幕間1
スキル確認
大同盟締結から1週間が経った頃、俺とリムルは、新たに進化したスキルの効果の確認をしていた。
まず、リムルは豚頭魔王ゲルドを捕食した結果、『捕食者』と『飢餓者』が統合され、新たなユニークスキル『暴食者(グラトニー)』へと進化した。
元々『捕食者』が持っていた能力に『腐食*1、受容*2、供給*3』の三つの能力が加わり、『胃袋』の容量も大幅に増えたそうだ。
そして、いつの間にか俺の『狩猟者』にも能力が追加されていた。追加されたのは、『供給、物質再現』の2つだ。
まず、供給に関してだが、これの効果はゲルドとリムルが持っているのと同じ効果だ。
どうも、イビルジョーになって喰らいついていた時に魔素と『飢餓者』のスキルの一部を喰っていたようだ。
自分で言うのもなんだが、
次に、物質再現。これは、名前から想像出来るように、一度使用した物を再現出来るようになるというものだ。
この一度使用した物というのは、かつて俺が下位・上位ハンターだった頃に使っていたもので、G級ハンターになってから使った物は含まれていない。
試しに念じれば、閃光玉やシビレ罠、さらには回復薬なども作る事が出来た。
ただし、それらの素材を生み出すことは不可能だった。あくまで、狩りで使用したアイテム限定なのだろう。
これらのアイテムをこちらの世界の物で再現できないか、折を見てカイジン達と相談することにしたいと思う。
シビレ罠や閃光玉とかがあったら、魔獣狩りも楽になるだろうしな。
ガビルの来訪
同盟締結から1ヶ月が経過した。
俺とリムルの家も完成し、その日は2人でシオンとアワナミを連れて食堂へやって来たのだが・・・・・
そこには、思わぬ来訪者たちが来ていた。
「・・・・・・何をしているんだ?ガビル」
「おお!これはリムル様にジン様ではありませんか!」
そこには、ガビルが部下たちと共に食堂でホブゴブリン達に混ざって食事をとっていた。
「斬りますか?」
「姉さん!何故いきなりそうなるんですか!?」
真面目な顔でリムルに問いかけるシオンをアワナミが止める。
今の、許可さえもらえば本気で斬ってたな・・・・
「それで、何故ここにいるんだ?」
「実は・・・・・」
要約すると、どうもリザードマンの首領ことアビルに勘当され、他に行く当てもなかった為、ここに来たらしい。
「必ずお役に立って見せます!何卒!どうか我輩たちを配下に加えてくださいませ!」
うーん・・・・・まぁ、反省しているようだし、俺もリムルも別に構わないのだが・・・・
「なんで親衛隊長までここに?」
「あ、私は勘当された訳ではありませんよ」
リムルの問いかけに、親衛隊長は立ち上がって答える。
「リムル様から『アビル』の名を賜った父の統率は100年は揺るがないでしょう見聞を広めよと、私を送り出してくれたのです」
「えっ!?我輩を慕って付いて来たのでは・・っ」
「いえ、違います」
親衛隊長のその言葉に、ガビルはショックを受けているようだった。
「私、
「お前は昔から生意気なのである!」
「兄上こそ、少しは自重を覚えてください!」
「なにを!?」
そのまま言い争いを始める二人。仲が良いのか悪いのか・・・・まぁ、喧嘩するほど仲が良いというやつなのだろう。
ということで、仲間にする以上名前が必要だろうとなり、ガビルの部下100名と親衛隊長及び彼女の従者4人に名付けを行った。
名付けを終え、皆が嬉しそうにする中、ガビルが羨ましそうに俺たちを見ていた。
「羨ましそうにするなよ。お前には『ガビル』という立派な名前があるだ・・ろっ!?」
「ちょっ!リムル!?」
すると、リムルの魔素が一気に消費され、そのまま
どうやら、名付けは上書きが出来たらしい。すぐに調子に乗りそうだから厳しくする方針の筈だったのだが・・・まぁ、起こってしまったものは仕方がないだろう。
