五等分の障害   作:森盛銛

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22話 一花と勉強

一花の女優人生は継続という形にはなったものの課題ができた。明後日までに、手話を覚えることだ。しかし、この番組をキッカケに世間に一花の聴覚障害が認知されてしまう。だが、一花はそれでも構わなかった、いずれは周知されるし、今この状況の一花に仕事が来るとは思っていない。なので、今回頂いたお仕事をこなすのが今の一花がすべきことだ。

 

「じゃあ、上杉君。よろしくね」

 

「はい、承知しました」

 

「送っていただき、ありがとうございます」

 

「一花ちゃん。頑張って!」

 

社長に事務所からタワーマンションまで送ってもらい、二人でお礼を言い、見えなくなるまで頭を下げた。そして、マンションに戻ると皆が心配そうな表情で駆け寄ってきた。

 

「一花・・・その・・・」

 

三玖が聞きにくそうにしている。どんな結果になったか知りたいのだが、聞きにくい気持ちはすごくわかる。だが、安心してほしい。

 

「うん、クビはなかった。それで、お仕事はかなり減っちゃうけど、女優は続けられるよ」

 

それを聞いてみんな安堵の息を漏らす。

 

「ま、私は大丈夫だと思ってたけどね」

 

「え?二乃が一番しんぱ・・・モガモガ!」

 

「い・い・か・ら!黙ってなさい」

 

二乃の発言に対して、四葉が何か言おうとしていたが、二乃によって口をふさがれる。

 

「それで義兄さん。アルバイトらしいのですが、私たちは何をすればいいのですか?」

 

五月はそう聞くが、前回の家庭教師と違い、ノルマの様なものは存在していない。赤点回避!みたいな明確なものがあれば彼女たちもどうすべきか考えられるが、今回は風太郎が彼女たちのサポートというあいまいなものだった。

 

「とりあえず、優先順位的に一花。お前には手話を覚えてもらう」

 

現在は一花が今度出演予定の子供教育番組のために手話を覚えさせるのが最優先だ。タイムリミットは明後日、それまでに最低でも社長から渡された台本に書いてあるものはできないといけない。

 

 

「うん!よろしくね。フータロー先生」

 

一花の仕事のことを五つ子たちに説明すると。納得をした表情をしてくれた。

 

「じゃあさっそく始めるぞ」

 

「・・・うん」

 

リビングで二人で向き合って勉強を開始するのだが、その周りで他の姉妹はじーっと無言で見ているのが少し恐怖でもあった。

 

「お前らもやるか?」

 

見てるだけでもつまらないだろうし、なにより一花と手話できる人がありがたい。補聴器で聞こえるようになったとはいえ、距離や、声量も気にしなければならない。だからというわけでもないが、覚えておいて損はないだろう。

 

「そうね、まぁ、一花優先で私たちは横から見てるわ」

 

二乃の提案により授業というよりは見学という形になった。

 

「えっと、台本は・・・」

 

台本に書いてあるのは自己紹介の仕方。そして、とあるゲームを行うらしい。先生役の一花が生徒役の子供たちの好きな動物を当てるゲーム。子供が一花のアシスタント役に好きな動物をおしえ、それを手話で一花に受信する。それを一花が答えるというコーナーらしい。目的は会話以外でのコミュニケーション方法の伝授と、視聴者に興味を持ってもらうこと。

 

「うっわ・・・」

 

子供の好きな動物もものによるがワンアクションで表現できるものがある。五十音を繋げるよりもテレビの見栄え的にそっちも教えるべきか・・・

 

「・・・じゃあ基本の自己紹介から」

 

風太郎が説明を始めると一花も真剣な表情をし、聞き入る。

 

「自分を人指し指で指さす、これが私、自分。」

 

うんうんと聞き入り一花だけでなく周りの姉妹も挑戦しているようだった。

 

「んで、な、ま、え、」

 

チョキの裏面を逆さにして【な】。そのまま薬指も一緒に出すのが【ま】。最後に猫の手の様にして手のひら面側を相手側にして【え】。

 

