さて、リムルにも言ったが、もう少しだけ、ヒヨとの試合に付き合うとするか。
ベニマル達から聞いた話によると、ヒヨはオーガの里で一番の槍の名手らしい。ただ、まだまだ経験不足の為に高い才能を使いこなせていなく、発展途上中なのだとか。
それで、彼等に名付けをしてから数日経った今日の朝、
「ジン様!初めて遭い見えた際に為す術もなくジン様に負けました通り、拙者はまだまだ未熟で御座います。ですので、是非!拙者と試合をして頂けないで御座いましょうか?」
と、俺に稽古を頼みに来たのである。
まぁ、前の世界にいた頃に、我らの団の旅の行き先の一つである『カムラの里』に寄った際など、指導をした事もあったし、強くなりたいという姿勢は嫌いじゃないから承諾したんだが・・・・・思った以上に成長速度が速い。
搦手なんかにはまだ対応しきれていないが、それも恐らく時間の問題だろう。成長しきった時が楽しみだ。
「ジン様。お昼の準備が出来ましたので、そろそろ中断しませんか?」
「ん?アワナミか。そうだな・・・・そろそろ止めるとするか」
「ジン様!拙者はまだまだやれるで御座いますよ!」
「それでぶっ倒れたら意味がないだろ?適度な休憩も入れないと」
「・・・・・・・・・はい」
「ヒヨ、そう落ち込まないの。また後で試合ってもらえるようお頼みすればいいでしょう?」
「!、そうするで御座る!」
どうやら、気を持ち直してくれたようだな。
それでアワナミだが、今は俺の秘書的な物をやってくれている。というのも、名付けをした次の日、シオンがリムルの秘書をやると名乗り出て、それと競うかのように、アワナミも俺の秘書をやると名乗り出たので、俺達は2人の提案を承諾した。
アワナミは家事全般が得意で、彼女が作った料理は中々の物で、おかげで彼女とゴブイチが作る飯が毎日の楽しみの一つとなった。
「アワナミーーー!」
「ん?」
前方から、アワナミを呼びながら、こちらにシュナが駆け寄って来る。
シュナは進化によって、ユニークスキル『
リムルのユニークスキル『大賢者』の効果を受け継いでいるようだが、鑑定能力はリムル以上で、『魔力感知』だけで解析可能であり、様々な試みを短期間で進める事が出来るらしい。
彼女は里にいた頃は織姫と称されるほど裁縫が得意とのことで、ガルムやドルドと分担して皆の衣服の製作をしている筈なのだが・・・・何かあったのか?
「アワナミ・・・ジン様とヒヨも・・いらしたのですね・・・はぁ・・はぁ・・・」
「どうしたんだ?そんなに慌てて」
「大変なんです!リムル様がシオンの手料理を頂くと!」
「「ええっ!?」」
・・・・・・えっ?いや、それの何処が大変なんだ?アワナミとヒヨもなんかヤベェって感じの顔をしてるが。
「リムル様と姉さんは今何処に!?」
「食堂へ向かっています!ああなった彼女を止めれるのは貴女だけなので、急いで探してたんです!」
「とにかく急いで食堂へ向かいましょうぞ!このままではリムル様が!」
「いや、お前らどうしたんだ?」
「ジン様!事情は走りながらお伝えするので、今は食堂へ!」
「お、おう」
そして、食堂へと走りながら聞いた内容は、なんとシオンは究極的に料理が下手なのだそうだ。
その酷さたるや、料理を食べた者は酷い時では1週間ほど寝込んだとか。
そりゃあ焦るよなと思いながら食堂に辿りつき、扉を開けた瞬間であった。
「むぐゅっ!」
・・・・むぐ?