結果、ガビル達はランクの魔物である
強靭な肉体を頑丈な龍鱗に覆われ、物理攻撃と魔法攻撃に耐性を持つ『多重結界』が常に張られているそうだ。
ガビルとその部下達は、リザードマンの頃と比べて角や翼以外に見た目の変化はなかったが、親衛隊長こと『蒼華(ソーカ)』とその従者である『
この5人はソウエイに預けて彼の配下となった。
角や翼などは収納できるため、将来的には人間の国での諜報活動なんかを期待されている。
ガビル達には、ヴェルドラが封印されていた洞窟の地底湖周辺に住んでもらい、現在は回復薬の原料であるヒポクテ草の栽培を任せてある。
まぁ、雑草をヒポクテ草と間違えて見せに来て、リムルから体当たりを喰らったりと、進化しても何処か抜けているのは変わりないが。
なお、魔物のランクで言えば、ガビルの部下達はBランク。ソーカの配下達は+Bランク。ソーカは-Aランク。そしてガビルは、Aランクと、魔物の強さとしてはかなり上位の存在だ。
そういえば、ドラゴニュートと俺の種族である真竜人は似てるようで別の存在だとか以前聞いてたな。
転生してからしばらく経った頃に『相棒』に聞いたのだが。曰く、真竜人とは、俺の持つスキルの使用を可能にするために新たに生まれた種族だとか・・・・・。
つまり、この世に真竜人は俺一人という事になる。
・・・・・・なんか寂しいが、リムル達が居るからそこまで苦ではなかった。
稽古
「ふっ、はっ、ぬんっ!」
「そうだ。この前のオーク達は『飢餓者』で理性が薄れていたからよかっただろうが、そういったフェイントも混ぜていくようにな」
「はい!ジン様!!」
現在、拙者ヒヨは、ジン様に稽古をつけて頂いていた。
ジン様とリムル様より与えられた拙者の役職『一番槍』とは、戦が起こった際、戦場で先頭に立って部隊を率いりつつ、敵陣へ攻撃を行う役目であり、兄上やジン様の指示によっては、退却する部隊の殿を務める事もある重要な役職だ。
その任務を遂行する為にも、日々鍛錬を怠らず、己を高める事が肝要で御座る。
「はっ!」
先程教わったばかりの足運びを駆使しながら、正面のジン様に肉薄し、一閃!
しかし、それは虚しく空を切る。
(くっ、やはり速い!!)
既に何度か打ち合っているのだが、その度に軽くあしらわれているのだ。
「そこで御座るっ!」
拙者の放った突きを、身を屈めて避けた瞬間を狙って、渾身の一撃を放つ。
だがその瞬間、ジン様の姿が消えっ───
「あいたぁっ!!」
いつの間にか背後に移動していたジン様が、持っていた木刀で拙者の頭を叩いた。
痛む頭を押さえ、拙者はその場にしゃがみ込む。
「はっはっは。惜しかったな。もう少しだったぞ」
「むぅ・・・・・・悔しいでござる」
ジン様はそう言うが、これまで拙者は一太刀も当てれていなかった。
里に居た頃よりも強くなったという実感はあるが、我らが双主の一人であるジン様は強い。
拙者たちが苦戦したオークディザスターも、リムル様との連携であっという間に倒してしまったほどだ。
「そういえば、ジン様。一つお聞きしたいことがあるので御座るが、良いでしょうか?」
「ん?別に構わんが、なんだ?」
「いえ・・・ジン様の教えはとても分かりやすく丁寧なので、もしかして、以前にも、誰かに教えを授けられた事があるのかと思いまして」
そうなのだ。
拙者はジン様の動きを見ていて気付いたのだが、戦い方を教えるのに慣れているというか、そんな感じがしたので御座る。
それに、動きにも無駄がない。拙者たちと初めて会った際に交戦した時もから感じていた。まるで、ずっと前から修練を積んできたかのような・・・・・・
「あー、確かにな・・・・・」
すると、ジン様は空を見上げ、呟かれた。
「昔、2人ほど教え子がいてな。一人は、教えれた期間こそ短かったが、飲み込みが早くて優秀な弟子だったよ。もう一人は、そこそこ長く教えれてな。その子も中々の才能を持っていた」
