村に帰り着いて数日が経った。カイジン達のおかげで腰掛けなどの布1枚だったゴブリン達は、獣の皮を応用したちゃんとした服を着ており、家も丸太などを利用した頑丈な物になり、武器や木を切るための斧などを新しく作る事ができた。
まぁ、この後の為に、家や道具は簡易的なものしか今は作ってないのだが。
「はい!じゃあまず、オイラがお手本を見せるっす!よく見ておくっすよ。」
ゴブタは仲間のゴブリン達にそう言うと、
「ふんぬううううううう・・・・ほいっ!」
「「おおおおおおっ!」」
ゴブタの影から
「こんなカンジっす!みんなもやってみるっすよ!」
ゴブタが教えているのは
ドワーフ王国に俺達に置いて行かれそうになった時、兵士達に囲まれたゴブタの頭の中は1つの願いで満たされていたとのことだ。
ずばり、『この場から逃げ出したい!』
そう思った瞬間、
『相棒』によると、『思念伝達』と『影移動』を合わせて編み出したようだが、わかってやったとは思えない。意外とそういう感覚的なものに関しては天才なのかもしれないな。だが・・・・・
「それじゃダメっすよ。もっとこう・・・ぐぐっ・・・・・ときて、ふわあ〜〜〜〜っぽん!ってカンジっす!」
「「「「?????」」」」
教える方の才能はないようだ。教えてもらっているゴブリン達が説明がわかりにくて困惑している。
「おーい。リムルの旦那ー。ジンの旦那ー。」
ゴブタ達を見ていた俺達の所に斧を肩に乗せて、カイジンがやって来た。
「移動先の伐採はとりあえず終わったぜ。後は、移ってからボチボチ開拓するとしようや。」
「そうか。ありがとう。」
「さすがカイジン。仕事が早いな。」
「俺の打った斧だからな。当然よ。それに早く全員の寝床を確保しなきゃならんしな。」
「ははは・・・・」
カイジンの言葉に俺達は乾いた笑みを浮かべる。
ドワーフ王国から帰ってきた時だった。俺達の村には一つの大きな変化があった。
「リムル様とジン様の噂を聞き、庇護を求めて近隣の
「へ、へぇ・・・」
リグルドの報告にリムルは動揺した様子で返事をする。
まぁ、無理もないがな・・・・
俺達の目の前には、たくさんのゴブリン達が集まり、俺達の帰還を喜んでいる。そう、人口が増えたのだ。
「・・・・なぁ、『相棒』、これ、どれくらいいるんだ?」
《解。およそ500名です》
「500・・・・」
どう見たって、今の村の居住スペースでは全員住むのは不可能なので帰ってもらおうと一度俺達は考えたが、追い返した場合、彼らはどうなるのかとそれぞれ『大賢者』と『相棒』に意見を聞くと・・・・
《解。ヴェルドラの消失により、ジュラの森は知恵ある魔物達の覇権争いが始まっています。進化前の
という答えが返ってきた。
ヴェルドラの消失ということは俺達が原因だし、すごい期待している目で見てきてたので、全員を受け入れる事になった。
「わかった。ついて来たい者は来ると良い。」
「その代わり、裏切りは許さんからそのつもりでな!」
それで、2人で協力して、昨日ようやく全員の名前を付け終えた。裁判の時よりも疲れたな・・・・
「我が主達よ!」
そんな事を思い返していると、目の前にランガが尻尾を振りながらやってきた。
「お、おう。どうしたランガ。」
「測量を終えたミルド達を連れ、帰ってまいりました。」
返事をしたリムルに、ランガの後ろから現れたエンカが答えた。
「そうか、ご苦労だったな。」
「エンカもランガもお疲れ様。」
「「はっ!」」
「でもランガ、誰かを乗せている時にスピードの出し過ぎはダメだぞ。」
「・・・はっ。」
リムルはランガの背を見ながら注意をし、ランガは少し落ち込んだ様子を見せた。
ランガの背には、ミルドが乗っていたのだが、泡を吹いて気絶してしまっている。
ランガはやる気は良いのだが、張り切りすぎてしまう事が多いんだよな。
そう思いながら、俺がエンカを撫でると、エンカは嬉しそうに尻尾を振り回す。
因みにエンカはスピードを出し過ぎたりしてないので、背に乗っているゴブリンは気絶などはしていなかった。
それから俺達は荷物を纏め、皆を集めた。
「さて、測量なども終わったし、そろそろ出発しよう。」
「いざ、新天地へ!」
数日後
「うおおおおおおおおおおお!」
ギルドで、ジュラの森の調査をするよう言われたカバル達一行は、全速力で森の中を駆け抜けていた。後ろからは、7匹の巨大な蟻が追いかけて来ている。
「カバルの旦那が悪いんでやすよ!いきなり
「う、うるせーな。俺はリーダーだぞっ!」
「リーダーのくせに迂闊すぎよぅ。」
「うぐ・・・・・」
