ガールズ&パンツァー+ボーイズ&タイタン   作:ユウキ003

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今回はVS聖グロ編の中編です。
次回には決着つくと思います。


第6話 史上初の戦い 中編

試合開始の合図と共に動き出した大洗と

グロリアーナ。

 

戦車が走り、その後ろをタイタンが付いていく。

ついに始まった試合。しかし……。

「あの~、それでどうするんでしたっけ~?」

通信機から聞こえる、1年生チーム、

『宇津木 優季』の声を聞き、タイタンに

乗るパイロット3人は内心、『おいおい』と

思って居た。

 

更にみほの説明を聞いても、『大野 あや』は

「そうなんだ~」と呟いていた。つまり、

先ほど説明した、と言うみほの話を殆ど

聞いてなかったと言っても過言ではない。

 

『おいおい。大丈夫か1年連中は』

それを後ろで聞いていた和紀は内心呆れを

感じていた。

明らかに空気が緩すぎる。戦闘に対する

危機意識など皆無にも思える声色。

 

『これで勝てたら、ほぼ奇跡だな』

そう、彼は考えながらアトラスを走らせた。

 

「なんか作戦名ないの~?」

その時聞こえた杏の声。

「え?え~っと、作戦名は……」

と、みほは迷った後。

 

「か、和紀君?何か良いアイデア、ない?」

と通信機で和紀に聞いてきた。

「俺かよ。あ~。俺達の最初の戦い

 なんだから、始まり、出発点。 

 ……あぁ、適当だが、SP、なんて

 どうだ?」

「SP?」

「あぁ、Starting Pointの頭文字を

 取った。どうせ作戦名なんて、大した

 意味を付けても相手に悟られる

 だけだからな」

みほにそう説明する和紀。

 

結果は……。

「うん。じゃあ、SP作戦で行きましょうっ!」

こうしてとりあえず作戦名は決まった。

 

そして当初の予定通り、みほ達Ⅳ号が敵の

偵察をすることになり、それには和紀も同行

していた。

アトラスは大きく、タイタンの足音は響き

安いので、和紀だけがⅣ号の車体に掴まる

形で同行したのだ。

 

岩場の影から向こう側、平地を走る5輌の

戦車と3機のタイタンを確認する和紀、

みほ、優花里の3人。

 

そしてみほの目から見ても、グロリアーナ

の練度の高さは分かった。それほどまでに

優れた操縦技術がある事が、相手の練度の

高さを物語っていた。

 

「どうする?ここからなら、俺のチャージ

 ライフルでも1輌くらいならやれるかも

 しれないぞ?」

「え?出来るの?」

首をかしげるみほに、和紀は背負っていた

チャージライフルを取り出し構えた。

 

「こいつは対タイタン用のビームライフルだ。

 現行戦車の装甲くらい、余裕でぶち抜ける

 出力だ。当然、命中しただけで撃破 

 扱いは免れない。……最も、周囲のイオン

 が当てさせてくれれば、の話だがな。

 どうする?」

彼の発言にみほは迷った後……。

 

「ううん。止めておこう。まだ作戦の

 準備も出来てないし」

「……了解した」

みほの言葉を聞き、彼はチャージライフルを

収めた。

 

そしてみほと優花里は戦車へ。

和紀はⅣ号の車体の上に掴まった。

「アトラスはオーガ、ストライダーに同行。

 トラップポイントで待機だ」

『了解。部隊に追従します』

 

タイタンは搭載されたAIによってある程度

パイロットから自立して活動する事が

出来る。なので、パイロット搭乗時と

比べて戦闘効率の低下があるが、

こう言ったように別れて活動する事が

出来るのだ。

 

そして、作戦通りⅣ号が単独で囮を開始。

奇襲として一発、砲弾を発射したが外して

しまった。そのまま逃走を開始するⅣ号と

それを追うグロリアーナの戦車チームと

タイタン達。

 

「……どう見ますか?」

『囮ですね』

ダージリンが智に通信を開けば、彼はそう

即答した。

『おそらく、こちらを向こう側の有利な地点

 に誘い込んでの包囲戦。確か、事前に

 確認した地図データによれば、あの

 方向にはY字型の、アンブッシュに

 適した地形があります。恐らくは、

 そこでの待ち伏せをしている可能性が

 高いかと』

 

