転生してもハンターだった件   作:邪神イリス

18 / 23
恐怖を知る者と知らぬ者

 

 

 

 

会議を終えた翌日。

 

俺とリムルは住民達を広場に集めて説明会を行っていた。

 

なお、リムルはなんかお神輿みたいなものに乗せられている。ホントは俺の分も用意するつもりらしかったが、時間がなくて間に合わなかったらしい。

 

・・・・・・まあ、別に俺はいいんだけどね。

 

「─────という事で、俺達はオーク軍を相手にする事になった。決戦は湿地帯で行うつもりだ」

 

「そこで勝てればよし。だが、もしも負けた場合は、速やかにこの町を放棄し、トレントの集落に落ち延び、その際に同時に人間に応援を依頼した後にそれと協力しつつオーク軍を迎え撃つことになる」

 

シュナ達に聞いた話によると、過去に出現したオークロードは全て人間に討伐されているとの事なので、今回もそれに倣っていく方針だ。

 

だが、現状俺達が唯一頼れる人間であるカバル達に直接連絡をするのは、負けが確定した時の作戦に移行する事になってしまった時でもいいので、コボルトの商人にはオークロード誕生の情報だけ流して貰っている。

 

「正直、敵戦力は少なくない。だが、俺たちは勝つつもりで行く。負けるかもと怯える必要は無い。状況は『思念伝達』で知らせる。皆落ち着いて、決められた通りに行動する様に!」

 

「「はい!!!」」

 

「では、第一陣に加わる者を発表する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リザードマンの根城の玉座の部屋で、リザードマンの首領は、兵士からの報告を聞いていた。

 

「そうか・・・・わかった。下がってくれ」

「ハッ!」

 

報告が終わると、部屋を出て行く兵士達。

それを見届けると、彼は深い溜め息をつく。

 

今もたらされた、強力なオーガの里が1日も持たずにオークの群れに飲み込まれて壊滅したという報告から、恐れていた事が現実となった事を悟ったからだ。

 

もはや疑いようもない。オークロードが出現したのだ。

 

数だけを見れば、40万の軍勢に対して自分達は圧倒的に不利であるが、相手はオーク。此方は最低でも1万も居れば、湿地帯や洞窟などの地形の利も合わさり、互角以上に戦う事が可能だ。

 

しかし、オークロードが居るとなると話は別だ。

 

奴の持つスキルである飢餓者(ウエルモノ)の力により、オークは喰らえば喰らう程強くなる。オーガの里が飲み込まれたという事は、今では自分達リザードマンと同等の強さになっている可能性もある。

 

数の有利さでリザードマンの同胞が疲弊した所を攻められるだけでも苦しいのに、一兵卒当たりの戦力の差が無くなったとしたら、それこそ勝ち目は無いのだ。

おまけに飢餓者の能力で敵から食糧が無くなるまで永遠に戦い続ける事が出来るのだから、篭城戦すら不可能である。

 

ゴブリンの協力を取り付かせに行かせた、ガビルからの報告も未だ無い。しかし、時間をかければかける程、相手を強化させてしまう恐れがある。

 

最悪の場合、自ら軍を率いて出陣する必要があると感じ始めた時だった。

 

「首領!」

 

1人の兵士が慌てた様子で飛び込んで来た。

 

「何事だ?」

 

「侵入者です!鍾乳洞の入り口にて、首領に会わせろと・・・・」

 

リザードマンの首領は、すぐに決断を下す。

 

「・・・・会おう。連れて参れ」

 

「えっ!?は、はい!承知致しました!!」

 

兵士は驚いた表情をしたが、命令に従い、慌てて退室する。

 

「首領、危険では・・・・・・・」

 

「・・・・そなたも感じるか・・・・この妖気・・・只者ではあるまい」

 

親衛隊長の言葉に、首領は真剣な眼差しで答える。

 

兵士が報告しに来たとほぼ同時に感知した、感じた事もない程の強力な妖気を放つ存在。

 

しかし、その隠す気のない妖気からは敵意は感じられなかった。

 

