敢えて区切りました。
強豪、聖グロリアーナとのタイタン有りの、
異機種混合試合をする事になった大洗学園
の戦車道チーム。
そして試合当日の早朝。既にそこには
パイロットスーツ姿の和紀達3人と、
ラスティモーサの姿があった。
「よく聞けお前等。相手は遠距離戦に
優れたイオンで攻撃してくる。射撃戦
じゃ実弾を止められるヴォーテックス
シールドを向こうが有利だ。
とにかく距離を詰めて戦え。
相手は恐らく、1機ずつ確実に潰そうと
するだろう。自分が戦う敵だけじゃない。
他の敵の動きにも注意しろ。そいつが
自分を狙っていたら、自分と戦ってる
敵を盾にして射線を遮れ。分かったな?」
「「「はいっ!」」」
「よし。なら次は武器の整備だ。戦場で
ジャムる程怖い物はないぞ」
「「はいっ!」」」
3人は返事を返すと、すぐさま倉庫の中に
入って行き、ガンロッカーから持って
来ていた各々の武器を再点検していた。
彼等の武器は、基本的に4種類+戦術アビリティだ。
対人戦闘などで使われるメイン武装。
予備武器としてのピストルなどのサブ兵装。
グレネードなどの投擲兵器である軍需品。
対タイタン戦闘を考慮した対タイタン兵装。
これら4つがパイロットの武装だ。
大洗では、弾薬の共通の観点からサブ兵装
は最もオーソドックスなハモンドP2016
で統一している。
メイン武装は、和紀がアサルトライフルの『R-201』。
明弘がサブマシンガンの『CAR』。
央樹がスナイパーライフルの『ロングボウ-DMR』。
更に、彼等の対タイタン兵装は『チャージ
ライフル』という荷電ビーム発射式の
スナイパーライフルだ。
更に軍需品は、和紀が『電気スモークグレネード』。
明弘が『ファイヤースター』。
央樹が『サッチェル』を装備している。
正直な所、これだけの装備があれば和紀達
3人だけでも敵戦車チームを撃破出来る。
ジャンプキットの機動性と、タイタンの装甲
さえ射貫くチャージライフルの威力が
あれば、3人だけでも聖グロリアーナの
戦車チームを全滅させる事は、夢ではない。
まぁ、相手のタイタンチームがそれをさせて
くれれば、の話だが。
ともかく戦場で武器の不具合が命取りになる
事はここにいる全員が理解している。
だからこそ入念に武装のチェックを行う。
ちなみに、今回使用される弾丸はペイント弾だ。
実弾を使ったのでは、何人死ぬのか分かった
ものではないからだ。チャージライフルも、
発射こそするが殆どエフェクトだけのような物だ。
人に当った場合、少し皮膚が火傷する程度まで
出力は抑えられており、着弾判定は、タイタンの
場合はデータリンクを通して戦いの模様を見て
いるAIが判断し、戦車の方にはいつもの
白旗システムがあるので、被弾に応じて
これが上がるようになっている。
そうして、彼等が入念に武器の装備をしていた時。
「ん?」
倉庫に入ってきた足音に気づいて和紀が
振り返った。見ると、みほがちょうど倉庫に
入ってきた所だった。
「あっ、おはよう和紀君。それに、
明弘君も、清水先輩も」
「あっ、おはようっす西住先輩」
「おはようみほ。思ってたより早いな。
女性陣はまだ殆ど来てないぞ?」
と、和紀が言うと……。
「あっ!そうだ和紀君っ!お願い
手伝って!」
「ん?あ、あぁ。俺で良ければ」
唐突なお願いに、和紀は困惑しながらも
了承した。
で、その後。
「手伝うって、こう言う事ね」
『市街地を走るⅣ号』の車体の上に
座りながら1人呟く和紀。
みほが言うには、麻子を起こしに行くのに
Ⅳ号を使うとの事で、しかし運転手は華が
するらしく。麻子ほどは上手くない彼女を
補佐するために目となる人が必要なそうだ。
とは言っても、和紀のやった事と言えば
十字路に進入する際の警戒などだけで、
みほが出来るだけ広い道を選んだのも
あって順調に麻子の家へとたどり着いた。
見ると既に沙織と優花里が麻子の家に
来ていた。
「え!?みほっ!それに和紀までっ!?