「死んだらカバルの枕元に化けて出てやるんだから〜〜っ。」
「ふははははははは!そりゃ無理ってもんだ!!何故なら俺も一緒に死ぬからな!」
「!、イヤーーーーーーーーーー!」
エレンが後ろを振り向くと、蟻達はすでにあと少しで追いつく距離まで迫って来ていた。
「・・・私が足止めをしよう。」
そう言い、シズはその場に立ち止まる。
「シズさん!?おい、よせって!」
立ち止まった事に気づいたギドがシズに声をかける。
「心配はいらない。あなた達を逃すくらいなら、今の私でもできる・・・・この、『炎の力』を用いれば・・・・」
そう言い、シズは剣を抜くと、刀身に強い炎を纏わせる。
「何なの、あの炎!?」
カバル達が少し離れた所で足を止めて見守る中、シズは剣から炎を放ち、突っ込んで来た3匹を燃やし尽くすが、その炎を突っ切り、1匹が飛びかかる。
それに合わせてシズも空中に飛び上がり、すれ違い様に背中を斬り、同時に斬り口から炎が吹き出る。その勢いのままもう1匹を真っ二つにして地面に降り立ち、残りの2匹に向かう。
(早く・・・・早く倒さなければ、これ以上は・・・・・)
前方の1匹が顎や脚で攻撃するが、それを交わして胸を斬り裂き、最後の1匹の頭を斬った。
辺りには静寂が広がり、残った蟻達の死骸を炎が燃やしていく。
(・・・・・よかった。間に合った。)
シズがホッと一息をつこうとした時だった。
「シズさん、まだだ!倒しきれていない奴が・・・っ!」
体のほとんどを炎が包み、死に体になりつつもシズをみちづれにしようと蟻が、その強靭な顎でシズを噛み切ろうとしたが・・・
「伏せろっ!」
「!」
ガラアアアアアアアン!
何処からか声が聞こえ、その声に従い、仮面が外れた事も気にせずシズが伏せた瞬間、空中から黒い稲妻が走り、蟻を消滅させた。
その際の衝撃で、蟻がいた場所は大きなクレーターができ、煙がもうもうと立ち込めていた。
突然の出来事にシズはその場に座り込んで呆然としていた。
そこに戦いを離れて見ていたカバル達が駆け寄る。
「シズさん、大丈夫か?!」
「今の、黒い稲妻・・・みたいだったでやしたね・・・・」
「一体誰が・・・・」
「うおおお、びっくりした・・・」
すると、煙の向こうから誰かの声が聞こえ、同時に人影も見えた。
「あれで大分加減したんだろ?・・・・とんでもない威力だな。俺も念のために今度もう少し威力を確認しておくか。」
「とりあえず、このスキルも当面の間は封印決定だな。」
そう言って現れたのは、シズの仮面を乗せたスライムと、別の世界で『ハンターシリーズ』と呼ばれていた防具の頭パーツ以外を装備した男だった。
いやぁ、びっくりした。戦闘音がしたから何事かと思って来たら
さて、その助けた人達だが、俺達・・・特にリムルを見て何か面食らったような表情をしていた。
「・・・・スライム?」
「スライムで悪いか・・?」
「あ、いや・・・」
疑問を投げかけて来た剣を背中に背負った男にリムルがドスを聞かせた声で言い返すと、男は顔を青ざめた。
まぁ、普通は今のをスライムがやったとは思わないだろうなぁ。妖気を抑えたリムルは見た目だけは最弱クラスの魔物だし。
「ほら、仮面。そこのお姉さんのだろ?」
そう言ってリムルが先程広った仮面を座り込んでいた女性に渡す。
「さっきはすまなかったな。」
「手に入れたばかりで使い慣れていないスキルだったんで加減がわからなかったんだ。怪我しなかったか?」
「ええ、大丈夫・・・助かったよ。ありがとう。」
「「!」」
その時に、俺達は初めてその女性の顔を確認した。
黒髪に黒い瞳。そして何より特徴的な左眼の下にある火傷のような跡。ドワーフ王国でエルフの女の子が占いをしてくれた時に見た女性だった。
(思っていたより早く会えたな。運命の人・・・・)
そんな事を思っていると、
「はああぁぁあ・・・・」
ため息を吐きながら、背中に剣を背負った男がその場に座り込む。
「どうした?あんた達はどこか怪我でもしてるのか?」
そうリムルが聞くと、
「いや、精神的な疲労っつーか・・・・」
「あっしら3日も
「荷物は落とすし。」
「振り切ったと思って休めば寝込みを襲われやすし。」
「装備は壊れるしぃ。くたくただし、お腹ぺこぺこだしぃ。」
と、どんどん言葉を並べていく彼らを見て俺は思い出していた。
(そう言えば・・・彼らは以前俺達と洞窟ですれ違った冒険者の3人組だよな。)
まぁ、向こうは気づいていなかったけど。
「そうか。それは大変だったな。」
「よかったら、簡単な食事でよければご馳走するよ。」
「「「え?」」」
え?ってなんだよ。そんなに驚くことか?