「おお!それで、今そのお二人は何処に?」
「・・・・・・・・・」
「ジン様・・・?」
ジン様はどこか遠くを眺めるような目つきで、暫く沈黙された。
「今は・・・もう会えないかな・・・・・
死んだわけじゃないんだが、ここから会いに行けないほど遠い場所にいるんだ」
懐かしそうな表情を浮かべるジン様。
その瞳には、哀愁の色が見えるような気がする。
「ふむ。少し休憩するか。飲み物を取ってくるから待っていろ」
そう言って、ジン様はその場を離れられた。
拙者は、何か悪い事を聞いてしまったのではないかと心配していると、不意に声をかけられる。
「あら、ヒヨ」
「アワナミ・・・」
そこに立っていたのは、アワナミであった。
「そろそろお昼だからジン様を探しに来たんだけど、貴女一人?ジン様は?」
「ああ、飲み物を取りに行ってくださってるで御座る・・・・」
「・・・・何だか落ち込んでるようだけど、どうしたの?」
「いや・・・実はジン様に失礼な事を聞いてしまったのではないかと・・・・・」
ヒヨから聞いた話は、ジン様にかつての教え子について聞いてみたら、少し暗い顔をされてしまったというものであり、その事にショックを受けていたようだ。
彼女は良くも悪くも純粋だ。些細な事でも不安になってしまう事が時たま起こる。
(まぁ、私もヒヨと同じ立場ならそうなるかもね)
名を与えてくれた主を失望させてしまったのではないかと思えば、不安にもなるだろう。
私はそう思いながらも、ヒヨに慰めの言葉をかける。
「大丈夫よ。きっと気にしてないわ。
だって、その教え子の方達は死んだわけじゃなくて、今は会いにいけない場所にいるんでしょ?つまり、何かきっかけがあれば会えるのかもだし、そう悲観する事もないと思うけど」
「そうだろうか・・・」
「そうよ」
私達はゲルミュッドが手引きしたオークの襲撃によって、多くの仲間を失った。
だけど、まだ私達以外にも生き残りがいる可能性はある。
特にその可能性が高いのは、私、姉さん、ベニマル、シュナ様、ヒヨ、ソウエイの6人にとっての兄貴分のような人だ。
彼はオークによる侵略の少し前、出稼ぎの為に傭兵として数人の仲間と共に雇われていった。
何処に雇われたのかはわからないが、オーク襲撃の際には里に帰って来て居なかったことから、今も生きている可能性は高い。
それと同じだ。
死んだと決まった訳じゃないのだ。
会えないと思って絶望するよりも、少しでも希望を見出す。
この数ヶ月で、ジン様を見てきた私だが、あの方はそういうお方なのだと思う。
まあ、それはともかく。
「ほら、元気出しなさい。そんなんじゃ、稽古に集中出来ないでしょ?」
「うむ・・・そうだな。ありがとうで御座る。少し楽になった」
「どういたしまして。でも、私も貴方の立場なら、同じ気持ちになるかもしれないから」
「ふっ。確かに、それもそうであるな」
「でしょ?お互い頑張りましょう」
私が笑いかけると、彼女も笑顔を返してくれた。
ふと、遠くを見ると、こちらにジン様が歩いて来ているのが見えた。
「おーい、ヒヨ。休憩は終わりにして、続きを始めるぞ!」
「承知!すぐに行きますで御座るよ!!」
ヒヨが駆け出すと、ジン様は満足そうに微笑んでいた。
お互いに気晴らしになるだろうし、あともう一試合終えてから、昼食だという事を伝えよう。
こうして、今日もまた、私達の一日は過ぎて行くのだった。
明けましておめでとうございます。
どうも、邪神イリスです。
ということで、今年最初の投稿は幕間でございます。
かなり短めですが、急いで執筆したから許してくだされ・・・・・・
とりあえず、幕間をもう一つやったら次章に突入です。
相変わらずの不定期亀更新ですが、今年もどうぞよろしくお願いします。
他の作品たちも頑張って書いていく所存です。