ってかなんで戦車持ってきたの!?」
「最終手段、だそうだ」
そう言って戦車の主砲をコツコツと指先で
叩く和紀。
「さ、最終手段?」
「あ、和紀君。そこ危ないよ」
「あぁ」
みほの言葉を聞き、和紀はⅣ号の傍を離れた。
そして直後。
『ドォォォォォンッ!!!!』
爆音が周囲に広がった。
すると案の定、と言うべきか爆音で麻子を
たたき起こすどころか、周囲の民家の人達
も何だ何だ、と慌て出す。
「すみませんっ!空砲ですっ!」
そう言って周囲に呼びかけるみほ。
そして、麻子も流石の爆音で起きたようだ。
「な、なんて派手な目覚まし」
戦車の空砲を目覚まし代わりに使うみほの
機転に、引きつった笑みを浮かべる沙織。
「確かにな」
そしてそれを聞いていた和紀も、ヘルメット
の下で笑みを浮かべていた。
その後、麻子を回収したⅣ号は市街地を走り、
何とか学園に戻った。
試合は大洗町全体を使って行われる為、
学園艦はもうすぐ港に寄港する。なので
艦を降りる車の列の中に、みほ達の戦車と
和紀達のタイタンの姿、更にラスティモーサ
のBTの姿もあった。
そして、港に到着後。戦車達が先をゆっくり
と進み、その後ろをタイタン4機が付いていった。
と、その時。
不意に彼女達の走る道路を大きな影が覆った。
みほ達が『何だろう?』と言わんばかりの影の
方に目をやると……。
そこには、大洗の学園艦の、有に3倍以上は
ありそうな巨大な学園艦が、大洗艦の隣の
港にたどり着いた。
「でかっ!?」
「……あれが聖グロリアーナの学園艦だ」
驚く沙織に答えたのは、乗っている
オーガのスピーカーを通して喋っている
央樹だ。
「あっ、隊長。あそこ」
その時。明弘のストライダーが聖グロリアーナ
の学園艦の一部を指さした。
見ると、そこを戦車数輌と、タイタンが歩いていた。
「あれって……」
「聖グロリアーナの戦車と、聖ゲオル
ギウスのタイタンだな。戦車は、
一輌目は『チャーチルMk.Ⅶ』。
あとの2輌は『マチルダⅡ』だな。
こっちは型式までは、こっからじゃ
分からないな」
「ねぇねぇ。そのチャーチルとかって
強いの?」
と、和紀に声を掛けたのは沙織だ。
「あぁ。一番厄介なのは装甲だ。
速度の面から言えば、例えば
お前達のⅣ号の方が早い。
だが、その分奴らは装甲が分厚い。
実際、マチルダは第2次世界大戦
序盤で活躍した戦車だ。それと
あのリーダー車両でもある
チャーチル。あれには8個の
バリエーションがある。聖グロの
はその7番目だ。兄妹に例える
なら末っ子の一歩手前って所か。
おかげでそれ以前のバリエーション
と比べても更に装甲が厚い。
だからこそ、至近距離じゃないと
こっちの弾が通らないんだよ。
装甲が厚くて、弾が簡単に装甲で
逸らされるからな」
と、軽くレクチャーじみた事をする和紀。
「しかし、相手は案の定イオン級か」
と、続いて語り始めたのは央樹だ。
先ほど見えたタイタンは、実際イオン級
だった。
「どうやら事前に考えていた対応策を変更
する必要は無いようだが……」
『だが、だからと言って油断はするなよ。
お前等』
その時無線から聞こえた声。それは
ラスティモーサの声だ。
『相手は2つ名を授かる位の猛者もいる。
油断してると、その猛者1人でだって
お前達を全滅させられるかもしれないぞ。
締めてかかれよ』
「「「はいっ!」」」
教官の言葉に、気を引き締める3人。
だが、彼等は気づいていない。こちらから
相手が見えたのなら、それは逆に相手から
もこちらが見えている、と言う事に。
「……ダージリン様。少しよろしいですか」
1機のイオンが無線をダージリンの
チャーチルへと繋いだ。
「何かしら?」
「今回の戦い、あまり油断されない方が
よろしいかと」
「あら?どうして?『フォートレス』の
異名を持つあなたが、まさか模擬戦如きで
恐れをなしたとも思えませんが?」
そう、3機のイオンの内の1機に乗るのは、
和紀達の予想通り、聖ゲオルギウス2年生
にして、同学園パイロット科の期待の星、
『結城 智』。和紀と同じ、グラップル使い
のパイロットだ。
「恐れて等居ません。ですが、相手は
警戒に値する存在です。……彼等の
教官らしき相手を確認しましたが、
恐らくは、『ナンバーズ』です」
その単語に驚いたのはダージリンだけ
ではない。結城と同じ他のイオン級の
パイロットや、ダージリンと同じ戦車
に乗るオレンジペコ達もだ。
「ナンバーズと言うと、先の対テロ戦争で
活躍したと言う、あの?」
「はい。……戦場の生ける伝説。世界最強
クラスのパイロット10人。その1人が、
あそこに」
そう言って、智は大洗チームへと視線を
向けた。
「恐らくは教官として、パイロットを指導
しているのでしょうが、それでも
ナンバーズの教え子たち。油断すれば、
喰われるのは我々かと」
