転生してもハンターだった件   作:邪神イリス

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一時の別れ

 

 

(さて・・・行く前に一応聞いておくけど、その封印って解けないのか?)

 

「少なくとも、我の力では解けぬな。勇者と同格のユニークスキル持ちなら、可能性があるかもしれぬが・・・・」

 

 友達になった俺達であったが、俺とリムルは出発する前に、ヴェルドラの封印をどうするか考えることにした。正直、せっかく仲良くなった友達を1人だけそこに置いて行くなんてのは、かなり気が引ける。

 

(ヴェルドラはユニークスキルを持ってないのか?)

 

「持っているには持ってるのだが・・・封印された時点で全て使えなくなっている。かろうじて念話は使えるのだがな・・・・」

 

 名付けをしてもらった後に、俺とリムルのスキルの一つがかなり似たような物だというのがわかった。リムルのは『大賢者(エイチアルモノ)』という名前で俺の『相棒』と違うのは、スキルの効果の詠唱破棄の有無と、声が若干違うというところだ。

 

 で、俺達はそれぞれ、この2つのスキルの説明してもらった。

 

 それによると、本来、勇者のユニークスキル『無限牢獄』は、対象を永続の時間、無限の虚数空間と呼ばれる空間に封じ込めるスキルであり、現実世界への干渉を許す程甘い能力では無いんだそうだ。

 

 つまり、この場合、『念話』だけしか出来ないという考え方の方がおかしいのである。

 

 時間とともに封印が弱まる事自体が無いのだから、現実世界を認識した上、『念話』だけでも干渉可能なヴェルドラの方が異常なのだ。

 

 もっとも、無限牢獄の説明をしてもらっておきながら、この時、封印をどうにかしようということばかり考えていたヴェルドラを含む俺たちは、その異常に全く気付いていなかったのだが。

 

 (よし、試してみるか・・・・)

 

 リムルはそう言うと、ヴェルドラに触れた。

 

(・・・うーん。駄目だな。『捕食者』で捕食できるかと思ったんだが、一瞬で跳ね返されちまった。)

 

 そうか・・・・次は俺の番だが・・・これならどうだろうか?

 

 俺はヴェルドラに触れると、掌に意識を集中させ、赤黒いエネルギーを発生させるが、すぐにエネルギーは消えた。

 

《ユニークスキル『竜戦士』にて、ユニークスキル、『無限牢獄』に龍属性エネルギーを送り込みます・・・・・・失敗しました》

 

 駄目か・・・・・俺の生きていた世界に存在する一部のモンスターが使用する謎の属性エネルギー、『龍属性』。

 

 龍属性エネルギーの特徴に、あらゆる属性エネルギーを無効化するというものがあり、その応用で『無限牢獄』を無効化できると思ったのだが・・・・G級のならいけそうなんだがなぁ。今の俺では上位までしか使えない。

 

 やはり勇者による封印というのは格が違った。リムルの『捕食者』と俺の『竜戦士』ともに、僅かな綻びを作ったようだが・・・・すぐに再生されるだろう。

 

 どうにか出来ないかと悩んでいると、リムルがヴェルドラに質問をした。

 

(なぁ、勇者ってダメージ受けてた?というかまず傷付いたりしてたか?)

 

 うん?どういうことだ?

 

「よくぞ聞いてくれた!あの時、我の攻撃はほぼ躱されたのだが、何発かはは直撃させたのだ・・・・だが、全て効果を及ぼさなかった・・・。『死を呼ぶ嵐』、『黒き稲妻』、『破滅の嵐』さえも絶対回避不可能なのだが、効果無し。お手上げよ・・・・・笑ってしまったわ!!」

 

 などとほざきながら高笑いをするヴェルドラ。しかし、俺には話の要点が掴めなかった。

 

「つまり何が言いたいんだ?リムル。」

 

(ヴェルドラの話で確信がついたんだが、どうも『無限牢獄』は自身の身に纏うことで、外部からの攻撃を防ぐ盾にもなるみたいなんだ)

 

 何だそれ。いくら何でも万能すぎるんじゃないのか!?

