五等分の障害   作:森盛銛

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24話 二乃の夢

「ふんふふんふふーん♪」

 

「フフフ・・・」

 

「あの二人、なんか嬉しいことでもあったのかな?風太郎、何か知ってる?」

 

「・・・さぁな」

 

朝食を作っている二乃と三玖。その鼻歌とニヤケの理由というのは、十中八九先ほど風太郎から送られた包丁だろう。現にそれを使って調理を進めている。一花と五月はまだ寝ているようだが、四葉は起きていたようなので、すでにリビングのソファに運ばれた。

 

「はー!いいわね!凄くいい!」

 

「最高」

 

「・・・まぁいいか」

 

露骨にあそこまで喜んでくれるというのなら、送った甲斐があったというものだ。ただ、にやけながら包丁を構えるのはちょっと恐怖感があった。

 

「(ヤンデレってあんな感じか?)」

 

などと普段思わないことを思ってみる風太郎であったが、そっちを見ていると、四葉がクイクイと袖を引っ張る。

 

「見ててね!」

 

そう言うと、ソファから手の力で体を浮かし、移動を始める。そして、置いてある車いすの正面に立つとそれによりかかるようにつかむ。すると、ひじ置きをつかみ腕の力を駆使し、体を強引に乗せ、体幹で体を反転させる。

 

「はい!」

 

そう言ってパフォーマンスを終えたかのように両手を広げて、花を鳴らし、ドヤ顔を決める。

 

「四葉!移動が出来るようになったのか!」

 

「うん!頑張ってまた歩けるようになりたいから!」

 

四葉も風太郎がいない間にも、ソファから車いすの移動が出来るようになったらしい。元々の筋力や身体能力もあるが、下半身が動かない四葉にとって大きな成長を見せてくれた。

 

「でも、まだここだけ、今は車いすの車輪がロックされてるから出来るけど、不安定なものから不安定なものはまだ移動できない。それに立ち上がるのも難しいかな」

 

しかし、素晴らしい成長だった。すき間の時間で見てはいたものの、彼女が頑張ってくれているし、立ち上がるのは厳しいものの、立った状態をキープはできるし、手を引きながら一歩は歩ける。それができれば色々なことに挑戦もできる。

 

「ふぁ・・・眠い」

 

盛り上がっているところに二階からガチャッと扉が開く。大あくびをしている一花だ。

 

「一花珍しいわね、一人で起きるなん・・・って、一花!!」

 

「なに?シャワー浴びるから補聴器つけてな・・・」

 

眠気が覚めてきたのか、ソファのほうに視線を向けると背中を向けて微動だにしない・・・というよりは四葉に頭をつかまれて振り向けないようにされている風太郎だった。そして、一花自身の格好は起きたままで裸だ。

 

「え?あ!?フ、フータロー君!?お、お早いね」

 

「ああ、一花、おは・・・」

 

「フンス!」

 

「痛い!?」

 

今更だが、急いで、体を隠そうとする。風太郎は二乃の反応を聞いて気になったので四葉の制止をほどいて振り向こうとするが、気合の掛け声とともに再びロックされた。

 

「一花、なんかあるのか?」

 

裸の同級生が真後ろにいるという状態を風太郎に見せるわけに行かず、そうは言ったものの補聴器をしてない一花には聞こえてないので、一花は変な妄想を始めだした。

 

「(・・・み、見られたのかな!?・・・あ、四葉に怒られてヘッドロックされてる。まさか、今、男性限定の生理現象が起こってしまい、四葉が『私以外の女で何してんの!』・・・みたいな///・・・ってことは見られたよね!?)」

 

本当に風太郎は見ていないというか、何が起こっているのかわからない状況なので、これは勝手な妄想だ。

 

「一花、突っ立ってないで、さっさと行けば」

 

どうすればいいかわからない表情をしたので三玖が若干引いているような表情をしながらも、一花はそそくさと去っていった。

 

「風太郎見てないよね!?」

 

