五等分の障害   作:森盛銛

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6話 ごめんな、四葉

「フー君。あんたは三玖に対して、最高のことをしたの!だから、そんなこと言わないで・・・本当なら、私がしてあげたかった・・・」

 

「すまん。二乃・・・」

 

彼女が諦めてしまったことを風太郎はやってのけた、そんな自分の情けなさに、涙を流す。しかし、そんなことはない。こんな状況になりながらもよく一人で動いてくれていた。

 

「いいの。ごめん。変な感じになった・・・」

 

そう言って申し訳なさそうな表情を浮かべる。彼女も追い詰められていたのだろう。

 

「スッキリしたいし、シャワー浴びてくる・・・フー君も一緒に入る?」

 

「バ、バカ!お前・・・」

 

「ジョーダンよ・・・あんたには何回も私の裸見られたから、今更って感じだけどね」

 

そう言って彼女は目の前でバスセットを取り出し始めた。そして、替えの下着等も。

 

「・・・・・・」

 

「アラー、興味あるのかしらー」

 

白々しく、挑発してくる。若干だが、元の二乃に戻ってきてもいそうだ。先ほどの話を聞いてる限り、二乃もだいぶ疲れ切っていたのだろう。

 

「ねえよ」

 

「なんかムカつくわね。そう言えば四葉の朝食の食器まだ下げてなかったわ」

 

そう言って、風太郎は二乃と二人で四葉の部屋の前に立ち、二乃がノックする。

 

「四葉ー、朝食の下げに来たのと、あんたの大好きなフータロー君が来てるわよー」

 

そう言って、二乃が扉を開けた瞬間だった。

 

「ゴホッ!?」

 

扉のすき間からものすごい異臭を感じ、むせた。だが、二乃は気づいていない様子だった。何か変なものが鼻の近くを通ったのか・・・気のせい?

 

「に、二乃!二乃だけ入って!」

 

「フー君悪いんだけど・・・」

 

そう言われたので、部屋の外で待機をしている。それよりも、気になったことがあった。二乃は全く気にしていない。鼻を集中させてみると、発生源は四葉の部屋からだっった。

 

「あーあ、四葉。今日も食べなかった・・・」

 

そう言って残された、朝食のプレート。何も手をつけられていない状態だ。

 

「二乃・・・四葉が食べない原因・・・わかったかもしれない・・・」

 

「え?」

 

あまりそうあってほしくないが、風太郎の頭に浮かんでいるのが一番考えられる。そして、風太郎が行くのは一番危険でもある。だが、風太郎は決断した。

 

「だが、これは俺にやらせてくれ」

 

「・・・信じていいのね?」

 

「ああ、それともう一つ・・・」

 

風太郎の提案したものは二つ。一つは自分が呼ぶまで絶対に部屋から出ないでほしいこと。二つ目はその時になったら言うとのこと。リビングで課題を行っていた三玖にも伝え、風太郎は始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉の部屋。風太郎は無礼にノックもせずに入っていく。やはり部屋から、ものすごい異臭がする。

ベッドの上ので掛け布団にくるまっている四葉は誰かが入ってきたのを確認し、それが風太郎と認識したとたんだった。

 

「で、出てって!!お願い!!」

 

そう言って彼女の周りに置いてあるもの、動かせる上半身を使って、手元に届く物、雑貨や、目覚まし時計、スマートフォンなど、ありとあらゆるものを投げつけてくる。だが、立ち止まったりはしない。四葉が風太郎に会いたくない気持ちは本人もわかっている。逆なら俺も絶対に拒絶する。しかし、状況が状況だ。

 

「お願い・・・やめてよ・・・」

 

泣きながら、風太郎を拒絶する四葉。だが、風太郎は四葉の目の前に立つ。

 

「・・・四葉」

 

ぎゅっと掛け布団をつかみ、離そうとしない四葉。やさしく声をかけるが、怯えるような泣き顔しか見せてくれない。

 

「や、やめて・・・なんでもするから・・・お願い!!やめて!!やめて!!!」

 

「ごめんな」

 

そう詫びて彼女が死守していた掛け布団を無理やり剥がす。

 

「・・・やっぱりな」

 

決して一花の様に裸でいたわけではない。足が動かせない彼女、だが、人間の生理機能として仕方のないことだった。下半身が汚れてしまい、パジャマに沁みついてしまっている。いつからか分からないが、彼女自身も不快であっただろう。そして、これ以上するわけにいかなかったので食事には手をつけなかった。

 

「やめてって・・・言ったのに・・・」

 

子供の様に泣きだし始めた。無理もない、こんな姿は誰にも見られたくない。ましてや、自分の大好きな人に見られるなんて、もってのほかだ。

 

「大丈夫・・・大丈夫だよ・・・」

 

そう言って四葉の頭を撫でながら、彼女を落ち着かせる。まずはそれが最優先だ。親が子供をあやすようにやさしく丁寧に彼女の途切れ途切れの言葉を聞いてあげる。

 

「もっと・・・早く二乃に頼めばぁ・・・」

 

「うん。そうだな・・・」

 

「でも、・・・迷惑・・・だし、は、はずかし・・くて」

 

「うん。恥ずかしかったな・・・」

 

「と、特に・・・ふうた・・・風太郎に・・・は・・・知られ・・・たく・・・なくて。き、嫌いになっ・・・なっちゃうかもって・・・」

 

