む

みほ。

見ると、彼女の足下に三毛猫のキーホルダー

が転がっていた。

「これって?」

みほはキーホルダーを拾って立ち上がると

細かくそれを確認し始めた。

どこかに持ち主の名前が無いかと探して

いるのだ。

 

すると……。

「あ。あった。えっと、『O.Kazuki』?

 カズキって、男の人?」

う~んと唸るみほ。

「あっ」

その時、彼女は思い出した。

 

学園でたった3人の男子。その2年生が

自分と同じクラスである事。

彼の名前が『大代(おおしろ) 和紀』である事を。

メット越しであったが、自分を助けて

くれたパイロットの声が彼と似ていた事。

「もしかして、これ……」

みほは、若干意外に思いながらその

キーホルダーをポケットにしまうと

歩き出した。

「あとで返してあげよう」

 

そう思いながらみほは学園に向かって

歩き出すのだった。

 

学園につけば、周囲を歩く者は全員が女子だ。

みほはそのまま自分の教室に向かう。

そしてそこにたどり着けば、教室の中で

一際異彩を放つ存在、2年生でただ一人の

男子生徒、『大代和紀』の姿があった。

 

彼は誰と談笑することも無く、一人で

難しそうな表紙の本と睨めっこしていた。

 

最初は声を掛けようと思ったみほだが、

彼女は2年からの転校生のため、未だに

仲の良いクラスメイトがいない。

更に相手は異性である事や、候補生

とは言え、相手は戦闘のプロの卵。

どうしても萎縮してしまい、そんな事

になっていたら授業が始まってしまった

のだった。

 

そして、何だかんだでお昼休み。

片付けをしていたみほだったが、ペンを

拾おうとして色んな物を落としたり

拾ったりしている内に、教室の中では

自分だけになってしまった。

 

その現状にため息をつくみほ。

 

だったが……。

 

「へ~い彼女~!いっしょにお昼

 どお~?」

不意に聞こえた声に、周囲を見回すみほ。

そして後ろを向くと、そこには明るい

茶髪の少女と、黒髪の少女が立っていた。

 

しばしの間を置き、驚いて立ち上がるみほ。

「うわっ!」

「ほら沙織さん。西住さん驚いて

 いらっしゃるじゃないですか」

「あぁいきなりごめんね」

「あの、改めまして、良かったら

 お昼一緒にどうですか?」

 

「うぇ!?私とですか!?」

戸惑うみほ。

彼女は転校生であったため、親しい友人

も居らず、こうしてお昼に誘われるのも

大洗に来てから初めてだったりする。

彼女の言葉に頷く二人の少女、『武部沙織』と

『五十鈴華』。

 

と、そこへ。

 

「ん?」

沙織たちの傍のドアから入ってきた人物が

いた。

それは口にゼリー飲料のパックを咥えた

和紀だった。

「あっ」

彼の顔を見て、みほは自分の鞄に視線を

向けた。

 

しかし和紀は興味が無いのか3人を一瞥

すると自分の席に向かう。

『い、今返さないと。大事な物かも

 しれないし!』

そう考えたみほは、覚悟を決めた。

 

「あ、あの!」

「ん?」

みほが声を掛けると、和紀は足を止めて

振り返り口にしていたパックを離す。

「俺に何かようか?」

「あ、えっと。その……。こ、これ!」

そう言ってポケットからキーホルダー

を取り出して、まるで貢ぎ物をする

かのように両手に乗せて前に突出すみほ。

 

「あっ」

そして、そのキーホルダーを見た瞬間、

和紀の表情が一瞬変わった。

「あ、その、それ、どこで?」

「け、今朝。助けて貰った時に

 見つけて、裏にローマ字で

 カズキって書いてあったから、

 もしかしてと思って」

「そ、そうか。すまない。探していたんだ」

そう言うと、和紀は足早にみほに歩み寄ると

キーホルダーを受け取りすぐさまポケットに

押し込んでしまった。

 

「ありがとう。この礼はいずれ」

「いいえ。気にしないで下さい。

 ……猫、好きなんですね?」

 

『ピシッ!』

 

みほがそう問いかけると、和紀はそんな擬音

が聞こえてきそうな程固まった。

「あ、あれ?」

その様子に戸惑うみほ。

「あ、あ~。その、悪いがそれは忘れて 

 欲しい。……パイロット候補生が猫を

 好き、と言うのは少々、いやかなり

 ギャップが大きすぎてな。笑われる

 かと……」

そう言って、恥ずかしそうに顔を赤くする

和紀。

 