「えーっと?こう?」

 

そう言って言われた通りに行う。

 

「後はこれと・・・これ、この二つも名前だ。これはワンアクションで出来る」

 

一つは手の平にもう片方の手をイイネ!の形にし、親指で押す。もう一つは、右手で左胸元にオッケーマーク。このワンアクションでもでも、名前となる。

 

「え?えっと・・・」

 

流石にいきなり教え過ぎたか・・・風太郎も実際、探り探りで教えているので、いまいち手ごたえが感じない。

 

「一花はどれが覚えやすい?」

 

「えっと・・・このオッケーマークのやつかな・・・わかりやすいし。」

 

「それは名札やバッジを差しているイメージだ」

 

「へぇ、なるほど・・・」

 

基本的にはこれだ、名詞に関しては意外とジェスチャーが多い。なので、興味を持ってもらうために自己紹介を置いておいて台本にもある質問をしてみる。

 

「一花、好きな動物は何だ?」

 

「カバさんかな、あの、のんびりしてるのが好き」

 

一花を知っているとぴったりだが、ファンからしたら、意外なイメージが違うのだろう。

 

「これがカバ」

 

風太郎は両手をかめ○め波の様に構え、それを指の間を絡ませ挟むように閉じる。大きな口が閉まるイメージだ。

 

「へぇ、確かに言われるとカバっぽい」

 

少しずつだが、理解できているようだし、何より興味を持ってくれているようだ。

 

「んで、次な・・・じゃあ、おさらいで、【私の名前は】までやってみてくれ」

 

「えっと・・・」

 

自分を人指し指で指す。そして、右手で、左胸にオッケーマークを作る。その後に、なぜか、指を絡ませ挟むように閉じる。

 

「私の名前はカバです・・・」

 

一花はカバになりました。

 

「あ、アハハ・・・えっと・・・」

 

乾いた笑いをし、さらに少し混乱しているようだった。自己紹介の途中で教えたのがまずかったか。

 

「でも、私の名前まではできてるからオッケーだ。次だが・・・」

 

今度はちゃんとカバ。ではなく一花の名前、中野一花とやる。本来は漢字でもできるのだが、今回の相手は子供が対象なのでひらがなで行う。

 

「じゃあ、これが・・・」

 

一通り【なかのいちか】を手話で教えて、何とか自己紹介はできるようになった。

 

「えっと・・・こうで、こうで、こう・・・合ってる?」

 

「ああ、正解だ」

 

探り探りで少しぎこちないが、ちゃんと伝わっている。しっかりと彼女はできるようになった。

 

「えっと・・じゃあ」

 

そう言うと手話の教本のページで何かを探しているようだった。そしてそのページを見つけたようだ。

 

「・・・!!」

 

その行動は、左手で床を作り、その上にチョップをしてバウンドさせる。

 

「どういたしまして」

 

「やった!」

 

一花がそう言ったのはふうたろうとしっかり手話でコミュニケーションが取れたことだ、いま一花が行ったのは【ありがとう】。なので、風太郎はどういたしましてと返した。

 

「・・・なんかフータロー君と秘密の会話してるみたい」

 

「ま、軍隊でもハンドシグナルってあるしな」

 

「そーいうことじゃないんだよ。全く・・・」

 

少し不貞腐れているが、妙に嬉しそうだ。何はともあれ一花が積極的に覚えてくれているのがうれしいし、風太郎自身もやりやすかった。

 

「じゃあ、今度は台本通りに一回やってみるか・・・」

 

キャストは先生、アシスタント、小学生三人。動物に関しては、ぶっつけ本番なのか、打ち合わせるのかはわからないが、子供が答える場合はぶっつけが多いらしい。生放送ではないので、正直わからなくなったら、いったん止めて取り直せばいいのだが、一発でクリアしたほうが、番組プロデューサーにとってまた使わせたいと思わせられるだろう。

 

「私が先生で、フータロー君がアシスタント。じゃあ、みんな子供役やって!」

 

見ていた姉妹たちに急にフラれビクッとなってしまったが、まぁ、流れをイメージするのは大切だろう。

 

