五等分の障害   作:森盛銛

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12話 五月の本音

先ほどから、デートしていたのは四葉・・・ではなく、それに変装した五月であった。映画館の個室カップルシートで五月は焦りと、不安の表情を浮かべる。そして、車いすから立ち上がる。

 

「いつから・・・ですか?」

 

「最初から・・・四葉ほどじゃないが、変装得意じゃないな、お前」

 

かといって五月も下手というわけではない。実際、ケーキ屋の店長は四葉だと思い込んでいた。

 

「・・・五つ子の見分けはもう完璧ですね」

 

「ま、お前らと過ごした時間はそれなりにあるからな・・・こう話すのも、久しぶりだな、五月」

 

昨日は全くと言っていいほど、話を聞いてくれなかったし、一方的に会話を終わらせていたが、今日はしっかりと目を見て話してくれている。

 

「・・・すみません。だますようなことをしてしまって」

 

「大方、四葉の発案だろ?・・・いいや、お前とこうして落ち着いて話せる機会が出来たんだ」

 

「でも、彼女の四葉ではなく私とこんなところ・・・」

 

彼が最初から気づいていたということは今までの行動を振り返っても、わかった。わざわざ、ケーキバイキングにしたのも、図書館での宣言も今の映画も犬の話なのも、彼は私だと最初から知っていての今回のプランだった。

 

「・・・そんなに、四葉以外の姉妹と俺が交流を持つのが不満か?」

 

一番の原因はそこだ、五月は四葉以外の姉妹とは関わらず、四葉だけにかまうべきだという。その理由が知りたかった。

 

「その、ですね・・・あなたは四葉以外には優しくしない・・・いえ、構わないほうが・・・だって、期待・・・しちゃうじゃないですか?」

 

「え?」

 

「あなたと付き合えるって・・・思っちゃうじゃないですかぁ!一花も二乃も三玖も私も!それなのに・・・諦めてられなくて・・・こんな不安の中、あなたがいてくれるだけで、期待しちゃうじゃないですか!」

 

「お、おい、五月落ち着け?というかお前も好きだったのか・・・俺のこと」

 

「は、え・・・あ」

 

今まで五月には直接好意を伝えられたことはなかったので、風太郎自身も驚いている。そして、自分の発言を思い返し言った自覚のある五月は泣き顔になりながらも、真っ赤に顔を染め上げた。

 

「・・・もう、いいです」

 

そう言って、今度はカップルシートにうつ伏せになり、顔を見せないようにした。

 

「・・・五月」

 

「私が、自覚したのは四葉が上杉君とのお付き合いを正式に認めてもらおうと奮起してた時です」

 

うつ伏せになりながらも話しかけ始める。

 

「でも、もう遅い。それに、私の中では二人の交際は応援していました・・・でも・・・」

 

そう言うとうつ伏せをやめてこちらを向く。そして、風太郎の目をはっきり見ている。

 

「ここで、頼ってしまったり、優しくされたら、まだ私はあなたを追いかける・・・一花も二乃も三玖も・・・もう・・・これ以上好きになっちゃいけないのに・・・」

 

そう言って五月は胸の内を語り始めた。真面目過ぎる彼女故にこの考えなのだろう。確かに、彼女がいるのに別の女性が恋愛的な好意を抱くのは良いものとは言えないだろう。

 

「別に、俺は・・・」

 

「現に二乃に・・・キスされてましたよね」

 

「・・・見てたのか」

 

少しまずい表情をした風太郎。前日の彼女の嗅覚障害を見切った時の話だ。言い訳になるが、台所で彼女から急に迫ってきていきなりのものだったのでそのまま受け止めてしまった。

 

「ちょうど目に入ってしまいました・・・二乃が無理矢理迫ったのも知っていますので・・・」

 

「よく見えたな・・・らいはから聞いた、五十円玉の穴からのぞくような視界・・・」

 

「お義父さんからはそう伝えられました・・・でも・・・」

 

「五月?」

 

「怖いんです・・・もし目をつぶって開けたつもりなのに、あなたやみんなの顔が、周りの景色が、私の将来が、全部真っ暗になって・・・徐々に視界が狭まっているんじゃないかって・・・」

 

確かにそうだろう、日に日に彼女は視界の変化に恐怖を抱いている。急に弱視を診断され、もしかしたら明日には何も見えなくなってしまっているという恐怖は本人しかわからないだろう。

 