しかし……。

「え~?良いじゃん、猫可愛いしさ~。

 別に良くない?」

和紀に話題を振る沙織。

「い、いや、それはそうだが、俺は

 パイロットで……」

沙織の言い分に戸惑う和紀。そこへ……。

「ふふふ、大代さん。普段からあまり

 感情を表に出していなかった

 ので、どんな方かと常日頃考えて

 いたのですが、可愛らしい面も

 あるのですね」

 

「……ぐふっ」

華による、言葉のボディーブローと言う

名の追撃を喰らってしまった。

 

「って言うか、お昼ご飯がそれだけって

 味気なくない?ほら、一緒に食堂

 行こっ」

「え?」

そう言ってみほの手を引く沙織。

「ほら、大代さんも」

「え?いや、俺は……」

断ろうとした和紀。しかし……。

「皆さん、大代さんが猫好きだと

 知ったら、どんな反応するんでしょうね~?」

「ごふっ!?」

「一緒に、来て頂けますね?」

「…………。はい」

 

弱点を突かれたパイロットに、もはや

生き残る術は無かった。

彼は項垂れながら3人に続くしかないの

だった。

 

食堂にやってきた4人はトレーを手に

列に並ぶ。

しかしやはり、学校に3人しかいない

男子の一人である和紀がいると、注目を

集めてしまう。

しかし、肝心のみほ、沙織、華は

大して気にしていない様子だ。

 

今は3人でガールズトークの真っ最中だ。

『って言うか、クラスメイトの誕生日も

 把握してるのかこいつ』

と、そんな彼女達のやり取りを聞きながら

思う和紀であった。

 

その後、4人は同じ席に座って昼を

食べていた。話題は、みほが大洗に

一人で引っ越してきたと言う事から

始まった。

「じゃあ、今は一人暮らしの真っ最中か?」

「うん。和紀君は?」

「まぁ俺も一人暮らしだ。学校近くの

 アパートを借りてる」

ちなみに、今では4人が下の名前で呼び

合う仲だ。元々、沙織の提案で、互い

に下の名前で呼び合うようになった。

 

ちなみに、その話題に対する沙織と華の

聞き方、具体的にはお家騒動だとか

何とか聞く2人に和紀は……。

「お前等の頭の中はどうなってるんだ?」

と、突っ込んだ。加えて。

「そう余り突っ込んでやるな」

と言って二人を止めた。

「人に言えない事なんて、色々ある。

 みほが、理由があって大洗に一人で

 引っ越してきた。だったらそれで

 良いじゃ無いか。違うか?」

「そうですね」

和紀の言葉に、華が頷く。

 

「と言うか、俺は今日お前達3人に

 秘密がバレてヒヤヒヤしてる所だ。

 頼むから、余り周囲に広めないで

 くれよ?」

と、ため息交じりに念押しをして、

3人を小さく笑わせるのだった。

 

そして食堂から戻った昼休み。

「ねぇねぇ、帰り皆で一緒にお茶していかない?」

沙織がそう言ってみほと華、更には和紀まで

誘うが……。

 

「無茶言うな。俺は放課後から訓練だ。

 と言うかむしろ育成科は放課後からが本番だ」

「へ~。ってか育成科って何してるの?」

と、純粋な興味から問いかける沙織。

「色々、としか言えんな。弾道計算のため

 の数学や近距離戦闘のための格闘訓練。

 射撃訓練。世界各地で戦えるように

 言語の勉強。移動に関係して地理、

 サバイバル技術。天候についての勉強

なんかもある。ジャンルはバラバラ。

 座学もあれば外で体を動かす事もある。

 とにかく、戦場で生き抜くために、ありと

 あらゆる知識を頭の中にたたき込まれてる

 所だ」

「それって、やっぱり戦争に行くため?」

「いや、どちらかと言うと、『行った時

 大丈夫なように』、と言うべきだな。 

 ……タイタン登場初期の、大規模な

 テロ組織壊滅作戦、『オペレーション

 フリーダム』以降、大きなテロ組織の

 活動は報告されていない。あっても

 散発的な物だ」

「それはつまり、備えている、と言う

 事ですか?」

と、首をかしげる華。

「そうだな。まぁ、タイタン自身、

 災害時などでの活躍も見込めるし、

 俺達が目指してるフルコンバット 

 認証を受けたパイロットなら、

 軍からも引っ張りだこ。

 仮に軍人にならなかったとしても、

 有事の際には即戦力として戦闘に

 投入出来る。それに、タイタンと

 戦えるのはタイタンだけだからな。

 需要は尽きないだろう」

「……戦争、かぁ。何だか、実感

 沸かないなぁ」

「そうか?」

「え?そうか、って、逆に沸くの?

