転生してもハンターだった件   作:邪神イリス

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オークの目的

 

 

 

 

 

 

「「・・・・・」」

 

オークロードの討伐。

 

トレイニーの突然のその申し出に、ジン達は一瞬、沈黙してしまった。

 

「ええと、俺達がですか・・・?」

 

「ええ、そうです。リムル=テンペスト様」

 

リムルの言葉をトレイニーは笑顔を浮かべながら肯定する。

 

「一つ確認させてほしい。オークロードが居ることに関しては、俺達の間ではまだ仮定なんだが。今の言葉から察するに・・・・・」

 

樹妖精(ドライアド)はこの森で起きた事ならば大抵は把握出来ます。いますよ?オークロード」

 

ジンの質問をトレイニーが肯定すると、一瞬空気が凍りつくと、周りがまたざわつき始める。

 

「な、なんと!」

 

「ドライアド様がお認めに・・・・っ」

 

「いきなり現れて、随分身勝手な物言いじゃないか?樹妖精(ドライアド)のトレイニーとやら。なぜこの町に来た?ゴブリンよりも強く有力な種族はいるだろう」

 

ベニマルがトレイニーにそう問いかける。

実際、ジュラの大森林には、ガビルとの決闘の時などは例外として、基本的にゴブリンよりも強い種族はベニマル達元オーガ以外にもリザードマンを始め、多数存在する。

 

「そうですわね。あなた方・・・元オーガの里が健在でしたら、そちらに出向いていたでしょう」

 

トレイニーはベニマル達に視線を向けながら問いにそう答える。

 

「まぁ、そうであったとしても、この方達の存在を無視する事は出来ないのですけれど」

 

トレイニーはジンとリムルに視線を移しながら話を続ける。

 

「トレントの集落がオークロードに狙われれば、数の少ないドライアドだけでは対抗出来ません。ですから、こうして強き者達に助力を願いに来たのです」

 

顔は笑みを浮かべつつも、真剣な眼差しでトレイニーは二人に頼み込む。

 

「(個人的に『依頼』と言われたからには断り辛いのだが……)」

 

ジンはハンターだった頃の性分を思い出し、内心で苦笑いをする。

 

「あー、うん。そういう事なら協力はしたいんですが……」

 

「いいんじゃないか?」

 

「ジン!?」

 

「ただ、トレイニーさん。貴女が言ったように、俺達はこの町の主なんだ。率先して藪をつつくような真似をして、この町を危険に晒すわけにはいかないんだよ。だから、答えを出す前にまずは情報を整理させてくれないか?」

 

ジンは困った顔をしながらもトレイニーに返事をした。

 

「・・・・確かに仰られる通りですね。失礼致しました。では、私も会議に参加させていただけませんか?」

 

「もちろん。むしろお願いしたいです」

 

トレイニーの提案にリムルは即答で了承した。

 

そして、トレイニーを加えた全員で会議を再開すると、シュナがオーク達の目的に心当たりがあるという。

 

「ソウエイ、わたくし達の里の跡地は調査して来ましたか?」

 

「・・・・・はい」

 

ソウエイにしては珍しく、少し言い淀むようにして答えた。

 

「その様子ではやはり・・・・無かったのですね?」

 

「・・・はい・・・・同胞のものも、オーク共のものも。ただの一つも」

 

言い辛そうにだが、断言するソウエイ。

 

「???無かったって、何がだ?」

 

「死体です」

 

「「「死体!?」」」

 

ソウエイの言葉を聞いた皆は息を呑んで言葉を失う。

 

「なるほどな・・・・40万もの大軍が食えるだけの食糧をどうやって調達しているのか疑問だったが・・・」

 

「奴らには兵站の概念などありはしませんからな・・・・・

 

ベニマルやハクロウは戦慄しながらも納得したという表情で呟いた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! その言い方だとまるで・・・」

 

「ええ、リムル様が考えられている通りです・・・・・・ユニークスキル『飢餓者(ウエルモノ)』。豚頭帝(オークロード)が生まれる時、必ず保有しているスキルです。食べた魔物の身体的特性やスキルなどの性質を自分の物とする。リムル様の『捕食者』と似ていますね。ただ、『捕食者』と違って一度で確実な奪取はとはなりませんが、食欲に任せて食い続ければその確率も上がるというもの」

 

そう、オークは軍の食糧の代わりに、あらゆる物を喰らい尽くす。それは、死体であれば同族だろうと関係なかった。

 