正面には大きなテーブルがあり、右側では、ベニマルが扉側に顔を向け、ハクロウが何故か気配を絶ちながら2人ともお茶を啜っている。
そして奥の方にはリムルが椅子に座っており、その右にはシオンが笑顔で控えていたのだが・・・・問題はリムルとその右斜め後方にいる男だ。
リムルは目を完全に瞑っており、右手にスプーンらしきものを持ち、右斜め後方に突き出している。そしてその先には、スプーンの先を咥えているゴブタの姿があった。
先程の恐らくゴブタの声であろう物に反応したリムルが目を開けてゴブタの方へ視線を向ける。
スプーンの先を咥えたゴブタが何かを飲み込むように喉を動かす。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?おげらああああああああああああああああっ!!」
「ぐええええらあああああああああああああああああああああっ!!」
うわぁ・・・・これはひどい。
「ぐっ・ごっ・・・がっ・・・・・・」
パタリ
顔色を一気に変え、当たりを転げ回ったゴブタは、そのまま泡を吹き、ビクンビクンと痙攣している。
「・・・・あれ?」
「・・・・・シオン」
「は、はい!」
「今後、人に出す飲食物を作る時はベニマルの許可を得てからするように。」
リムルがそう言うと、ベニマルが目を見開き、リムルを見た。
アイコンタクトか念話で会話でもしたのか、ベニマルはガックリと項垂れる。
同じようにシオンも項垂れているが、彼女には今から説教が始まる。
「姉さん!あれほど料理を作るのはやめてくださいと言いましたよね!というか基本的にリムル様の料理はゴブイチ殿かシュナ様が作られているはずでしたよね?!」
「いや・・・ゴブイチ殿は遠慮していたけれど、シュナ様は衣服の製作で忙しくされていたから厨房の人手が足りないかと・・・・」
「それぐらいシュナ様なら計算出来ていると分かっている筈でしょう!?」
めっちゃ怒ってる。シオンが姉だから立場的にはシオンの方が上なのかと思っていたけど、家事、特に料理に関してはアワナミの方が上なんだな。
さて、これがシオンの作った料理・・・って、なにこれ。
紫色のドロドロした液体に青っぽい固形の具材だった物らしき物が入っている。しかも一部は顔のようにも見えてるし。
「というか、今回は何を作ろうとしたのですか?」
「ささ身と青菜のすまし汁・・・・」
「そんな上品な料理だったの!?」
リムルが思わずツッコむ。いや、それがどうやったらこんな意味不明の物体になるんだよ。
今後、ゴブタのような犠牲を出さない為にも、ベニマルには頑張ってもらいたい物だ。
リムルやジン達が住む町から離れた場所に位置する集落に、ゴブリンの族長達が集まり、お互いに青ざめた顔を突き合わせ、集会を開いていた。
以前開いた集会の時と比べ、集まった数は減っている。
それもそのはず、逃げたのだ。ジュラの大森林を激震させる未曾有の危機を前にして・・・・
そもそもの始まりは、平原から移動して来た牙狼族の襲来だった。あの時、
見捨てられた筈の同胞達は見事に牙狼族を撃ち破り、勝利を収めた。かの村に救世主が現れたのだ。
その思いもしなかった強力な力を秘めた存在は、同胞達を庇護したらしい。危機を乗り切ったどころか、今では牙狼族達をも従え、復興を成し遂げようとしているのだ。
当時の集会で、彼等を見捨てずに共に戦うべきだと主張した村々は、今ではかの村の傘下として加わっている。
卑小なゴブリンは、群れて助け合わねば生きて行く事さえ困難である。だからと言って、同胞を見捨てたゴブリン達は、今更仲間に加えて欲しいと申し出るなど、そんな恥知らずな真似は出来なかった。
いや、正確には、やる勇気がなかったと言うべきだろう。現に、今からでも遅くないと主張する者がいるのも事実である。
だが、今更傘下に入ったところで奴隷のような扱いを受ける事になるだろうと考えてしまい、決断できていないというのが実情だった。
幸いな事に、かの村の救世主に周辺の村々を併呑するような意思はないようであった。