 私達は普通のJKだよ?」

「……戦車道」

 

「ッ!?」

 

ポツリと呟かれた単語に、みほはビクッ

と体を震わせる。

 

「それをやってる女子達が乗ってる

 のは何だ?戦車だ。……タイタンと

 なんら変わらない。戦争で勝つ

 ために人類の英知が生み出した、

 破壊のための兵器。……確かに

 戦車道での試合は模擬戦。

 死傷者が出る事は無い。

 試合で使われる砲弾も、試合用に

 火薬量を減らした物だ。戦車自体も

 特殊コーティングがされているからな。

 ……だが、その砲弾を実戦レベルの炸薬と

同程度まで増やし、相手に放ったとする。

 相手の戦車は、砲弾を受けて大破、

 炎上。中に乗っていた奴らは死ぬ」

 

静かに語る和紀に、3人はどこか戸惑い、

冷や汗を浮かべる。

 

「優れた戦車道の有段者なら、それは

 つまり『優秀な戦車兵』に他ならない。

 後はそいつに、敵を殺す覚悟さえ

 あれば、立派に戦場で活躍できる事

 だろうさ」

 

そして、和紀は更に呟いた。

  

「戦車道なんて言っても、上っ面の

 皮を引っぺがせば、かつて戦車が

 兵器であった頃に男達が学んでいた

 敵を倒す技術。敵を殺す技術を

 女子高生が学んでるって事だ。

 そして俺も、俺以外のパイロット

 候補生達も。学生やりながら人を

 殺す術を学んでいる」

 

彼の言葉に、『かつて自分が学んだ

技術』を思い出しながら、みほは静かに

俯き考える。

 

「……なんと言うか。一般人と兵士の

 境界線が、酷く曖昧な気がするよ。

 この世界は」

 

彼の言葉に顔を見合わせる華と沙織。

と、そんな話をしていた時。

「ん?あれは……」

教室前方の扉から入ってくる人影があった。

数は4人。内一人は男子生徒だった。

と言うのも……。

 

「生徒会長。それに、清水先輩たちも」

「おぉ和紀」

相手はこの学園のトップ、つまり生徒会長

と生徒会の役員である女子2人。

知らない生徒はほぼいない。

そして男子生徒は、この学園の3人の

男子生徒の一人であり最年長、つまり

3年生の『清水 央樹(おうき)』だ。

 

短く切りそろえられた黒髪。

少し日に焼けた肌。

そして何よりその同世代の同性と

比べても大柄な体。

如何にも、男と表現出来そうな体格の

男性だった。

 

その央樹が和紀に気づいて声を掛けた。

「3年生の先輩がどうして2年の教室に?」

「まぁ、こいつらのお目付役だ」

「?」

お目付役、の意味が分からないながらも

生徒会の面々に目を向ける和紀。

そして彼女達の目的というのが……。

 

「必修選択科目なんだけどさぁ、戦車道

 取ってね?よろしく」

廊下にみほを呼び出し、いきなりその話題

を切り出したのである。

「え!?あ、あの、この学校は戦車道の

 授業は無かったはずじゃ……」

生徒会長、『角谷 杏』の言葉に、みほは

戸惑いを覚えた。なぜなら、『それ』こそが

彼女が大洗を選んだ理由なのだから。

 

「今年から復活することになった」

「わ、私!この学校は戦車道が無いと

 思ってわざわざ転校してきたんですけど……」

生徒会広報、『河嶋 桃』の言葉にみほは戸惑う。

「いやぁ運命だねぇ!」

だが、杏はまるでみほの存在を喜ぶかの

ように笑みを浮かべる。

「必修選択科目って自由に選べるんじゃ……」

それは彼女の最後の抵抗でもあった。

しかし……。

「とにかくよろしく!」

『バンッ』

杏は生むを言わさずにみほの背中を叩くと、

他の2人を連れて去って行った。

 

そして、それを見ていた和紀と央樹は……。

「何です、あの茶番」

「やはり分かるか?」

「当たり前ですよ。あれ、あと一歩

 酷くしたら立派な脅迫罪。犯罪

 ですよ?」

「……刑法222条。1、生命、身体、

 自由、名誉又は財産に対し害を与える

 旨を告知して人を脅迫した者は、

 2年以下の懲役又は30万円以下の

 罰金に処する、か」

「分かってるなら何で止めないんですか?

