五等分の障害   作:森盛銛

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34話 卒業と旅立ち

「・・・」

 

翌日今更ながらいいものだろうかと待ち合わせ場所で待っている風太郎。料理を学ぶため海外留学に行く三玖のお願いということでデートをすることになってしまい、いつもの繁華街で待ち合わせをしている。

 

「お待たせ」

 

「おう」

 

 

口数は少ないが揃ったので今日は三玖の行きたいところに向かう事になっており風太郎は今日のプランを知らないので、三玖についていく形で歩きだした。

 

「そういえば、四葉は何か言ってた?」

 

「・・・まぁ、色々と」

 

確かに今の状況は彼女の姉と浮気デート(彼女渋々承諾)といった形なので、不満はあるだろう。

 

「色々言ってたけど、最終的には笑顔でちゃんと楽しんできてねと言ってくれたぞ。逆に二乃の方がやかましかった」

 

「私も言われた。ずるいずるいって駄々っ子みたいでかわいかった」

 

「・・・まぁ、留学期間は離れるからな。どんくらいの期間だ?」

 

「一か月。学校の紹介だから短いけどね・・・」

 

そう言って少し不安そうな表情を浮かべる。確かに未開の地に一人で生活をしなければならないというのは不安も大きいだろう。

 

「まぁ、五つ子のサポートは俺の仕事だし、出来る限りみんなの力になりたいからな。それで、今日はどうするんだ?」

 

特にデートのプランを考えていないというよりも三玖が何か用意していると聞いていたので考える必要がなかった。

 

「少しの間一人暮らしってことになるからそれの準備と・・・あの水族館行きたい」

 

「・・・わかった」

 

あの水族館とは三玖が料理専門学校へ進むことを決めた場所。ペンギンが五つ子に似ていると思った場所だ。

 

ひとまずはデパートへ行き一人暮らしように家具関係を見に行く。すると販売スタッフが声をかけてくる。

 

「カップル様ですか?よろしければ同棲のキャンペーンをしておりまして・・・」

 

「あ、あの・・・」

 

赤面で慌てふためいているので風太郎が助け舟を出す。

 

「そう言うのではないです。こいつの一人暮らしで・・・」

 

そう言うと販売院は申し訳なさそうな表情をして、その横で三玖は言っていることはあっているのだが何か煮え切れない表情を浮かべていた。

 

「そんなはっきり否定しなくても・・・」

 

ぼそっと言ったその声は風太郎には届いていなかった。

 

「それでここでは何買うんだ?」

 

そう聞くと三玖はメモを取りだす。

 

「家具関係・・・洗濯機とか冷蔵庫とかその辺は付属らしいから、ここではベット布団と衣装ケースくらいかな」

 

そう言ってメモにかいてあるものを一通り見て本人が気に入ったものを次々と購入し、そのまま、引っ越し先に日時を指定して送る。そんな作業のようなデートを淡々とおこなっていく。

 

そして、いい時間になったので休憩がてらフードコートで昼食を取ることにした。風太郎はリーズナブルなざるそばを頼む。

 

「三玖はどうする?」

 

そうきくと彼女はとある中華の看板に目を向けていたが、意外なものだった。

 

「これってどうなんだろう?」

 

「・・・お前本気か?」

 

彼女が指さしたのはでかでかと書かれた激辛チャレンジメニュー「極み!超激辛麻婆豆腐」というものだった。

 

「いや、苦手だけど今は味覚無いからどうなんだろうって」

 

「・・・知識としては辛味は味覚じゃない」

 

「え?そうなの?」

 

「いや、お前の借りた本に書いてあったぞ、人の味覚は甘味、塩味、酸味、苦味、旨味だ。それに辛味は痛覚の方だ」

 

「へー、そうなんだ・・・」

 

「あと、辛すぎるものの大量摂取は・・・味覚に影響出るからこれ以上はやめとけ」

 

「・・・うん」

 

そう言ってがっかりした表情で三玖も同じざるそばを注文した。

 

 

 

 

 

 

 

そして買い物を終えて二人は水族館に向かうことにした。

 

「なぁ三玖・・・お前若干無理してないか?」

 

「・・・ソンナコトナイヨ」

 

「下手か。何かあるなら聞くぞ」

 