「まぁ、良いけど」

 

「うん、面白そう」

 

「私もですか!?」

 

「まぁまぁ、一花のためです」

 

 

ということで、番組の練習が始まった。

 

「はじまーるーよー♪はい、オープニング終わりました!」

 

一花が監督の様になりきって始める。最初はアシスタントのセリフから入る。台本は一つしかないので回し読みをする。一つのセリフが終わったら次のキャストに渡す。

 

「ヤァ、オハヨウ、キョーノコトバノセンセイハダレデショー」

 

「カット!フータロー君!君は今、進行役だよ!しかも相手は子供に対して、それを踏まえてもう一回!」

 

一花監督の演技指導が入り、風太郎だけでなく姉妹全員に緊張感が走った。

 

「はいじゃあ、もう一回!」

 

「やぁ!おはよう!今日の言葉の先生は誰でしょう!?」

 

「うーん、良いんだけど、語尾が強いだけで、単調だなー・・・セリフの区切り全部に!マークが入ってる感じが・・・」

 

「一花・・・進まない」

 

三玖がそう言うと、一花も少し申し訳なさそうな表情をした。気を取り直して行う。

 

「やぁ、おはよう!今日の言葉の先生は誰でしょう?・・・はい三玖」

 

台本は一つを回し読みなので次の三玖に、風太郎が台本をを渡し、彼女の内気女の子役を見てみる。

 

「ダ、ダレダロー・・・タノシミー」

 

「・・・フー君並みね」

 

三玖は恥ずかしくなってしまい、棒読みに加えて何を言っているのかわからなかった。次は二乃の委員長系男の子

 

「前回はことばの先生はドイツ語だったね!」

 

二乃は悪くない演技をして、最後に四葉の元気女の子。

 

「じゃ、じゃー!よ、呼んでみましょう!」

 

四葉も少し緊張気味だが子供らしさもあって元気だ。本来三人なので、五月はみんなで呼ぶところのみ、参加した。設定は・・・大食い少女とかでいいか。

 

「先生よろしくお願いします!」

 

「はーい!こんにちわ!」

 

そう言って一花が元気よく登場して、子供たちに手を振っている。

 

「はい、今日の先生は、中野一花先生です」

 

「よろしくお願いします!」

 

「先生はどんな言葉を使うんですか?」

 

二乃の質問に対して、今回の一花が取り上げるものを手話で説明する。

 

「私は・・・手話の・・・先生です」

 

自分を人差し指で指し【私】。両手の人差し指を互いに向けてそれを交互にくるくると糸巻きの様に回して【手話】。右手を頭辺りまでもっていき、人差し指を前に二回ちょっと払うようにして【先生】。

 

「はい、一花先生は手話の先生です!」

 

アシスタントのこのセリフでいったん、ナレーションによる映像説明が入り、その後みんなの自己紹介と、ゲームを行う。とりあえず、自己紹介の流れよりもゲームのほうが難しいと思ったのでそちらを優先して行う。

 

「じゃあ、一花以外は俺に好きな動物を教えてくれ」

 

ちなみに、二乃はウサギ。三玖はハリネズミ。四葉はラクダ。五月はカンガルー。

 

「二乃以外、もうちょいメジャーな奴ねーのかよ」

 

なぜか、マイナー中のメジャーの様なものがタイプらしい。子供が答えるものだから、犬とか猫とかライオンとかでいいだろ。

 

「一花。始めるぞ」

 

そう言って、一花が風太郎を見る。最初は二乃のウサギ。両手を頭に乗っけて手の甲を相手に見せる。さて、一花は答えられるのか?

