五等分の障害   作:森盛銛

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1話 再開

「ふぅ・・・」

 

目が覚めた大学二年生の上杉風太郎。

大学に通うため、家を離れ二年以上がたった。大学の前期の講義は全科目オールSの評価を得て、夏休みに突入した。今日は約束がある。

 

「風太郎起きてる?」

 

ドンドンと朝から喧しく叩く聞き慣れた少女の声。眠い体に鞭打ってドアを開ける。

 

「おっはようございまーす!」

 

高校から付き合っている彼女、中野四葉だ。高校生の時、彼女含めた五つ子姉妹の家庭教師として雇われ際には、まさか、あんな波瀾万丈な高校生活になるとは思ってもみなかったが、今となっては懐かしく思う。思い返してみてもそれほど濃い高校生活だった。

 

「行くか」

 

「はい!」

 

今日はアパートまで迎えに来てもらい、そのままデートというプランになっている。体育大学に通う四葉も昨日前期の試験を終えて、お互いに時間が取れるようになった。今日は四葉に東京を案内することになっているので、電車で首都の方へ向かった。

 

「そういや、他のみんなは元気か?」

 

「うん!みんな元気!あ、噂をすれば!」

 

四葉がそう言って指差した先には、化粧品広告の看板。

そこに五つ子の長女、中野一花の姿があった。

 

「忙しそうだな、一花は」

 

長女の一花は高校生から女優として活動しており、ドラマ出演をきっかけに一躍有名人になった。最近はゴールデンタイムのドラマにも出演し、今のように広告のモデル。CMも抜擢されている。

 

「二乃はケーキ屋さんで働いてて、この前店内コンペで商品化が決定したんだって!」

 

次女である二乃。物事をはっきり言う性格で姉妹を誰よりも大切にする。最初は険悪であったが、今はよき友人だ。

 

「三玖は調理の専門学校で色んな国の料理を勉強してる。この前チュロス作ってもらった」

 

三女の三玖。彼女は姉妹の中で一番心を開いてくれた存在。彼女がいなければ他の姉妹とも仲良くできなかったかもしれない。

 

「五月は勉強苦労してるみたい。アハハ・・・でも、先生になるために頑張ってるよ」

 

末っ子の五月。バカ不器用ながら一生懸命だ。そして少し俺と似ている。よくぶつかり合ってもいるが、互いに信用し合っての喧嘩をよくしていた。

 

「ま、元気そうで何よりだ。それで今日は・・・」

 

「はー・・・」

 

姉妹たちの近況報告を聞きながら歩いていると四葉はお店の展示物に目がいっていた。

 

「ウェディングドレスか・・・」

 

「え、ああ、ごめん。つい見惚れちゃって」

 

「いや、まぁ・・・」

 

そう言い、ポリポリと頬を掻く風太郎は看板の一文、

「予約のお客様に限りウェディングドレスの試着無料体験」とのこと。

 

「予約・・・するか」

 

「・・・うん」

 

そううなずくと二人で店内に入り、受付で待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいカット!一花ちゃん完璧!」

 

「ありがとうございます」

 

ドラマの撮影しているのは、今を時めく女優中野一花。とあるドラマの主演を演じてから一気に注目が集まり、今はいろんなところに引っ張りだことなっている。

 

「それにしても妹の恋を応援するお姉さんの役・・・なんか同情しちゃうな」

 

台本を読み進めて行くと実は自分もいつの間にか好きになっていたが、妹のために我慢した。そして、ある日を境に気持ちが抑えられず爆発して・・・と言った流れとなっている。それを自分と重ねてしまっているので芝居感はつかめやすいのだが、少々複雑である。

 

「フータロー君と四葉。上手くやってるかな・・・あれ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

REVIVAL厨房では二乃がデコレーションを行いちょうどケーキが完成した。

 

「はい、五種のフルーツロールケーキ、追加できました」

 

「すごいですね!中野さんのケーキ大繁盛ですよ!」

 

「ふっふー、まぁね!」

 

後輩に褒められながらまた自分の作業に戻っていく。この前のコンペで商品化が決まったリンゴ、オレンジ メロン、ブルーベリー、バナナをペーストにクリームと合わせたミックスジュース風クリームをふんだんに使用したロールケーキ。特に子供や女性客が人気らしく、今日も良く売れている。

 

「あと、気になってるんですけど、あのロールケーキの上にいる砂糖菓子のお人形は誰がモチーフなんですか?」

 

「・・・人生で最も好きになった人」

 

 

 

 

 

 

 

調理専門学校の実技試験。お題はスペイン調理一品。代表的なものはパエリアなどが存在するが、三玖が選んだのはチュロス。これも立派なスペインのデザートだ。

 

「黒糖をかけて・・・よし」

 

そう言って美しく盛り付けられたチュロスを講師の元にもっていき、味を見てもらう。評価の採点はAからEの五段階評価。

 