パイロットは戦闘のプロフェッショナルだ。

事前に地形を観察するなどは当然するし、

あらゆる可能性を考慮に入れておく。

例えば、『この地形は待ち伏せに適している』、

と言った事を事前に警戒しておく。

それ故に、大洗側の戦術はバレバレで

あった。

 

「では、それに掛かった振りをしましょうか。 

 全車、適時砲撃。ただしタイタン部隊は

 あくまで随伴という形で」

『よろしいのですか?我々イオン級の

 レーザーショットなら、あんな戦車

 一撃ですが?』

ダージリンの言葉にそう問い返したのは、

智や啓吾と同じ、聖ゲオルギルスの

1年パイロットであり、ホロパイロット

使いの『春日井 将(まさる)』だ。

 

パイロットであれば、チャンスを逃すと言う

のは論外中の論外だと教えられてきた。

そして今、戦力差は戦車5輌+タイタン3機。

相手は戦車1輌。しかも今は一本道を

逃げている所だ。タイタン3機が狙えば、

余裕で蜂の巣だ。

 

「それも手の内の1つですが、いくらなんでも

 弱い者いじめが過ぎますわね。それに、

 敢えて策に乗り、嵌まったと見せかけ

 て倒す事も出来ますし」

油断をしていないとはいえ、彼女達は

騎士道精神を重んじる。故に、この場で

タイタン達にⅣ号を撃破しろ、とは

命じない。そして彼等はあくまでも

戦車道の試合に参加している身だ。

なので最終的な決定権は戦車チームの

隊長であるダージリンにある。

 

『了解しました。では、我々は防御に

 徹します』

「え?」

ダージリンが、智の言葉の意味が分からず

首をかしげた、その時。

 

突如として智のイオンが戦車達の間から

スラスターを使って車列の前に出た。

そしてその左手からヴォーテックスシールド

を展開し、直後、放たれた光線を捉えて

無力化した。

 

「ちっ!防がれたか」

それはⅣ号に乗っていた和紀のチャージ

ライフルによる狙撃だった。

 

そのまま和紀は、何とかチャージライフルを

撃つが、智に続いて前に出たイオン部隊の

ヴォーテックスに阻まれてしまった。

とは言え、聖グロの戦車チームも、自分達の

前にイオンがいるので発砲は出来ずにいた。

 

「和紀君っ!」

「このまま俺のチャージライフルでやれる

 だけやってみるっ!お前達は前だけ見て

 走れっ!」

みほの言葉にそう返す和紀。

「分かったっ!気をつけてねっ!」

そう言うと、みほは車体の中へと戻った。

そして和紀は、視線を後方の敵チームへと

向ける。

「さぁ、来い……!隙を見せた瞬間、

 こいつでぶち抜いてやるっ……!」

 

そう言いながらも、和紀は牽制のレーザー

を放ち続ける。

 

『防御を怠ればまず間違い無く戦車チームが

 狙われます。我々がこのまま防御を』

一方戦っている智達も、ダージリン達を

守る為に今はヴォーテックスシールドに

よる防御に徹していた。

「えぇ。お願いしますわ」

 

そして彼女も、防御を解いた瞬間に和紀が

狙って来る事は目に見えていたので、そう

返した。

 

そうして、彼等が追走撃を繰り広げていた頃。

 

アンブッシュ地点では……。

 

「先輩」

「何だ?明弘」

今、2人のタイタンは、Y字の崖の上。

ちょうど戦車部隊の待ち伏せ地点から見て

前方、左右の崖の上の岩場の影に隠れていた。

戦車部隊から見て右側の崖にオーガ。

左側の崖にストライダー、と言う形で

配されていた。

のだが……。

 

「俺のストライダーのカメラアイが変

 なんすかねぇ。幻が見えるんすよ。

 女子達がバレーしてたりトランプ

 してたり。生徒会長に至っては、

 なんすかあれ?デッキチェア

 持ち込んで寝てますよね?俺の 

 ストライダー昨日整備したばっかり

 のはずなんすけど、もう壊れたかな?」

「壊れないぞ明弘。お前のストライダーは

 正常だ。……俺にも同じ様子が見える」

 