 

「あー・・・」

 

少しボーっとしているようだ耳の大きな動物といえば結構絞れてくるはずだ。しかし、一花は別のことを考えていたらしい。

 

「フータロー君・・・可愛い」

 

「そうじゃねぇだろ!?何かって聞いてるんだよ」

 

そう注意しながらも、風太郎も可愛いと言われ、少し恥ずかしくなったにも関わらず、風太郎がウサ耳のポーズをするのが、姉妹に受けたのか、皆で写真撮影を始めた。

 

「お前らも撮るな!」

 

手を引っ込めて次の動物、それぞれ、ハリネズミ、ラクダ、カンガルーを終えたるが、この辺ジェスチャーでもわかりにくいと思う。

 

「待ち針に糸を通す動作をして針。人差し指、中指を第一関節までまげて、それを口元に、それがネズミな。これで針+ネズミでハリネズミ」

 

「んで、ラクダは握りこぶしの左腕を伸ばして、グーの右手で左腕に二回ラクダのこぶを作るように・・・」

 

「カンガルーは影遊びとかである狐の形を作ってそれを二回ホップさせる」

 

そう言って姉妹が好きな動物の手話を教えて行く。一花も真剣に執り行っているので、予定よりもスムーズに進んでいる。彼女もそれだけ今回の番組にかけているのだろう。

 

「ふー、少し休憩するか」

 

流石にぶっ続けで勉強をして、おなかも空いた。なので、風太郎は昼休憩を提案したが、一花は手話の参考書と、台本を交互ににらめっこしたままだった。

 

「一花」

 

「え、何?」

 

「休憩するぞ、いいペースで覚えて行ってるから、少し頭をリフレッシュさせろ」

 

集中しているところ悪いが、これで覚えることがパンクしても仕方がない。そう言って、手話の参考本と、台本を閉じて、昼食を頂く。朝があれだけ重かったので、昼はだいぶ軽めだ。

 

「でも、一花がやってる仕事って、こんな感じなのね、案外と楽しかったわ」」

 

昼食を頂きながらそう言う二乃だったが、風太郎は少し意外に思った、風太郎とも読み合わせを行っているので、姉妹でもそんなことをしてるのだと思い込んでいた。

 

「教育番組は初めてだけどね。台本って門外不出だから、家族や友人には見せないようになんだけど、なんかみんなとやってみたくて」

 

「その割にはお前・・・俺にめっちゃ頼んでなかったか?」

 

高校在学中の時だけでなく、卒業後も実は何回か一花に呼び出させ、読み合せを行っていたことを思い出し、それを聞くと姉妹が一花の顔をじーっと見つめだした。

 

「ほ、ほら!フータロー君は事務所からも認められてるし、今回に限っては事務所で一緒に台本確認したし大丈夫じゃないかな?」

 

「まさか、キスシーンも練習したとかないよね?」

 

三玖のその発言に一花はドキッとして、風太郎もどこか落ち着いていない様子だった。

 

「え、風太郎・・・」

 

四葉信じられない様な表情を浮かべたが、少し誤解があった。

 

「四葉違うぞ!決してそんなことはしてないからな!」

 

「義兄さん?疑わしいですよ!」

 

というわけでまさかの「第二回五つ子裁判」が開廷されてしまった。

 

被告人、上杉風太郎。中野一花。裁判長中野五月。裁判委員中野二乃、三玖、四葉で被告人の弁護士等は誰もいない様子だった。

 

 

「待て、五月!」

 

「つーん・・・」

 

「五月!」

 

「つーん」

 

「いつ・・裁判長」

 

「はい、なんでしょう。上杉被告」

 

第一回の一花の様に、そう言わなければ反応しない様だ。しかし、風太郎が弁明する前に二乃が発言した。

 

「この男は四葉という彼女がいるにも関わらず、大女優の一花の誘惑に負けてキスシーンの練習という名目でキスをしました」

 

「いや、だからしてないって!」

 

「フータロー切腹。言い訳見苦しい」

 

「違うって!」

 

「・・・あ」

 

四葉が何か思い出したかの様にしたと思ったら、急に真っ赤に顔を染め上げた。

 

「どうしたのです四葉?何かこの浮気女たらしキス魔義兄さんにいうことでもありますか?」

 

ものすごいひどいあだ名で呼ばれてしまったが、風太郎には説明したくても出来ない事情があった。と言うが、実際はは風太郎が恥ずかしかったからだ。しかし、収まらないので、一花が話し始める。