「中野三玖・・・評価A」

 

「ありがとうございます」

 

そう言って自分の調理台に戻り後片付けを始めると周りの生徒から称賛の声がちらほら聞こえる。

 

「流石中野さんだ」

 

「ああいう料理上手な子はいいよねー」

 

「俺彼女にしたい!」

 

「(四葉にいっぱい味見してもらった・・・動くこと雷霆の如し)」

 

「フータロー・・・元気かな・・・えっ」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ムムム」

 

「五月ちゃんどう?」

 

「よかったです!落とした単位もありませんし!」

 

「でも五月ちゃん。全部ぎりぎりだね」

 

大学内の喫茶店。大学の友人と共に先ほど前期のテスト結果を受けとり、結果は単位を落とさずに済んだようだ。バカ不器用である五月は必死に勉強したが一問に時間をかけすぎたせいで最後まで解けず、点を逃してしまっている。治ってきたかと思えば相変わらずだった。

 

「(これは上杉さんには見せたくないですね・・・)」

 

たまに勉強を見てもらっているが、この点数で彼はなんというのだろう。不器用や容量が悪いと言われるのだろうか?そう言う姿が目に浮かんできました。

 

「五月ちゃん顔怖い・・・」

 

「え、ああすみません。ちょっと、思い出していただけで・・・うぅ」

 

 

 

 

 

 

 

それぞれが夢中になれるものがある。夢に向かって頑張っている。そんな彼女たちに・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「結構先になったな」

 

「うーんみんな着たいんだよ!」

 

予約状況を確認したところ一か月後。つまり、夏休みの終盤となってしまった。

 

「やっぱ着たいものなのか?」

 

「女の子のあこがれですよ!全く・・・風太郎はそう言う乙女心がわからな・・・へっ」

 

「四葉!!」

 

隣で歩いていたはずの四葉が急に膝から崩れ落ちた。それを見た風太郎は人目を気にせず叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救急車を呼んだあと、検査に入りすぐに入院ということが決まった。検査の結果・・・

 

 

「筋肉麻痺・・・」

 

四葉は筋肉麻痺・・・たしか場合によっては身体が自由に動かなくなるって言う重症じゃ・・・

 

「四葉!!」

 

「病院内です。お静かにして下さい」

 

「お父さん・・・」

 

彼女たちの父親のマルオが見診断した結果だった。冷静さを保っているようだが、マルオの拳に力が入る。

 

「君にお父さんと・・・まぁ、いい。今日は帰りなさい。四葉は私が診る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰るが、アパートでは四葉のことが心配でたまらなかった。この先どうなっていくのだろう。せっかくこういった恋愛関係にもなれたのに・・・そう思っていた時ケータイから着信があった。これは・・・二乃?

 

「二乃?」

 

「上杉君すまない。二乃君ではなく私だ」

 

「お父さん・・・あの、四葉は!」

 

「君にお願いがあるんだ。あの子たちが住んでいるタワーマンションがあるだろう?三日後そこに来てくれ・・・それまでは娘たちとは関わらないでほしい」

 

そう言い終わると、勝手に通話を切られ、モヤモヤした状態のまま。眠りにつこうとするが、四葉のことがありあまり寝れなかった。約束の日まで惰性の日々だった。特にやることもなく四葉のことを考えながら、一日を過ごす。それだけだった。そして約束当日。

 

 

 

 

 

 

あの五つ子と出会ったタワーマンション。下の呼び出しを押し、開場をを求める。

 

「上杉です」

 

「入りたまえ」

 

中に入ると多少殺風景になっているのものの彼女たちと過ごした日々が思い出される。だが、気になることが多々あった。全体的にバリアフリーが目立つ。玄関にも段差はなかった。エスカレーターなどもついている。まるで介護施設の用でもあった

 

「来てもらったのは他でもない。あの子たちは君の助けを求めている」

 

「あの子・・・たち?」

 

四葉も筋肉麻痺が診断されたところだ。まさか他の四人も・・・

 

「フー君。久しぶりね」

 

そんな不安の中、二階から懐かしい声がした。この強気満載の声は忘れるはずもない。

 

「二乃!」

 

そう言ってエスカレーターから降りてきて、風太郎の前に立り、そうして顔を覗きこむ。すると急に、

風太郎のにおいをスンスンをかぎだした。

 

「・・・汗臭くはないようね」

 

「なんだ急に?」

 

「別に・・・フー君のにおいが実は好きだったのよ。パパありがと。みんな喜ぶと思う」

 

「だといいんだが・・・上杉君・・・申し訳ないが、よろしく頼む」

 

そう言って玄関のほうへ向かったので見送ろうとすると、急に耳打ちをしてくる。

 

「・・・君に託す」

 

そんな悲しそうな、また、強い信頼のように言葉を残し彼は部屋を出て行った。

 

 

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