岩陰で待機し、いつでも臨戦態勢の2人。

 

一方で、『ゆるい』どころではない気の緩み

が滲み出ている大洗戦車部隊の女子達。

「……これで勝てたら奇跡っすね」

「同感だ」

ポツリと呟く2人。

 

と、その時。

『Aチーム、敵を引きつけつつ、待機地点に

 あと3分で到着します』

そこに届いたみほ達からの通信。

「来た来たっ!」

その通信に、明弘はメットの下で笑みを

浮かべ、ストライダーの武装、『XO―16

チェインガン』を構えさせる。

「……」

央樹も無言でオーガの武装、『4連ロケット』

を構えさせた。

 

しかし、一方で戦車チームの、特に1年生

チームの動きはトロい。

そしてその状況は、通信機越しに聞こえる

1年生たちの声で分かってしまう和紀。

 

既に、追走撃は和紀がチャージライフルに

よる狙撃を止めた事もあり、戦車とタイタン

の位置を入れ替え、戦車による攻撃が

続いていた。後ろのイオン3機は周辺からの

奇襲を警戒しているのか、左右や後方に

気を配りつつ戦車チームに続いている。

 

『念のため、警告しておくか』

後ろを警戒しながらも、そう考えた和紀は

無線を開いた。

 

「全員に通達。現在目標は、戦車チーム

 を先頭に、その後方にタイタン3機が

 展開中。Ⅳ号Aチームとの距離は

 約250メートル。出口から出てくる

 1輌目は俺達だからな?間違っても

 撃つんじゃないぞ?」

そう言って念押しする和紀。

 

そして彼は通信を切り替え、央樹と明弘に

繋いだ。

「2人とも、準備は?」

『OKっすよ!』

『あぁ、問題ない。それと、お前の相棒は

 ここで待機中だ』

央樹から送られてくる愛機の座標データ。

 

「了解です。では、手筈通りに」

 

そして、Ⅳ号が入り口に現れると……。

 

「撃て撃てぇっ!」

桃が叫び、4輌から砲弾が放たれた。

「うわっ!?」

これには驚き声を上げてしまう和紀。幸い

周囲に着弾しただけで命中弾は出なかった。

だが……。

 

「馬鹿野郎っ!味方に向かってぶっ放す

 奴がどこにいるっ!さっき言ったろうがっ!」

彼はたまらず、無線機に向かって怒鳴った。

『ちっ!これだから素人はっ!』

 

そして和紀は心の中で、戦車チームの練度の

低さに舌打ちしていた。

彼はⅣ号が坂を登っている間にグラップルで

Ⅳ号を離れ、崖上に待機していた相棒、

アトラスに乗り込んだ。

 

『パイロット搭乗。操縦権を移行します』

そしてすぐにアトラスの40ミリ

キャノンを構えさせる。

 

そして、戦車チームが入り口を突破したその時。

『今だっ!』

央樹からの指示で、崖の淵の岩陰に隠れていた

3機のタイタンが崖上から一斉に射撃を放った。

 

『ッ!敵襲っ!』

もちろんイオン3機も咄嗟に反応して

シールドを展開する。だが……。

 

『『『ドドドドォォォォォォンッ!!』』』

弾丸やロケットが命中したのは戦車チーム

とイオン達3機の、僅かな間だった。

 

『外した?いや、そんなバカな』

智はすぐさま考えを巡らせる。

 

相手は伝説と詠われたラスティモーサの教え子たち。

この程度の距離で外すのはおかしい。

ならば攻撃する事が目的ではない?

では別の目的があるのか?

 

僅か1秒の中でそう考える彼の目に、周囲

に立ちこめる砂煙が映り、そしてそれが

彼に答えを教えた。

 

『ッ!?』

「全機近接戦闘用意っ!」

『『ッ!?』』

智の言葉に2人の間に緊張が走る。

「敵はっ!」

 

相手の目的を智が叫ぼうとしたその時。

 

『ゴゥッ!!!!』

 

最初の攻撃で出来た砂煙を破って現れた、

重量級タイタン、オーガ。

そして勢いに乗せたその巨体の体当たりは、

3番機、将のイオンに命中した。

 

『ドガァァァンッ!』

「ぐあぁぁぁっ!」

突然の体当たりに驚き、対応出来なかった

将のイオンは数メートルを吹き飛ばされた。

 