ならば、このまま大人しく暮らしていれば、今までと同様に暮らして行ける・・・・・はずだった。
ある日突然、
「我は
そう、一方的に宣言すると、オークの騎士達は高笑いをしながら悠々と帰って行った。
怒りはまったく湧かなかった。その圧倒的な力を目にしたからだ。
そのオークの騎士1匹だけで、村のゴブリンを皆殺しにする事なぞ容易い事なのだと確信した為に。
そんな者が数匹も居るのだ。端から勝負になどなりはしない。
本来オークとはDランク相当の魔物だ。ゴブリンより強いとは言え、1匹でそこまで圧倒的な強さを持つなど異常である。
尋常でない程得体の知れない何かが、このジュラの大森林にて起きているのだと、皆がそう確信したのであった。
そしてそれはその村だけでなく、周辺一帯にある全ての村にもたらされた先触れであったようで、各村でも同じ状況にあるという報告が族長達の集会でなされた時、皆はどこにも逃げ場がない事を悟り、彼等の絶望はより深いものへとなった。
命は助けるとオークは言っていたが、村の食糧を全て差し出すならば結果は同じ。
殺されるか、飢えて死ぬか。確実な死か、少しでも生き残れる可能性がある方に賭けるかの違いでしかないのだ。
全ゴブリンで歯向かっても全滅する未来しかない。そもそも戦えるゴブリンの総数は1万にも満たない。
もう、どうしようもなかった。
リザードマンの使者が村を訪れたのは、そんな時だった。
これは希望ではないのか?藁にもすがる思いで族長たちはリザードマンの使者、戦士長ガビルと名乗る男を出迎える。
彼は言った。
「吾輩の配下となると誓えば、お前達の未来を約束しよう!」
この言葉を信じると、族長達は判断を下した。
縋るもの無き、弱者ゆえの過ち。
中には、リザードマンの配下となるより、同法の配下になる方が良いと主張する者もいたが数は少なく、結局、ガビルの配下に加わる事になった。
この判断が、この後のゴブリン達の運命を決定付ける事を、彼等は知らない。
「まったく、親父殿ときたら」
リザードマンの戦士長ガビルは、腹心の部下三名と、直属の配下100名を引き連れて湿地帯を出て、『
首領より、特命を受けたからである。その内容は・・・・
「『ゴブリンの村々を巡り、その協力を取り付けてこい。』だと?オーク如きに恐れをなすなど、誇り高きリザードマンの振る舞いとは思えぬ。昔はあんなにも大きく偉大な男だったというのに・・・・・・」
と、ガビルがブツブツと呟いていると、腹心の一人が、声を掛ける。
「ねえねえ、ガビル様はいつ首領になるの?」
「む?いや、少々不遜な事を言ってしまったが、吾輩など親父殿の足元にも遠く及ばんよ」
「今のガビル様なら、きっと全盛期の首領にも劣らねえぜ」
「然り」
「うんうん」
部下たちからの思わぬ評価に、ガビルは戸惑う。
「え?いや、そんな事は・・・・」
「だってガビル様はネームドだし」
「うむ。その槍さばきにおいて、右に出る者無し」
「あんた今立たないでいつ立つんだよ」
三人と100名の配下達は、ガビルをジッと見つめる。
(え、何?ひょっとして吾輩・・・結構イけてる・・・・?)
「・・・うむ、そうだな。親父殿ももう年だ。少々強引なやり方でも、吾輩が支配者に足る力を持っているところをお見せしよう。それでこそ安心して引退していただけるというもの」
「じゃあ・・・?」
「うむ」
ガビルは、照れているのを誤魔化すように、頬をポリポリとかく。
「オークの軍勢の撃退をもって、リザードマンの首領の座を受け継ぐこととしよう」
そう言うと・・・・・・
「さっすがガビル様だぜ!」
「かっくいー!」
「至極当然」
配下達は沸きあがり、それを見て、ガビルは満足気な表情を浮かべた。
「へぇ・・・焼き入れん時の温度は勘なのかい?」
「んだ。火色を見れば大体分かるだよ」
「俺ぁ計るなぁ」
「オラも戻りの時はキチッと計るだよ」
「ああ。外が寒いと、粘りが出ねぇからな」
俺とリムルは今、クロベエとカイジンの工房にいる。
クロベエは進化の際にユニークスキル『研究者*3』を獲得していた。
クロベエは鍛冶が得意だった。なんでも、ベニマル達の武器は全て彼が造ったのだとか。
