へこたれるわけにもいかない。次は四葉の部屋。先ほど、ショックがあったが、妹の前でそんな情けない姿をさらすわけにもいかない。
「四葉!お昼・・・」
「入らないで!」
「え?」
部屋に入る前に、中から急に叫ばれた。しかし、このままにしてはいけない。
「いいえ!入るわよ!」
そう言って無理矢理、部屋に入るが、四葉はベッドの上で寝ていた。
「え・・・あ・・・」
焦ったような表情の四葉だが、何か隠してるのか・・・
「ほら、お昼持ってきたわ」
「あの・・・二乃・・・」
「何よ?」
「・・・気にならないの?」
質問の意味がよくわからないが、不安そうな彼女のためになるべく明るい話題にする。
「何よ?・・・フー君とどこまで行ったかは多少気になるわ」
「え?・・・あ、そう・・・だね。よいしょ・・」
そう言って上体を起こす。彼女の筋肉がマヒしているのは下半身のみ、つまり、手は動かせるので、上体を起こし寝転がっている状態から座る形になった。
「それで、この前、ウェディングドレスの試着を予約したんだ!」
「あら、私も乱入しようかしら」
「ダメだよ!・・・でも・・・」
「どうしたのよ?」
「風太郎がこの姿見て、嫌いに・・・」
「それはないわ!もしそうだとしても、私が許さない」
食い気味に言い放つ。四葉の不安を取り除くためでもあるが、風太郎がそんなことをする人間だとも思えないので自身満々に答える。
「だよね・・・だといいな・・・」
まだまだ、不安そうではあるが、こればかりは風太郎が判断するしかないが、彼はそんなことで、四葉を嫌いになったりはしない自信はあった。
「はい、じゃあ、私戻るから食べ終えたら、置いといて、後でとりに行くから。」
他の姉妹と比べて、上手くコミュニケーションは取れていたし、二乃自身も手ごたえを感じていた。だが、夜、再び様子を見る頃にもプレートに置かれた食べ物はそのままだった。
「最後に、五月・・・」
彼女の部屋にノックをする。しかし、反応はなかった。正直こんなにバラバラになるなんて思っても見なかった。高校生活から姉妹の絆は深まっては壊れ、また強くなり、姉妹で好きな人を取り合って・・・
「もう・・・ダメなのかな・・・」
諦めたように、これ以上触れず、リビングに戻ると、自分用に残していた昼食がなくなっている。
「あ、二乃!これ食べちゃったんだけど・・・大丈夫だ・・・よね?お腹空いちゃって・・・」
「五月ぃ!?」
諦めかけていたのだが、五月はすでに部屋を出ており、あろうことかしっかりと昼食もいただいていた。
「ダメだった!?昨日からそう言えば何も食べてなくて!」
「ふふ・・・アハハハッ」
二乃は笑った。久々に、いつもの姉妹の姿を見るのが、非常に嬉しかった。
「え?二乃?大丈夫ですか!?」
「ううん。あんたは大物だと思っただけ!」
そう言って二乃は五月様に持ってきていた自分の昼食をテーブルに置く。そしておにぎりを半分にする。
「あんた用に大きめに作った。食べる?」
「はい!いただきます!」
そう言って、バクバクと食べ進める。相変わらずの食いっぷりだ。
「ねぇ、五月・・・フー君呼ばない?」
「上杉君・・・まぁ、彼に任せれば、今引きこもっているのも出てくるとは思いますよ」
「だよね!じゃあ、連絡・・・」
「私は反対」
「え?」
「彼をとても信用してる。だけど、卒業してからも彼におんぶにだっこのようなことをしてもいいものなのかと思う。彼に頼っていいのは四葉だけだと思います」
「あんた・・・ホントにそれでいいと思ってるの!?今皆の状況が・・・」
まさか反対の意見が出るとは思ってもなかった。確かに、彼と出会ってから、頼りっぱなしで、勉強だけでなく色々なことに強力をしてもらい、迷惑をかけた。だが、現状を打開するには彼の力が必要だ。
「ええ、わかってます。ですが、私は・・・もう彼に迷惑をかけたくありません・・・呼ぶのは構いませんが・・・私は一人で大丈夫。そうお伝えください」
そう言って五月は立ち上がる、そしてテーブルの端をなぞるようにし、壁を伝い、部屋へ向かう。
「・・・五月」
確かに今の行動を見れば自分で克服しようと頑張っている。彼女は視覚を失った。
父が言うには全盲ではなく弱視。若干ではあるが見えてはいる。しかし、どんな状況かは本人にしか分からないだろう。
「五月の言いたいことも分かる・・・でも」
そういって、父に電話をする。だが、留守電のようだったので用件だけ伝える。
「パパ、フーく・・・上杉風太郎君を呼んで欲しい・・・もう、彼にしかどうにもならない・・・」
そう伝え、二乃も疲れてしまい、部屋に引きこもった。