 先輩は生徒会の連中と仲良いですよね?」

「まぁな。ただ、理由があるんだよ。

 理由が」

それだけ言うと、央樹もその場を去って行った。

 

そしてその後、みほは授業を受けるが、

まともに先生の言葉を聞けないほど憔悴

しており、沙織と華が二人して彼女を

保健室に連れて行った。

 

それを見送った和紀は、授業を受けながら

も彼女の事を考えていた。

『あの反応からして、みほには戦車道

 に対するトラウマがあるな。それも

 嫌だという理由で転校してくる程の

 ものが。あの憔悴した表情からも

 それが窺えるが……。しかし

 何だって生徒会連中はあんな事を?

 ……いやな予感がするな』

彼は、心の片隅でそんな事を考えながら

も授業を受けていた。

 

のだが……。

『トントンッ』

その時、教室のドアがノックされて1人の

男性が入ってきた。

 

「ラスティモーサ先生。どうされました?」

その男性に、授業をしていた先生は驚き

ながら答えた。

 

入ってきた男性というのは、左頬に火傷

の傷痕と、短く切りそろえられた白髪が

特徴の、この学園で唯一の男性教師

であり、そしてパイロット育成科の全権

を担う男、『タイ・ラスティモーサ』だった。

 

「授業を中断してすまない。実はちょっと

 用がある奴がいてな。和紀」

「はっ!」

ラスティモーサが声を掛けると、和紀は

すぐに席を立った。

 

軍人と遜色ない教育を受けているパイロット

としての性である。そして周囲の女子が

その事で若干引いていたが、和紀には

関係無い事だった。

「悪いが今すぐ集合だ。完全装備で

 体育館に集合。10分で支度しろ」

「了解っ!」

和紀はすぐに教室を飛び出すと駆け足

で廊下を走り去っていった。

 

「と言う訳だ。悪いな先生。和紀を

 借りていくぞ」

「あ、え、えぇ。分かりました。

 パイロット育成科の子は、そちらが

 優先ですからね」

「悪いな、授業を邪魔しちゃって。

 じゃぁ」

そう言うと、ラスティモーサも教室を

出てどこかへ向かって歩き出した。

 

ちなみに……。

「あ、あれがパイロット育成科の教官さん?

 何か凄いね」

「うん。ちょっと厳ついよね」

「でも、ちょっと有りじゃない?

 ナイスミドルみたいでさ」

「ちょっ、アンタレベル高いわね」

と、女子がヒソヒソとそんな話しを

していたのだった。

 

その後、更衣室でパイロットのスーツを

纏った和紀は、完全装備という事もあり、

自分のガンロッカーの中から銃器を

取り出した。と言っても、持っていくのは

ハンドガン一丁と電気スモークグレネード3つ。

 

ハンドガンはこれまで多くのパイロットの

サイドアームとして実戦を共にしてきた

セミオート式オートマチック拳銃、

『ハモンドP2016』。

腰に下げている電気スモークグレネードは、

対タイタン、対歩兵、対機械歩兵など、

幅広く使える武装だ。電気を発生させる

性質から、敵の通信設備の破壊などにも

使われる。

 

本来であればパイロットは、更にメインの

ライフルやマシンガン。更に対タイタン

兵器を装備するが、それらは威力が強く、

大洗では指定された射撃訓練場以外での

携行を許されない。許されているのは

ハンドガンと軍需品だけだ。

 

まぁ、それでもかなりの重武装

なのだが。

 

和紀はP2016の動作を確認し、マガジン

を出して残弾を確認すると戻し、

セーフティを掛けてホルスターにいれた。

 

と、そこへ。

「あっ!オッス和紀先輩!」

更衣室の扉が開いて1人の男子が

入ってきた。

 

彼はパイロット育成科1年。

『高宮 明弘(あきひろ)』だった。

 

茶髪に飄々とした性格から、チャラ男

をイメージさせる少年だが、それでも

パイロット候補生。既にそこら辺の

暴漢程度、簡単にたたきのめす力を持った

パイロットの卵だ。

 

「明弘。お前も招集掛かったのか?」

「はいっす。何か即行着替えて体育館

 集合。しかも完全装備ってなんなんす

 かね?」

「さぁな。だが、俺もお前も、と言う事は

 央樹先輩もだろう。それより俺は先に行く。

 お前も急げよ」

「うっす」

 

和紀はヘルメットを脇に抱えると更衣室を

出て体育館へと向かった。

 

 

一方、学校の放送室では、和紀達と

同じようにパイロットスーツに着替えた

央樹が杏たち3人と一緒だった。

 

「……本当に、やるのか?」

「当たり前っしょ」

央樹の声に杏は即答する。

「……杏。その選択は賭けに近い。

 それでも良いんだな?