「(この妖気(オーラ)・・・・これはリザードマンの精鋭100体でかかったとしても、敗北するやもしれんな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

待つ事数分。

 

兵士に案内されて現れたのは、浅黒い肌に青黒い髪。青い瞳の冷徹な気配をした魔物・・・・ソウエイであった。

 

「失礼。今取り込んでおりましてな。おもてなしも出来ませぬが・・・」

 

首領は玉座から立ち上がり、周りのリザードマン達は万が一に備え、ソウエイに槍を構えて警戒していた。

 

「気遣いは無用だ。俺は単なる使者・・・・・我が主達の言葉を伝えに来ただけなのでな」

 

「・・・・・」

 

首領は目線で、兵士達に警戒を解くように指示を出す。

 

「・・・して、どのようなご要件で?」

 

「我が主達は、お前達リザードマンとの同盟を望んでいる」

 

「・・・同盟?はて・・・・そちらの勢力が如何様なもので、そなたの主達とやらが誰なのか、儂は知らんのだがね」

 

この時点で、首領は首筋に冷たい汗が流れるような錯覚を味わっていた。これ程まで強力な妖気を放つ魔物を使役する存在が複数人居るのだとしたら、それはもう魔王に匹敵する存在なのだ。

そんな相手と敵対する事など、正に自殺行為である。

 

「我が主達の名は、リムル=テンペスト様とジン=テンペスト様だ。ドライアドより直に要請を受け、オーク軍の討伐を確約されている」

 

「森の管理者が、直接・・・!?」

 

「ドライアドの話では、オーク軍を率いているのはオークロードだと言う。この意味を踏まえて、良く検討して欲しい」

 

首領は考えを巡らせる。

 

たった今、オークロードの存在を目の前の男に肯定された。ドライアドという森の最上位存在の名前まで出しているのだから、本当の事だろう。

 

何故なら、大森林の樹木を通し、大森林の全ての事象を見透すという存在の名を騙るような愚か者は、このジュラの大森林には居ないのだから。

 

それに、同盟と言うからには一方的な隷属ではなく、対等な関係として扱ってくれるという事になる。

 

そこまで考えが至った時だった。

 

「ふんっ、リムル?ジンだと!?聞いた事も無い!」

 

若いリザードマンの兵士が声を上げる。

 

「どうせそいつらもオークロードを恐れて、我らに泣きついて来たのだろう?素直に助けてくれと言えばいいものを「やめろ」え?」

 

「今すぐ口を塞ぐのだ」

 

首領がその言葉を遮る。

 

「首領。そのような態度では舐められ・・・・!」

 

若い兵士は、僅かな痛みを首から感じた。

 

「───な、こ、これは・・・・・」

 

 若い兵士の首には、いつの間にか細い糸が巻きつけられており、僅かに血が流れていた。

 

「同族の非礼を詫びよう。許してやってもらえないかな?これは対等な申し出なのだろう?」

 

「・・・・・失礼。脅す気はなかったが、主達を愚弄されるのは好まぬ」

 

ソウエイは特に気にした様子も無く答えながら指を動かして糸を回収するが、首領は冷や汗を流していた。

 

「(よく言う・・・・止めねば迷わず首を刎ねるつもりであっただろうに)」

 

あと一秒でも、若い兵士の言葉を遮るのが遅かったら、今頃彼の首は胴体と別れを告げていたであろう。その事実に背筋が凍り付く。

 

「・・・ジュラの大森林に暮らす魔物に、森の管理者を騙る愚か者は居ない。見たところ、私の知るそれとは内包する妖気が大きく違うが、そなたは南西に暮らすオーガだろう?」

 

「今は違う。主の1人であられるリムル様より『蒼影』の名を賜った折、鬼人となった」

 

「鬼人!?」

 

鬼人とは、オーガの中から稀に生まれるという上位種族である。首領は確信した。ならばこのソウエイと名乗った鬼人に名を与えたというリムルなる者と、もう1人の主であろうジンなる者とは、それ以上の存在であると。

 

「(オークロードの出現・・・・この局面において、強者からの援軍を期待出来るとなると、断る理由など無いな。だが・・・・)ソウエイとやら。一つ条件がある」

 

