戦姫絶唱シンフォギアVC Depthe of the unDergrounD 作:サリッサ@無期限休止
明日9/20に行われる予定でしたシンフォギアオンリーイベント「戦場に響く唱歌」
もし億が一があったら参加したいなと夢想しつつ書いていたもの、その序章となります。
バトル要素が未投稿の後半、そしてろくに精査できていないため
説明が多かったり、読みにくかったりと至らぬ点ばかりと存じます…
折角ですので、宜しければ読んでいただけると幸いです。
「ハァ…ハァ……」
薄暗がりを、少女は歩く。
少女の息遣いと、あてもない足音だけが、その先の闇へと吸い込まれていく。
少女の周辺の壁がほのかな光を放ち、なけなしの希望を頼りに、少女は歩み続ける。
「ここ……どこおおおおおおおおおお?!?!?」
立花響、ガングニールのシンフォギア装者。
彼女は今、幾何学と不気味織り成す建造物の中
一人ぼっちで迷子だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
座り込み、頭を抱える響。
しかし、そうもしていられない。突然の突拍子もない出来事に、しばし思考を放棄していたことを反省する。
未だ霞がかった思考を働かせ、事の発端を思い出そうと頭をひねる。
「まず…ダイレクトなんちゃらで仮想空間を云々……ダメだ。エルフナインちゃんの言っていたこと、全然わからなかった…」
再び頭を垂れるも、すぐに持ち直した。眉間に皺をよせ、必死に思い出そうと努める。
「ギアの調子が悪いから、どう訓練しようかって話してて…調ちゃんと切歌ちゃんがそれならってエルフナインちゃんに相談して…エルフナインちゃんと蘭堂さんが、前マリアさんが使っていた機械を改造してて…それで…それで……」
そこまで言って、勢いよく顔をあげる。
「私が勝手に被っちゃった!」
晴れやかな笑顔から一転、悲痛な表情と共に肩を落とした響。
「また私なんかおかしなところ触っちゃったかな……」
その姿勢のまま、再び歩き始める。幸い、ここがどうやら夢の中…に近いものにいるはずということを思い出せた。おそらくこのまましばらくすれば、頼もしい仲間たちが解決してくれる。
「はず……」
現実世界では、逆境を、神様すらも突破できる拳を有す彼女。しかし、このあり様はどうにかできるものとも、今の彼女には思えなかった。
「ガングニールもないし…」
ため息まじりに、自身の服の内側をのぞき込む。そこには消えることのない胸元の小さな傷。そのあたりにいつもは首から下げていた、あの『誰かの手をとるための力』はなかった。
「夢の中らしいし…仕方な――――」
先の言葉は、続かなかった。
ソレがこちらを見ていたから。
視認する間もなく、
彼女の潜在意識は
彼女自身の意識を
強引に断ち切った。
ソレは、しばし目に相当する器官を細め、
眼前に倒れ伏しているモノを眺める。
そして頭上を見上げ、その口と思しき場所を歪ませ
微かに笑う。
そして、興味を失ったように目を反らし、
ソレが大きく欠伸をした時だった。
「えっと!!!!」
場の不気味さと不釣り合いな
素っ頓狂な声が上がる。
ソレは再び下へ目を落とした。
そこに意識を失ったはずの少女がいた。
臆することなく、敵意を向けることなく
常人では出会った瞬間、絶叫共に気が触れてもおかしくない相手も前に。
「私!!」
それを果たして、ただの少女と言えるだろうか。
「立花響と申します!!!」
歪と異形が交錯し
邪曲で浮上なる神話が始まる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「大丈夫か?!立花!!」
部屋に入るや否や、そう叫んだのは風鳴翼。続いて同行していたマリア・カデンツァヴナ・イヴも室内に飛び込む。
そこには端末に繋がれ、意識を失っている響の姿があった。
「立花……」
驚愕に目を見開く翼だったが、落ち着くようにマリアに諭される。
「声かけても、今は届かんぞー」
その様子に構うことなく、コンソールを弄るガスマスクの男、伴成蘭堂が背中越しに言う。
「お疲れ様です。翼さん、マリアさん…僕の不注意です…すみません……」
同じくコンソールを操作していたエルフナインが進み出て、深く頭を下げる。
「エルフナインは悪くないデス!変なことを言ってしまった私たちのせいデス…」
