私は幼女   作:ファニーピエロ

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第1話

 人間という生物は一時の衝動に身を任せ重大な決断をすることがある。そして、その決断は得てして後悔を生む。

 

ーーーーーー

 

 雲ひとつない青空の下、金属と獣の毛皮を重ね合わせて作られた鎧を着込んだ若者たちが大量の汗を流しながら走っている。

 

「ヒィッ!ヒィッッ!!」

 

 走り回る若者たちの中でも特に幼いー幼女とも形容できそうなほどー見た目をした女性が、顔の穴という穴から体液を撒き散らしていた・・・そう、私だ。

 私がこんな惨めな姿を晒しているのには訳がある。それは私が1度死んだ時にまで遡る。

 

ーーーーーー

 

 色の無い空間に、歳は20になろうかといった男たちが困惑した様子で存在している。

 体を自由に動かせないのか、はたまたこの空間に距離という概念が存在しないのか、男達は一向に動く様子もなく惚けた顔を晒している。

 男達が醜態を晒していると、唐突にロウのような白い肌をした凹凸の少ない人型が現れ、一昔前の機械音声のような声で喋りだす。

 

『これよりあなた方を転生させます。転生における要望をご記入ください』

 

 人型の言葉に驚く暇もなく男たちの前に半透明で簡素なパネルが現れ、行動を迫る。パネルには『転生における要望をご記入ください』と、人型の言葉と一言一句違わない文字が羅列されている。

 いっそ清々しい程に感情のこもっていない対応に怒ったのか、つなぎを着た男が怒鳴り出す。

 

「どういうことだ! 死んだと思ったらいきなり訳のわからんところに連れてきやがって、もっとちゃんと説明しろ!!」

 

 周りでただただ困惑していた男達も男の言葉が気つけになったのか、男の言葉に賛同する雰囲気を纏い人型に責めるような目線を向ける。だが、人型からの言葉は無く、それどころかみじろぎ一つせず感情があるのかすら怪しいものだった。

 男達は人型に話しかけるだけ無駄だと判断したのか、何人かで話し合う者や一人で考え込むもの、頭の中で妄想を繰り広げているのかニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべる者、などに別れてパネルに記入を始める。

 

 しばらく経って全員の記入が終わったと判断したのか、人型が先程と同じように感情を感じさせない声で話しだす。

 

『全員の希望を確認。転生を開始します。』

 

 その言葉を最後に色の無い空間は何も無い空間になった。

 

ーーーーーー

 

 赤色を基調とした藁や瓦で出来た屋根を持つ何処か和の雰囲気を感じさせる建物が立ち並び、そこかしこから湯気が立ち昇る長閑な村。ユクモ村と呼ばれるその村の門に青みがかった黒髪の幼女が気味の悪い程顔を青ざめさせながら立ち惚けていた。

 

「モ、モン・・・ハン・・・」

 

 聞き慣れない言葉を発した後にピタリと動きを止めた幼女のことをさすがに放って置けなくなったのか、門番というにはいささかうだつの上がらなさが目立つ青年が恐る恐る声を掛ける。

 

「お、おい、お嬢ちゃん。そんな顔してどうした? 親はどこにいるんだ?」

 

 青年が声を掛けても幼女は顔を青ざめさせるばかりで反応を返さない。

 これには青年も困り果てた様子で、助けを求めるようにキョロキョロと周りに視線を向けるが、生憎とそこまで人の出入りが激しく無いユクモ村で好き好んで門に近づく者は青年以外に居らず、『自分に解決できないなら他の人に丸投げしてしまえばいい』と生来の楽観的な考えから導き出した答えをさも最善策だとばかりに実行に移す。

 

「とりあえず村長のところに行こうか。村長ならなんとかしてくれると思うし。」

 

 青年は知り合いの中で一番頼りになる人物を選び、幼女の手を引いてその人物のもとに連れて行く。

 しばらく歩くと村の中でも一際大きい建物である集会場に続く階段の下にある長椅子に座っている女性を見つけ立ち止まる。その女性が青年の目的だったようで、青年は女性に話しかける。

 

「村長、門のところでこの子が立ち尽くしていたんですけど・・・」

 

「あら?私と同じ竜人族の子供?珍しいですわね。この子の親はわかりますか?」

 

「いや、それが何を聞いても心ここにあらずって感じで・・・」

 

「・・・わかりましたわ。取り敢えずこの子はわたくしに任せてください」

 

「ありがとうございます! じゃあ俺は戻りますね」

 

 女性が無事に幼女を引き受けてくれたことでホッとしたのか、青年はあふれんばかりの笑みで門の方に戻って行く。

 

「はじめまして、わたくしはこのユクモ村の村長をしております。あなたの名前を教えてくださいますか?」

 

 ここに来るまでの道のりで冷静になったのか、相手が女性ということで気が緩んだのか、今まで微動だにしなかった幼女が返事をする。

 

「名前・・・分かんない」

 

「では親御さんは?」

 

「・・・いない」

 

「・・・これも何かの縁です、あなたのことはわたくしが引き取りますわ。さあついてきてください」

 

 村長は親も名前も無い同族に何かを感じたのか、何か愛おしいものを思い出すような顔をした後に幼女を引き取ると言い、彼女の手を引き自身の家に向かった。

 

ーーーーーー

 

 そんなこんなで村長に引き取られた私は今、村長の家でノビノビと育てられている。

 あの謎の空間にいた時は今流行の転生だと舞い上がってしまい、読んでいた小説のノリで可愛い女の子になりたいなんて書いてしまっていざ転生した世界がモンハンの世界で絶望したものだ。