ベニマル達から聞いた話によると、今から四百年前のオーガの里に、森で遭難したのか、傷つきボロボロの状態だった鎧武者の集団がやって来たらしい。
当時から既に戦闘集団だったオーガは今よりも魔物に近い存在だったが、弱った者を襲うような真似はせず、森の上位者であったことから食事に困る事もなかった為、やって来た武者たちを手厚く介抱したのだという。
その事に感謝した武者達はオーガに戦闘秘術を教え、刀を始めとした武具の製法を教えたのだそうだ。
その武者達の一人がハクロウの祖父で、彼の技術は祖父に教え込まれた物なのだという。
そしてクロベエは家業として鍛冶技術を継承したとのことだ。
そんなクロベエは、今ではカイジンとすっかり意気投合しており、町中を歩き回っていた際に彼らの工房によったのだが、かれこれ2時間ほど専門的な会話が続いている。
前の世界に居た頃、加工担当と加工屋の娘の二人が武具を造る所を見る事が多かったから、俺からすればそこまで苦にはならないのだが、リムルは中座するタイミングを逃してしまったらしく、クロベエがリムルに
「な?鍛造って面白いだろ?リムル様」
と聞いても、
「お、おう・・・」
と、どもりながら返事をしている。本人も鍛冶自体に興味がないないわけではないようだが。
「リムル様!ジン様!此処におられましたか!」
そんな時、慌てた様子でリグルドが工房に入ってきた。
「リグルド?」
「どうしたんだ一体?」
「大変です。リザードマンの使者が訪ねてきました」
リザードマン・・・リムルが教えてくれたやつだな。ソウエイが言ってたらしいが、近くのゴブリン村で交渉に及んでいたんだったか。この村にも何かの交渉で来たのか?
「わかった。すぐ行くよ」
「カイジン、クロベエ。続きはまた今度ゆっくり聞かせてくれ」
リムルとリグルドと共に工房を出て、町の出入り口に向かっていると、
「リムル様、ジン様。話は聞いた。俺達も同席して構わないか?リザードマンの思惑を知りたい」
そう言い、ベニマル達が願い出た。俺達はこれを承諾し、俺、リムル、リグルド、ベニマル、ハクロウ、シオン、ヒヨ、アワナミの8人で対応することにした。
さて、リザードマンの使者か・・・・一体どんな奴なのだろうか。敵でなければいいのだが・・・・・・
町の出入り口に着くと、そこには一人のリザードマンが・・・・・・
「あれ?使者って一人なのか?」
リムルが呟いた。
使者という事だから、もっと大人数だと俺も思っていたのだが・・・・そう考えていると、森の奥から地響きを立てながらリザードマンの集団がやって来た。
先頭にいた者は、乗っているトカゲの足を止めると、その勢いに乗りながらわざとらしい降り方で地面に立つ。
「ご尊顔をよーく覚えておくが良いぞ。このお方こそ、次代のリザードマンの首領となられる戦士」
こいつがリザードマンの次期首領?
バッ!
ん?
「我が名はガビル!お前達にも吾輩の配下となるチャンスをやろう。光栄に思うがよい!!」
「「「・・・・・・・・・はぁ?」」」
両手を広げて宣言したリザードマンに、周りのリザードマン達が拍手をする。
突然の馬鹿馬鹿しい発言と光景を見て、俺達は思わず啞然としてしまった。
ガビルと名乗るリザードマン発言を聞き、普段は冷静なジンですら、一瞬啞然としていた。
配下になるチャンス?光栄に思えだと?
こいつ・・・一体何様のつもr・・・・って、ちょ、シオンさん?やめて!イライラするのはわかるけどそれ以上絞められたらスライムボディがスリムボディになっちゃう!
慌てて俺はシオンの腕からベニマルの腕に避難し、シオンが申し訳なさそうに頭をペコペコと下げる。
少しは落ち着きを取り戻してくれたっぽいので再びシオンに抱かれる。
「あの・・ガビル殿と申されましたな?配下になれと突然申されましても・・・・・・」
リグルドがガビルにそう抗議する。全くもって彼の言う通りである。
「やれやれ、皆まで言わねばわからんか。貴様らも聞いておるだろう?オークの軍勢が、このジュラの大森林を進行中だと言う話を」
ほほぅ・・・?