「・・・・聞こう」

 

「そなたの主達、リムル=テンペストとジン=テンペストと会いたい」

 

「──────────────────わかった。では、我々は準備を整え、7日後にこちらに合流する。その時、お目通りしていただくとしよう。それまでは、決して先走って戦を仕掛ける事の無いように」

 

「承知した」

 

ソウエイが7日後と伝えたのは、この時、瞬時に思念伝達でリムル及びジンに交渉の状況を伝え、準備や移動の時間を考慮した結果と『ある伝言』を伝えられたからである。

 

「最後に一つ、リムル様達より伝言がある。「背後にも気をつけろ」との事だ」

 

「・・?そうしよう」

 

「では」

 

ソウエイは音も無く消え去る。それを確認した首領は、脱力して玉座に座り込んだ。

 

「首領!」

 

「・・・・・・どうにか聞き入れてもらえたか。光明が見えたようだ・・・・親衛隊長」

 

「はっ」

 

「皆を集めよ」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十分後、大広間には兵士達が集まっていた。

 

「よいか、皆のもの!オーク軍は既にこの地下大洞窟まで迫って来ている!だが、恐れる事はない。7日後にはドライアドの要請を受けた強力な援軍が見込める。それまで我々は籠城し、戦力を温存するのだ!目的はあくまで防衛だ。間違っても攻撃に打って出ようとは思うな!戦死すればそのままエサになり、奴等の力が増すと思え!それがオークロードと戦うという事だ。そして援軍と合流した後、反撃に転じる!その時まで堪えるのだ!誰一人死ぬ事は許さん!!」

 

「「「おおぉーーーーー!!!」」」

 

こうして、リザードマン達は、オーク軍への抵抗を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4日後。

 

リザードマン達は今のところ、一人の犠牲者も出していなかった。

大洞窟という天然の迷路を利用して、オーク一体に対して必ず複数人であたり、防御に徹していたからだ。

 

「よし、回り込め!」

 

合図とともに一人の兵士がオークの後ろに回り込み、兜を弾き飛ばしながら頭を斬って倒す。

 

「はぁ・・・はぁ・・・これが本当にオークなのか?まるでオーガと戦っているような気分だ・・・・・」

 

「ゾッとするな・・・・・こんな奴らが40万もいるなんて・・・・・・」

 

「それがオークロードの能力なんだろう」

 

「うへぇ・・・・あと3日も守り通せるのか・・・・・?」

 

そんな会話を、たった今オークの一匹を倒した戦士達が話していると、後ろから声がかけられる。

 

「守ってばかりでは、疲弊するだけだ」

 

「!貴方は・・・・っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「親父殿!」

 

「おお!戻ったか!」

 

親衛隊長と状況の確認をしていた首領の元に現れたのは、ガビルであった。

 

「して、ゴブリンからの協力は上手く取り付けれたのか?」

 

「は!総数7000匹程ですが、待機させております」

 

「そうか」

 

「しかし、オーク相手に籠城とはどういうつもりなのです?とても誇り高きリザードマンの戦い方とは思えませんな」

 

ガビルの問い掛けに、首領は答えた。

 

「お前がいない間に、同盟の申し出があったのだ。その同盟軍が三日後に到着予定でな。その者達と合流するまでは、防衛に徹するのが最善だ」

 

だが、この答えが、リザードマンのその後の運命を変えてしまう言葉でもあった。

 

「・・・・・老いたな、親父」

 

「何?」

 

ガビルは首領を睨みつけながら言うと、スッと、片手を上げる。

すると、玉座の間の入り口から、ガビル配下の精鋭リザードマン達がぞろぞろと入ってきた。

 

「天然の迷路を利用し、大軍と戦うのは良い策かもしれん。だが、それでは数多ある通路に戦力を分散させすぎて、戦力の集中による迎撃が出来ぬ。このままではジリ貧だ」

 

ガビルがそう言うと、ガビル配下のリザードマン達が、首領や親衛隊長たちに槍を向ける。

 