 

「フータロー君。話すしかないね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スキデス。ツキアッテクダサイ」

 

「えー、どーしよっかなー?うち的にはあり寄りのありなんだけど・・・そうだ!うちのお願い聞いてくれたらいいよ付き合ってあげる!・・・ありがと、いい感じになったよ!」

 

「それはよかった。いいのか?俺が練習相手で?」

 

今から約一年前、一花に呼び出され、台本の読み合せを頼まれた時の話だ。優等生が学校のギャルヤンキーに恋をして、優等生が彼女のために不良の世界に入っていく物語。ヤンキーちゃんと眼鏡君だ。

 

「うん、フータロー君がいいんだよ!それで次のシーンは・・・あ」

 

「なんだ?・・・あ・・・」

 

次はキスシーンだった。さすがにこれを頼むのは四葉にも彼にも申し訳なかったので、頼むのをやめようとした。しかしまさかの質問が来てしまった。

 

「その・・・キスってどんな感じなんだ?」

 

「ええ!?」

 

そんな質問が来るとは思ってみなかった。確かにお芝居でそう言うシーンはしたことはあるが、あれはフリだ。

 

「え、えっと・・・したいの?」

 

「まぁ、その・・・そうだな」

 

「で、でも!四葉は・・・どうなの?」

 

そう、彼には付き合って一年以上たっている、四葉がいる。彼がこんな浮気性だとは思わなかったが、これは一花にとってはチャンスでもある。

 

「やっぱ、こういうのは男の俺からすべきだろうと思ってな・・・」

 

「・・・ん?」

 

「その・・・どういう風にその雰囲気にもっていければいいのか?」

 

「え?ちょっと待って・・・フータロー君」

 

「なんだ?」

 

「・・・恋人関係に部外者が口挟むのもどうかと思うけど聞くよ。四葉とチューした?」

 

「・・・まだ・・・です」

 

ようやく質問の意味が理解できた。彼は彼女の姉に妹とどうやってそういう雰囲気を作ればいいのかを聞きたいだけだったようだ。

 

「・・・はぁ」

 

思わずため息が漏れる。自分の勘違いも少し恥ずかしいがそれより、関係があまりにも進んでないことに一花は少しがっかりした。

 

「もう一年たったでしょ?・・・四葉からはそう言う話ないの?」

 

「まぁ、その・・・無くはなかったが・・・うやむやに・・・」

 

「それで、女の子が勇気出してそういう雰囲気作ったのに誤魔化したと・・・うわー、フータロー君、チキンだね」

 

「・・・だよな」

 

珍しく自分の非を認めかなり落ち込んでしまっている様子だった。ちなみに、過去、四葉からキスされているのだが、現時点では風太郎は知らない。

 

「ウソウソ、フータロー君。この後四葉とデートでしょ」

 

「ああ、そうなっている。」

 

「私が・・・練習相手になってあげようか?」

 

そう言って風太郎の目をしっかりと見ながらキスを受け入れる体制を取り出した。風太郎もそんな仕草に見とれてしまっていた。。

 

「・・・やめとく」

 

しかし、風太郎はしっかりと断った。

 

「だよね。もし、して来たら、四葉に言いつけるとこだったよ」

 

一花はもしこんなことをしても彼はしてこないことはわかっていた。それほど彼は彼女を想っていて、彼女も彼を想っている。

 

「じゃあ、我慢したフータロー君にご褒美」

 

そう言って、一花はスマホを取り出して誰かに電話をかけ始めた。

 

「もしもし、四葉。今大丈夫?」

 

「!!」

 

風太郎が何か反応しそうだったので、声を出さないように人差し指を口に当てる。そして、風太郎にも聞こえるようにスピーカーにする。

 

「四葉以前、フータロー君が飽きちゃったのかなって相談しに来たじゃん?」

 

それに少し風太郎が動揺してしまったが、向こうは気がついてない様だ。しかし、そんなことを思わせていたことに風太郎は落胆した。

 

「うん、その、私を大切にしてくれるのはわかるんだけど・・・全然・・・その、まぁ・・・」

 