 

 『無限牢獄』に、『絶対切断』。この二つが揃えばほぼ無敵だろうな。間違いなく最強クラスの存在だ。

 

 

 そんな奴が相手なら、いくらG級古龍種クラスの実力がありそうなヴェルドラでも、倒されて封印されてしまうわけだ。

 

 さて、そんな『無限牢獄』からの脱出方法だが、リムルによると、依代というのに転生させるという方法があるとのことだが、成功率はたったの3%で、しかも依代との相性が悪い場合は、記憶と能力の全てが消えてしまうらしい。

 さて、本当にどうしたものか・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、依代への転生を相談してみるも、現状では不可能だとわかり、再び方法をジンと考えていたリムルは、ふと、閃いた。

 

 いっその事『捕食者』で、ヴェルドラごと喰ってしまうか?

 捕食者の胃袋の中で解析、もしくは隔離して『無限牢獄』の効果だけ消してから解放とか出来ないかな?

 

《解。対象:ヴェルドラをユニークスキル『捕食者』の胃袋に収容することは可能です。更に、『魂の回廊』を通じ、ジン=テンペストのユニークスキル『相棒』と同時解析を行うことで、解析の効率などを上げることが可能です》

 

 可能なのか・・・・他に方法はもう無さそうだし、説明して納得してくれるのなら、やるか。

 

 このままだと、後百年ほど、孤独の中、魔素を流出しつくして消滅する運命なんて、あまりにも救いが無いからな・・・

 

 俺は、ヴェルドラとジンに『捕食者』の能力と、俺がやろうとしていることを説明した。もっとも、『大賢者』の補正なしには、成功は有り得ないのだろうが・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クアハハハハ!面白い、ぜひやってくれ。お前に我の全てを委ねる!」

 

「俺も賛成だな。正直、今リムルが言った方法以外は、今の俺では思いつかない。それに、俺のスキルが役に立つって言うなら、喜んで協力させてもらうぜ」

 

(・・・・言い出しっぺの俺が言うのもなんだが、そんなに簡単に信じていいのか?特にヴェルドラ)

 

「無論だ!ここでお前達が帰ってくるのを待つよりも、お前達と協力して『無限牢獄』を破る方が面白そうだ!なぁに、我とお前達の三人でかかれば、簡単に『無限牢獄』も破れるかもしれん!」

 

 一人じゃなく、三人か。いいな。リムルの『大賢者』と『捕食者』、そして俺の『相棒』で解析を行い、内部からはヴェルドラが破壊を試みる。

 

 スキルの効果の胃袋の中でやるから、解析をしている間に、意思が拡散して消滅する心配もない・・・・・いける。なんだかいける気がしてきたぞ!

 

(じゃあ、今からお前を喰うけど、さっさと『無限牢獄』から脱出してこいよ?)

 

「友達といつまでたっても会えないっていうのは、寂しいからな」

 

「クククッ。任せておけ!そんなに待たせずに、再びお前達と相まみえよう!!」

 

 そして、リムルはヴェルドラに触れ、捕食を行う。一瞬にして、ヴェルドラの巨体が目の前から消え失せた。

 実にあっけないものだ。今まで喋っていたというのに、いなくなって寂しさを感じた。

 

 しっかし、まぁ、あの巨体を飲み込めるとは、リムルすげぇな。

 

《ユニークスキル『無限牢獄』の『大賢者』との合同解析を行いますか? YES/NO 》

 

 当然、YESだ。頼むぜ、相棒!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、世界に激震が走った。

 天災級モンスターである『暴風竜』ヴェルドラの消滅が確認されたのだ。

 

 ヴェルドラ。特S階級(ランク)モンスター。

 

 魔物には、ランクというものがあり、冒険者と同じようにA〜Fの主に6段階評価で表される。

 

 やや強い『+』と、やや弱いもしくは、準級という意味の『-』評価が付く場合もある。

 

 これは『異世界人』と噂される自由組合の頂点『自由組合総帥(グランドマスター)』の称号を持つ神楽坂優樹(ユウキ・カグラザカ)という男が新たに策定したクラス分けであった。

 

 今までの駆け出し→初心者→中級者→上級者の四段階評価よりもわかりやすく、ウケがいい。

 

 特Sランクとは、A評価を上回る魔王指定クラスであるSランク、その更に上の『天災』もしくは『災厄』級の魔物である。

 

 A〜Fの六段階評価の枠組みから外れる、規格外の存在。

 

 本来、Aランクの魔物でさえ、国家存続の危機に陥る場合すらある恐るべき脅威なのだ。

 

 その、絶望的なまでの危険度が窺えるだろう。

 

 三百年前に封印されていたとはいえ、そこは天災級モンスター。しかも、竜種は不滅の存在でもある。

 

 どこか別の地方で新たな脅威として再誕していてもおかしくない。

 

