五等分の障害   作:森盛銛

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19話 今日はお休み

あの後、ホテルにいたメンバーと、マルオと三玖が合流して喜びを分かち合う。これで、一花の苦しみを解放してあげられた。もちろん、まだ問題は残っているは今は、一花が帰ってきたことを喜ぶ。勇成とマルオは仕事の都合でそれぞれの職場に戻っていった。そして、中野家のタワーマンションへ江端さんの車で帰る途中だった。後部座席に座っている一花が身を乗り出して助手席の風太郎に声をかける。ちなみに、二乃と三玖は疲れたのか眠ってしまっている。

 

「フータロー君・・・ありがとう」

 

「別に、全体的にいい結果に転んでくれたからな。運が良かった。それに俺だけじゃない・・・ってこの距離は聞こえるか?」

 

ついに、一花専用の補聴器が完成したので、聴覚障害の彼女でも、近距離の会話ができるようになった。今回の作戦は急遽決行したので、スキは大きい作戦ではあった。実際、三玖は危険な役割をさせてしまったし、何より、一花自身が風太郎を拒む可能性だってあった。

 

「うん、聞こえる。フータロー君の声。ちゃんと聞こえる」

 

「俺も、悪かったな。足手まといになって」

 

「ち、違うよ・・・と言うか、見たんだね」

 

一花のスマホの履歴にあった監督からのメール。そこに条件を飲まなければ、一花の女優人生と風太郎の将来を人質にされていた。しかし、全員の協力で、何とか彼を逮捕まで追いやった。

 

「ああ・・・なぁ、一花」

 

「何?」

 

「彼女にするって条件は・・・やっぱり、俺は四葉を裏切れない」

 

「・・・うん。知ってる」

 

「でも、それ以外は何でも言ってくれ。力になる」

 

「うん・・・ありがとう」

 

にこっとしながら一花はそう言うが、もうすでに彼には迷惑をかけてしまった。これ以上彼に甘えるのもいかがなものだとも考えている。これから風太郎は五つ子のサポートを開始する。しかし、私は後回しにしてもらおう・・・そう考えていた。

 

「皆様着きましたよ」

 

江端さんに言われ、二乃と三玖が目をごしごし書きながら、目を覚ます。そして、江端さんも仕事に戻るらしいので、そのまま帰っていった。

 

「ふわぁ・・・フータロー、おはよ」

 

可愛いあくびをして、挨拶をする三玖。

 

「フー君。おんぶー」

 

「二乃、起きろ。」

 

「私はー、六海ー、五つ子のー、六人目ー」

 

「気に入ったのかそれ?」

 

寝ぼけている二乃、先ほどの六海がまだ残っているようだった。

 

「・・・・・・」

 

「一花」

 

彼女の少し、顔が強張っていて、緊張している。無理もない、一度、間接的にだが、姉妹にはもう会わないと宣言をしてしまったため、無理もない。

 

「・・・え?ああ、何?」

 

そうやって、不安にさせないために、にこにこした表情で返すが、風太郎はそれを見て、少しイラッとした。なので、彼女の両ほほをつねり、左右にビヨンビヨンと伸ばして遊びだす。

 

「ほぇ!?ふーふぁふぉーふん?」

 

「前にも言ったよな。その作り笑いやめろ」

 

彼女にそう指摘し、今度は彼女の肩に触れ、

 

「震えてるだろ?・・・やっぱ、怖いか?」

 

そう聞くが答えられないでいる一花に対し、待っていた二人がいう。

 

「私たちは先に戻るわ。行くわよ三玖」

 

「え、ちょっと・・・じゃあ、後でね、フータロー」

 

二乃にそういわれて二人はそのまま先にエレベーターに乗った。そして、エントランスに残された、二人。

 

「怖いよ・・・」

 

「・・・・・・」

 

二乃が気を使って、二人にしてくれたのだろう。だから、三玖を連れて先に戻ってくれた。

 

「私、会いたいよ・・・でも、怖い。みんな、フータロー君と現状を乗り越えようとしてる中、私だけ、こんなことして・・・それに四葉、車いすの四葉を外に置いて行って・・・」

 

「ああ・・・」

 

風太郎も知った当初は怒りを感じていたことだ。車いすの四葉を外に連れ出しおいて行った。その後のことを一花は知らないだろうが、彼女は車いすで躓いてしまい、地面に放り出され、人が通らず、泣きながら風太郎に助けを求めた。一花の苦労もあっただろうが、四葉のことを考えない自分勝手な行動だ。

 