 他の世界に転生するならするって言ってくれよな。まぁ、あの無愛想どころか感情があるかも分からないやつに期待するだけ無駄だろうけど。

 それに可愛い女の子にはなったけど自分に関する記憶は年齢以外消し飛んでるし、指が四本になってるしで思考がショートしちゃって鬼門番(笑)の兄ちゃんには迷惑をかけたな。あの兄ちゃんはどうしようも無いニートだけど私を村長に引き合わせてくれた恩があるからな、尊敬してやらんこともない。

 村長に引き取られた私はそれはもう甘やかされた。転生ショックで傷ついた心は瞬く間に癒されて今では娘の気分だ。形式上では引き取られただけだが、村長も私のことを娘のように思ってると思う。いつも村長に似た着物を着せられてるし、温泉の女将業や村長の仕事も連れて行ってもらってる。容姿が似てることもあってか今では村のみんなに親子だと思われている。

 引き取られてからわかったことだが、私は足の構造が竜人のものではなく人間のものでおそらく竜人と人間のハーフらしい。らしいというのは村長もハーフを見たことがなくて確証が持てないかららしい。このことが分かってから、村長は時折小声で「あの人との間に子供がいたらこんな感じだったのかしら」と呟くようになった。多分あの人と言うのはMH3rdの主人公だろう。数年前にアマツマガツチを倒したハンターがこの村にいたらしいし。

 

「カエデーー! いきますわよ!」

 

 村長が私を呼ぶ声が聞こえる。いつもの村長業に行く時間だ。

 ちなみにカエデと言うのは名前のない私に村長が付けてくれた名前だ。村長の名前がモミジと言うから、そこから名付けたらしい。

 

「はーーーい!!」

 

「カエデ、そんなに勢いよく走ったらはしたないわよ」

 

 私が返事に答えながらドテドテと走るとはしたないと怒られる。

 引き取られてからの半年でだいぶ躾けられたがクセと言うのは簡単に抜けないらしい。

 私が玄関に着くと村長は私に手を差し出し、私はその手を掴んで外へ向かって歩きだす。

 

ーーーーーー

 

 いつもの集会場下の長椅子で村長の膝の上に座っていると、レザー防具一式を着てハンターナイフを携えた見慣れない若者が近づいてきた。

 

「ウソラ村から来たアオキと言うものです、あなたが村長ですか?」

 

 どうやらこの青年の目当ては村長だったらしい。

 戦い慣れてそうには見えないけど、新しく来た専属ハンターかな?

 

「私が村長ですわ。専属ハンター派遣の話は聞いておりませんし、ハンターになりに来た方かしら?」

 

「はい、正確には訓練所に通いに来たと言うのが正しいですが。今日からこの村に住むことになるので挨拶をと」

 

 どうやらこの青年はハンターの卵らしい。

 ハンターか・・・前になって見たいと口に出したら村長にどれだけ危険な仕事か懇々と教えられながら説教されたからなぁー、今は完全に村長の後を継ぐコースまっしぐらだよ。正直今でも憧れるけど危険なのは確かだし村長を悲しませてまでなりたい訳じゃないからな。

 

「わかりましたわ。ちなみに住む場所はありますの?」

 

「はい、ウソラ村の商人の方が持ってる家を使わせてもらうことになってます」

 

「そうでしたか。では改めて、ユクモ村へようこそ。あなたを歓迎いたしますわ」

 

 私は青年にずいぶんしっかりしてるなと言う印象を持った。歳は18くらいなのに家の確保までしっかりしているとは、もちろん村の人がやってくれたのかもしれないが挨拶もきちんとしてるししっかりしてることには変わりない。

 私が密かに感心していると青年は私を見ながら口を開く。

 

「そちらのお嬢さんは娘さんですか?」

 

「えぇ、血は繋がっていませんが私の娘ですわよ。半年前に引き取りましたの」

 

 青年がなぜそんなことを聞いたのかは分からないが、私は今頭の中が幸せでいっぱいでそんなことは気にならなかった。薄々察していたが、村長が自分の娘だと明言してくれたのだ、嬉しくないわけがない。

 私が口がにやけそうになるのを抑えるのに必死になっていたらいつの間にか青年は消えていた。それどころか日が沈みかけていた。

 

「カエデ、そんなに喜んでくれるのは嬉しいですがもう日も沈みます。帰りますわよ」

 

 どうやら私が必死に抑えていたにやけはバレていたらしく、いつもより跳ねた声で帰ろうと促される。

 

「はい!お母様!」

 

 その日の帰り道はこの世界に来てから一番幸せだった。

 

ーーーーーー

 

 それなりに広い木製の家の中、赤を基調とした藁と布で作られたベッドの上で昼間の青年が考え込んでいた。

 

「ユクモの村長に娘・・・半年前ってことはほぼ同胞で決まりなんだけどなぁ・・・あの時幼女なんていたっけ?・・・要望で幼女になったとか・・・いや、あの反応は完全に幼女だったよなぁ・・・時期は偶然か?・・・うーーん・・・まあ何にせよ特大スクープには違いない、今夜も盛り上がりそうだなーー」

 

 青年はひとしきり悩んだ後には楽しげな表情になりそのまま眠りについた。

 

 

 

 




小説って書くの難しいね。

ユクモ村の村長の口調が難しすぎるよー!

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