響の手を握っていた暁切歌と月読調がエルフナインへ駆け寄る。翼はエルフナインの小さな肩に、手を置く。若干の震えが、そこから伝わった。
「案ずるなエルフナイン。この程度で立花が手折れるものか…」
そう励ましたものの、心配は拭えない。
「状況を教えて」
マリアは蘭堂へ問う。問いに答えたのは、励まされたエルフナインだった。
「今回作成したのは、ダイレクトフィードバックシステムを再度応用した、脳内複写による異空間での訓練システムの試験品でした」
そう言って、ポケットに入っていたペンダントを取り出す。それは、立花響の纏う、シンフォギア。
「イグナイトモジュールを焼失し、ギアコンバータの不調原因が掴めない今、戦力ダウンを補うためにも、戦術理解と経験蓄積が可能な仮想訓練は必要でした…しかし……」
そうして作り上げた装置に、仲間の意識が囚われてしまっている。エルフナインは奥歯を噛み締めた。
「エルフナインは悪くない!私たちがあの時のマリアの話を思い出したばっかりに…」
そう言って俯く調の頭を、優しく撫でるマリア。そしてエルフナインに向き直る。
「リンカーの作用領域を探した時の話よね。私の記憶だと、別領域に意識を複写するって話だったと思うのだけれど」
「はい。その通りです。ただ…」
言いよどむエルフナインに代わり、蘭堂が椅子にもたれたまま会話に加わる。
「その意識自体がな、まるごとどっかに持って行かれている」
「持って…行かれた?」
翼の問いに、蘭堂は頷く。
「こいつは、前回のリンカー調査のデータを元に改良していた。よりセーフティを十二分に加え安全面でも向上している。どっちかというとフルダイブシステムと呼称できる技術だ。しかしだ、そこにどうやら横やりをねじ込まれたらしい」
そして、欠伸をかくと自身が操作するコンソールを指差した。
「簡単に言えば、ハッキングされたってわけだ。その結果、精神体本体…まぁ意識だな。その大本をまんまと掠め取られ、現在進行形で抜き取られかけている」
蘭堂の目が、そして他の者たちの目も響に向けられる。苦しそうな表情などはないものの、起きる素振りはない。時折四肢が微かに動く程度だ。
「精神と身体が半ば剥がれかけている。この状況が続けば、精神体はここにある肉体へ戻れなくなる。つまりは、廃人の完成ってことだ」
「縁起でもないことを!」
詰め寄る翼だが、しかしかといってどうすることもできない。蘭堂は翼を見、肩を竦めた。
「さっきの話、ハッキングってことだけど、それって仕掛けた人物がいるってこと?」
その言葉に、蘭堂はガスマスク越しに薄気味悪い笑顔を浮かべた。
「少なくとも、人間では、ない」
部屋の空気が、心なしか、重くなる。
「個人の精神体を任意に移動できる、なんて芸当を、人類如きが可能だと思うか?今回に至っては強引も強引。相手方のことなど度外視した荒業。埒外物理学とも呼べない、もっと原始的な力のなせる業だ」
そう言うと蘭堂はコンソールに向き直る。
「俺とてこのあり様を好ましく思っている訳なかろう?幸いまだ半ば、だ。身体の微かな反応から、最終ラインはまだ先だ」
頷くエルフナイン。
「今友里さんと藤尭さんを筆頭に、精神干渉系の聖遺物の資料をあるだけ持ってきて貰っています。装置から無理に引きはがせず、方法もわからない以上、今は見守りながら手を考えるしかありません……」
再び顔を落とすエルフナイン。
その様子を見、切歌は徐に己の頬を叩いた。そして音に驚くエルフナインに寄り、少々赤くなった顔を近づける。
「きっと大丈夫デスよ!響さんならどんなのが相手でもズバッと倒してくれるデス!」
「切ちゃん、それを言うならバシッと、じゃないかな」
そうして二人はエルフナインの手を取る。
「私たちもお手伝いするデス」
互いを鼓舞する少女たち。一様に責任を感じているからだろう。翼は改めて蘭堂に向かって言った。
「緒川さんに雪音と小日向を連れてきてもらっている。もう少し時間はかかると思うが…その間、私たちにできることは?」
「フム…」
蘭堂はコンソールから目を離さず答える。
「今のところは、正直ない。どこに連れ去られたのかがわかれば、選択肢は増えるがね」
マスクの位置を正し、いつもより少々険しいようにみえる表情で続けた。