 しかし、消滅の報告から二十日ほど経過した頃、西方聖教会が、暴風竜ヴェルドラの完全消滅を宣言したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジュラの大森林の周辺には、数多(あまた)の小国が存在する。

 ヴェルドラが消滅したという報告がもたらされると、各国は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。

 それぞれの国の王や大臣達は、連日、緊急の会議を行い、今後の対策と情報収集を行なっていく。

 

 小国『ブルムンド王国』の大臣であるベルヤード男爵もそんな者達の1人であった。そして、ベルヤード男爵に呼ばれた男もまた、未曾有の混乱の中に生きる者の1人。

 

 名をフューズ。背は低いが、油断ならない目つきをしている男である。

 その役職こそ、小国であるブルムンド王国の自由組合支部長(ギルドマスター)であり、この国で特に重要な役割を担う人物なのだ。

 

「君を呼んだのは外でもない。暴風竜ヴェルドラの件についてだ。聞いているだろう?」

 

 聞いていた当然と言わんがばかりの態度でベルヤード男爵は部屋に入り、椅子に座ったフューズに問いかけてきた。

 

「勿論ですよ、男爵」

 

 フューズは低いしわがれた声で、言葉少なに肯定した。

 

「ふん。流石はギルドマスター、と言っておこうか」

 

 ベルヤード男爵は、鼻を鳴らして吐き捨てるように言葉を続ける。

 

「ではギルドとしての対策を聞かせてくれんか?」

 

「別に何も」

 

「・・・・・何?」

 

「これといって特に何かを行う予定はありません」

 

「・・・・よく聞こえなかったが・・・対策を行うつもりがないだと?」

 

「はい。必要を感じませんもので」

 

 ベルヤード男爵が何を怒っているのかわからないとでも言いたげに、フューズは淡々と答える。

 

 ベルヤード男爵はその態度を不快に思いながらも、それを表に出さないように言葉を続ける。

 もっとも、その努力は全く成功しているとは言い難がったが・・・・・

 

「必要ないとは、異な事を言うものだな。暴風竜ヴェルドラが消滅したという事は、魔物の活性化が予想されるのだぞ!それなのに、対策を立てないというのか!?」

 

「これはおかしな事を仰りますな。対策を立てるのは国の仕事でしょう?我々は自由組合であり、ボランティアではありませんよ?」

 

 事実である。

 

 自由組合とは、国家の枠に縛られぬ組合の事である。

 国ごとに所属する国家所属の職人に比べて、生活の保証はされていない。しかし、国民に準ずる最低限の身分の保証はされている。故に、一定の割合で税の義務だけは課せられているのだ。

 

 こうした仕組みはこの国だけの話ではなく、この周囲の国家のほぼ全てで共通である。逆に考えるならば、自由組合とは国家の枠組みを超えた組織であり、一国家を上回る組織力を持つという事になるのだが・・・・

 

 偶然か意図的なのか不明だが、国家の下に潜り込むように活動を行っているのが実情なのだ。

 

「国民の財産を守るのは国家として最低限の義務でしょう?同様に、組合としても、組合員は守りますとも。お互いに大変ですな」

 

 フューズの白々しい言い草を聞いて、ベルヤード男爵の額に青筋が浮かんだ。明らかに足元を見られている事を悟ったのだ。

 

「御託はいい!自由組合から、傭兵を何人出せる?戦闘に長けた冒険者は?この年の防衛に何人回せるのだ!?」

 

 フューズはやれやれと溜息をつき、

 

「勘違いをして欲しくないので、もう一度言いますが、我々はボランティア団体ではありません。国家と自由組合の協定に基づく動員ならば、組合員の一割に当たる人数を動員しますが、それ以上を要求されるなら、対価次第となりますな」

 

 

 ブルムンド王国の人口は約百万人。そこに所属する組合員は七千人程度。家族は含まれていない。

 

 国家と自由組合の協定に基づく動員が発令された場合、自由組合所属の一割の人数(この場合、七百人程度)が国家の指揮下に入ることになる。

 これは当然だが、国家ごとの組合所属の人数であり、他国の組合員には適用されない。その為、自由組合とはいえ、所属国は明確にされているのだ。

 また、この協定が発令されている期間は、国家が定める事が出来るのだが、その期間中は納めるべき税を二割減とするように取り決められている。

 強制力を持つが、税収を考えるならば乱用は出来ない仕組みなのだ。もっとも、徴収される組合員の給料を立て替える必要のある組合としては、当然の取り決めなのであるが。

 仮に全員を徴収と言われたとしても対応は不可能なのだ。

 