「スライムさん達はこの辺に住んでるの?」
金髪の女性がそう俺達に問いかけた。
「ああ。そうだ。」
「引っ越したばっかでさ。この先に町を作ってる途中なんだ。」
リムルがそう言うと、仮面の女性以外の3人は少し離れて円陣を組む。
「魔物が町!?」
「怪しい・・・・」
「でも悪いスライムじゃなさそうでやすし、あの人を見ると人間も住んでるっぽいでやすよ。」
・・・・・小さい声で喋ってるんだろうけど、以前より五感が強化されてるから普通に聞こえるんだよなぁ。
「1つ訂正しておくが、俺は人族じゃないぞ。」
そう言って俺は背中にリオレウスの羽を生やす。
「「「!?」」」
すると再び3人組は円陣を組む。
「嘘だろ。どこからどう見たって人族だったぞ!?」
「魔人・・・でやすかね。」
「でも、見た感じは優しそうだしぃ・・・」
・・・・しまったな。かえって警戒させてしまった。
どうしたものか・・・・・
「なぁ、ジン。」
「ん?」
「ここは1つ、俺が無害アピールでもしてみるよ。」
「アピールするって・・・一体どうやるんだよ。」
「まぁ、見てろって。」
そう言ってリムルは3人に近づき、
「俺はリムル。『悪いスライムじゃないよ!』」
「ぶっ!」
リムルが自己紹介すると、仮面の女性が吹いた。何かおかしい所でもあったか?
「どうしやした、シズさん。」
「いえ、なんでもない。それより・・・」
そう言って仮面の女性・・・シズはリムルに近づいて抱き上げ、
「お邪魔しよう。この子とこの人はきっと信用できる。」
そう言ってくれた。
「町はこっち?」
「あ、ああ。」
「んじゃあ、行くか。」
シズはリムルと俺に町の方向を聞き、リムルを抱き上げたまま、町に向かって歩き出す。俺はその隣を歩き、冒険者の3人組も顔をお互いに見合わせてから俺達の後を追いかける。
「なぁ、自分で歩けるんだが。」
「ねぇ。スライムさんとえ〜と、「ジンでいい。」ジンさん。国はどこ?」
リムルの言葉を聞き、俺達の町について聞いてきた。
「国と呼べる程の規模ではないぞ?」
「あと、町の名前もまだ決めてないしな。」
「そうじゃなくて。」
・・・ん?
「さっきのはゲームのセリフでしょう?」
・・・・・・ゲーム?ゲームって確かリムルから聞いた話で何かそんなのがあったような・・・
「私はよく知らないけれど、同郷だった子から聞いたことがある。」
「「同郷・・・」」
つまり、彼女の言っている国というのは・・・・・
「故郷はどこ?ジンさん。スライムさん。」
「・・・日本だよ。」
「やっぱり!そうだと思った。私と同じだね。あれ?ジンさんは違うの?」
「残念ながら、日本ではないな。」
俺の故郷は名も無き小さな村だったからな・・・・
「そっか・・・でも、私は2人と会えて嬉しいよ。」
彼女は仮面をずらして俺達に笑顔を見せながらそう言った。
これがこの世界に転生した俺とリムルにとって、ヴェルドラに次いで2番目の・・・
運命の出会いだった。
どうも、邪神イリスです。
今回は少し短めですね。
戦闘描写は書くのは大変ですが楽しいので、モチベを下げずに書くことができました。
そしてようやく出せたシズさん。漫画版やアニメ版では運命の人とも言われるほどリムルと縁のある方ですね。
因みにハンターシリーズを装備してた理由は、単に探索にはちょうどいい見た目かな?と思っただけです。
むしろこっちのがいいだろ!という装備がございましたら教えて頂きたいです。その時は修正いたします。
それと、新作モンハンライズは新たにデモ版が配信開始しましたね。現状作者はマガイマガドに全敗中です。作品自体は発売日に実写版モンスターハンターを見た帰りに買おうと思っています。