「弦もお偉いさん方との会合らしい。抜け出ては来れんだろうから、こちらで検討対応していくしかない。とりあえずは、待機、と言っておこう」
奥歯を噛み締め、頷く翼。そして、ベッドに横たわる盟友を見た。
「負けるな…立花」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ほぇ…夢、とは少し違うんですね…」
立花響は現在、眼前の異形と緊張感なく話している。
その身体は巨大で、薄暗がりのこの広間では、全体を把握することは出来ない。しかし、その切れ長い目と口はどことなくカエルを思わせ、しかし身体は寸胴な哺乳類を連想させる。
『夢見る人、夢身入る者と、貴様らの先祖は語っておったわ。精神のみが片足抜け出し、物質との狭間に位置する不安定領域に駐在する。ワシらにとっては当たり前のことだが、貴様らにとっては非常に稀有なことのようだ』
語っているのは、異形の口ではない。身辺に居た粘質状の物体を、異形が変異させ発音器官を生じさせている。
「ヒキガエルさん…いやコウモリさんかな…?は何でも知っているんですね…」
原理も存在も、もはや常軌を逸している。そんな存在を前に、立花響はとりあえず、あまり深く考えないようにしていた。不幸中の幸いにも、この眼前のソレは、こちらと会話することをよしとしているようだった。
『…ヒキガエルとはナンだ…ワシか?』
異形はその大きな鼻をならす。
「お、怒りました…?」
そう伺う響に対し、異形は寝そべったまま欠伸をかいた。
『オコるとは…単なる感情の起伏のことを示すのであれば…回答はコウだ』
そしてその巨躯を響の前へと引きずり出す。
『貴様はミジンコが咬みついたからと彼奴らに激昂することがあるか?』
そう言って醜悪な顔を愉快そうに歪ませた。
「さっきの話に戻るんですけど…ここがその不安定領域?として、あの…ここから出る方法とかって…知ってたりは…」
『無論、承知しておる』
その解に顔がほころぶ響。しかし、異形は興味のないように背を掻いた。
『しかし今のままの貴様は無理だ』
肩を落とす響。そんな姿をしり目に、異形は続ける。
『貴様はここに来たのではなく、引きずり込まれたのだ。アヤツを消さぬ限り、貴様がこの地下から這い出る術はない』
ため息をついた響きだったが、気になる言葉に顔をあげる。
「あの…地下…って言うのは?」
その問いに、異形は眠そうな目を少し開いた。
『そうか、その話はしてなんだか』
そしてゆっくりと、寝姿の真横にあった壁を、手で払う。その動作はまるで窓にかかったカーテンを開け放つようであり、また響の眼前で正しくそう形容されるべき現象が起きた。
そこに太陽があるはずだ。
光が見える、しかし
太陽ではない。
輪状の光源が頭上に鎮座し、空間を強烈で毒々しいまでの黄昏色に塗りつぶしていた。
窓と呼ぶべき巨大なソレから身を乗り出す。
そこには、黒い塔柱が無数に立ち並び、その壁面にはおびただしい数の突起と、しかし法則性と芸術性を兼ね備えた、流麗で悍ましい彫刻が隙間なく掘られている。
響と異形がいる場も、その複数ある柱の一つの様だ。柱は下方で一つにまとまり、見ようによっては都市の一部かのようにも思われた。その周囲は、山だろうか。漆黒の山脈に囲われ、守られている。
誰かの手で作られたモノの上で、そして己が知るどの大地でもないことを、否が応でも脳に直接叩き込まれた感覚。響は眼前の光景が捻り曲がったような錯覚に陥り、体勢を崩しかける。
『眼下の建造物は貴様らの造物主が南極に投棄していった船の残骸よ。微睡むのに丁度よいのでな。邪魔者がいなくなった折、こちらに持ってきた』
なんてことは無いことを言うように、異形は続ける。
『ここはンカイ。貴様ら地上の者とは決して相容れない、この星の地の底だ』
響は耐え切れず、再び意識を手放した。
ここまで読んでいただき、誠に有難うございます。
いかがでしたでしょうか?
響さん誕生月ということで、響主体で回す予定となっております。
ンカイに住まう異形、そしてその口が語る響を連れこんだ‟アヤツ”とは何なのか…
説明ばかりなのに説明不足とは此は如何に…
どのような形になるかは未だわかりませんが、
進めていければと思います。
(流れは決まってるけど、描写が思いつかねぇ…)
宜しければ、コメント、評価など頂ければ幸いです(^^)