「何が!?それより痛い!頭握りつぶすな!」

 

「おはようござ・・・義兄さん、四葉。何してるんです?」

 

入れ替わりのタイミングで、五月が降りてきたものの、謎の喧嘩が始まっているのを聞いて五月は疑問の表情を浮かべた。

 

 

 

その後全員そろって朝食を頂いた後、二乃は買い物当番ということなので、買い物に出かけ、風太郎は一花との手話のテストで集中できるように一花の部屋で行うことにした。

 

「じゃあ、始めるぞ、復習は出来たか?」

 

「うん・・・でもその前に・・・」

 

先ほどの件があって気まずい。というよりは一花が勝手に風太郎に裸を見られていると勝手に勘違いをしているだけだ。

 

「フータロー君。見たと思うけど、何かないのかな?(なんか・・・見られただけじゃ、腑に落ちない。からかってやろ)」

 

「(何がだ?・・・あ、勉強か)」

 

一花の発言の意図がよくわからないが、手話教本やノートで使い込んだ跡がしっかりとあるので勉強をしているのがわかる。つまりは一花は勉強をしっかりしましたというアピールをしてきたのだと考えている。

 

「ああ!ちゃんとしてて、いいと思うぞ!」

 

「そ、そうきたか・・・(ストレートにいいって言っちゃうんだ。フータロー君も男の子だね・・・ちょっと照れる)」

 

一花的に謝罪か動揺かごまかすかのどれかだと思ったが、まさかの正直に感想を言われるとは思ってなかった。

 

「しっかり汚れの形跡もあるし!(勉強した形跡がはっきり見えてる!)」

 

「え!?汚れ・・・嘘!?どこに!?」

 

「目にはいった、それくらい目立ってるだろ」

 

「(嘘・・・何かデキモノあったのかな?最近、外出る機会減っちゃったから、肌ケアサボっちゃってたし・・・でもそんなはっきり言わなくてもいいのに・・・)」

 

思い切りテンションが下がってしまっている一花に風太郎も焦りの表情を浮かべるが何とか励ます。

 

「大丈夫だ一花!お前のそういうところは俺もわかっている!」

 

「でも、ほら、汚いって・・・普通は綺麗な方が好きでしょ?」

 

「そんなことないぞ!」

 

一花は気にしている。綺麗に教本やノートを使うべきなのだろうと、確かにその方がいいという人もいるが、俺はそれよりも思いっきりがむしゃらに頑張っている努力が見えているのがいいんだ。だから一花、存分に汚してくれて構わないんだぞ。と、風太郎は見当違いなことを考えている。

 

「綺麗すぎるのがあんま好きじゃない。まぁ、俺は汚れてる方が好きだ」

 

「・・・そっか(意外と変わってるんだねフータロー君。四葉も大変だ)」

 

一花はすごく複雑な表情をして、彼が若干心配でもあった。

 

「じゃあ!テスト始めるぞ!」

 

二人の勘違いは勘違いのまま終わり、ようやくテストを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、難しいかな・・・」

 

買い物当番ということで買い物に出かけている二乃だが、今は駅前にいて、とある物件の前で難しい顔をしていた。

 

「やっぱり駅近の物件は高いわね。完全に予算オーバー・・・はぁ、お店開くのも楽じゃないわ」

 

将来に向けて二乃はすき間の時間を使って、自分が将来お店を開くために色々周っていた。父に頼めば、自分のためにお店を開店させてくれるだろう、しかし、これに関しては自分でやりたい。アルバイトのお金もだいぶたまってきて、もう姉妹も大丈夫のはず、そろそろ準備を再開しようとは思っていた。しかし、良いものは見つからなかったので、とりあえずスーパーへ行き、入り口の端で考え込んでいた。

 

「(完全に一から作るは資金的に論外。つぶれた喫茶店とかパン屋とかケーキ屋とか、そう言う居ぬき店舗だっけ?そうすれば設備費はある程度は節約できるし・・・)」

 

「・・・ちゃん?」

 

ブツブツと考え込んでいると誰かが二乃を呼ぶ声がしたが、集中して聞こえていないようだった。

 

「二乃ちゃん!」

 

「え、はい・・・あ!

