昼食を食べ終えたが、他の姉妹の食事はどうしているのだろう?三玖と皿洗いをしながら、考えていたら。三玖が察したように答えてくれた。
「二乃がね、ショックで部屋にこもってる皆の様子を見てくれて・・・」
「なるほど、相変わらずの姉妹思いだな」
姉妹の中で二乃は一番思っているのだろう。風太郎のことも好きであるが、もし、姉妹の誰かと、風太郎を天秤にかけた時、彼女は姉妹を取る。そんなの良い人間だ。
「じゃあ次は四葉の様子を・・・」
自分の欲ではあるが、本当は一番に四葉に会いたかった、しかし、二乃には最初に一花の部屋に案内され、その後三玖が自分から出てきたので、成り行きで進んでいった。
「・・・ねぇ、フータロー」
「なんだ?」
「実は二乃から聞いた話なんだけど・・・」
二乃が言うには、四葉は昨日から何も食べていないらしい。他の姉妹は二乃が作った料理を全部とは言わないが、口にはしている。しかし、四葉だけ、一口も食べてくれなかったらしい。
「・・・・・・」
体育大学に進学し、体を動かすことが得意な四葉が診断されたのは筋肉の麻痺。症状がどんなものかまではわからないが、あまり自由に動けないだろう。
「ひとまず、様子を見に行こう」
ちょうど皿洗いを終えたタイミングで、四葉の部屋に向かおうとするが、ガチャッと二乃が部屋から出てきた。
「フー君。ちょっと・・・」
そう言って手招きをされるので、目で行ってもいいか?と三玖に尋ねる。
「うん。私は夏休みの課題をする、リビングでやるから何かあったら頼ってね」
久々に二乃の部屋に入る。以前と比べて落ち着いたような部屋になっている。ベッドの上でクッションを抱えたまま待っていたのでその横に座る。
「・・・流石ね」
「何がだ?」
「三玖のこと。料理しないってあれだけ言ってたのに、あんな簡単に自身取り戻させるんだもん」
「・・・正直、俺は無責任な発言をしたのかとも思う」
「何よ?」
「味覚障害を持つ三玖は料理をやめる。現実的で模範的な判断をあいつが下した。だが、俺の勝手で、あいつをまた苦しむんじゃ・・・」
「ふざけんじゃないわよ!!」
そう言って抱え込んでいたクッションを風太郎に投げつける。座り込んでいる風太郎を見下すかの様に言い放つ。
「いい!!あの子が抱えていた問題をあんた力で導いた!私じゃ・・・出来なかったのよ・・・」
前日。時刻は正午。姉妹がそれぞれ、大変な状況になってしまったのをパパから聞いた。それぞれ、部屋にこもっている状態らしい。
「あの子たちが、こんな状態なのに、これから手術なんだ。申し訳ない二乃君。」
「だから、君は止めて。わかってる、あの子たちを何とか引き出して見せるわ。それに、色々、してくれたみたいだし」
以前住んでいた部屋が、リフォームされており、階段もなくなりエスカレーターとなり、段差という段差は無くなった。父が医者なので医療や福祉用具等はすぐに集められた。
「よし、まずは腹が減ってはなんとやら!」
そう言って五人分の食事を作る。今回は材料もあまりないので、簡単におにぎりとお味噌汁。日本人らしい昼食だ。
「みんな!お昼出来たわよ!」
そう呼んでみたものの、誰も部屋から出る気配はなかった。
「あー・・・しょうがないな」
一つ一つをプレートに乗せて、一人前ずつ運んでいく。最初は一花の部屋。
「・・・あ、二乃」
「ほらお昼。せっかくだからリビングで食べましょ」
「・・・・・・」
「あ、そっか」
耳が聞こえていない一花には聞こえていないのでメールで文章を送る。
スマホを見るように指示し、二乃の言いたかったことを確認する。
「そうだね・・・えっ?」
二乃が送ったメールのその一通前の未読メール。事務所から届いたメールだ。
件名はハリウッドの件について
「中野一花さんお世話になっております。マネージャーの・・・」
読み上げていき、最後のほうにこう書かれていた。
「今回、誠に残念ではありますが・・・降板という結果に・・・嘘・・・」
お声をかけていただき、初めて受けた海外のハリウッド映画オーディション。それなりに大きな役を勝ち取り、ハリウッドデビューをするはずだった。しかし、一花のこの状況。事務所は一花を休職にするよ判断した、それにともない、ハリウッドのデビューも降板になった。
「・・・ごめん。二乃、一人にして」
そう言うが、二乃もひかない。まずは五人全員がそろうこと。彼女はそれを目指してた。
「いえ、まずはみんなでご飯食べましょ」
聞こえてはいないだろうが、無理やりにでも部屋から出そうとするが、一花が言うつもりもなかった言葉を漏らした。
「いいよね二乃は・・・何もなくて」
「!!・・・良いわよもう!!」
そう言ってガチャンッと大きく音を立て、持ってきたおにぎりと味噌汁のプレートを置き、そのまま部屋を出て行った。
「・・・なんなのよ」
怒りながらも怒れない自分に嫌気がさしたが、ここでへこたれるわけにはいかない。次は三玖・・・
「三玖!入るわよ!」
今度は三玖なので若干ではあるが、強気に入っていく。当の本人は机に向かって何か、雑誌を読んでいた。
「何やってんの?」
「仕事探してる」
「バイト増やすの?パン屋で働いてるじゃない」
そう言って二乃は三玖の見ている求人雑誌をのぞき込む。バイトも増やせるくらい三玖は元気なのだろうと思い二乃も安心したのだが、そうではなかった。
「・・・もう、やんない」
「え?」
「料理や飲食とは関係ないところで働く。専門学校も辞める」
「なんで!あれだけ料理好きだったじゃない。あんなに上手になって・・・」
「・・・あむ」
そう言って、二乃が作ったおにぎりを一口食べるが、残念そうな顔をする。
「お米、塩のざらざらは感じるのにしょっぱさはない。梅干しも・・・酸っぱくない」
そんなさみしそうな彼女の表情を見て二乃は提案をする。
「わ、私がサポートするわ!三玖!ほら、何でも言って!チョコの時も教えたじゃない!今から作る?私見てるから!」
「大丈夫。でも・・・フータロー」
「え?」
「最後にフータローに食べてもらったら、もういい」
三玖の意中の人。彼に食べさせれば、料理が諦められるのだろうか・・・彼女の考えを尊重すべきなのか・・・でも・・・
「わかった・・・私はもう何も言わないわ」
そういって二乃はさみしそうに部屋を後にした。
「三玖・・・あなたとお店・・・やってみたかったんだけどな・・・」
二乃は自分のお店を出すほかにささやかな願い。三玖が一緒にお店をやってくれたらとも思っていた。もちろん三玖のやりたいジャンルや、自分でお店を出すなら、それはそれで応援していた。
料理もめきめき上達して、このままじゃ追い抜かれるかもっていうくらい。
それで店内の新商品を二人で出し合って作って実食して・・・皆に評価してもらって、勝ったほうが商品化・・・とか・・・
「・・・やりたかったな」
ささやかな願いは叶わぬ夢となってしまった。