「!?ガビル殿!!これはいったいどういう・・・っ」

 

「落ち着け、親衛隊長。危害を加えるつもりはない」

 

「しかし・・・!」

 

「手荒な手段になってしまった事は後で詫びる。窮屈な思いをさせるが、我輩が豚頭帝(オークロード)を討つまで辛抱してくれ」

 

ガビル配下のリザードマン達が、首領たちを玉座の間から連れ出していく。

 

「待て、息子よ!!勝手な真似は許さんぞ!!せめて同盟軍の到着まで待つのだ!!ええい、放せ!放さんか!」

 

「ガビル殿・・いえ、兄上!目を覚ましてください!!」

 

人はガビルに向けて叫ぶが、最早ガビルの心には届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配下達が、首領たちを連れ出すと、自分が特に信頼している三人の部下の1人が歩み寄る。

 

「ガビル様。これを・・・」

 

その手にあったには、リザードマンの首領としての象徴でもある三又の槍。魔法武器(マジックウェポン)水渦槍(ボルテクススピア)だった。

 

「!、父殿の・・・!」

 

ガビルが水渦槍を手に取ると、槍から凄まじい力が流れ込んで来るのを感じる。

 

「この力・・!水渦槍(ボルテクススピア)よ・・・・我輩を主と認めてくれるのか・・・!」

 

ガビルがそう呟くと、同時に部下達が集まる。

 

「ガビル様。各部族長の掌握が完了したぜ。若い連中には、この防衛線に疑問を抱いていた者も多かったからな」

 

「・・・・・そうか」

 

自身に跪く部下たちに、ガビルは視線を向ける。

 

「みんなアンタに付いていく。頼むぜ、ガビル様」

 

「・・・いいとも。我輩がリザードマンの真の戦い方を見せてやろうぞ」

 

ガビルはそう言い放つと、部下たちと共に玉座の間を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「蹂躙せよ!蹂躙せよ!蹂躙せよ!蹂躙せよ!」」」」

 

湿地帯を埋め尽くす、オークの大軍。リザードマンの住処である大洞窟へと殺到するその一角から、ザワめきが生じた。

ガビル率いるリザードマンの戦士たちが、オークの群れの横腹に襲撃を開始したのだ。

 

「豚どもを必要以上に恐れることはない!湿地帯は我らの領域!!素早い動きでオーク共を撹乱するのだ!ぬかるみに足を取られるノロマに後れは取らん!」

 

戦闘はリザードマンの奇襲から開始された。

 

湿地帯の王者。それがリザードマンだ。高い戦闘能力を有し、足場の悪い泥の中であっても、素早い高速移動を可能とする種族。

最初の奇襲で、洞窟で戦うよりもはるかに簡単にオークを数匹ほど一気に葬り去る事に成功した。

 

「俺達の攻撃が効いてるぞ!」

「やっぱりガビル様の言う通りだ!」

 

「よし!一旦離脱!!」

 

ガビルの声に、リザードマン達は一斉にその場を離れる。

 

ガビルは決して無能ではない。大局を見る目こそ持たないが、戦士団を率いるその手腕は称賛されるべきものがあり、その実力も、多くの仲間が認めるものだった。

 

「む?なんだ・・・・・?」

 

 

 

ただ一つ、誤算があるとすれば・・・・・

 

 

 

「オークが・・・・・オークの死体を喰っているのか・・・!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガビルは知らない。豚頭帝(オークロード)の恐怖を。

 

首領は知っていた。豚頭帝(オークロード)の恐怖を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その違いが今、結果となって牙を剝く。

 

 

 

 

 

 

 




どうも、邪神イリスです。

サンブレイクのPV3弾を見てやる気を出し、執筆を進めて投稿しておきながら、ジンやリムルの登場シーンが少ないという。次々話までには、絶対にジンの戦闘シーンを出すつもりなので、もう少々お待ちください。

しかし、オーバーロードといい、転スラといい、ラノベのリザードマンはかっこいい連中ばっかりですね(オバロの方はちょっとアレなシーンもありましたけど・・・・・・)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。