「ッ!将っ!」

咄嗟に啓吾のイオン、2番機が背中のレーザー

ショットでオーガを攻撃しようとした。

 

『ヒュンヒュンッ!』

「っ!?」

そこに横合いから飛んできた銃弾が装甲を

覆う、シールドに命中し啓吾は咄嗟に

ヴォーテックスシールドを展開して攻撃を

防いだ。

 

オーガに次いで、別方向から飛び出してきた

のはストライダーだ。それが啓吾のイオンに

襲いかかった。しかしストライダーは

イオンがシールドを展開した時点で射撃を

中止。スラスターを吹かしてその懐に

飛び込んだ。

 

「ッ!こいつ接近戦をっ!」

「さぁてっ!お手並み拝見っ!」

驚く啓吾と、メットの下で笑みを浮かべる明弘。

しかし啓吾も3年のパイロット候補生。

すぐさま気持ちを切り替え、ライフルを

背面腰部のマウントラッチに固定すると、

両手をフリーにして、拳を振りかぶった。

 

振るわれる拳が轟音と共に空を切る。

明弘のストライダーは更にスラスターを

吹かしてこれを回避する。

右サイドに回り込んだストライダーの蹴りが

イオンの膝に命中し、その膝を地に着かせた。

 

「もう一発!」

「甘いっ!」

振るわれるストライダーの右拳。しかし

啓吾のイオンはそれを右腕で振って

払いのける。払われたパンチがイオンの

頭上を通過する。

「ここだっ!」

更に立ち上がりながら左肩のレーザー

ショットを放つが……。

 

「残念っ!」

回復したスラスターによる回避で、それを

避ける明弘のストライダー。

 

「ちぃっ!やはり第1世代とは言え、軽量級!」

「速さだけなら、第2世代の中量級に

 だって負けないってのっ!」

そう言って、ハイレベルの近接戦を展開する

ストライダーとイオン。

 

回避重視のストライダー。カウンターを狙うイオン。

 

そのすぐ傍では、央樹のオーガがパワー

と重装甲でイオンを圧倒していた。

殴りかかっても受け止められ、殴り返すオーガ。

 

そして……。

「はぁっ!」

「くっ!?」

智のイオン、1番機に襲いかかった和紀の

アトラス。しかし相手はエース級の候補生。

飛んできたパンチを防ぐが、アトラスの

膝が地に着く。

 

両者ともに中量級。装甲も機動性もほぼ互角。

ならば、勝負となるのはパイロットの技量、

タイタンの操縦技術、そして、タイタンを

使っての格闘戦の経験値だ。

 

「おぉっ!」

「何っ!?」

和紀のアトラスがスラスターを吹かして

突進。智のイオンに、ラグビーのように

強烈なタックルをかます。

 

「ぐっ!?だがっ!」

しかしそれでもイオンは倒れず、組み

合わせた両手を振り下ろし、アトラスの

背中に叩き付けた。

「ぐあぁぁっ!」

地に倒れるアトラス。

 

「これでっ!」

トドメとばかりにその背中を踏みつけよう

とするイオン。

「させるかっ!」

しかし片足を上げていた事が仇となり、

もう片方の足をアトラスの手で簡単に

掬われてしまった。

 

「うっ!?」

バランスを崩して背中から倒れるイオン。

その隙に立ち上がるアトラス。

しかし智のイオンも負けじと立ち上がり、

すぐさま拳を構え、戦闘を再開した。

 

 

そして、その様子をモニター越しに見ていた

観客達は、巨神の名を持つロボット達の

ぶつかり合いに驚き、歓声を上げた。

 

スラスターが吹き荒れ、拳と拳が

ぶつかり合う。マイク越しに聞こえる

打撃音は鼓膜どころか魂まで震わせる

ほどの、熱いぶつかり合いの様子を

観客達に届けた。

 

元々、育成科同士の試合はシミュレーション

を使った物であり、一般人が目にする機会は

そうそう無い。

つまり、観客たちが、タイタン同士が生で

ぶつかり合うのを見るのは、殆どこれが

初めてなのだ。

 