「しからば、吾輩の配下に加わるがいい。この吾輩が!オークの脅威から守ってやろうではないか!貧弱なゴブリン程度では、到底太刀打ちできまい?」
そう言い、改めてジン達に視線を向けるガビルであったが・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・」
そこにいたのは貧弱なゴブリンではなく、屈強なホブゴブリンらしき者が一人、オーガらしき者が五人、そしてスライムが一匹と、『人族』らしきものが一人立っていた。
そしてジン達に背を向けると、側近の三人と円陣を作り、ヒソヒソと話し出す。
「ゴブリンがいないようだが?」
「あれー?」
「情報によれば、確かにここはゴブリン村のはず・・・・・・」
「というか、貧弱な奴が誰もいないよ?」
「スライムと人族は貧弱ではないと言うのか!?」
それを見ながら、ジンとリムルも念話で話し合う。
「(どうする?ジン)」
「(オークが攻めてきてると言うのなら、リザードマンと手を組むというのは悪い話ではない・・・・・・だが)」
「(だが?)」
「(見たところ、実力はそこそこはあるみたいだが・・・リムル、お前、あいつと手を組めると思うか?)」
「(・・・・うん。まぁ、ああいうアホは嫌いじゃないけど、背中を預けるのはちょっと・・・)」
「((イヤだよなぁ・・・・・・))」
二人が話し合っている間に、ガビル達も結論が出たのか、再びジン達に向き直る。
「あー、ゴホン。聞けば、この村には牙狼族を飼いならした者がいるそうだな。そいつは幹部に引き立ててやる。連れてくるがいいぞ」
ガビルはドヤ顔でそう言う。
シオンは再び苛立ち始め、抱えているリムルを締め付け、ベニマルも「こいつ殴りてぇ」という表情をし、アワナミに至っては手をボキボキと鳴らし、今にも殴りかかりそうな雰囲気である。
「あー・・・牙狼族を飼い慣らしているわけじゃないけど、仲間にしたのは俺とジンだけど」
リムルがスライムの姿のまま、俺を指しながらそう言うと、
「スライムと人族が?冗談を言うでない。まぁ、証拠を見せてみろ。そうしたら多少は信用してやるぞ?」
これには、流石のジンとリムルもイラつき始める。お互い、それぞれの前世で一度や二度は理不尽な依頼を受けた事はあるので、多少は平気ではあるがが、ここまで馬鹿だと対応を変えざるを得なくなる。
「(とりあえず、証拠を見せてやるか)」
「(そうだな。あそこまで言うんだ。アイツの力量も気になる。ランガだけでいいかな?)」
「(いや、エンカにも手伝ってもらおう。あいつらなら、いい感じに威圧も出来るだろう)」
「(OK)ランガ」
「エンカ、出てくれるか?」
「「ハッ」」
2人が自身らの影に呼びかけると同時に、それぞれの影から普段よりも大きな身体でランガとエンカが現れる。
「か、影の中から!?」
突然2人の影から現れた2匹を見て、リザードマン達は驚く。
「どうもお前達に話があるようでな」
「そいつの話を聞いて差し上げろ」
「御意」「かしこまりました」
そして2匹は同時に、リザードマン達に対してスキル『威圧』を発動する。
その様子をジン達と一緒に見ていたベニマルとアワナミは首を傾げる。
「あれ?あの2匹、あんなにデカかったですかね?」
「以前、初めて森の中で戦った時はもう少し小さかったような・・・?」
「あれがあの2匹の本当の大きさなんだよ。ランガが尻尾を振った時の被害が甚大だったんだ。それで叱ったら小さくなったんだ」
「エンカは特に怒られる様な事はしてなかったんだけど。ランガが身体を小さくした理由を聞いた後に、迷惑をかける前にって言って。同じように縮んでいたんだ」
「へぇ・・・・」
「そんな事があったのですね」
「まぁ、威嚇するにはあのサイズの方が都合がいいしな」
ジンとリムルの話を聞き、2人は納得した表情を浮かべた。
「主達より命を受けた。聞いてやるから話すがよい」
「・・・・お、おお。貴殿らが、牙狼族の族長殿かな?」
2匹が威圧をしながら声をかけ、リザードマン達が萎縮している中、ガビルは少しばから狼狽たえたものの、臆さず2匹と話す。
その姿を見て、ジンとリムルは少しだけ、彼を見直した。
「いや、私は族長ではない。族長は兄であるランガだ」
「そうであったか。どちらも、さすが威風堂々たる佇まい。しかし・・・・主人がスライムと人族とは些か拍子抜けであるな。」
「((ああん?(#^ω^)))」