だが、皆が戦慄する中、ジンは死体を喰うという行動自体に対しては、そこまで衝撃を受けていなかった。

何故なら、ジンはハンター時代、死体や共食いを行うモンスターを幾度も見てきたからである。

 

代表的な個体を挙げるのであれば、『恐暴竜 イビルジョー』だろう。

 

常に高い体温を保たねば生きていけないイビルジョーは、餌となる生物が近くに居ない場合は、死骸を捕食し、腹が減っていれば我が子や、ハンターや他のモンスターに斬られた自身の尻尾でさえ捕食対象として見るのだ。

 

閑話休題。

 

少なくとも、ソウエイが調べてきた情報とトレイニーからの情報を整理して、可能性の出て来たオーク達の目的。それは・・・・・

 

「オークの目的は、オーガやリザードマンといった森の上位種を滅ぼす事ではなく、その力を奪うってことか・・・・」

 

それこそが、現在のオーク達の行動から導き出せる答えだった。

 

「・・・・・となると、ウチも安全とは限らねえな。テンペストウルフやインフェルノウルフに鬼人。ひょっとするとホブゴブリンもか?オークが欲しがりそうなエサは沢山あるからな」

 

ポテチを一枚口にしながらそうぼやくリムル。

 

「ああ。それに、このまま時間が経てば経つほど、奴等は強くなってしまう可能性は高い。早急に手を打つ必要があるな」

 

ジンは腕を組みながらそう言う。

 

「ジン様の言うとおりです。それに、今回の豚頭帝(オークロード)の誕生の切っ掛けに魔人の存在を確認しております。その魔人は現在この世に君臨しているいずれかの魔王の配下ですので、貴方様方も放っておけないと思いますけれど」

 

「「・・・・・・・・」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

澄ました顔でお茶を飲むトレイニーさん。

 

森で起きたことは大抵把握していると言ってたな。つまり、俺とリムルとシズの関係も知っているわけで・・・・・まったく、大人しそうな顔をしている癖に、食えない御仁だ。そう言われて俺やリムルが動かない訳がない。

 

「改めて、豚頭帝(オークロード)の討伐を依頼します。暴風竜の加護を受け、牙狼族を下し、鬼人を庇護する貴方様方なら、豚頭帝(オークロード)に遅れを取る事はないでしょう」

 

「・・・・・わかったよ。豚頭帝(オークロード)の件は俺とジンが引き受ける。皆もそのつもりでいてくれ」

 

リムルの言葉に皆が力強く首肯した。

 

こうして、俺たちは新たなる脅威に立ち向かうべく動き出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、40万もの軍勢を相手取る為、現在のオーク達の侵攻先であるリザードマン達との同盟を検討したいところ。なんだけど・・・・・

 

「「使者がアレだからなぁ・・・・・」」

 

使者としてやって来たガビルが、同盟を組んでも大丈夫なのかと不安になるには十分過ぎる程のインパクトを持っていた。

 

「うーーん・・・・リザードマンの話が通じる奴と交渉したいところだけど・・・・」

 

「リムル様。でしたら、自分が交渉に向かいます。リザードマンの首領に直接話をつけてもよろしいですか?」

 

「出来るのか?ソウエイ」

 

「はい」

 

凄い自信だ。

まあ、ソウエイなら問題ないだろう。

 

「よし、任せる。決戦はリザードマンの支配領域である湿地帯になる可能性が高いが、これはリザードマンとの共同戦線が前提条件だ。くれぐれも舐められないようにな」

 

「心得ました」

 

恭しく頭を下げると、ソウエイはそのまま音もなくその場から姿を消したのだった。

 

しかし、リザードマンの首領がガビルみたいなアホじゃなければ良いが・・・・まぁ、それは有り得ないだろう。一族の長を務める者なのだ。きっと賢明な判断が出来る人物に違いない。うん。

 

そんな事を考えていると、リムルが何かに気づいた。

 

「これ、ソウエイが置いたコマか?」

 

リムルが指さしたのは、地図の上に置かれた小さな石のコマだ。

 

「ええ。周辺のゴブリンを取り込んだガビルの隊らしいです。気絶したガビルを囲んで、しょんぼり沈んでいたとか」

 

ベニマルがそう説明してくれる。

 

「どうかしたのか?」

 