男としての性か、男性の観客達の盛り上がり

は凄い。

だが、観客席となっている広場のすぐ近くに

あるモールの一角からモニターの様子を

見ていた青年達3人は、静かに、しかし

しっかりと戦いの様子を見守っていた。

 

「第1世代とは言え、あの動き。よほど良い

教官がいるみたいだな」

「ですね」

「タイタン戦は互角、か」

 

制服の一部に、『青い星に稲妻』が描かれた

校章を持つ彼等3人。しかし……。

 

「お?先輩、あれって」

1年生と思われる青年が、モールの別の場所を

指さした。先輩、と呼ばれた青年がそちらに

目を向けると……。

 

「あれは、プラウダの」

彼の視線の先には、1人の制服姿の青年が

居て、モールの一角から3人と同じように

モニターを見つめていた。

 

 

そう、今この場に集まっているのは、ただの

観客だけではない。各地各校の育成科の、

パイロットの卵達も集まっていたのだ。

3人が気づいていないだけで、その

青年以外にも、この試合を見ている者は

いる。

 

 

そして、そんな彼等の目からみて……。

 

『タイタン同士の戦闘は互角。だが、

 戦車チームの戦いは、酷い物だ』

 

それが、候補生達の目から見た、聖グロ

と大洗の戦車チーム同士の戦いの、

認識だった。

 

戦車チームの戦いは、一言で言えば

『酷い』、そのの一言に尽きた。

 

デタラメに相手に向かって砲撃を繰り返す

戦車。その砲弾は一発も当らず、周囲の

岩を吹き飛ばすばかりだ。

「みんなっ、落ち着いて……!

 作戦を第二段階へっ!」

みほはそう言って、無線で繰り返し指示を

出す。だが……。

 

「撃って撃って撃ちまくれぇっ!」

それを妨害しているのが、桃の叫びだ。

まくし立てるように無線に向かって叫び、

戦車チームの連携のための通信を妨害して

いると言っても良い。

更に1年生チームは、砲撃の振動と爆音で

恐れをなして戦車を放棄して逃げ出す始末。

更に生徒会チームの38(t)も履帯が片方

外れて動けなくなってしまった。

 

観客のパイロット候補生達からすれば、

もはやこれは試合ではなく、動いて反撃

してくる標的を的にした射的ゲームだ。

このままでは後数分で、大洗の戦車

チームは嬲り殺しにされてしまうだろう。

 

だが……。

 

「ちっ!?」

それに反応したのは央樹だ。戦車チームの通信は

彼等も拾っていたのだ。

彼のオーガは今、イオンを両手でねじ伏せていた。

腹ばいの姿勢で倒れたイオンを上から

押さえ付けている。

 

「戦車チームへっ!聞けぇっ!」

彼の怒号が響き渡り、桃もみほも、驚いて

口を閉じた。

 

「第1段階は失敗したっ!残っている車両は

 西住達のⅣ号に続いて戦線を離脱っ!

 市街地へ行けっ!Move!Move!!」

このままでは不味い、そう判断した央樹が

指示を出したのだ。

 

「ま、待てっ!私達はまだ戦え……」

「バカを言うなっ!」

桃の声を、怒号で制する央樹。

「左右を包囲され、二輌戦闘不能っ!

 このままで終わりだぞっ!各車聞けっ!

 今すぐⅣ号に続いて現時点を放棄っ!

 市街地に迎えっ!勝ちたければみほの

 指示に従えっ!

「「「りょ、了解っ!」」」

 

央樹の怒号に、生き残っていたⅣ号、Ⅲ突、

89式が動き出した。そして……。

 

「皆さんっ!」

みほが無線に向かって叫んだ。相手は

タイタンチームだ。

「和紀っ!明弘っ!」

「はいっ!」

「おうっすっ!」

 

央樹の言葉を合図に、3機は動き出した。

3機のタイタンは戦車チームを追って

駆け出した。

「っ!待てっ!」

それを見て将のイオンが咄嗟に追った。

「ッ!?待て3番機っ!下手に深追い

 するなっ!」

咄嗟に警告を出す啓吾。

 

すると……。

「置き土産にど~ぞっ!」

路地から飛び出したストライダーの機体

から煙が吹き出した。

「ッ!?電気スモークだっ!止まれ3番機!」

それが何なのか、分からない智ではない。

彼が咄嗟に警告すると、将のイオンは

咄嗟にスラスターを吹かして後ろに後退した。

 