「謝る時は一緒に行ってやる。パートナー・・・以上の関係だからな」

 

「・・・うん。ありがとう」

 

そう覚悟を決めて二人でエレベーターに乗り、中野家の部屋の前に立つ。ふぅ、っと一息つき、扉を開ける。

 

「あ、一花!」

 

玄関ですでに四葉が待機していた。こんなにもすぐに顔を合わせることになるなんて、思っても見ないので、一花は少し混乱していた。だが、四葉は一花の迷いなどお構いなしだった。

 

 

「一花ぁあ!!おかえりぃい!!」

 

車いすで突っ込み、一花にぎゅっと抱きつく、その行動にまた困惑し、風太郎に助けを求めている。

 

「私、すごく心配でぇ!!」

 

謝ろうにもなかなか離れないので、風太郎が止めに入る。

 

「四葉。一花が動けないだろ?」

 

「あ、そっか。風太郎もお帰り」

 

「らいはのこと、ありがとな」

 

「うん!いっぱい遊んでもらって、もう寝ちゃった。五月の部屋にいるよ」

 

一花が謝ろうとしてたが、二人で会話が始まったのでまだ、困惑している。でも、覚悟を決めた。

 

「ごめん!四葉!あの時のこと・・・」

 

そう、思い切り、頭を下げる。彼女に許せないことをしてしまった。

 

「・・・そのことは、私まだ怒ってるから」

 

先ほどとは違い、少し怖く、怒りの表情をしている。やはり、あんなことを、忘れてくれるはずが・・・

 

「風太郎とキスしたって聞いた!風太郎にも怒ってるんだから!」

 

「・・・は?」

 

「え?俺も?」

 

確かにその話もしてしまったが、それに彼女はお怒りの様だった。

 

「いや、それはだな、四葉・・・すまん」

 

「あーあ、風太郎が浮気したー」

 

「う、浮気じゃ、ねぇよ!?俺は四葉一筋で・・・(二乃にもされたことは黙っておこう)」

 

ちなみにどちらも相手からの不意打ちでした。

 

「えー、そーかなー?同じ顔だもんねー」

 

わざとらしく、風太郎を困らせるように言う四葉。考えてみれば、それもそうだが、もう一つある。

 

「あの!・・・置いて行っちゃったこと」

 

そんな雰囲気を壊すように、一花が謝罪を続けようとするが、四葉はケロッとした表情を浮かべる。

 

「え?それは気にしてないよ。というより、言われるまで考えてなかった」

 

「でも!」

 

「だって、一花が帰ってきた。それで、私は満足!」

 

そう言って笑う四葉。それを見ると、一花も安心した表情を浮かべるが、すこし、府に落ちないといった様子だった。

 

「・・・私の考えすぎ?」

 

「んなわけねーだろ。反省しろ」

 

「だよ・・ね。うん、反省してる。」

 

少し強めに風太郎にそう言われ、気持ちを改め、二度としないことを誓った。

 

「許してもらってよかったな」

 

「・・・うん」

 

その後しっかりとフォローして、一花も笑顔で頷いた。

 

 

 

そしてリビングに行くと、五つ子全員が笑顔で出迎えてくれた。

 

「お帰り」

 

「お帰り、一花」

 

「一花!お帰りなさい!」

 

そして最後に一緒にリビングに来た四葉も出迎える。

 

「お帰り」

 

「!!・・・ただ・・いま」

 

帰ってきた我が家、一度逃げた我が家、それを出迎えてくれる皆に感謝してもし足りない。自然と涙が出てくる。

 

「これで、揃ったな」

 

障害を診断され、部屋に引きこ持っていたが、ついに全員がそろうことが出来た。そして、テーブルに置かれている。承認票。すべての欄に五つ子全員のサインが書いてあった。そして、それを見た五つ子が近づいてくる。

 

「フータロー君」

 

「フー君」

 

「フータロー」

 

「風太郎」

 

「義兄さん」

 

「よろしくお願いします!」

 

「ああ、よろしく」

 

そして、五人がきれいに頭を下げる。これにより、彼女のたちのサポートを出来るようになり、もっと忙しくなる。だが、五人相手に何かをするのはもう高校生の時に行っている。

 

「・・・懐かしいな」

 

聞こえないように風太郎がそう呟く。だが、これで五つ子の夢の手伝いが出来る。

 

「とは言ったものの、今日は遅いし、帰るか」

 

すでに時刻は深夜0時。色々あって時間が過ぎてしまった。

 

「でも、らいはちゃん起こすの可愛そうですよ?」

 