ガビルの言葉に、少しばから見直していたリムルとジンは内心一気にキレる。ある程度は我慢できるといえど、流石に我慢の限界があるというものだ。
そんな事は露知らず、ガビルは更に調子に乗っていく。
「どうやら貴殿らは騙されているようだ。良かろう。この吾輩が、貴殿らを操る不埒者達を倒して見せようではないか!」
そう言いながらガビルはリムルとジンを指差す。
「見せてやってくださいよ、ガビル様ーーっ!」
「ガビル様かっけーーっ!」
「ガビル無双」
「「「「ガ・ビ・ル!ガ・ビ・ル!ガ・ビ・ル!ガ・ビ・ル!ガ・ビ・ル!ガ・ビ・ル!ガ・ビ・ル!」」」」
「・・・トカゲ風情が・・・・・」
「我が主達を侮辱するとは・・・・・・」
(あ、ヤバイ。アイツ死んだ)
(他の奴がキレている所を見ると、逆に冷静になるもんだな・・・・)
ガビルとその配下達が調子に乗る中、ランガとエンカは完全にブチギレ、今にも襲い掛かろうとする姿を見て、リムルとジンが冷静になり、2匹を止めようか考えた時だった。
「あれ?何やってるっすか?」
後ろから、ある男の声が聞こえてきた。
「「ゴブタ!?」」
「お前、(シオンの手料理のせいで)死にかけてたはずじゃ・・・・・」
そこに居たのは、ベニマルが呟いた通り、先刻、シオンの料理を食べ、今は生死を彷徨っていたはずのゴブタだった。
(俺が診た限り、少なくとも1日は起き上がれない状態だったはずだが・・・・どういう事だ『相棒』!)
《解。個体名:ゴブタはシオンの料理への抵抗に成功。『毒耐性』を獲得したようです》
(なるほどな。てか毒耐性って・・・・・)
「・・・・・良いところへ来た、ゴブタよ。」
「へ?」
そしてそんなゴブタを見たランガはゴブタを咥えてガビルの前に立たせ、エンカは槍を持たせる。
「・・・・え?・・・え!?・・・な、何すかこの状況ーーーーーーー!?」
ゴブタの前では、既にガビルが槍を構えている。
「トカゲ。この者を倒せたのなら、貴様の話、一考してやろう」
「もっとも、倒せるかは知らないがな」
ランガとエンカは、ゴブタを戦わせる事で、ガビルの実力を測る事にしたのだ。
(ゴブタを生贄に、アイツの力量を測るつもりか?ランガ達も意外とずる賢いな・・・・)
(ふむ・・・ハクロウとの稽古を見ていたが、素質はあるようだし、ゴブタならアイツ相手にはちょうど良いかもな。)
リムルは少し心配しているが、ジンはあまり心配はしていなかった。
「構いませんぞ。部下にやらせれば恥はかきませんかたな。なぁ、スライム殿、人族殿」
自身の勝利を微塵も疑ってないのか、ガビルは再び挑発する。
「ゴブタ、遠慮入らん。思いっきりやったれ」
「ええっ。何なんすかもーーーー・・・・」
いきなり決闘に駆り出されたゴブタは不満げな表情だ。
「勝ったら俺からクロベエに頼んで、お前専用の武器を作ってもらってやるぞ」
「えっ、ホントっすか?ちょっとやる気出たっす」
「負けたら『シオンの手料理の刑な。」
「頑張るっすーーー!!」
ジンの言葉で少しばかりやる気を出したゴブタだが、リムルの一言で、負ける事が絶対に出来ない戦いとなり、背水の陣で挑む決意をする。
自分の料理の刑と言われてからやる気を出された事に、シオンは少し不満そうな表情だった。
そしてお互いに配置に着く。
「では、始めろ!」
ランガとエンカの遠吠えを合図に、試合が始まった。
「ふっ。偉大なるドラゴンの末裔たる我らリザードマンに、ホブゴブリンなんぞが勝t ぬおっ!?」
試合が始まったのにも関わらず、慢心して喋っている所を狙い、ゴブタが槍を投げつける。
「おのれ小癪なっ!」
反撃とばかりに、ゴブタが居た場所に向けて槍を振るが、そこにゴブタはいなかった。
「!?馬鹿なっ。消えたとでも・・・」
そしてガビルの影がざわめいた瞬間、
「とうっす」
影の中からゴブタが現れ、ガビルの後ろ首に飛び回し蹴りを叩き込む。
ガビルが投げられた槍に気を取られている隙に、『影移動』を使って自身の影からガビルの影に移動し、以前、リムルから喰らったのと同じ回し蹴りを使用したのだ。
不意を疲れて、一撃を喰らったガビルはそのまま倒れ、起き上がる気配がない。
「終わりですね」
「勝負アリ!勝者ゴブタ!!」
「っし!」
「ようやった。ようやった。鍛えがいがありそうじゃのう」
「ハクロウの稽古を見ていたが、最後まで残っていたのはゴブタだったからな。約束通り、後でクロベエに頼んでおいてやるよ。」
「やったっすーーーっ!