「戦車チームへっ!そっちにタイタンが

 向かったっ!隠れろっ!」

智は咄嗟に無線で戦車チームに連絡をした。

「ッ!各車、急速後退っ!岩場の影に

 隠れなさいっ!」

ダージリンは咄嗟に指示を出し、大洗の

戦車チームを追おうとしていた各車を後退

させた。

直後、坂を正面から駆け上がってきた

ストライダーのチェインガンが火を噴き、

彼女達の戦車が隠れた岩を抉る。

 

しかし戦車を撃破するには至らなかった。

とは言え、だからといって足を止めては

後ろのイオン3機が追いついてくる。

ストライダー、アトラス、オーガの3機は

聖グロの戦車チームを牽制しつつ、大洗の

戦車チームの後に続いた。

 

荒野を抜け、森林地帯を走る沿道に出ると、

その上を走って市街地へと入った戦車と

タイタンたち。そして後方からは聖グロの

戦車チームとタイタン達が追ってくる。

 

しかし、みほ達にとってここは大洗の町は

庭のような物。それもあって戦車チーム

とタイタン部隊は聖グロと聖ゲオの部隊を

撒いた。

 

 

そして……。タイタン3機も周囲を警戒

しながら移動していた。

「明弘」

「はい。何ですか先輩?」

和紀は明弘に通信を繋げた。

 

「明弘、お前は戦車チームを援護してやれ。

 相手のタイタンは、俺と清水先輩で

 何とかする」

「良いんですか?」

「市街地ならアンブッシュも出来る。

 幸い、タイタンは屈めば何とか

 民家の影に隠れられる。

 それに、タイタンと戦えるのは、

 タイタンだけじゃないだろ?」

その言葉を聞いた明弘は、メットの下で

笑みを浮かべた。

 

「仰る通りで。ほいじゃ先輩方、

 俺は戦車チームの援護に行きます。

 ……くれぐれも、気をつけて」

しかし最後、普段の彼からは想像も

出来ないような、低く、どこか警戒心を

思わせる声が聞こえてきた。

そしてそれを最後に離れて行く、

明弘のストライダー。

 

「……行くぞ和紀」

「はい」

そして、2人もそれぞれの敵を倒すべく、

動き出した。

 

 

一方、ダージリンと智達は、それぞれ共に

動いていた。

智のイオン、1番機がダージリンの

チャーチルに随伴し、残りの2人もそれぞれ

マチルダに随伴しながら周辺を警戒していた。

 

彼等、彼女等も、ここが大洗チームの

ホームグラウンドである事は知っていた。

それゆえに地の利は相手にある。どこに

何があるのか、どこが奇襲に適している

のか。それゆえに警戒心も強い。

 

だが、やはりと言うべきか。戦車チーム

とパイロット達の間には、どうしても

『温度差』が出てしまう。

初戦で相手の戦車チームの、練度の低さ

を知っていた彼女達だったが、それ故

油断してしまう。

 

そして、それが命取りとなる。

 

1輌の戦車が、市街地をゆっくりと走行し

ながら周囲を警戒していた。

だが……。

『バシュゥッ!!』

 

「えっ!?」

突如として後方から聞こえた音。直後。

戦車の車体の一部が溶解、赤熱化した。

そしてそれによって撃破扱いとなり、

車体から白旗が上がる。

車長を務めていた女子は訳も分からず

困惑していた。

 

そして、彼女はすぐさま通信を繋いだ。

『こ、こちら4号車!申し訳ありませんっ!