「じゃあ、風太郎!お泊りしよ!お泊り!この前、五月が風太郎の家に泊まったって言ってたじゃん!」

 

四葉がそう提案する。風太郎は構わないし、寧ろありがたい。しかし、以前マルオに、色々言われたので、後が怖い。

 

「ダメ・・・かな?」

 

「わ、わかった///」

 

四葉の上目遣いで了承をしてしまった。それは可愛すぎる。しかし、その後、ガッツポーズをする。

 

「らいはちゃん直伝の上目遣い!風太郎には抜群だね!」

 

「・・・はぁ」

 

あまり聞きたくなかったが、可愛いものを見れたので良しとすることにした。

 

 

 

 

その後は深夜なので軽食。そして、風呂に入り、就寝。とイベントがないように思えたが、一番めんどくさい問題が起きた。

 

「フー君!私の部屋で寝ましょう!」

 

「ダメ。フータローは私の部屋で寝る。前もそうした」

 

「フータロー君。こういうときはお姉さんの部屋に来るといいよ」

 

「ま、まぁまぁ、落ち着いて」

 

「いいんですか四葉?義兄さん寝取られますよ。私はらいはちゃんと寝ますね」

 

風太郎がどこで寝るかの議論が始まった。一花、二乃、三玖の取り合いとなってしまった。彼女の四葉はそれをなだめようとし、五月は自分の部屋に戻っていった。

 

「(三人では、一番安全なのは三玖だな)」

 

二人はいつ暴走するかもわからないし、急にキスをした前科もある。だが、風太郎の答えは決まっている。

 

「四葉ー、部屋借りるぞ」

 

「あ、うん。わかったー」

 

そう言って風太郎は当たり前のように部屋にお邪魔し、四葉も当たり前のように承諾し二人で四葉の部屋に入っていった。

 

「・・・私たちも寝よっか」

 

「・・・うん」

 

言い争っていた三人も、それぞれの部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

そして、四葉の部屋、ベッドも新調されており、そこに寝転ぶ。

 

「ベッド・・・柔らかい」

 

そう言って新しいベッド特有の弾力と香りを堪能する。新品に近いが、少し四葉の匂いもした。

 

「あんまり・・・匂いはかがないでほしいな」

 

少し照れくさそうにする四葉、しかし、それとは別に四葉は風太郎に言いたいことがあった。

 

「そう言えば、今日の作戦で役割あるって言ってたけど・・・なかったね」

 

確かに夕刻には車いすの四葉は家に待機してもらい、後で役割を与えると約束した。

 

「・・・あるぞ」

 

そう言うと彼女を車いすからベッドに運びそこに座らせる。そして、風太郎は彼女の膝に頭を乗せて寝っ転がる。

 

「・・・これ?」

 

「ああ、癒し担当、中野四葉」

 

「はい!・・・え?こんなんで良いの?」

 

「ああ、これがいい。痛くないか?」

 

「うん、大丈夫」

 

そう言って無言の空間が出上がるが、お互いに居心地のいい時間だった。そして、風太郎が声を発す。

 

「怖かったしな。今日のこと」

 

「そう・・・だよね」

 

「成功したからよかったものの、もし、二乃や三玖に何かあったらと思うと・・・後でお礼しないとな」

 

「でも、二人も一花を助けたかったんだよ。それに、いい結果になったし」

 

「それもそうだが・・・なぁ、四葉」

 

「何?風太郎?」

 

「・・・近いうちに、どこか出かけよう」

 

「うん。前は五月が行ったからね」

 

「どこか行きたいところあるか?」

 

「うーん。公園行きたいな。ブランコ乗りたい」

 

「好きだな。ブランコ」

 

「うん、でも、もう飛べないかな」

 

「飛べるよ。俺もついてる」

 

「ねえ風太郎」

 

「なんだ?」

 

「キス・・・したい」

 

「め、珍しいな・・・お前から///」

 

「う、うん///」

 

言った本人も恥ずかしくなり、顔を赤らめる。しかし、言われたからには風太郎も男だ、彼女の希望にこたえてやる。

お互いに唇を合わせる。心地がいいが、すぐさま離す。

 

「一花とのキス・・・忘れられた?」

 

「わ、忘れた・・・もう一回いいか?」

 

「・・・うん、いいよ」

 

そうしてもう一回キスをする。そう言われたので、二乃のほうも上書きしてもらおうという下品な理由でもあるが、もう一度堪能したい気持ちはあった。だが、これ以上は姉妹が近くにいるので、先には進まずにお互いに、就寝した。

 

「お休み。風太郎」

 

「お休み。四葉」

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