ランガが宣言し、ベニマル達が喝采を挙げる。
ベニマル達に胴上げをされ、褒められる中、シオンに抱えられながらリムルは1人で考えていた。
(『影移動』は元々テンペストウルフのスキルだ。俺も
「どうした?リムル」
「ん?いや、考え事をしていただけだよ。やったなゴブタ!・・・・・さて、そこのお前ら、見てたな?勝負はウチのゴブタの勝ちだ」
「オークと共に戦うというのなら検討はしておくが、配下になれという話は断る。今日のところはソイツを連れてとっとと帰れ」
ジンとリムルの言葉を聞き、呆然としていたリザードマン達は気を取り直す。
「い、いずれまた来るぜ!」
「然り。これで終わりではないぞ」
「覚えてろーーーーーー!!」
そう言ってリザードマン達は、気絶したガビルを連れて村から去って行った。
「さてと・・・今後の方針を立てないとな」
「だな」
夜、町の中で1番大きな寝泊まりができる建物に隣接した打ち合わせ用の小屋で、今後の方針を決める会議を俺達はしていた。
リグルドやベニマル達を始めとした主要な者は建物の中で、他の者達は、外で窓から会議の様子を見ている。
まずは、会議が始まるまでにソウエイが『分身体』を使って調べてきた情報を整理する。
最初に、この町以外に点在していたゴブリンの村々のほとんどは、ガビルの傘下に加わり、加わらなかったゴブリン達は恐慌状態となって各地に散らばっていったそうだ。
ガビルが傘下に収めたゴブリンの数は総数7千匹程。現在は山岳地帯麓に集結し、野営しているそうだ。
おそらくだが、ガビルが来た時に言っていた、オークの進行からの庇護をエサに交渉したのだろうと言うのが、俺達の見解だ。
リザードマン達は、湿地帯に住んでおり、こちらはリザードマンの首領が各部族の戦士を取り纏め、1万体近くの軍を組織しているらしい。
食糧を豊富に用意し、自然の迷宮でもある、住処の洞窟に立て篭り、オークを各個撃破する構えだと言う。
俺達は疑問を感じた。戦闘力で言えば、オークよりもリザードマンの方が上だ。森の上位種族でもあるオーガの里を壊滅させたからと言っても、その数は数千。あまりに警戒しすぎではないかと。
俺は嫌な予感がした。
そして、偵察から戻ってきたソウエイの報告を聞き、その予感が当たった事を確信した。
「報告します。およそ40万のオークの軍勢を確認しました」
「はぁーーーーー?40万ーーーーー??40万のオークの軍勢がこの森に侵攻して来てるってのか!?」
あまりの軍勢の大きさに、リムルが驚きの声を上げ、他の者達もざわついている。俺もハンター時代、アプトノスの大移動などを目撃した事などはあるが、40万もの大軍なぞ見た事もない。
「俺達の里を襲撃してきたのは数千だった筈だが・・・・」
「あれは別動隊だったのだ」
ベニマルの疑問に、地図が無い代わりにみんなの話と『思念伝達』を使ってある程度の地形を書いた木板の上に俺達の現在位置などが分かり易い様、駒の代わりに置いた石を動かしながら、ソウエイが答える。
「本隊は大河に沿って北上している。そして本隊と別動隊の動きから予想した合流地点は東の湿地帯・・・・つまり、リザードマン達の支配領域となります」
動きを見る限り、俺達の町は狙われていないが、それならわざわざ別動隊を作って、進路の妨げになっていないオーガの里を襲う理由はない。
「オークの目的は・・・・一体なんだ・・・?」
俺は小さくそう呟く。