 

「久しぶりだな!」

 

「フー君パパ!」

 

声をかけていたの上杉風太郎の父、勇成だった。今日は仕事が休みで風太郎は中野家に、らいはも友達の家にいるということで、せっかくの休みなのに一人らしい。

 

「おう、覚えててくれたか!」

 

そう言ってまるで少年心を忘れていないように二カっと笑顔を見せてきた。

 

「ええ、あなたほどかっこいい人は忘れませんよ(見た目ドストライクですし)」

 

「若い子からそう言われるとは嬉しいねぇ!」

 

大人の対応をし、そのまま二人でカートを引きながら買い物を始めた。

 

「フー君パパも買い物するんですね」

 

「たまにな。普段はらいはにお願いしてるが、今日は友達と遊んでる・・・あった!卵一パック120円!」

 

そう言って今日のセール品である卵を見つけると勢いよく勇成はその場を離れて、それを買おうとするが一組一パックまでと書かれてあった。

 

「一組限定。ま、だよなー」

 

そう言いながら取れた喜びとざんねんそうな表情を浮かべるのを見て、二乃も同じものを一パックとる。

 

「私も買うので後でお店の外で渡しますね!」

 

「いや、悪いだろ?」

 

「いえ、うちは卵まだありますし、その、家計の事情は・・・」

 

上杉家は理由はわからないが借金を抱えてしまっている。そのため風太郎は中野家に家庭教師のアルバイトをしに来たのだ。今はそのおかげで無くなるとまではいかないものの、前よりも裕福な生活になったとは言っていた。

 

「すまない。ありがとう!」

 

なぜかそのまま二人で買い物をしている途中に、デザートのコーナーを見ていると勇成が思い出したように言う。

 

「そういや、昨日レモンパイ、ありがとな。俺も風太郎もらいはも夢中になって食っちまった!」

 

「お口に合って何よりです。妹にも伝えておきますね」

 

昨日渡して家族にも分けてあげたらしい。

 

「確か、ケーキ屋だよな?風太郎から聞いた」

 

「はい、フー君と同じ場所です」

 

「そうか、じゃあ二乃ちゃんはパティシエとか料理人になるのか?あんなにうまいものを作れるんだから」

 

「はい!将来は自分のお店を出したいなって思ってます」

 

「へー!じゃあ、俺は常連になろう」

 

「ありがとうございます・・・と言っても、具体的に場所も何も決まってませんけど、」

 

そう言うが、彼女がどんなお店にしたいかはある程度考えていた。

 

「私たち姉妹はいつまでも一緒っていうわけにもいきません。いつかは離れ離れになって、それぞれに人生を進みます。ですが、私はみんなの帰る場所を作ってあげたい・・・誰かの居場所になれるお店」

 

「!!」

 

その言葉を聞いた勇成は驚いた表情を浮かべると同時に、ある言葉が思いだされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰かの居場所になれるお店!そう言うのやりたい!」

 

「ま、いいんじゃねーか?お前ならできる!」

 

「ふっふー!勇成も風太郎もらいはも大きくなっても、ふと思い出して帰ってこれる場所になってくれるといいな」

 

「俺も子供かよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「あの・・・どうしました?」

 

急に黙り込んでしまった勇成に声をかける。しかし、勇成はある決心をしたようだった。

 

「なぁ、二乃ちゃん。今日この後暇か?」

 

「はい。特に予定はないですけど・・・」

 

昼食、夕食の食事当番は三玖だし、これと言って予定はない。強いて言うなら、風太郎に会いたいくらいだ。

 

「じゃあ・・・」

 

勇成が真剣な表情で二乃に向き合う。

 

「・・・少し付き合ってほしい」

 

「・・・はい」

 

その真剣さに二乃も承諾をした。

 

 

 

 

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