「そう。ならば、油断しない方が良いかも
しれないわね」
この試合の前日、はっきり言って
ダージリンは負けるなどとは思って居なかった。
タイタンという脅威に最初こそ警戒していた
が、相手のタイタンが第1世代だという事実。
数も少ない事。更には智という2つ名を持つ
エースパイロットがいることから、と言う
のがその考えの下であった。
だがそれも今この時まで。
戦闘のプロの卵であるパイロットの言葉は
十分に説得力があった。
だからこそ……。
「各車。聞いていたわね?……油断しない
ように」
ダージリンは、表情を引き締めながら
各員に油断しないよう徹底させた。
大洗町では戦車の試合に向けて準備が
行われ、開始地点となる草原に、大洗の
戦車5輌とタイタンが3機。
集まっていた。そして車長である5人と
タイタン部隊の隊長である央樹が並び、
聖グロの戦車チームとタイタン部隊を
待っていた。
やってきた戦車はチャーチル1、マチルダ4。
タイタンはイオン級が3機。
『どうやら、最初の賭けには勝てたようだな』
と、央樹は内心考えていた。
やがて聖グロの女子達と、タイタン部隊の
隊長であり央樹と同じ3年のパイロット
育成科でクローク使いの、
『立花 啓吾(けいご)』が彼女達の前に
立った。
既に審判の3人も揃っており、あとは挨拶
をするだけだ。
挨拶を交わす桃とダージリン。
だったが……。
「それにしても、個性的な戦車ですわね。
正直、こんな物に意味があるとは思えません
でしたが、それとも、道化を演じるための
偽装ですか?」
「な、何?」
ダージリンの言葉と、どこか警戒した様子に
戸惑う桃。
すると、彼女は最後尾に並んでいた央樹に
目を向けた。
「見せて貰いますわ。かつての大戦の
英雄の教え子の力」
そして、挨拶を済ませた各チームはそれぞれ
の地点で開始時間を待っていた。
戦車に乗るみほ達。
和紀達もコクピットハッチを開けたまま、
タイタンのシートに腰掛けていた。
暢気に鼻歌を口ずさむ明弘。
精神統一するかのように俯いている央樹。
そして、サブアームのP2016のマガジン
や動作を確認し、ホルスターに戻す和紀。
そして……。
『そろそろだ。各機、リンクを』
タイタン部隊の隊長である央樹からの指示が
明弘と和紀に届く。
「『了解』」
2人は返事を返し、そしてタイタン3機は
コクピットを閉じる。
『『『パイロットへコントロールを委譲』』』
タイタンと和紀達3人がリンクし、これで
準備は整った。
そして、あと少しで試合開始、と言う時。
和紀はみほに通信を繋いだ。
『みほ』
「あ、何?和紀君」
『……心配するな』
「え?」
『お前達の背中は、俺達が、パイロットと
タイタンが守る。お前達は気にせず、
目の前の敵を倒すことにだけ集中しろ。
できる限りのサポートをしてやる。
だから、落ち着いてリラックスして行け。
それだけ言いたかった。通信終了』
和紀は、一方的にそれだけ言うと通信を
切った。
それでも……。
『ありがとう、和紀君』
みほは周りに気づかれる事無く、頬を赤く染め、
緊張とも違う胸の高鳴りを隠すように、
胸の前で両手を抱くのだった。
そして、『彼』も……。
『伝説と言われたナンバーズが1人。
その教え子たち。強敵ですわね』
ダージリンはチャーチルの中で密かに
警戒心を強めていた。
伝説の兵士の教え子だ。素人でも、警戒
すべきだと言うことは分かる。
すると……。
『ご心配には及びません、ダージリン様』
通信機から智の声が聞こえてきた。
「どう言う意味かしら?フォートレス」
『ダージリン様達は敵戦車にのみ、集中して
下さい。……以前話したように。我々は
敵タイタン部隊と戦いながら、ダージリン
様達を守ります。……私にも、フォートレス
の異名を持つに至ったプライドがあります。
そのプライドに賭けて、必ずやお守り
いたします』
それは、智が『フォートレス』の異名を持つ
に至った覚悟。『仲間を守る』という覚悟の
現れだった。
その言葉を聞き、ダージリンはしばし驚いた後……。
「ならば、頼みましたよ?フォートレス」
笑みを浮かべながらそう呟いた。
『はっ。必ずや』
これまで交わることなどなかった2人。
だが、そのやり取りはまるで、
『女王』とそれに『仕える騎士』の
やり取りのようであったと、周囲の
者達はのちに語った。
そして……。
『試合開始っ!』
そして聞こえる審判からの、開戦を告げる声。
その合図と共に、鋼鉄の獣、戦車たちが音を
立てて走り出した。その後ろに続く鋼鉄の
巨人、タイタン達。
今、史上初の戦車&タイタンの、新旧の
陸の王者たちを操る少年少女達の
戦いが始まった。
第5話 END
次回はバトル回です。
個人的には、原作と違う終わりにしようかな、って思ってます
のでご期待下さい。
感想や評価、お待ちしてます。