「ふむ・・・・オークはそもそもあまり知能の高い魔物じゃねぇ。この侵攻に本能以外の目的があるんだとしたら、バックの存在を疑うべきだな」
「例えば・・・魔王、とかか?」
カイジンの発言にリムルがそう問い返し、場は一気に静まり返る。
「・・・・なんてな。ま、何の根拠もない話だ。忘れてくれ」
リムルは彼の世界にあったという菓子のポテチを一枚口にしながらそう言う。まぁ、もし魔王が絡んでいたとしても、それがシズを召喚した魔王レオンとは限らない。話によると、どうも魔王は複数居るみたいだしな。
「・・・・・・魔王とは違うんだが。
「前に話していたあれか」
「確か、数百年に一度生まれる
「はい」
ベニマルの言う通りだな。ここでいないと決めつけてしまうよりも、最初からいると考えて対処法を考えた方がいいな。
「!」
会議を続けていると、突然、ソウエイが表情を鋭くして硬直した。
「どうした?」
リムルの問いにソウエイが答える。
「偵察中の『分身体』に、接触してきた者がいます。何やら、どうしてもリムル様とジン様に取り次いでもらいたいとの事、いかが致しましょう?」
「俺達に?」
「誰だ?ガビルでもうお腹いっぱいだし。正直変な奴だったら会いたくないんだけど」
リムルと同感だ。
「変・・・・ではないのですが、大変珍しい相手でして・・・その・・
ソウエイの言葉に俺とリムル以外の全員が驚きの声を上げる。ハクロウも驚いている表情をしているところを見ると、かなり有名な魔物らしいな。
「か、構わないお呼びしてくれ」
「はっ」
リムルも驚いているのか、少しどもりながらソウエイに伝える。
その瞬間、何処からか一枚の葉が部屋の中に入ってきたと思うと、薄緑色の光と風を伴い、1人の女性が現れる。綺麗な緑色の髪に白い肌と青い瞳、人間で言うところの20歳ぐらいの見た目だが、その姿は薄っすらと透けている事から、肉体を持っていない事がわかる。系統としては
「初めまして。”魔物を総べる者”及びその従者たる皆様。突然の訪問相すみません。わたくしは
「こちらこそ初めまして。俺はジン=テンペストだ」
「俺はリムル=テンペストです。初めましてトレイニーさん」
俺達が挨拶わかる交わす中、周りのどよめきは部屋の中も外も、一層強くなっていた。
「え?本物のドライアド?」
「マジで?」
「は、初めて見ましたぞ」
「そりゃそうだ。ドライアド様が最後に姿を現されたのは数十年も前の事・・・・」
「何故今、この町に・・・」
有名な魔物なのかと思っていたが、皆の戸惑いがすごいな。
《解。
なるほど、リグルド達が畏れ敬うわけだ。ベニマル達も少し緊張しているようだ。
「ええと、トレイニーさん?今日は一体何のご用向きで・・・?」
リムルがトレイニーに問いかけると、笑みを浮かべながらトレイニーは答えた。
「本日はお願いがあって罷り越しました。リムル=テンペスト、ジン=テンペスト・・・・・魔物を総べる者達よ。あなた方に
どうも、邪神イリスです。
受験勉強が一旦ひと段落ついて時間が空いたので、投稿いたしました。
いやぁ、転スラ二期が終わったと思ったらまさかの映画化とは、色々と楽しみですね。
書籍版最新巻もまだかまだかと思っている日々です。
そして、皆様のおかげで、『転生してもハンターだった件』のお気に入り登録者数が1000を越えました!こんなにもたくさんの方々に読んでもらえていると思うと、とても嬉しいです!
今後も頑張って書いていかさせていただく所存です。