あまりにも嘘というか隠し事は下手なので、風太郎もなにかあるのかを聞いてみる。

 

「・・・後でちゃんと話すね」

 

そう言ってそこから聞くのをやめた。

 

水族館に到着し、前と同じルートで回る。そしていつしか大学ではなく料理の専門学校に通いたいと風太郎に伝えてくれた場所につく。

 

「懐かしいな。お、いつしかの五姉妹ペンギンがいる」

 

「ホントだ・・・あ」

 

「どうした?」

 

「ううん・・・似てるなって」

 

ペンギンの方を見ると一匹がオスペンギンと仲良くしていて他の四匹はそれを見守っている。あの四匹もいろいろな感情があるはずだ。現に私みたいに・・・

 

「ねぇ、フータロー」

 

「何だ?」

 

急に真剣な表情で話しかけられお互いに向かい合う。

 

「・・・私フータローを卒業する」

 

彼女はハッキリと風太郎の目をしっかり見てそう発言する。あの専門学校に進学したいと言ったあの時と同じように

 

「フータローへのキモチ・・・いつまでも持っていいものじゃない」

 

「・・・三玖」

 

「ずっと好きだった。私だけじゃないよ、一花も二乃も五月も同じキモチ。でも、これからフータローの後ろを歩く私は終わりにしたい。そう思った」

 

三玖にも思うところはあったのだろう。二乃が前にも言っていたように好きでい続けることは迷惑になってしまっているのではないかと、また風太郎の判断で自分の将来を決めようとしたことを

 

「お前が決心したことだ。止めるつもりも無い。ただ・・・」

 

そう言うと風太郎は照れくさく前髪をいじり始める。

 

「三玖・・・お前がいてくれたから俺は色々自信が持てるようになった。向き合えば勉強して成績上がるのは楽しみだったし、夢だって見つけられた。そして何より・・・」

 

「お前が俺を好きでいてくれたのは俺の誇りだ・・・それに!」

 

「ありがとう」

 

風太郎が言い終わる前にお礼を言われ唇が唇で塞がれる。

 

「もう充分伝わったよ。フータローがどれだけ私を好きでいてくれて、大切にしてくれて・・・あれ」

 

そう言うが涙が溢れてくる。自分の好きな気持ちは今日で終わりにして私は新しい道を進んで、フータローは四葉と付き合っててまたいつも通りの関係に・・・

 

「(本当に終わっちゃうんだ・・・私の初恋)」

 

まだ諦められないでいたのを無自覚にしていた。いざ本人を目の前に言葉で伝えると嫌でも自覚してしまう。

 

「フータローも泣いてるの?」

 

「・・・ああ、自分の生徒の旅立ちっていうのは感動するものなんだな」

 

「ふふっ、そうだよ」

 

「ただ一つだけいいか?」

 

「なに?」

 

「お前は俺の生徒だ。いつだって俺はお前の味方だって言うことを忘れないでくれ」

 

「・・・ありがとう、フータロー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから1週間後、空港で三玖がフランス行の飛行機便を待っているところだ。もちろん五つ子と風太郎が見送りに来てくれている。

 

「三玖忘れ物無いわね!何かあったらすぐ連絡するのよ。お金はある?知らない人にはついて行っちゃだめよ!」

 

「二乃やかましい」

 

超心配性の二乃相手を思っていっているのはわかるのだが、正直しつこいレベルだ。それほど妹の留学が不安でもあるのだろう。

 

「三玖の料理楽しみにしてるね」

 

「三玖!頑張ってね!」

 

「ファイトです!」

 

 

一花、四葉、五月とそれぞれエールを送る。

 

「三玖」

 

「フータロー」

 

「頑張ってこい!」

 

「うん!」

 

そう言って二人は握手を交し、三玖は搭乗口へ行ってしまった。

 

「ぐうぅうぅう・・・」

 

「いつまで泣いてんだ二乃」

 

「だってぇ〜!あの三玖が一人でぇ〜!」

 

保護者のような感動をする二乃手を引き空港を出ていく。その時に三玖搭乗した飛行機が離陸した。それに向けてみんなで拳を空に掲げる。彼女留学で立派な料理人になることを想って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この選択が彼女を絶望させるのを風太郎たちはまだ知らない。

 

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