「五月・・・」

 

そう言っている彼女を慰めようと手を伸ばすが、パチンと拒否される。

 

「だから!!・・・優しくしないでっていったじゃないですか・・・余計な気遣いは傷つけるだけです・・・」

 

そう言うが、慰めて欲しそうに辛い表情を浮かべている。今すぐにも彼女を何とかしたいが逆にそれは彼女から拒否されてしまう。しかし、風太郎には逆効果でもあった。そっちがその気なら、こっちはこう返す。

 

「だったら!」

 

そう言って五月の頭に先ほど落ちたオレンジのウィッグ。つまりは四葉の髪形を頭に乗っける。その行動に五月自身もポカンとしていたが、風太郎は続ける。

 

「今日の俺は四葉とリフレッシュデートのつもりで来たのに、お前が来た。つまりは、お前も二人の時間の邪魔をしたということになる!」

 

そう言って強引にカップルシートに座らせ風太郎もその横を陣取る。

 

「罰として、今日はお前が四葉の代わりだ!」

 

「は、ちょっと!?何を言って・・・」

 

「デート邪魔されたから、優しくしてやるつもりもない!」

 

そう言い放つとちょうど、映画が始まった。そして暗くなったので、五月は音声案内の端末を見失ってしまった。しかし、風太郎が彼女の耳にイヤホンを付け、端末の電源をonにする。

 

「あの、上杉君!まだ話は・・・」

 

「四葉。観賞中だから静かにしろ」

 

そう言って、彼女の話を無視して、彼女を四葉と呼び、映画を見るように言う。しかし彼女は止まらない。

 

「あの!」

 

「なぁ、四葉。五月は大切な存在だ。正直、あいつとの出会いは最悪だった。ま、今思えば俺が最初の印象を悪くしたんだけど、最終的にはあいつは協力してくれた。らいはもスゲーあいつのこと好きみたいだし」

 

今、風太郎は横にいるのは四葉のつもりで話している。なので、五月に対してのことを何か隠しながら言う必要はない。

 

「・・・・・・」

 

「それに好きって言ってもらえたのは・・・嬉しかった」

 

「!!」

 

「でも、俺には四葉がいる」

 

「あっ・・・」

 

「まぁ、それであいつらとの繋がりは消えないけどな、四葉と結婚して、親戚になったら、嫌でも顔を合わす機会がある。五月は義妹になるのか?・・・想像できないな」

 

「・・・義妹・・・じゃなくてお嫁さんに選んでほしかったって思う・・・かも・・・」

 

「・・・そっか、じゃあ、ちゃんと謝らないといけないな」

 

彼女の言葉に風太郎は少しドキッとしてしまったが、冷静を保つ。

 

「・・・本当に・・・優しくない・・・」

 

「何か言ったか?」

 

「何でも・・・ないよ。あのね、上杉く・・・風太郎」

 

「なんだ?」

 

「映画終わったら、後で五月が話あるって・・・言ってた・・・ちゃんと聞いてあげてほしい」

 

「・・・わかった」

 

そう四葉が言い終わると、二人は映画が終わるまで言葉を発さなかった。

 

 

 

 

 

 

そして映画が終わり、ぞろぞろと一般客が出て行き、個室のカップルシートの二人も、出て行く準備を終えたが、部屋を出ようとはしない。

 

「少し、待っていてください」

 

そう言って彼女は部屋をでてすぐに戻ってくる。その姿は四葉ではなく、五月だ。

 

「・・・五月」

 

「四葉から、聞いてると思います・・・お話があります」

 

「ああ、なんだ?五月」

 

しっかりとお互いに見つめ合い、緊張の独特の空間が生まれる。そして、五月が覚悟を決めた。

 

「私・・・上杉君が好きです!」

 

「・・・ああ」

 

「本当に・・・好きです・・・」

 

「・・・ああ」

 

「あなたの彼女の四葉よりも・・・あなたを想っています・・・」

 

「ごめん。五月」

 

「わかってます。わかってますからぁ・・・」

 

徐々に涙を流していたが、止められなくなり、そしてそれを見られたくないために、風太郎の抱き着くように胸を借りる。

 

「・・・上杉君・・・本当に・・・優しくない・・・」

 

「・・・悪かったな。嘘つけなくて」

 

「ううん・・・ありがとう・・・ございます」

 