 あの時の西住みほの反応から

 して、彼女は戦車道経験者だが、

 彼女は戦車道から離れたがって」

「じゃあ央樹にはこれ以外に良い案が

 あるの?」

 

央樹の言葉を遮る杏。しかもその声には、

苛立ちとも焦りとも取れる声色が

含まれていた。

 

「無い」

そして央樹はすぐさまそう答えた。

「無いが。やる気の無い者と経験の無い

 者で創られたチームで、本当に

 優勝まで行けると思うか?

 ……確かに俺にはこれ以外の、もっと

 良い方法は思いつかない。

 だがこの方法も賭けに近い。

 それでも良いんだな」

「……」

「清水っ。お前は会長の決定に

 異を唱える気か?」

「現実的な話をしている。

 急造の寄せ集めチームで、強豪が

 ひしめき合う戦いで勝つ可能性は、

 極端に低いのは誰でも分かることだ」

そう言って睨み遭う桃と央樹。

 

「ふ、2人ともやめようよ。ほら桃ちゃん。

 そろそろ放送しないと」

「桃ちゃん言うなっ!」

生徒会副会長、『小山 柚子』が止めに入り、

桃は渋々と言った感じで席に付くと

放送を始め、全校生徒を体育館に集合させた。

 

そして、和紀もそれを体育館でそれを

聞いていた。

 

それから約数十分後。生徒達が集められ

パイロット候補の3人は舞台袖にいた。

壇上には生徒会の3人の姿もあった。

 

彼女達が集められた理由は、選択必修科目の

オリエンテーション、と言う事だったが、

内容は戦車道を全面に押し出したものだ。

戦車道の動画が流れ、更には派手な演出。

科目選択用の用紙は、戦車道の

選択欄が明らかに他よりも大きい。

 

ここまで戦車道を推す理由は、『数年後に

戦車道の世界大会が日本である事から、

文科省から全国の高校や大学に

対して戦車道に力を入れるように

通達があった』、と言う物であった。

 

更に、戦車道履修者に対する好待遇の

数々。しかし……。

 

「なんなんすかね~。この不気味なまで

 の好待遇。いくらなんでも推しすぎ

 っしょ戦車道」

舞台袖にいた明弘はそう呟く。

「それには俺も同感だ。……文科省からの

 お達しとは言え、少しきな臭いな」

『みほへの強引な勧誘もこれが元か? 

 何故そこまで戦車道に拘る。

 生徒会長』

和紀は静かに、ヘルメット越しに壇上の

生徒会長を睨み付けていた。

 

と、その時。

 

「また、戦車道は多少なれども危険を

 伴うので、実技等の際には実際に

 軍事関係の教練を受けている生徒3人

とパイロット育成科の教官、タイ・

ラスティモーサ先生が皆さんのフォローを

 行います」

柚子の発言に和紀と明弘は静かに眉を

動かした。

 

「へ~。そんな事までするんだ。生徒会は」

明弘は笑っているが内心は、そうではない

だろうと和紀は思っていた。

 

今の柚子の発言を女性的に解釈すれば、

『戦車道を履修する事で男子生徒と

交流が出来る』、と言う事だ。

「それじゃぁ3人とも、こっちに来て~」

 

そう言って、和紀達の方に視線を向ける杏。

「ほら。お呼びだ」

央樹の言葉に和紀と明弘はしぶしぶと

した感じで壇上に姿を見せた。

 

ちなみに、彼等のスーツにはそれぞれの

戦術と呼ばれるシステムがあった。

 

和紀は腕部から射出したフックで高速移動を

可能にする『グラップリングフック』。

 

明弘はクナイのような形で打ち込まれた

地点の周囲を索敵するエコーを放つ

『パルスブレード』。

 

央樹は自らを守る盾であり、同時に自分の

放つ銃弾の威力を強化する『増幅壁』。

 

それが彼等のそれぞれの装備だった。

 

そして、3人は横一列に並ぶとヘルメットを

取って小脇に抱えた。

それだけで女子、特に1年生達の方から

ざわめきが聞こえてきた。

多感な時期の少女達に、戦うイケメン

と言うのは少なからず興味を引かれる

のだろうか。或いは、パイロットは

高給取りとして有名な事を知ってかは、

分からないが……。

 

ともかく、普段男子である3人と殆ど

接点を持たない彼女達にしてみれば、

戦車道の履修=男子との出会いのように

思えてくるだろう。

 

その事実に和紀は内心辟易していた。

そして……。

 

『これから何が起るんだろうな』

 

これから先の事に一抹の不安を

覚えるのだった。

 

     第1話 END

 




個人的にはオリキャラとみほ達の恋愛もありにしようと考えてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。