「いやな。オークの迎撃をする為のリザードマンの本隊はこんなカンジで展開するよな?するとなんか・・・・」

 

カチャカチャと、リムルがコマを配置していく。

 

「ガビルの隊が、リザードマンの本拠地を襲撃したら一気に落とせる布陣に見えるんだよ」

 

言われてみれば確かにそう見える。アイツかなり調子に乗るタイプだから、周りに乗せられて変な気を起こす可能性もあるから否定出来ないな・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?こ、ここは・・・っ」

 

「起きたかよっ!?」「わーん!ガビル様ーー!」

 

一方、件のガビルは、夜の森の中でようやく目が覚めた。

 

「(そうだ。我輩はあのふざけた顔の男に・・・・!)」

 

怒りに震えるガビルは、最後に自分を蹴り飛ばしたゴブタの顔を思い出す。

 

「うぬ・・・すっかり騙されたわ」

 

「どう言う事?」

 

ガビルの言葉に首を傾げる部下達。

 

「簡単な事よ。我輩を制したあの者こそ、あの村の本当の主に違いない!」

 

「「「なんと!?」」」

 

驚く部下達は、円陣を組んで話し合う。

 

あれ(ゴブタ)が・・・?」

 

「でも、そうじゃないとガビル様が負けるなんて有り得ないよ」

 

「然り」

 

「汚い!騙してガビル様の油断を誘うだなんて!」

 

「ふざけやがって!」

 

「まぁ、落ち着け。弱者なりの知恵というやつだろ」

 

憤慨する仲間達に冷静に語りかけるガビル。

 

その姿だけはまるで歴戦の猛者のようであった。

 

実際は一撃でノックアウトにされて気絶していただけであるし、客観的に見てもどうやったらその考えに行き着くのか疑問に思うのが普通だが、残念ながらそれを注意する者はこの場には居なかった。

 

「さすがガビル様。器の大きさ山の如し」「よっ!次期首領!」「いやーーカッコええなあ、ガビルはん」

 

「いやいや、我輩など・・って何ヤツっ!?」

 

「さっきから居たよあの人」

 

ガビルが聞き覚えのない声に反応して振り返ると、そこには人を馬鹿にしているような左右非対称の笑顔を模した仮面を付け、ど派手で色鮮やかな服を着た道化の男であった。

 

「ワイはラプラスと言う(もん)です。ゲルミュッド様の使いで、あんたに警告をしに来たんや」

 

「おお!ゲルミュッド様の!?」

 

自身に名を授けてくれた存在の使いと聞き、ガビルは警戒心を解く。

 

「わざわざご足労をお掛けしましたな。それで、ゲルミュッド様の警告とは?」

 

「これがまたえらい事になっとるんですわ。今回のオークの軍勢・・・・本当に豚頭帝(オークロード)が率いているようでっせ」

 

「「「「オークロード!?」」」」

 

ガビルの部下達はその言葉を聞いて驚愕し、一斉に騒ぎ出す。

 

そんな中、ラプラスはガビルを相手に話を続ける。

 

「リザードマンの首領は出来たお人やけど、もうかなりのお歳やし・・・・正直なとこ、お父上には荷が重いとちゃいますか?」

 

その言葉に、ガビルは冷静に思考を巡らせると、ざわつく部下達を一喝する。

 

「静まれぃ!!!」

 

ビクッと身体を震わせる部下達。

 

「伝説だか何だか知らんが、他より僅かに優れているというだけだ」

 

「「「ガビル様・・・・」」」

 

「・・・・だが、そんな悠長な事も言ってられなくなった。オーク軍撃退の後に首領の座を受け継いだのでは間に合わん!ラプラス殿。挨拶もそこそこだが、我輩達は・・」

 

「ええってええって。湿地帯に戻りはるんやろ?ここからは数日はかかるし、早よ行った方がええで」

 

「うむ。かたじけない」

 

ガビル達は走行蜥蜴(ホバーリザード)に跨がり、湿地帯に向かって走り去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・せいぜい頑張りや。ガビルはん」

 

手を振りながら見送るラプラスの瞳は冷たく光っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、邪神イリスです。

大学関連でバタバタしたり、急性胃腸炎で入院したりと執筆する時間がなかったのですが、入院時のストレス発散も兼ねて書きました。

感想の方でも楽しみにしていてくださる方もたくさん居らっしゃいますし、オークとの戦争はしっかりと描いていけたら良いなと思っております。
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