彼はもう四葉にしか気持ちがないのだろう。私の告白なんて茶番劇だ。でも、伝えたかった。あんな、成り行きで知ってしまったのではなく、私の口から、私の言葉で、本当の彼への気持ちを・・・

 

 

 

そして、時刻は夕暮れ。二人はその後映画館を出てから、若干気まずくはなってしまったものの、五月を送りに行くため二人でタワーマンションへ戻ってきた。そして、インターホンを鳴らし、部屋の扉が開く。

 

「あ!えっと・・・ふ、ふうたろ、じゃなかった。うえーすぎくん。お、遅い!」

 

「・・・何やってんだ四葉?」

 

出迎えてくれたのは、五月。の格好をした四葉だ。変装ひどくなりすぎじゃないかと思っていたが、そうでなくても風太郎の横に本人がいる。

 

「あ、五月!・・・ばれちゃったんだ」

 

「ええ。私の負けです」

 

そういって五月は壁を伝い、リビングに帰ってくる。しかし、そこには少し嫌悪感をあらわにした、二乃と三玖の姿があった。

 

「・・・おかえり」

 

「・・・ただいま」

 

短く言葉を交わし、ソファに座る。

 

「負けってなんだ?」

 

玄関の四葉をリビングに連れて行く途中で聞いてみると、姉妹間で色々やっていたらしい。

 

「えっと・・・今日のデートばれなかったら、五月のいうこと聞いて、五月がばれたら承認票書いてもらうってことに・・・」

 

とにかく、風太郎をだしになにか裏で執り行われていたようだ。まぁ、実際、この機会がなければ五月と話せることすらなかったが・・・

 

「義兄さん。承認票があるんですよね?」

 

「ああ、五月。書いてくれるのか?」

 

そう言って、準備していた、承認票を取り出し、五月の欄にサインをもらう、これで残りは一花だけだ。

 

「・・・良いのか?」

 

もらった後なので今更だが、決して本人の了承ではなく、勝負に負けたからという理由だ。

 

「私の考えを覆すつもりはありません。ですが、義兄さんはちゃんと、弁えている様なので、他の姉妹にも・・・今じゃなくていいので、ちゃんとハッキリさせておいてください」

 

そう言って承認票を渡してきて、部屋に戻ろうとする。しかし、二乃と三玖には気になることがあった。

 

「ねぇ、五月・・・ちょっと聞きたいんだけど・・・」

 

「何ですか?」

 

「さっきから、フー君を義兄さんって呼んでるのは・・・何?」

 

「フータロー。これはどういうことか説明して」

 

二乃は五月に、三玖は風太郎に問い詰める。風太郎のほうは急に呼ばれたので身に覚えがないし、指示をした覚えもない。

 

「もし、四葉と結婚したら、私は義妹になるので、今のうちに、呼んでおいてもおかしくはないでしょ?二乃も義姉さん・・・お義姉ちゃんと呼んでもらったらどうです?」

 

「フー君が・・・おねぇちゃん!?」

 

 

※二乃妄想

 

「二乃お義姉ちゃんのケーキうまい!」

 

「お義姉ちゃんの料理は最高だな!」

 

「好きだよ・・・二乃お義姉さん・・・」

 

 

 

 

「・・・わ、悪くないわね」

 

少し顔をニヤつかせながら、考える。そして、それを聞いていた三玖も同じようなことを考えている。

 

 

※三玖妄想

 

 

「三玖義姉さん、料理教えてほしいんだけど・・・」

 

「もう、フータローはお姉ちゃんがいないとダメなんだから」

 

「ありがとう。義姉さんは頼りになるなー!」

 

 

 

 

「可愛い・・・かも///」

 

同じようににやけながら浸っていた。しかし、二人はその妄想を払い。

 

「フー君!とにかく、あと一花だけね!」

 

「フータロー。頑張ろうね」

 

そう言って妄想から抜け出して、いつもの呼び方に戻った。

 

「やっぱり、そうですか・・・」

 

私が義兄さんと呼ぶのは・・・私の逃げでもあります。もう私の思いは彼には届かない。だから、この呼び方にしている。

 

「五月。お前、腹減ってないか?」

 

「え?」

 

「らいはがカレー作ってる。それで、ぜひ来てくれって」

 

ホント、センチメンタルになっているところで、そうやって・・・優しくない。

 

「はい!らいはちゃんにも会いたいですし!」

 

そう言って、私の恋は終わった。でも、私はあなたと姉妹と未来を歩いて行くことに決めました。

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