「恋のABCをして欲しいんだよね」

 

「えぇ!!・・・でも、そう・・・だね。うん・・・」

 

「大丈夫だよ四葉。私、この前フータロー君に乗り換えない?って聞いたら、俺は四葉しかいないって言われちゃったし」

 

「え!?一花!泥棒はダメだよ!」

 

「冗談だよ。さすがに、女優業も忙しいし、今フータロー君と付き合っても時間とれないもん。それでね四葉、彼も、あなたと同じことを考えてると思うよ」

 

「うん・・・そうだといいな」

 

「もしかしたら今日フータロー君が狼になるかもしれないからお子様パンツはやめときなよ」

 

「わ、わかった!ありがとう一花!」

 

そうお礼を言って彼女は電話を切った。その様子を横で聞いていた風太郎は少し気まずくなってしまったので一花が背中をパンと叩く。

 

「女の子は大切にして欲しいのも、自分を求めてほしいのもあるめんどくさい生き物だから。フータロー君はそこを見極めないと」

 

「ああ、ありがとう!」

 

そう言って時間もそろそろだったので風太郎は荷物をまとめて出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということがありまして・・・」

 

「・・・やっぱり///」

 

一花の説明を聞き終えたら、四葉も風太郎から聞いたのだろうか、赤面してる。

 

「はい、これで無実が証明されたよな!?」

 

一花の説明を通して風太郎が裁判長と裁判員二人に無実の証明を求めるが、微妙な表情だ。

 

「・・・弱くないですか?」

 

「あー、それ私も思った。証拠として弱い」

 

「そうだね。フータロー、正直に言って」

 

三人はさらに問い詰めようとしたのだが、先ほど話したものは事実だし、四葉には一花に相談したことを伝えてはいた。

 

「でも風太郎!女の子と二人で何かするっていうのか彼女として感心しないよ!」

 

「ああ、すまん・・・ん?」

 

珍しく四葉がぷんすかと怒っている。しかし、四葉のセリフで裁判員がビクッと何かまずい表情を浮かべていたのを四葉は見逃さなかった。

 

「あーれー?なんでそんな動揺してるの?」

 

「あ、まぁ・・・」

 

四葉が珍しく、怒っている。と言うより恐怖を感じる。悪い言い方になるが、風太郎は四葉に内緒で・・・というよりは伝えなくてもいいだろうという考えで彼女たちにも会っていた。

 

「その・・・都内でフー君と買い物とか・・・調理器具見たかったし・・・」

 

「フータローの東京のアルバイト先の居酒屋さんにお邪魔した。美味しかった」

 

「勉強を教えてもらって・・・その・・・」

 

次々と白状し、四葉もニコニコしているが、笑っているようには見えない。

 

「風太郎?」

 

「は、はい!」

 

恐怖で怯えている風太郎。しかし、四葉は風太郎を前にし、今度は少し不安そうな表情だった。

 

「別に信用してないわけじゃないけど、不安になるからね・・・姉妹の誰かと出かけるときは、一応報告してもらえると・・いいなって・・・その、束縛っぽいかもしれないけど・・・」

 

何はともあれ、四葉を心配させてしまったので、慰める。

 

「ああ、約束する。ちゃんと報告するから、あと・・・まぁ・・・」

 

そう言ってポリポリと頬をかきながら彼女にしか聞こえないように耳元で言う。

 

「四葉・・・愛してる」

 

「!!・・・ふぅ、あ、でも、みんなと出かけちゃだめってわけじゃないからね!みんなとは仲良くしてほしいし」

 

「ありがとう」

 

そう言って彼女の頭を撫でる。お互いが信頼し合ってとても良い関係だ。しかし、他の皆はその様子をじーっと見ていた。

 

「お熱いねー」

 

「ホントよね。若干むかつく」

 

「今度、フータローの居酒屋また行く。茶化しに」

 

「私も行きます。店のその日の営業できなくなるくらい飲み食いします」

 

少し妬みの恨みと視線も感じ、風太郎は寒気を感じた。

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