 組合員の半数は、非戦闘員なのだから。

 

 

 王国としてもその事はよく弁えている。その為、本来であれば無理強いはしないのだが・・・・・今回はそういう場合ではなかった。

 魔物が活性化する。確かにそれは大きな理由である。

 

 だが、本当の理由があった。それは・・・・・・

 

 

 

 

「・・・・・下がれ」

 

 ベルヤード男爵が、傍で待機していたメイドを退室させる。メイドが部屋から出たのを確認すると・・・・

 

「やめだ。おいフューズ。本音を言わせる気か?」

 

 フューズはベルヤード男爵が自分の名前を呼んだ事に軽く驚く。そして、初めてベルヤード出たの顔をまともに見据えた。

 

「やつれたな、ベルヤード。白髪増えたんじゃねえか?」

 

「ちゃかすな・・・・情報がいるんだ。事は魔物の活性化だけでは済まない可能性もある」

 

「・・・・東の帝国か?」

 

「そうだ。ヴェルドラに対する遠慮か、あるいは封印が解けるのを恐れたかは知らんが、今まで大人しかった帝国に動きがある。抑止力が消えた今、東の帝国の侵攻を遮るものは何もない。あの森を抜けられたらこの王国などあっという間に飲み込まれてしまう。まして、西方聖教会はあてにならん。纏ってもいないジュラの大森林周辺の国家など、瞬く間に帝国の支配下に置かれてしまうだろう」

 

「教会は動かないか・・・・・だろうな。ヤツ等は、人同士の争いに興味がない。魔物の殲滅が教義だからな」

 

「そうだとも。せめて聖騎士が1人でも動いてくれれば、帝国も迂闊に動けぬものを・・・・魔物への備えが無くなるだけでも時間が稼げるのだが・・・」

 

「無理だろうな・・・教会にすれば、国が崩壊したとしても、自分の懐が痛む訳ではない」

 

 フューズは、ベルヤード男爵の顔を見やって思う。くたびれた顔になったなこいつ・・・・、と。

 

 無理もないのだろうが、ベルヤード男爵はここ数日で一気に老け込んだように見えた。

 

 

 2人は、実は幼馴染であった。

 男爵とはいえ、貴族と懇意にしている事が公になるのは色々と都合が悪い。

 お互いがお互いを利用していると思わせる関係を築く必要があった為、普段は仲が悪そうに演じているのだ。

 

 こんな小国だけで、この難局を乗り切る事はまず、不可能だ。

 しかし、取り越し苦労という事もありえる。

 確かに帝国に動きはあるが、まだ攻めて来ると決まった訳ではない。

 魔物だけならぱ、まだ対策の立てようはあるのだ。

 

「だが、まだ帝国が動くと決まった訳じゃないんだろ?・・・・わかったよ。幼馴染のよしみだ。調査だけは俺が個人的にやってやる。期待されても困るが、ジュラの大森林の様子と帝国の動向は探ってみる」

 

「すまん・・・助かる」

 

「いいさ。ヴェルドラの消滅は俺も気になっていた。理由もなく消えるはずがない。封印の洞窟で何かあったんだろうよ」

 

 そう、まだ帝国が動くと決まった訳ではない。

 

 仮に動くのならば、大規模な軍事行動となる。

 

 小競り合いを仕掛けに動くほど、帝国は甘くない。百万を超える軍勢を持って、周辺国家を悉く蹂躙するだろう。

 だとすれば、少なくとも三年は、準備に時間がかかるはずである。

 それでも時間が多いとは言えないが。こちらにも準備をする余裕が生まれる。

 

「ともかくは情報を掴む事だな。時間もないし、俺はもういくぞ」

 

「頼んだ・・・・・」

 

 2人は頷き合い、そして別れる。

 

 すべき事は山程あるのだ。

 

 

 

 

 

 

 




 どうも、邪神イリスです。

 思っていた以上の好評でとても嬉しいです。ありがとうございます。

 この作品だけは絶対に完結させてみせます(願望)

 さて、今回の話のフューズとベルヤードの話し合いがありましたが、当初はカットしようと思ってました。
 
 しかし、こういった幕間にもこの世界の情報は出ているので、転スラ初心者の方々のことも考え、書籍版と漫画版を混ぜて出す事にしました。

 来週からテストなので、テストが終わったら、また書いて投稿したいと思っています。

 それではまた、お会いしましょうノシ
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