 謎の攻撃を受け撃破されましたっ!』

「ッ!?」

この報告を聞いたとき、ダージリンは

驚き、危うく手にしていたカップを

落としそうになった。

 

そして通信はタイタン部隊の智たちも

聞いていた。

「こちらタイタン部隊の智だ。攻撃を

 受けた際、周囲に戦車やタイタンの

 姿は見なかったか?或いは、何か音を

 聞かなかったか?」

『え、え~っと、音、と言えば、何か

 ビームの発射音のような』

 

「ビーム、か」

智はすぐさま敵タイタンの兵装を思いだし、

彼等がビーム兵装を持っていない事を

確認した。

「敵タイタンにビーム兵装はない。

 となると、パイロットによるチャージ

 ライフルを使用しての狙撃、か」

 

智の読み通り、聖グロの4号車を撃破した

のは、建物の影に潜んで居た明弘の

チャージライフルによる狙撃だ。

「ダージリン様。今すぐ展開している

 戦車を合流させてください。このまま

 では各個撃破される可能性があります」

「1箇所に集中するの?それだと包囲される

 可能性があるけど?」

「はい。それは重々承知です。……ですが、

 兵士として高いレベルにあるのは敵の

 タイタン部隊だけです。戦車チームの

 練度は初心者のそれです。なのでしっかり

 とした防御陣を形成し、向かって来たのなら

 叩く。来なければ、敵タイタン部隊を仕留めた

 あと、我々が敵戦車部隊を叩きます」

 

「……分かりました」

ダージリンは、しばし悩んだ。

戦車とタイタンが戦うと言うのは、

例えるならナイフを持った子供が銃を持った

軍人と戦うような物だ。十中八九、子供が

負ける。

つまり、一方的なワンサイドゲームに

なりかねないのだ。騎士道による正々堂々を

重んじる彼女達からすれば、品のない試合に

なってしまいそうだが、しかし、その

ワンサイドゲームは『聖グロの戦車チーム

と大洗のタイタン部隊にも』言える事だ。

 

つまり、歴戦の経験者である彼女達でさえも、

敵タイタンチームから見ればナイフを持った

子供と同じ。余裕で倒せる相手という訳だ。

だからこそ、ダージリンは智の提案に同意した。

 

「各車、私たちの位置は分かりますね?

 こちらに集合し、防衛に専念します」

無線に呼びかけるダージリン。すぐさま

各車長から返事が届く。

 

「……よろしいのですか?」

そう問いかけてきたのはオレンジペコだ。

「仕方無い、では納得出来ないのは事実。

 ですが、相手のパイロットは、かつての

 戦争の英雄の教え子。あなたも

 ナンバーズの事は聞いたことがあるでしょう?」

「はい。かつての対テロ戦争、オペレーション

 フリーダムで、驚異的な戦果を上げた、

 10人のパイロット。それがナンバーズ」

「その教え子というだけで、油断は 

 出来ませんわ。現に、1輌がその攻撃で

 撃破されています。……油断大敵、

 と言う事でしょうね」

 

彼女達が敵のパイロットを舐めていた訳

ではない。

しかし、敵のパイロットである和紀達が、

それも単独で戦車チームに対して仕掛けて

来る事が、予想外だった。

彼女達も事前にパイロットについて、ある程度

は勉強していた。だが、だからといって

パイロットの行動が読める訳ではない。

 

彼女達もパイロットと戦うのは、この試合が

初めてなのだから。

それ故にその行動を読む事が出来ずに、

結果1輌が撃破されてしまった。

 

「パイロット。……いかに卵と言えど、

 その実力は既に完成された兵士と

 言っても過言ではない、と言う事ですか」

ポツリと呟くダージリン。

 

そうこうしている内に、索敵のために周囲に

分散していた残り3輌のマチルダとイオン

2機が合流し、周辺警戒を始めた。

 

と、その時。

『ズズン……ズズン……』

智の耳に、こちらに近づいてくる音が届いた。

そしてそれはつまり……。

 

「敵襲ッ!敵タイタン接近中!」

彼はすぐさま無線に向かって叫んだ。

それだけですぐさま啓吾と将は周囲を警戒する。

加えてダージリン達も即座に戦闘態勢に入る。

これは、流石に戦車道経験者と言った所だ。

 

そして……。

『バッ!!!』

建物の影からオーガとアトラスが現れ、突進

してきた。

 

「敵タイタン確認!アトラスとオーガだ!」

智の叫びに答えるように、彼のイオンと残り

2機のイオンが建物を遮蔽物にしてスプリッター

ライフルを構える。

 

だが、それでもオーガを先頭に突進してきた。

 

次なる戦いは、市街地戦。

 

戦車とタイタンの、史上初のタッグマッチは、

まだまだ終わらない。

 

     第6話 END

 




って事で、聖グロ戦は次回で終わらせる、予定です。

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