「大丈夫。怒らないし、嫌いにもならない」

 

「ほ、ほんとぉ?」

 

「ああ、本当だ」

 

そう言うと、四葉はすごく安心した表情を浮かべた。徐々に涙も止まって落ち着いてきたようだ。きたのでとりあえず現状を改善しなければならない。窓を開けて換気し、おぶって四葉を風呂場まで運ぶ。

 

「風太郎・・・汚れるから・・・」

 

「そこは気にすんな・・・それよりもぉ!」

 

おんぶで風呂場まで運ぼうとする。服が汚れることに関しては致し方ないとは思っているが、それよりも単純に運ぶ力がない。リビングに車いすがあったが、今後使うものを汚すわけにもいかない。部屋を出て、すでに一階にまでは降りたものの、そこから、力を振り絞り、なんとか風呂場までたどり着けた。

 

「じゃあ、二乃呼ぶから・・・」

 

上は自分で脱げるが、下は難しいだろう。それを流石に、風太郎がやるわけにはいかなかったので、二乃を呼ぼうとする。しかし、四葉は服の裾をつかみ、止めた。

 

「あ、その・・・ううん。なんでもない」

 

「・・・わかった」

 

脱がせてほしいというよりは、他の姉妹にばれたくはないのだろう。しかし、四葉は嘘をつくのが下手でもあるので、ある程度はばれてしまうだろうが、彼女の意思を尊重するようにした。

そして、浴場の椅子に座らせる。ここからは、一人でもできるだろう。

 

「扉の前にいるから、なんかあったら呼んでくれ」

 

「うん。ありがとう。風太郎」

 

そういって扉を閉め、四葉がシャワーを浴び始める。本当は風太郎がここにいるのは四葉にとって恥ずかしいのだが、もし転倒でもした際、助けられないので、待機をする。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

無言の中、シャワーの音だけが響く。そんな中、声をあげたのは四葉だった。

 

「私、どうなっちゃうんだろう・・・」

 

「四葉?」

 

「・・・すごく悔しくて、恥ずかしくて、泣いちゃって・・・これからも一人でトイレもできないようになっちゃって・・・」

 

確かにそうだ、彼女の下半身の筋肉は麻痺。俗にいう神経障害の一種であろう。まだ数日しかたっていないが、彼女は現にそれでミスをしてしまっている。

 

「風太郎・・・別れ・・・」

 

「別れないぞ」

 

「え?」

 

「あー、別に四葉が俺を嫌いになった・・・とかだったら・・・まぁ、その・・・考えはする!」

 

そう言われてもきっぱりと別れることはできない風太郎だが、そんなことより、四葉はきっとこう考えている。

 

「ただ、自分がいては迷惑になってしまうとか、そう言った自責の都合は却下だ」

 

「・・・いいの?」

 

「正直、色々苦労はすると思うが、頑張ろう」

 

そう言うと、四葉からの返事はなかったが浴場からシャワーの音に混ざってグスッとすすり泣く音が聞こえた。

 

数分して浴び終えた四葉から声がかかり、全身を拭く。湯冷めで風邪をひいても困るので、念入りに・・・

 

「・・・悪い」

 

「うん・・・・大丈夫」

 

触れるのは仕方ないが四葉もそれを承諾した。その後、四葉の部屋の適当に見繕った服を着させ、リビングにあった車いすを使い、四葉を乗せて、リビングに連れていき、ソファーに座らせる。

 

「じゃあ、俺は部屋片づけておく、何かあったら呼んでくれ」

 

そう言って四葉の部屋に向かいベッド関係のものから手をつけようとする。さすがに使えないので、新しいものを買うしかない。とりあえず、布団は干し、部屋は換気と除菌スプレーで匂いはどうにかなった。

その後、四葉に以前、泊まり込み勉強で借りた服をまた貸してもらい、自分の服は洗濯した。

 

「四葉ー。終わったぞ」

 

「あ、ありがとう風太郎」

 

そう言いながら、ソファの四葉の隣に風太郎が座る。しかし、以前の様に四葉は彼女の魅力の一つでもある明るさを失っている。

 

「ここまでしてくれるなんて・・・やっぱり、風太郎はやさしいね」

 

「・・・なんで俺がお前のためにここまでするかわかるか?」

 

そう言って四葉を抱き寄せ、そのまま、頭を風太郎の膝の上に置く。膝枕のような形になる。

 

「好きだから・・・だ・・・」

 

「///!」

 

「・・・お返しだ」

 

高校二年の中間試験後に四葉にやられたこと。今度はそれを逆の立場で風太郎がからかう。四葉は顔を赤く染め揚げ、風太郎は少し小ばかにしたように笑っている。

 

「それに言っただろ?お前は俺の支えであり、俺はお前の支えでありたい。俺に何かあったときは逆に支えて貰うからな」

 

「なんか・・・不安が一つ消えました」

 

彼女は自分の力で起き上がろうとする。しかしバランス崩れる。しかし、倒れこみそうだったところを風太郎がしっかりと支える。

 

「支えたくて、支えてくれる人がそばにいてくれるから」

 

そう言って四葉の顔から笑顔がこぼれる。不安とは風太郎が自分のもとを離れていってしまうのではないかという不安。だが、四葉は風太郎はいつでもそばにいてくれるという、根拠のない確信があった。

 

「ありがとう。風太郎」

 

 

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